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第92話 邪魔者を排除せよ

 リックが抱きかかえていたアイリスを下そうとした。アイリスは不満そうにリックを睨みつけた。


「ぶぅ! なんでもう下すのよ?! やだ!」


 口をすぼませて嫌がり首を大きく横に振るアイリス、リックは眉間にシワを寄せた。


「早く! 下りろ!」

「やだー!」

「この!」

「キャッ!」


 リックは強引に左腕をはなし、アイリスの足は地面に落ちた。アイリスは足を地面につけたが、リックの首に手をまわしたままで、離れようとしない。


「わかったわ。じゃあこれだけ!」


 アイリスは俺の頭の後ろに、手をまわして自分の顔を近づけてくる。艶っぽく輝いて肉付きの良い紅い唇がリックの口に近づいて……


「ありがとう! リック…… 私の初めてを! あげるー! んー!」

「やったーズラー! アイリスー! よかったズラー!」


 スラムンが嬉しそうにはなれ、リックとアイリスの間に挟まった。目をつむっていたアイリスは、気付かずにスラムンに口づけをして、思いっきり吸い付く。


「ズズ! うーん! リックの唇プニプニ! もっと」

「こら! アイリスやめるズラよ。そこはおらのお尻ズラよ…… いくら仲間でも恥ずかしいズラ……」

「えっ!? えぇーー! ちょっとリックは!?」

「はは! 仲良しだな!」


 目を閉じて口をすぼめていたアイリスは、スラムンだと気づかずに体を必死に口で吸っていた。スラムンの声で目を開けた、アイリスは目の前が緑で驚いた表情をしていた。


「なんてことするのよ。スラムン」

「へっ!? なんでオラが怒られるズラか!」

「このーーー!」

「やめるズラ!」


 ムッとした顔でアイリスはスラムンを顔から引きはがし、アイリスは自分の顔の前でスラムンを引っ張っていた。


「こら! 引き剥がしたスラムンを引っ張るな」

「いいのよ!」

「やめるズラ!」

「きゃっ!」


 スラムンとアイリスの様子にリックは微笑む。彼は真顔になって予備の剣を出すため道具袋を外した。


「(よし! 二人とも元気そうだし…… 俺は行くか)」


 予備の剣を出し腰にさしたリックは、ゆっくりとアイリスとスラムンから離れていく。リックはエミリオの前へと歩いていく。


「リックー! リックー!」

「何だ? スラムンと一緒に離れてろ!」

「嫌よ。私も戦うの! リックと一緒に……」


 後ろから駆けてきたアイリスは、リックの前に立ってまっすぐと顔を見つめてくる。その顔は真剣でまっすぐな瞳をしてる。


「もう…… わかってるよ。お前は昔から言い出したら聞かないよな……」


 幼馴染のアイリスの性格をよく知ってるリックはあきらめたようにつぶやく。アイリスの顔はぱあっと明るくなる。


「じゃあ、俺から離れるなよ」

「うん。さぁ! スラムン行くよ」

「ズラ!」


 嬉しそうに頷いたアイリスはスラムンを呼んで頭に乗せる。リックとアイリスは横に並び、エミリオに一歩ずつゆっくりと近づいていく。スラムンを頭にのせたまま、アイリスは腰のチャクラムを外し構える。


「そろそろ複数の茎が俺達を…… ってあれ!?」


 警戒するリックに反して、うねうね動いてた茎の反応はなかった。さきほどまで、生き生きとしていた茎が、しおれたようになっていた。太い茎の体も斜めになって、花びらの上のエミリオが静かにしていた。

 

「男…… アイリスが…… なんで? なんで? しかも俺よりもあいつが……」


 花の上の上半身だけのエミリオが、すごい頭を抱えて悩んでいる。目が輝いていて涙を流しているようだ。エミリオはアイリスが男なのに相当ショックを受けたようだ。彼を見ていたリックの頭にふと疑問が浮かぶ。


「なぁなんでエミリオはお前のこと知らないんだよ!? 勇者村で一緒の同期だったんだろ!?」

「だって同期って言っても私はずっと訓練所で個別特訓だったからね。同期のみんなと一緒になるのってお昼ご飯の時くらいだよ」

「じゃあエミリオと話したことないのか!? あれ!? でもお前もエミリオも知り合いだったろ」

「だからご飯の時にみんなで一緒に話したりして知り合いになったのよ。でも、ご飯一緒に食べるだけの人に私の重大な秘密を簡単に話す訳ないでしょ!? それに私がS1級ってわかったらエミリオは、一緒になってもあんまり喋らないで睨まれてばっかりだったし」


 エミリオを刺激しないように、二人は耳元で静かに会話をする。リックはアイリスの言葉に納得してうなずく、女の子でいたいアイリスが自分でわざわざ男だと告げる訳ない。告げずに女の子の格好していれば、女の子として扱われるから…… リックは故郷の村で、アイリスが女性の恰好をして村の人から、邪険に扱われていたのを見ていた。まぁ、彼も大概邪険には扱っているが……


「勇者村って名簿とかで性別は確認できないのか?」

「ないよ。あそこは神託を受けた子供がいる家族が移り住む村で子供は男も女も関係なく才能でしか判断されないのよ。だから知っているのは名前と等級だけだよ」


 リックは以前みせてもらった勇者の記録を思い出す。確かに王国民に公開されてる、勇者情報も名前と等級くらいだった。リック達兵士は勇者関連の任務についたら、容姿や年齢などの詳しい情報が与えられる。


「あれ…… でも、俺達にも性別情報はもらえないな」

「王国は男でも女でもいいから、とりあえず魔王を倒せればいいみたいだよ」

「そうか。兵士の俺が言うのもなんだが少し冷たいような」

「ふふ。私はそのおかげで男の格好を強制されないからいいのよ。後…… 男か女かわからない方が勇者との出会った時の楽しみがあるじゃない」


 嬉しそうに話すアイリスを見つめるリック。


「(そんな楽しみはいらないのでは!? まぁ確かに男っぽい名前で綺麗な女の人が来たら俺も嬉しいな)」


 リックはアイリスを見つめながら、自分は友人だが彼のことはわかるが、普通の人はアイリスを見て驚くんだろうな感じた。実際に同じ舞台のイーノフやカルロスなどもアイリスと出会った当初は驚いていた。おそらく、エミリオもきっと見た目が女性のアイリスを、ずっと本物の女の子だと思っていたのだろう。考えこむリックにアイリスは、笑顔でブイサインを向ける。


「わかった? 勇者の性別は自己申告なのよ。だから私は女子!」

「ふーん。自己申告か…… 待て! アイリス! お前、同期の勇者に自分のどんな風に自己紹介した?」

「うん!? えっと…… 私はみんなにした自己紹介ってこんな感じだよ」


 少し考えてからアイリスがリックの前に立ち、勢いよく頭を下げてからにこりと笑って話だした。


「アイリス・ノーム。S1級の女子の勇者でーす! よろしくね。でも、男子達! かわいいからって私のこと好きになってもダメよ。私には田舎の村に将来を誓いあった幼馴染の男の子がいるの」


 明るく元気よくしゃべったアイリスが自慢げにリックを見つめてくる。アイリスによると、男子達のところから男の子たちを、一人一人を手でさして、少し悲し気にすると効果あらしい。なんの効果があるのかは知らないが…… リックはアイリスの自己紹介を聞いてため息をつく。


「はぁ……」

「どうしたのため息なんかついて? いいでしょ!? かわいいでしょ!? 惚れちゃうでしょ!?」


 アイリスは自ら女子と名乗ったことに気付いてなかった。まぁ、アイリスの中で自分の性別は女性なので何も問題はないのだが。


「自分から女子って言ってるじゃないか。それなら誤解されるの当たり前だろ」

「なっなによ!? 失礼ね。誤解じゃないわよ。心は女子よ! 心が女子なら女子って名乗って良いのよ」

「だからってなぁ…… まったく…… はあああ」

「どうしたの!? 何を怒ってるのよ! かわいかったらいいでしょ!? あっ! 後…… 将来を誓いあった幼馴染の男の子って誰だと思う?」

「えっ!? アイリスと将来を誓った幼馴染…… えぇっと…… 誰だろうなぁ? あっ! あいつか!」


 リックは目を見開いて、大きくうなずいて何かを思い出した顔をする。彼を見たアイリスが嬉しそうに目を輝かせる。


「宿屋と牛飼いさんやってる家のヤゴローだ。お前ら仲良かったもんな!」

「はぁ!? あんないじめっ子なわけないじゃん。わからないかな!?」


 恥ずかしそうにくねくねしてリックを見つめるアイリス。


「違うか。ヤゴローじゃないとなると、ヤゴローの弟のトウゴかな…… いやいや。さすがにトウゴはアイリスが村を出て行ったときは赤ん坊だったから違うか。あっそうか! ミラか…… いやミラは女の子だった。誰だろう?」


 ぶつぶつと同郷の友人名前をあげていくリック。彼は本気でわからずに悩んでいる、するとアイリスはどんどん不機嫌な顔をしてほほを膨らましていく。


「ちょっと!? なんでわからないのよ!? リック嫌い!」

「危ない!」


 アイリスの背中に茎が伸びてきた。リックはアイリスの手を引っぱって体に引き寄せ、抱きかかえたまま体の向きを素早く横にする。突かれた槍のようにアイリスの後ろを鋭く茎が通り過ぎていく。アイリスと体を入れ替えた、リックは伸びきった茎を剣で切りつけた。切られて茎は地面に落ち、ウネウネと少し動いて停止した。リック達がエミリオに視線をむけた。頭を抱えていた彼は顔を上げ、怒りに満ち溢れた表情で二人を睨みつけていた。


「さっきから…… お前らふざけやがって!」

「来るぞ。アイリス!」

「わかった」


 リックの声に笑顔でアイリスがうなずく。その様子を見たエミリオはさらに怒りが増した顔をする。


「アイリス! よくも騙してくれたな! お前…… お前だけはゆるさない!」

「なっなによ! 騙してないわよ! 私は女の子よ」

「うるさい! 股に…… あれが…… 股についてただろ!?」

「はぁ…… 細かい男ね。嫌われるよ! それと股についてるとか恥ずかしいこと大声で言わないでよ! リックが聞いてるでしょ!?」


 困った顔するリック、アイリスに自分が聞いてるって言われたが、リックは出会った時から、アイリスの股についていることは知っているからだ。


「リックが聞いてる!? リック! 貴様! そうだ! 前からずっと親しく! 貴様はアイリスの何なんだ!?」

「何でもない。同じ村に暮らしていたただの幼馴染だ」

「ちょっと!? リック? そこは俺のアイリスとか言ってよ!」

「えっ!? 嫌だよ……」


 詰め寄って来るアイリスに、リックは迷惑そうに首を横に振るのだった。


「やっと俺が…… アイリスを…… クソーーー!」


 茎がしなってリックとアイリスに向かって来る。リックは一歩前に出てアイリスを背中にかくまう。


「チっ! 頭を下げてろ!」

「うん」


 うなずいたアイリスはリックの背中に後ろでしゃがんだ。リックとアイリスに向かって茎が鋭く伸びていく。


「おらよ」


 リックは向かって来た茎に、剣を振り上げた。剣は縦に茎を切り裂いた。二つに割れた茎が、液体を振りまきながら、リックの左右の地面に落ちた。左手で頬についた液体を拭ったリックは、振り向いてしゃがんだアイリスに声をかける。


「アイリスは大丈夫か!?」

「うん。平気よ。リック! 前!」

「えっ!? クソ!」


 エミリオとリック達の間に地中から、十本以上の茎が生え、先端を天井に向けてゆらゆらと揺れていた。

 

「リック! 私が合図したら突っ込んでエミリオをお願い。茎は私達がなんとかするわ」

「わかった! じゃあ行くぞ!」


 アイリスは立ち上がる。直後に三本の茎がしなってリック達に向けて叩きつけられた。一本目の茎が叩きつけられた。アイリスは後方に下がって茎をかわすと、チャクラムを持った手を両手に広げて飛び上がる。左に茎をかわしたリックは二本目、三本目の攻撃をかわし、エミリオに向かっていく。


「スラムン! いっくよー!」

「ズラズラー!」


 飛び上がったアイリスの頭の上にいた、スラムンがさらに上に飛び上がって口を開く。


「いまだズラ」

「えーい! くらえ! アイリスとスラムンの合同ファイアーアタックだよ」


 アイリスは両腕を後ろに持っていき、ほぼ同時に前に向かって腕を振りぬいた。アイリスの両手からエミリオに向かって、チャクラムが投げられる。キューンという音を立てて、二つのチャクラムはエミリオに向かって飛んでいく。


「ズラズラ!」

「いっけー!」


 投げられたチャクラムに向かってスラムン口から炎を吐く。細長い炎が徐々に早くなってきアイリスのチャクラムを包み込む。


「なっ!」


 チャクラムは炎まといスピードをあげてエミリオにむかっていく。エミリオは防ごうと茎をチャクラムの前に出していく。十数本の茎が壁のようになってチャクラムの前に並ぶ。だが…… 金属が回転する音が続き、バサバサと茎がチャクラムに簡単に切り倒されていく。

 スラムンの炎をまとまったチャクラムに斬られた茎の先端は焦げ付いていた。

 

「クソ、クソ! この体じゃ素早く動けな…… そうだ! もっと茎を!」


 エミリオはさらに茎を地中からだしてくる。しかしいくら茎を出してもチャクラムは止められない。


「無駄ズラ! このチャクラムの勢いは止められてズラ」

「クックソ!」


 悔しそうにするエミリオの視線の先に、アイリスのチャクラムが茎を次々に切り倒して姿が見えている。


「いまだ」!


 エミリオがチャクラムに気を取られている。そのスキをついたリックは、体勢を低くして駆け出し、エミリオとの一気に距離を詰めた。飛び上がって花の真ん中にいるエミリオの前に来た。彼を目が合う俺は素早く剣を持った右手を引いた。


「くっくるなー!」

「終わりだよ! エミリオ!」


 腕を引き自分に剣を向けて迫って来るリック、エミリオはとっさに手を前にだし、口を大きく開き悔しそうな叫び声をあげるのだった。


「さよならだ」


 エミリオの首を狙ってリックは腕を前に突き出す。アイリスはリックの動きを見て慌てて彼を止める。


「リック! エミリオを殺しちゃダメ!」

「えっ!?」


 とっさに急所を外すように剣をずらすリック。彼の剣はエミリオの左肩に突き刺さった。


「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 洞窟の湿った空気を切り裂いて上空から何かが落ちて来た。リックが視線を上空に向けた。天から彼をめがけて赤い柄の槍が落ちて来ていた。


「この!」


 剣から手を離したリック、素早く上半身を上に向、飛んできた槍を捕まえようと手を伸ばす。


「ふぅ……」


 リックの鼻の前に自分が映りこんだ槍の刃が見えている。すんでのところで飛んできた来た槍をリックはつかんでとめたのだ。しかし、落ち着くの柄の間すぐにリックの顔が青ざめた。


「クソ!」


 槍の刃にわずかな赤い光が反射するのが見えたリック。槍を捨てて慌てて上を向くと、頭上かから火の玉がリックに向かって来ていた。リックはすぐに走ってエミリオからはなれる。彼が離れた直後に火の玉はエミリオがいる花の上に落ちて爆発する。


「すごーい! さすがですわ。リック! 私の攻撃を全てかわすんですのね…… 生意気な!」


 ぱちぱちと拍手をしながら、上空から一人の女性が下りて来た。下りて来たのは魔王軍のジェーンだ。スッーとジェーンは肩を押さえたままうつむいて動かないエミリオの傍へと下り立った。

 

「待て!」

「リック! あなたってほんと邪魔!」


 眉間にシワを寄せたジェーンが手をあげると、地中から茎が現れてリックに襲いかかってくる。


「チッ!」


 茎の攻撃に邪魔されリックは、ジェーンとエミリオから離される。リックは茎の攻撃をかわしながら、予備の剣を出すチャンスをうかがっていた。


「おい!? 何をする!?」


 リックとの距離ができると、ジェーンはエミリオの顎を掴み、上を向かせた。彼女の目は鋭くエミリオを睨んでいた。


「えっ?」


 ジェーンがエミリオをひっぱたき、バシーンという音が洞窟に響いた。


「勝手に行動して、ほんとバカ」

「うぅ……」

「あら!? 良かった、生きてるわね」


 エミリオが、わずかに反応をしたのを見て、少し表情が緩んだジェーン。顔をあげたエミリオにジェーンは呆れた様子で笑う。


「もう…… この体じゃ勝てるわけないでしょ!? これは実験体なんだから……」

「うるせぇ! こいつじゃだめだ! もっとだ! もっと力をよこせ!」

「ふふ。じゃあ次はもっと強いのを用意してあげますわ!」


 リックは茎を振り切り、なんとか予備の剣を出し、ジェーンに向かって行く。ジェーンはエミリオの肩に、ささったリックの剣を外して投げ捨てた。エミリオの顔を優しい瞳で見つめ、ジェーンは彼の頬に手をおいてなでる。


「おい! ジェーン!」

「リック! ほんと邪魔ね…… まっいいわ! でも、あなたの相手はまた今度ね!」


 振り返ったジェーンはリックに一瞥をくれてつぶやくと、マントをエミリオと自分の体の前にもってくるとすぐに消えてしまった。赤い花びらの真ん中にいたエミリオの場所は黒く穴の開いているようになり、彼を失った花は急に茶色くなって枯れて倒れた。残っていた地中から生えていた他の茎も茶色くなって枯れていく。


「逃げられたか……」

「リックー! 大丈夫!? ごめんなさい」


 アイリスがリックに駆け寄って来た。リックは振り向いて小さくうなずく。


「うん、大丈夫だよ! アイリスは!?」

「私も平気! ごめんなさい。また私のせいでエミリオを……」

「大丈夫だよ。お前、まだエミリオを助けるつもりなのか!?」

「うん…… ごめんね……」

「そっそうか。アイリス。俺は兵士だ。お前…… 勇者を守る責務がある! だからもし次エミリオがお前を襲ったら俺は容赦しない」

「うん。わかってる。ありがとうね」


 アイリスは少し泣いていたのか目、を手で拭うとリックに向かって元気にほほ笑んだ。

 ザバーンという大きな物が水に飛び込む音がした! リックは魔王軍の新手が来たのかと、アイリスを背中に隠し臨戦態勢を取って音がしたほうに目を向ける。音がしたのは彼が下りて来た泉の方角だ。大きな巨大な何かが泉に立っているのが見える……


「リック! 無事かい!?」

「メッメリッサ…… 無茶しすぎ!」

「ふぇぇぇ……」


 泉の真ん中でメリッサが、ソフィアとイーノフを肩に担いだ状態で立っていた。肩に乗っている二人はおびえた顔をしている。リックは泉に建つメリッサに声をかける。


「何してるんですか!?」

「えっ!? 見りゃわかるだろ! クラーケンの移送が終わったからあんたを助けに来たんだよ!」

「いやいや助けに来てくれたのは、ありがたいですけど何もを飛び込んでこなくても……」


 リックは自分のことを棚にあげ、メリッサにあきれるのだった。


「(俺も人の事は言えないけどさ、飛び下りて助けくるなんて無茶苦茶だよ…… しかも二人を担いで…… うん!?  俺ってメリッサさんと考え方似てるのか!? アイリスを助けるためにメリッサさんと同じことをしたもんな…… まぁ…… 先輩だしいろいろ教わってるからしょうがないか。あっ! もしかしてメリッサさんも股間がヒュンってなったのかな…… いやいや! 無いよな。メリッサさんが一応女性だったの忘れてた)」


 メリッサを見て感心して笑うリック。笑われたメリッサは怪訝な顔してすぐに彼に尋ねる。


「それでリック! 魔王軍はどこだい?」

「はい。それなら……」


 威勢よく叫びメリッサは周囲にそのするどい眼光を向けた。リックはメリッサさんに魔王軍の襲撃の報告をした。まだこの広間にまだブルーデビルキノコが少し残っている。


「そうかい。よし! じゃあ後は任せな! もうあんたは休んでな。ソフィアはけが人をお願い」

「はい!」

「待ってメリッサ。突っ込んじゃ危ないよ」


 メリッサとイーノフが残っていたブルーデビルキノコを片付けていた。キラ君もメリッサ達と一緒になってブルーデビルキノコを倒していた。

 その後なぜかキラ君とイーノフは気が合うのか肩を組んで歩いていた。イーノフはキラ君にずっと愚痴を聞いてもらい、黙っているキラ君がちょうどいいということらしい。

 リック達は奮闘したが、一部の勇者と神官にけが人が出てしまった。魔王軍を退けたリック達はソフィアが、勇者と神官を回復させるのをまってアイリスが船乗りの心を取得するのを見守るのだった。クラーケンの移送と船乗りの洞窟の儀式も終わり、ようやくアイリスに船を渡す準備が整うのだった。

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