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一兵卒だけど無双する ~ 最強の王国兵士、勇者も姫騎士も冒険者もみんな俺が守る! ~  作者: ネコ軍団
冒険者編 エピソード3

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第78話 声かけは大事だよ

 メモを見ながら忙しそうに、リックと相棒のソフィアは王都の通りを歩いていた。


「えーっと…… 隊長から頼まれた書類はちゃんと提出してきたし…… イーノフさんが予約してた本も受け取った。メリッサさんの昼飯とソフィアのおやつも買った。よし! これで全部だ。あれ!? でも…… なんか忘れているような…… うーん?!」


 二人は第四防衛隊のみんなから、お使いを頼まれ王都を歩き回っていた。言いつけられた用事は、全て済ませたはずだが、リックは最後の用事が思い出させずにもやもやしている。結局、思い出せせずにリックは並んで歩くソフィアに尋ねるのだった。


「ソフィア! この後はどこかにまだ行くんだっけ?」

「はい。親方さんのところに行くですよ。リックのことじゃないですか」

「あぁ! そうだった。最後は俺の鎧のことだ。鍛冶屋でエドガーから受け取るんだったよね」


 少し前にスノーウォール砦奪還作戦で、使用したヘビーアーマーのメンテナンスを鍛冶屋に依頼した。エドガーからメンテナンスが完成したって連絡があり彼らは今日ヘビーアーマーを受け取りに行く予定だったのだ。詰め所の裏の通りを、二人でエドガー鍛冶店に向かう。第四防衛隊の詰め所の裏通り、木造りの小さな優しい雰囲気の薬屋から、三件隣が鍛冶屋だ。リックとソフィアは石造りの建物で、窓から武器や防具が並ぶ光景が見える鍛冶屋へ入った。

 店内のカウンターには、白い立派な髭を蓄えたおじいさんが、眠そうに座っていた。


「すいませーん。親方さんをお願いします」


 笑顔でソフィアが声をかけると、おじいさんは頷きゆっくりと立ち上がって、静かに店の奥にエドガーを呼びに行く。この人物はエドガーの……


「いらっしゃーい。リックお兄ちゃん。ソフィアお姉ちゃん」


 おじいさんが奥へ行って、すぐにエドガーが出て来た。カウンターに来た、エドガーにリックが声をかける。


「ヘビーアーマーを受け取りに来たよ」

「はーい。ちょっと待ってね…… えっとリックおにーちゃんのは……


 エドガーはしゃがんでカウンターの下にある棚からリックのヘビーアーマーを探す。


「はいこれ。念のために問題ないか着てみてくれる?」

「わかった。ありがとう」


 カウンターの下からエドガーが顔をだし、ヘビーアーマーが入った魔法道具箱をリックの前に置いた。魔法道具箱は片手で持てる小さい宝箱の形をした道具で、大きい重装鎧や武器などを小さく収納して携帯できるとても便利なのである。


「親方さん。あとこれも見てもらっていいですか!?」

「いいよ。ソフィアおねーちゃん」


 続いてソフィアが、カウンターの上に、弓矢や短剣を出してエドガーに点検を依頼した。エドガーは真剣な表情になって、ソフィアの出した短剣や弓矢を見つめている。リックはヘビーアーマーを試着するためにカウンターから離れエドガーに声をかける。


「エドガー。奥の試着室を借りるぞ!」

「あぁ…… うん……」


 リックはエドガーに声をかけてから試着室に向かった。鍛冶屋のカウンター横に扉があり、その先に試着室があるのだ。エドガーの返事が少しおざなりだったのだが、リックは気にせずに試着室に向かう。なぜなら、エドガーは武器や防具を見るのが好きで、目の前に武器を出されたら興味は武器にしかいかないからだ。試着室の中は大きなスペースで、鏡が三つ置いてあり、その鏡を囲うように、木で出来た板のパーティションが置いてあった。


「あっ!? リックおにーちゃん…… 待って! 試着室に使ってる人がいるから入る時は声を……」

「えっ!? もう遅いよ……」


 一つの仕切りの中に入ったリックの目の前に、白い飾り気のない上下の下着をつけた、透き通るようなきれいな肌の少女が鏡をみながら着替えをしていた。リックが静かに入ったせいか少女は彼に気づいてない。


「(まずいな。でも…… よかった。俺に気づいてないみたいだから…… 今のうちにこっそりと逃げれば…… おっ!? でも、この子は後姿だけど綺麗だな)」


 すぐに逃げればよかったのだが、リックは後ろ向きで顔のわからない少女を見とれて固まった。

 少女の脇から覗く胸のふくらみは、なかなかの大きさがらり、チラッと覗くわき腹にかけては綺麗でハリがある。つややかな黒い髪が腰のあたりまで、髪に隠れて肩から背中の全体が見えないのが惜しいが、尻の白いパンツからちょっとはみ出ている部分、太ももとお尻の肉厚な段差が魅力的で特にリックはそこを重点的に見つめていた。


「あっ!」


 リックが少女の尻に視線を突き刺すことに、夢中になっていたら気づかれて少女は彼の方を向いた。綺麗な顔した少女が目に涙をためていく。リックは心の中でごめんとつぶやく。


「きゃーーーーーーー! いやーーーーー!」

「えっ!? ちょっと待って! あれ!?」


 叫ばれて慌てるリック、だが、よく見ると目の前の少女は知り合いだった。向こうも気づいたみたいで、叫ぶのを止めてリックをみた。


「あゎゎ! あれ!? リック様ですか!? お久しぶりです。驚かさないでください」

「やっぱり、シーリカ様…… どうしてここに?」

「あゎゎゎ! あの…… リック様…… お話は後で…… 私この格好じゃ恥ずかしいです……」

「あっ! そうだよね。ごめん。ごめん」


 うつむいて恥ずかしそうにシーリカ、リックは謝罪してすぐに仕切りの外にでた。


「ふぅ! びっくりしたな…… エドガーも誰か使ってるなら教えてくれよ……」


 リックはまさか鍛冶屋の試着室で、聖女シーリカに遭遇するなど微塵も思ってなかった。とりあえずリックは隣のしきりに移動する。移動中に脳裏に焼き付いたシーリカの体を思い出しにやけるリック。


「(着替えてるシーリカ様…… 綺麗だったな。ぐふふ! 思い出すだけで頬が緩んじゃうよね。うん!? 背後から殺気が…… 振り向きたくない…… いや…… きっと悲鳴を聞いて心配して見に来てくれた、ソフィアが笑顔で俺を迎えてくれてなーんだみたいな…… きっとそうだな)」


 不安を打ち消すような…… いや、リックにとって都合の良い展開を考え彼はゆっくりと振り返った。


「うん。わかってたよ。そんなの無理だって……」


 振り向くとそこにはうつむいて小刻みに震えたソフィアが…… さらに後ろにエドガーが壁から顔をだし、心配そうにこちらをのぞき込んでいる。リックは心配してい見つめるエドガーに助けろとと意味のない念を送る。


「ソフィア…… まさか? 見てた?」

「リッリッ…… リックぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「いや…… 今のはちょっと間違えただけで…… 事故だよ!」


 震えながらゆっくりとソフィア、顔をあげた彼女は涙目で唇が震えて怒っているの即座に分かる。眼鏡が光り反射で綺麗な赤い瞳が見えなくなっいた。リックは早くいつもの優しいソフィアに戻れと必死に神に祈る。


「リック! 嫌いです! そんなにみたいならいつでも私が……」

「えっ!? ちょっと待ってよ! だから間違えただけで……」

「間違えただけなのに! なんで? いつまでもニヤニヤしてエッチな顔してるんですか!?」

「してないって!」


 ソフィアが口を動かして手をリックに向けた。当然、この場合はいつもの電撃魔法がリックに浴びせられる。


「ギャーーーー! しびれる!!」


 リックはソフィアから電撃魔法をくらい青白く光る。エドガーは青白く照らされるリックを見て。恐怖に顔を引きつらせるのだった。


「ソフィア! あれは事故だって……」

「ダメです。リックは逮捕です! いやらしい目つき罪です」

「いや! そんな罪ないでしょ! 故意の覗きなら逮捕だけど今のは事故なんだから……」


 鍛冶屋の店の真ん中でリックはソフィアに縄で縛られている。鍛冶屋で兵士が兵士に縛られている光景を、外の通りの人は窓から物珍しいそうに覗いていた。


「外のみんな見てるから恥ずかしいよ」

「ダメです! 反省するまでそうしてなさい」

「十分反省したよ!」


 リックの顔を覗きこんで来て、ソフィアはジッと睨んで少し息をはいた。


「ふぅ! ダメです! まだ目がいやらしいです!」

「そんな!? 本当に反省したって!」


 必死に叫ぶリックはエドガーを探してなんとかしてもらおうとする。だが、エドガーはカウンターですました顔をしていた。助けてくれという視線をリックがエドガーに送ると、彼は目をそらして気まずそうにするのだった。


「リック様!」


 試着室からシーリカが出て来た。彼女は下着姿から白い光沢のある神官服へと戻っていた。リックの姿を見たシーリカは、慌ててカウンターに試着した物を戻す。彼女がカウンターに置いたのは胸当てと手手の甲に部分に装甲がついた黒い手袋だった。試着した防具を置いたシーリカはすぐにソフィアに詰め寄る。


「あゎゎ! ソフィアさんは何をしてるんのですか!? 早くリック様の縄をほどいてください」


 ソフィアは近づいて来たシーリカに視線を向けた。リックは今のソフィアに近づいたら、危ないとシーリカを心配するのだった。


「シーリカ様には関係ないです」

「あゎゎ?! 関係ないですって!? リック様は私の未来の守護者になる方ですよ。だからリック様はそれまで防衛隊に預けているだけなんですからね。大事にしていただかないと困ります」

「未来の守護者? 勝手に決めないでください。リックは守護者にならないって前に言いました。それにリックは私の相棒なんです」

「相棒を縄で縛るなんてひどいですわね。リック様かわいそう! やはり早く私の守護者になりましょう?!」

「ダメです! リックは私のです! だから私が良いっていうまでほどきません」


 ソフィアはリックを未来の守護者と言われ、泣きそうになりながら喧嘩を始めた。睨みあうソフィアとシーリカにリックは困った顔をする。なお、彼はソフィアに自分のものだと言われて少しうれしかったりもする。なんとかこの場をおさめようとリックは考えてハッという顔をした。


「ソフィア。ごめんね。俺の胸のポケットにソフィアへのプレゼントが……」

「プレゼントですか!?」


 ソフィアはリックの方を見て不思議そうな顔をしたが、ゆっくりと彼に近づき指を胸のポケットに入れた。ポケットに入ったものは簡単にとれるはずなのにソフィアはわざと指を立ててくすぐるように動かす。


「あはは! ソフィアやめてくすぐったい!」

「フッフッフ。ちょっとくすぐってお仕置きです」

「あゎゎ! 早くしてください! なに二人で遊んでるんですか!」


 シーリカがいちゃつく二人にイラついて叫ぶ。


「べーです!」


 ソフィアは勝ち誇った顔で舌を出してシーリカに向けた。その後すぐにソフィアはリックの胸から小さな紙を取り出した。


「これは……」

「ソフィアの為にさっきもらった。お菓子の割引券だよ」

「リック…… うれしいです」


 にっこりとリックに微笑んで大事そうに四角い菓子の割引券をしまうソフィアだった。なお、この割引券は、先ほどのお使いの際に偶然もらったもので、ソフィアのプレゼントでもなんでもない。機嫌をなおしたソフィアはリックの縄をほどこうと……


「なにをしているのですか?! これは!? まっ!? あなたは…… この間の破廉恥男!」


 扉が開いて誰かが入って来た。リック達が振り返ると、入り口に仁王立ちのシスターが立っていた。


「やば…… ミランダさんだ」


 ミランダさんは目つきの厳しい眼鏡のシスターである。シーリカの身の回りの世話をしている彼女は、以前に聖女の風呂に飛び込んだリックの事を破廉恥男といって嫌っている。


「これはリックが……」

「あゎゎ! ミランダ違いますよ。私が変に騒いだからでリック様は悪くないです」


 ソフィアはリックの縄を解いてミランダに事情を説明する。シーリカもミランダに説明を始める。リックも参加して誤解を解きたいのだが、ずっとミランダが彼を睨んでて話にいきづらく行けなかった……


「はーん!? そうですか…… また破廉恥な……」


 目を大きくしてリックを見たミランダ。怒られると思ったけどリックが目をつむるが、ミランダはずっと彼を見て何かを考えていた。


「フフッ…… でも、これは利用できますわ」


 ミランダがいやらしく笑っている。三人はミランダ笑っているのを見つめていた。リックはソフィアに顔を向け、ああいうのが本当のいやらし目つき罪だよと、心の中でつぶやくのだった。リック達の視線に気づいたのかミランダさんは急に真面目な顔をした。


「コホン。ソフィアさん、リックさん! 後で防衛隊に伺ってお話をさせてもらいますね。さぁ帰りましょう。シーリカ様」

「すいませんでした。」

「いいですね!? リックさん。お話には隊長さんにもご同席いただくようお願いいたしますね」


 ミランダはリック達と話しを終わらせて、シーリカを連れて鍛冶屋を出て行った。


「はぁ…… 隊長。ごめんなさい」


 リックはミランダたちを見送り、カルロスに謝罪をするのだった。

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