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一兵卒だけど無双する ~ 最強の王国兵士、勇者も姫騎士も冒険者もみんな俺が守る! ~  作者: ネコ軍団
騎士団編 エピソード3

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第72話 いざ雪原へ

 リック達がホワイトガーデンと、叫ぼうとするとイーノフが止めた。


「みんな! ちょっと待って! やっぱり今度は一人ずつ行こう」

「なんで!? 急がないといけないんだよ」

「また転送を妨害されるかも知れないだろ? それに…… もしかして他にも罠があるかもしれない…… お願いだ」

「イーノフ…… わかったよ」


 メリッサはイーノフの提案を受け入れ、念のため一人ずつ少し時間を置いて転送することになった。転送する順番はメリッサ、イーノフ、ソフィア、リックの順番で行われる。

 順番に一人ずつ転送されていき、最後のリックは三人が行くのを見送って、時間を少しあけ、窓から見守るカルロスに右手を上げ、あいさつをしてテレポートボーを握りしめた。


「ホワイトガーデン」


 行き先を告げたリックは白い光に包まれた。


「おわ! まぶしい。そっか…… スノーウォール砦の時もそうだったけど、雪が光って明るいんだったな……」


 白い光を抜けるとリックは雪が積もった森に立っていた。リックが立っていたのは、森の中を通る街道の横だ。街道を先に目をやるとすぐに森を抜け街道が続いてるのがわかった。その先に高い石造りの壁が、建っているのが見える。おそらくあそこがホワイトガーデンだ。


「静かだな……」


 雪に覆われて木や地面が白くて、生き物がリック以外にいないのではないかと思うほど静かで、何者の気配も感じなかった。


「あっ! リック来ました。雪ですよ。冷たいですよ」


 ソフィアの声がして振り返ったリック。リックの斜め後ろに立つ、木の根元から、彼女の声はするが姿が見えない。


「なんだ…… しゃがんでたのか。見えないわけだ」


 木の後ろからソフィアがしゃがんだ姿勢で横から顔を出した。ホッとした表情をしたリックは周囲を見渡す。だが、近くにソフィアだけしか見えず首をかしげるリックだった。


「ソフィア? メリッサさん達は?」

「なんか二人で話があるって二人で行っちゃいましたよ。すぐに戻るそうです」


 笑顔で答えるソフィアだった。リックはソフィアと一緒にメリッサ達を待とうと彼女に近づく。


「ほら。リック見てください。雪ですよ。雪」

「うん。知ってるよ。田舎でよくみた」

「そうなんですか…… 私は珍しいです」


 木の近くでしゃがみ両手で、雪をすくってソフィアがリックに見せてくれる。王都グラディアは滅多に雪の降らない気候で、ソフィアは王都育ちなので雪は珍しいのだ。


「(珍しいか…… でも、ソフィアだってこの間スノーウォール砦に手紙持ってきた時に見たでしょうに…… もう、しょうがないな。フフ…… でも、ソフィアが嬉しそうだからいいか)」


 周りは木に囲まれた森だが、わずかな木々の間から漏れる光が雪に帰って明るい。光に照らされたソフィアの顔はいつもより綺麗……


「あれ!? もう……」


 リックは気づいたソフィアの鼻に雪がついていることを、おそらく彼が来る前に、ソフィアは一人で雪で遊んだようだ。


「ソフィア! 鼻に雪がついてるよ」

「えっ!? なんでもありません!」

「遊んでると怒られるよ。二人だけじゃないんだから……」


 ソフィアは慌てて鼻についた雪を拭うのだった。


「ちっ違いますよ。これはおいしそうだから口をつけたとかじゃないです」

「えっ!?」

「ほんとに違うんです」


 両手を前にだし大きく振って、ソフィアは違うとアピールをしてる。この慌てようは確実に雪を食べている。


「まったく子供なんだから。お腹壊しても知らないよ……」

「違います!」

「ふーん」


 ジッとソフィアの顔を見るリック、彼女は恥ずかしそうに目をそらす。リックはニヤリと笑ってなにやら思いついた顔をする。


「雪はおいしかった?」

「うぅ…… 味しなかったです…… 甘そうだったのに…… ふぇん」

「あー! やっぱり食べたんだ!? ソフィアの食いしん坊」

「ふぇぇぇ!? ずるいです!」


 少し目を大きく開いて、ソフィアは恥ずかしそうにうつむく。


「ははは! ひっかかった! ひっかかった!」


 嬉しそうに手を叩いて笑うリックの横で、ソフィアは彼を睨みそっと地面に手を伸ばした。


「このです。リックも食べるです」

「ちょっとソフィア! やめて! 冷たいよ」

「やった! リックも鼻に雪つきました。同じです」

「やったな! この!」


 ソフィアが雪を手ですくってリックの顔にぶつけた、リックも負けじと近くの地面に積もった雪をソフィアにかけた。


「キャッ! むぅぅぅぅ」


 リックのかけた雪がソフィアの眼鏡のレンズにべっとりとはりついあ。眼鏡の上の雪を指で取って、ソフィアはリックを睨むと、また雪を掴ん投げるのだった。少しの間、リックとソフィアは雪の投げ合いを続ける。二人は雪まみれになり、笑顔で雪をかけあうのだった。


「楽しいけど! 俺達は何してんだろう…… うん!?」


 後ろから大きな影がリックとソフィアを覆う。リックは熊が出たのかと慌てて振り返る。


「二人とも随分と楽しそうだね……」

「あの…… これは…… その……」


 リック達の後ろにはメリッサが立っていて、にっこりと微笑ながら二人を上から覗き込むように前かかがみなっている。甘そうなわざとらしいい、優しい声で二人に話しかけるメリッサ。リックとソフィアは恐怖で顔を引きつらせるのだった。そして……


「こらーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!! 遊んでんじゃないよ!」

「ぎゃああ」

「きゃああ」


 眉間にシワをよせ怒り顔になったメリッサはリック達を上から怒鳴りつけるのだった。メリッサの少し後ろで、でイーノフもあきれた顔し目を細くして二人を見つめていた。


「ほんとメリッサの言う通りだよ。まったく…… 二人とも今は任務でデートしに来てるんじゃないんだからね」

「すいません。ほらソフィアも」

「うぅ…… すいませんでした」


 リックとソフィアがメリッサとイーノフに謝るのだった。イーノフは小さくため息をつく。


「はぁ。メリッサ。二人に注意しといてね! 僕は先に町の様子を見てくるから」

「わかったよ! さぁ二人ともこっちにおいで!」

「ふぇぇぇぇん!」

「あっ!? ちょっと!」


 メリッサがリックとソフィアの首根っこを掴み持ち上げて運ぶ。リックは足を引きずられ、ソフィアはメリッサに持たれると、足がつかずパタパタと動かしていた。メリッサはリック達を街道の前に運び、自分の並ばせて立たせると注意を始める。


「あんた達ね。一刻を争う事態だってさっき言ったよね!?」

「ごめんなさい」

「はい。すいません……」

「王家の墓の任務とかはしっかりできてたみたいのに! あたしとイーノフがいると本当に…… 甘やかすんじゃなかった」


 リックとソフィアは若く経験も浅い。二人だけの任務であれば緊張感も出るが、先輩であるイーノフとメリッサがいるとつい安心し頼ってしまうことがある。


「えっ!? ちょっと!? ソフィア……」


 怒ってるメリッサが怖いのか、ソフィアが手を出して来た。手をつないでほしいようだ。リックはソフィアに近づいて、こっそりと後ろから手を出してきたソフィアと手をつなぐ。


「はっ!?」


 メリッサが二人の行動に気付いて、怖い顔で睨む。メリッサに睨まれたリックは思わず手を離すが、今度はソフィアが悲しそうな表情をする。前には怖い顔のメリッサ、横に悲しそうなソフィアが居てリックが困った顔をする。メリッサはそんな彼を見てあきれ、小さく首を横に振るのだった。


「とりあえず…… リックは後で腕立て二百回ね」

「えっ!? なんでですか!?」

「うるさい! だいたい、あんたがソフィアに甘いのがいけないんだよ」

「べっ…… 別にソフィアに甘くなんかないと思うですけど…… はぁぁ」


 ため息をつくリック。そこへ、町の様子を見に行っていたイーノフが様子で戻ってきた。


「大変だ! みんな! 急いで来てくれ」

「どうしたんだい?」

「騎士団がオークに襲われてる。このままじゃ町も危ない」

「なに?! ソフィア、リック、あたしに続きな」


 リックとメリッサとソフィアの三人は、イーノフに連れられて街道をホワイトガーデンへ向かうのだった。


「ほら! あれだ! みんな隠れて」


 街道の先を指さしたイーノフ、リック達は盛り上がった、雪が山のようになっている場所に伏せて様子をうかがう。顔を少しだけあげ、様子をうかがうリック。彼の目に町の入り口の近くで荷車をひいた、白い鎧をきた騎士団にオークの集団が襲いかかっている光景が見えた。

 よく目をこらしてリックは、詳しく状況を確認する。三台の荷馬車が街道に並び、その周りをオークの集団に囲んでいる。馬車を守る十数人の騎士がオーク達と戦っている。襲われているのは、男性ばかりで、エルザ達ではなさそうだ。対してオークは馬車を襲っているのは三十人くらいだろう。激しく動いて正確な数はわからない。


「ったく…… 情けないねぇ。いつも威張り腐ってるくせに! あれが我が国の騎士様とは」


 戦況は悪く騎士達は逃げ腰で、オークに簡単に倒されている。その状況を見たメリッサが嘆くのだった。


「メリッサ! 早くしないとこのままじゃ町になだれ込まれるよ」

「わかったよ。リック! あたしについておいで! イーノフとソフィアは援護を頼んだ」

「えっ!? あっ! ちょっと待ってください」


 付いて来いと叫び、胸に手を当て槍をだしたメリッサが駆けだした。不意を付かれて置いてかれたリックは、慌ててメリッサの後を追いかけて必死についていくのだった。振り返りリックの方を見たメリッサが、三台並んでいる荷馬車の、一番手前の場所を指さした。


「リック! あんたはあの手前の馬車を救出しな」

「メリッサさんは!?」

「あたしはねぇ! こうだよ!」


 メリッサが槍を回して逆手に持つと、肩の後ろまで腕を曲げてもっていって、いきおいよく投げた。綺麗な放物線を描いて、寒空に舞い上がった赤い槍は一番奥の荷馬車に向かっていく。


「「あぎゃ!!」」


 飛んで行った槍は、取り囲んでいたオーク二体を貫通した。突然飛んできた赤い槍にオークの動きが一瞬止まる。


「さぁ! 始めるよ」


 叫びながら走るメリッサが、右手を軽く上下に動かすと、彼女の投げた槍は手元に戻っくる。戻った槍を振り回しながらメリッサは奥の馬車に一直線に駆けていった。


「すごいな……」


 メリッサに近づくオークは、人形のように簡単に、彼女の槍になぎ倒されていった。


「俺も……」


 リックは剣を抜き一番手前の馬車へと駆けていく。


「うわぁ! 助けてくれ!」

「おいおい……」


 武器を捨てて情けない顔をした、騎士達がリックの横を逃げていった。騎士達を追いかけ、八体のオークが、リックの前へと迫って来る。オークは、皮膚は緑で人間より大きく、頭髪のない丸い頭の横に、とがった耳が生え、眉間と瞼の上の骨が出張って目は細い。下あごが前に出てそこから牙が生え、豚のように上がった鼻の穴からヒューヒューと息が漏れている。


「がうああああああああ!!!!!」


 オークの一人がリックに向かって剣で斬りつける。


「チッ!」


 構える間がなかったが、リックは右手に持った剣を、額の少し上で水平にしてオークの攻撃を受け止めた。ガキと音がして剣と剣がぶつかり、互いに譲らず力比べになる。顔を近づけたオークは、目を開いてなんか驚いた顔をしているみたいだ。


「なんだい? 俺の細い剣がお前の剣を受け止めたのが不思議かい?」


 リックはニヤリと笑う。必死にオークは両手で剣を持って押し込むがリックはビクともしない。


「オークのくせに力は向こうで槍を振ってる人の半分もないじゃないか。いや…… 多分あの人の半分以下だろ!?」

「がうあああああああああああああ!!!!」

「どうした。今度は脅しか?」


 牙向いて吠えて威嚇してリックに脅しかけるオーク。リックにはそれも通じない。


「一つだけ良いこと教えてやる…… お前なんか。本気で俺に向かってくるメリッサさんの足元にも及ばないぞ! さっさとそのくさい顔をどけな」


 左手を刀身にそえ力を込める、いリックは剣でオークを押し返した。バランスをくじたオークが両手をあげて、二、三歩後退した。リックは素早く右腕を引いて剣先をオークに向けた。


「さよならだ」

「ブヒャ!!!!」


 リックが叫んで腕を伸ばした。彼の剣はオークの腹をいとも簡単に貫通した。赤黒い汚い液体を口から、吐いてオークは息絶えた。左手でオークの肩に手をかけリックは剣を引き抜く。オークを左手で押し仰向けに倒して前を向く。


「おっと!」


 別のオークが背中に回り込んで、戦斧でリックに攻撃をしてきた。横目で見えるオークの顔があざ笑っているように見えた。


「残念だが…… 有利な状況になった時の攻撃は逆に隙きを生むんだよ」


 冷静な顔でリックは右ひじを曲げ後ろに引く、オークの戦斧が振り下ろされる、タイミングを計っていた。彼の持っている剣はオークの持つ戦斧よりも軽く、少し始動が遅くなってもすぐに追い抜ける速度を出せる。


「うぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!」


 リックは戦斧が振り下ろされるよりも、早く体を反転させてオークが、戦斧を振り下ろすより先に胸に剣を突き刺した。


「きたねえ…… かかっちまったじゃねえか」


 オークの胸から剣を抜くと赤黒いの血が、噴き出してリックの手や体を赤く染めていく。


「これで二体目…… さぁジャンジャン行こうぜ」


 左手の親指で頬にかかった血を拭うリック。彼の周りを残りのオークが取り囲んだ。リックは視線を動かしていく、残ったオークは六体で、武器は剣が三人に、手斧に槍と戦斧が一人ずつ。


「「「「「「うがああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」


 周りを囲んでいるオークが一斉にリックに襲い掛かった。戦斧を持つオークの初動が速い。おそらく一人が最初に斬りかかり、隙きをつくって仲間がリックを討つ作戦のようだ。だが、その作戦はリックには通用しない。


「まずはこいつだ!」


 両手で戦斧を持ち上げた姿勢で、真っ先にリックに、斬りかかってきたオークの腕を狙ってリックは剣を振り上げた。リックの剣は鋭く伸びて横からオークの両腕を切り裂いていく。リックが切りつけた腕から、シューと言う何かが噴き出る音が、かすかにして静かに腕がずり落ちていく。

 振りかぶっていた戦斧の重さで、オークの背後に戦斧を持った状態で腕が落ちて音を立てる。苦痛に顔ゆがめる両腕を切られたオーク。リックは表情を一つ変えずにオークの喉元に左手を伸ばす。


「かっ! はっ!」


 リックは手を開き、親指と他の四本の指で、挟むようにして喉をつかむ。そのままリックは彼の左側にいる剣を持ったオークに向かっていく。両腕を斬られたオークがリックの盾になった状態になる。仲間を盾にされたオークは、困惑の表情を浮かべ一瞬だけ動きが鈍る。


「今だ!」

「うがああ!!」


 剣を持ったオークに左腕を伸ばしたまま突っ込み、腕を切ったオークを押し付けるリックだった。彼は投げ捨てるようにオークから手を離した。二体ともバランスを崩し動きが止まった。リックは重なった二体のオークに剣を突き刺す。


「「うがあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」


 剣は二体のオークの体を貫通し、二体のオークの断末魔が雪原に響く。


「残りは…… ふっ。さすがソフィアだ」


 リックが振り返ると、頭や胸に矢が刺さった、オークが四体が倒れていた。リックが二人を相手にしてる間にソフィアが、襲い掛かってきた他の四体のオークを矢で射抜いていた。

 雪の山の上に立って、ソフィアが嬉しそうに手を激しく振ってる。リックも彼女に手を振ってこたえるのだった。


「おっ片付いたかい!? じゃあ残りを……」


 メリッサが肩に槍を担いでリックに声をかける。馬車を襲っていた残りのオーク共は、リックとメリッサの二人を遠巻きにして見ていた。


「二人とも! どいてーーー!」

「「えっ!?」」


 飛び上がったイーノフが風にあおれたマントをなびかせ杖を空にかざしている。リックとメリッサはとっさに雪原に伏せた。


「炎の聖霊よ! 我に力を! 炎暴風雨ファイアエクスプローション!」


 イーノフが持った杖の先端から、現れた巨大な炎の渦がうねりながら一か所に集まった。やがて空で炎が大爆発すると、空から炎が降り注ぎオークを焼き付くしていく。全ての炎が降り注ぎきった後には、目の前にはオークの焦げた死体がいくつも転がっていた。


「さっ! これで終わりだ。メリッサ、リックは生き残った騎士団の人をお願い。僕は街の防衛隊を呼んでくるよ」


 まじめな表情のイーノフさんは、振り返るとさっさっと言ってしまった。


「なんだいあれは!? まったく、少しくらいは喜べってんだよ! しかも私が残り全部倒せたのに……」


 不満そうに腕を組むメリッサだった。敵を倒しても真面目なイーノフは喜びもせずに任務を続けるのだった。

 しばらくするとイーノフがホワイトガーデンの防衛隊を引き連れて戻ってきた。リック達とホワイトガーデンの防衛隊と協力して、荷馬車の荷物を片付けたり、生き残った騎士団の騎士を助けホワイトガーデンの街へと向かった。


「なんで…… 俺達が……」

「クソ!」


 リックに不満を漏らすホワイトガーデンの防衛隊員の声が聞こえる。不満を漏らさない隊員も片付けや騎士団の救助などを複雑な表情で行っている。

 片付けが終わったリック達は、ホワイトガーデンの門から町に入る。城壁に囲まれたその町は、レンガ造りの家が並ぶ落ち着いた、雰囲気の町だ。空気は寒いが、茶色いレンガの壁からは、どことなく暖かさが感じられる。


「ちょっと待って! 何を?!」


 町に入ってすぐに荷馬車に乗せていた生き残った騎士達を、ホワイトガーデンの防衛隊の人達が引きずりだして槍や剣を向けた。慌ててリック達は騎士とホワイトガーデンの防衛隊の間に入る。


「やめな! なにしてんだい!? こいつらは騎士団だよ」

「いや…… とめないでください。さっきは街道でオークの残党が心配でしたがここでなら……」

「何を言ってんだい?! やめな」


 メリッサはホワイトガーデンの防衛隊の前に立って騎士達をかばう。リック達は彼女のすぐ後ろに立っており、リック達のすぐ後ろに騎士達はいる。


「こいつら…… こいつらのせいでスノーウォール砦は……」

「どうしたんですか? 彼らは荷馬車が襲われただけでは!?」

「違う! こいつらスノーウォール砦の武器や食料をオークに横流して……」

「えっ!? 何だって? 横流しって? どういうこと!? おい! 待て!」


 騎士達を見るリック達。しまったという顔をした騎士達はけが人を放置して逃げ出した。


「イーノフ!」

「はいよ」


 イーノフを呼ぶメリッサ。彼はうなずいて手を騎士達に向けた。同時に彼らの足元に雷が落ちた。驚き騎士達の足が止まった。メリッサが素早く騎士達の背後に回り込み、騎士の一人の手首をつかんみ、背中に腕がくの字に曲がって押し付けると、彼女は力任せに騎士の腕をねじりあげていく。騎士の唇がゆがみ苦痛の表情に変わっていく。


「ぐぁぁ…… やっやめろ! なっ何をするんだ?」

「さぁて。私達にわかるように説明してもらおうか!? さもないと……」

「ぎゃぁぁぁぁぁーーー!」

「ちょっと! これくらいで男がだらしない声あげるんじゃないよ! さぁ…… 聞かせてもらおうか?」


 騎士の一人の腕をひねりあげて、真剣な表情のメリッサが顔を近づける。リックは心の中で早く吐いた方がいいぞと声をかける。なぜなら人の腕を折るくらいのことなどメリッサにとっては簡単なことなのだから……

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