第64話 見張りはのんびりと
アイリスはソフィアから銅の鍵を貸し無事に王家の墓へと入っていった。アイリス達を見送った後、リックとソフィアは静かに門番として過ごしていた。
「(ふわああ。本当にのどかだな)」
あくびを噛み殺しリックが振り返ると、優しい日差しに照らされた、石造りの荘厳な墓標が、彼らを見下ろしている。周囲からする木々のざわめきと、小鳥の鳴き声が心地よく響きのんびりとした雰囲気に包まれる。この島に魔物は出ないので、たまに小舟に乗って街の人が家族で散歩に来たり、老人が散歩がてら王家のお墓にお参りに来たりしていた。
まだ少し暑さの残る時期だが、森と湖囲まれたここは涼しく、遠くの方でかすかに響く湖のさざ波を聞きながら、リックはソフィアと二人でゆっくりと門番をしていた。
「リック! お昼ですよ」
「やったね」
二人門の近くの草原の近くに敷物をしいて弁当を広げた。もちろん門番をやりながらの昼食になるので、王家の墓の前が見える場所である。二人は手早く昼食を取りデザートに……
「ちょっと!? ソフィア!? 大丈夫だよ。俺は一人で食べられるって…… 恥ずかしいよ。えっ!? あぁ……」
泣きそうな顔でデザートの、サクランボの柄を持って、固まるソフィアだった。ソフィアを見たリックは意を決して口を大きく開く。それを見たソフィアが笑顔になった。
「リック! はーい。アーン」
「アーン」
ソフィアがリックの口にサクランボをいれる。リックはソフィアが笑顔になったのはうれしいが、やっぱり恥ずかしいのか、少し頬が赤くなっていく。
「おいしいですか?」
「うん? ソフィアが触ったからしょっぱいな」
「ふぇ!? ぶぅ! 怒りますよ!」
「ははっ! ごめん。冗談だって。果実のとこ触ってないでしょ」
プクっと頬を膨らませてそっぽを向くソフィアだった。森の木漏れ日に照らされて、優しい光に照らされている、ソフィアの赤い綺麗な瞳が輝き、リックは目を奪われる。ソフィアは頬を元に戻しリックの方をチラッと確認する。
ソフィアとリックの目が合うとソフィアは優しく微笑む。リックは照れてるのが顔を赤くしてぎこちなく笑う。まぁ、ソフィアはほほ笑んでというより満面の笑みで、お弁当の次に食べたい物を探してるだけだが……
「うん!?」
何かに気付いたリックがソフィアに手を伸ばした。
「ふっふぇ!?」
「うん? あぁ! ごめんね。ソフィアのほっぺに食べかすがついてたからさ。パク」
「ちょっと恥ずかしいです……」
下を向いて頬を赤くしするソフィアだった。
「(もう…… 急に恥ずかしがらないでよ。自分からあーんとかして来たのに…… あーなんか俺も恥ずかしくなってきた)」
リックとソフィアはその後、お互いに緊張しながら弁当を食べるのだった。
昼食を終えたリック達は墓の扉の前へと戻る。戻った後も特に変わらず穏やかな時間が流れる。昼食から少したち、心地よい風が小島に吹く
「うん!? まぁそうなるよね……」
リックの横に立つソフィアの頭が、静かな風に併せるように横に揺れている。昼飯が終わったリック達に、午後のゆったりとした時間の睡魔が襲ってきた。
「眠いです。ふわぁ……」
「じゃあ交代で少し休もうか。先に行ってきていいよ」
「ありがとうです」
うなずいたソフィアは眠そうな顔で、二人で弁当を食べていた、場所にまた敷物を敷いて横になった。
「(ふぅ。静かだなぁ。ソフィアもすやすやと寝ているみたいだな)」
リックの視線には横になって昼寝をしているソフィアが見える。午後の平和な時が流れていく……
「休憩終わりました。リックもお次どうぞ」
「ありがとう。何もなく異常なかったよ。じゃあ休憩に行ってくるね」
笑顔でうなずいてリックは、休憩に行こうとソフィアに背を向け歩きだす。リックの背中を見つめるソフィアはさみしそうな顔をする。
「みっ見えるとこにいてくださいね。さみしいですから」
「ソッソフィア!?」
休憩に向かうリックに、ソフィアは小走りでかけよると、袖をつかんで上目遣いでお願いしてくる。
「大丈夫だよ。ソフィアと同じ場所で横になって寝てるだけだから」
「はい。よかったです」
リックはソフィアの手をしっかり握って笑顔を向けた。そうすると、安心したような表情で彼女はリックを見た。でも、まだ少し寂しいのか、手を離して休憩に行こうとすると、ソフィアは名残惜しそうに手を伸ばしている。少し後ろ髪を引かれながらリックはソフィアが寝ていた場所へ向かう。敷物を敷いて横になろうとした、リックにソフィアが手を振った。リックはソフィアに手を振り返すのだった。
「うーん…… ふわぁぁ」
背伸びをするリック、一時間ほど仮眠をとって目覚めた。まずソフィアの様子を見るが特に変わった様子はない。持ち場に戻るために、起き上がり歩いていると、ソフィアが彼に気づき手を振っている。
「ありがとう。休憩おわったよ」
「はい。こっちも異常ありませんでしたよ」
「よかった」
近づくリックに嬉しそうに、寝ている間異常なしと報告をするソフィアだった。彼女は膝をまげて頭を前にだしてリックに差し出してくる。これはソフィアの褒めろの合図なのでリックは軽く頭を撫でた。
「やったー」
嬉しそうに両手をあげるソフィアだった。また二人で警備任務へと戻る。
日が傾いて来る。このまま無事に交代すれば二人の勤務は終了だ。リックは夕飯に何を食べようか考えていた。
「あれ!?」
口元に手を当ててソフィアが不思議そうに考えてこんでいた。いつもはおっとりしているけど、ソフィアは黙っていると知的な雰囲気がする。
「でも…… リック! 私達は朝からアイリス達を含めて、五組ほど勇者パーティをお見送りましたけど。まだ誰も……」
「えっ!? そういえば……」
リック達が朝から勇者達を、見送ってもう大分時間が経っていたが……
「王家の墓から誰も…… 出てきてないよね!?」
「はい。もうすぐ夕方なのに誰もでてこないのはおかしいですよね?!」
「うん。確かダンジョンは地下四階まであるし魔物もでるけど、鍵を手に入れるレベルがあれば攻略は簡単だってクリューバーさんや第四防衛隊の隊長は言ってたよね……」
王家の墓は地下四階もあるダンジョンだが、小島にあるため一階層ごとはそれほど広くはなく、一日で最下層まで行って戻って来れる。魔物もいるが、五組の全てのパーティが全滅する可能性も低い。リックは深刻な顔で考える、ただ彼らが様子を見に行くとしても銅の鍵はアイリスに貸してしまっており王家の墓の中には入れない。ソフィアがリックに声をかける。
「どうします? リック!」
「もう少し待とうか…… 交代の時まで誰も出てこなかったらその時は銅の鍵をもらって様子を見に行こう」
「はい」
リックとソフィアは扉の方を見ながらしゃべっている。さっきまではなんともなかったけが、急に王家の墓の扉が不気味に見えて来る。
「あれ!? 扉が……」
二人の前で扉がゆっくりと開いた王家の墓から誰かが戻ってきたようだ。
「あれは?!」
開いた扉の中から人影が勢いよく飛び出してきた。
「キラ君さんですよ」
「ほんとだ! キラ君だ。どうしたんだ? 一人で?」
キラ君が半地下の階段を、勢いよく手を地面に着け獣のように走って上がって来る。
「えっ!? うわ!? なに!?」
階段を飛び出したキラ君は、リック達の前で走って円を描きながら、何週もクルクルと走り回っている。
「がうあ! がうあ!」
走り回りながら、リックとソフィアに向かって、キラ君が叫んでいた。
「どうしたの? キラ君! アイリスは?」
「キラ君さんは何かを訴えてますね?」
「ソフィア? キラくんが何言ってるかわかるの?」
「なんとなくですか……」
ソフィアが心配そうに、走り回るキラ君を見つめている。
「おいおい! なに!? ちょっとキラ君?」
「ガウア! ガウア!」
「待ってください。リック」
キラ君に腕を引っ張られてリックは、扉の前へと連れていかれる。ソフィアも慌てて二人の後を追いかける。扉の前に着くとキラ君は一生懸命に扉をひっかいていた。
「どうしたの?」
「がうあ! がうわ!」
リックが声をかけるとキラ君はひっかくのを止め、俺の方を向いて何か説明したいのか口を動かしていた。
「もしかしてキラ君さんは扉を開けたいんですか?」
キラ君の前にかがんでソフィアが、尋ねると彼は大きく首を上下に振った。
「えぇ!? 無理だよ! ここは中から開けて閉じると自動で鍵がかかって鍵がないと開かないんだよ…… うん!?」
よく見るとキラ君の首には紐がかけられている。リックはキラ君の前に、しゃがんでいるソフィアにそのことをつたえる。
「ソフィア! キラ君の首に紐がついてる……」
リックの言葉にソフィアがキラ君の首に視線を向けた。視線を下にしていくと、キラ君が首からかけた先には、銅の鍵が結ばれていた。
「リック! 私がアイリスに貸した鍵です。キラ君さん! ちょっとそれを貸してください」
ソフィアがキラ君の首にかかっている紐の先に銅の鍵がある鍵をさす。黙ってキラ君は首をソフィアのほうに差し出す。そっと手を伸ばして首からソフィアが、鍵を取るとキラ君はにっこりと微笑んでいた。キラ君の頭をソフィアは撫でて褒めている。
「アイリスが俺達を呼びにキラ君に鍵を託したのか」
「きっとそうですよ。中で何かが起きてますね」
「わかった。ソフィア行こう」
「はい!」
リック達はすぐに銅の鍵を使って扉を開けた。リック達の目の前に、石造りの壁に等間隔で、松明で明かり灯された、薄暗いダンジョンが現れる。
「ガウア! ガウ!」
「わっ!? ちょっと待って」
扉が開くとキラ君が吠えながら駆けていく。リックとソフィアは顔を見合せると慌てて彼を追いかける。キラ君は脇目を振らずにリック達の前に出て奥へと駆けていく。
「前に何かいます!」
「えっ!? キラ君! ちょっと待って」
リックは必死に手を伸ばして、キラ君の肩を掴んで止めた。
「おっと! あぶねえな! 出てこい!」
キラ君がリックに肩をつかまれて止まると、曲がろうとした通路の角から剣が振り下ろされた。風を切る音がして、キラ君の目の前を剣が通過していき地面に叩きつけられた。
角からゆっくりと何者かが姿を見せてくる。右手に剣を持ってボロボロの服を着た骸骨と、兵士の格好をした骸骨が俺達の前に現れた。
「リック! スケルトン剣士とデッドマンソルジャーですよ」
「チっ…… 時間はかけてられないな。一気に突破するよ」
「はい」
リックは剣を抜き、いつものように剣先を下に構え、キラ君の前に出る。兵士のライトアーマーに鉄の剣を持つ、デッドマンソルジャーは、かつてあった風習で、王と共にここに埋葬されたもの死体のなれの果てだ。死んでもなお王に忠誠を誓って墓を守っている。
スケルトン剣士は盗掘に来た、盗賊の朽ちた姿で、人間の骸骨が剣を持って歩いている。盗賊の死体が王の呪いにより、骸骨になり墓を守るために使役されているのだ。デッドマンソルジャー、スケルトン兵士ともに目が赤く光っている。
「キラ君はそこに座ってなさい」
「ぐわん」
両手を前につきしゃがんだキラ君はじっとしている。
「おっと! 遅いよ」
リックが振り向いてキラ君に指示をだしたすきをつき、デッドマンソルジャーが彼に剣で斬りかかって来た。振り下されるデッドマンソルジャーの剣に狙いを合わせてリックは自分の剣を振り上げた。リックの剣はデッドマンソルジャーの剣よりも早く上に向かって行く。
剣を剣がぶつかりあう甲高い音が王家の墓に響く。デッドマンソルジャーは剣を弾かれて体勢を崩し、リックは笑みを浮かべ剣をすぐに引く。膝を曲げ体勢を低くしたリックは、剣先を前に向け前に突き出した。デッドマンソルジャーの腹にリックの剣が突き刺さる。
体を貫かれたデッドマンソルジャーうなだれるようにしてリックに覆いかぶさった。リックの肩の横に骸骨の顔が来て、兜の奥の目が赤く光っていたのが失われてボロボロと体崩れて消えていった。
リックは左手でデッドマンソルジャーの頭を、つかんで振り払うようにし、同時に右腕を引いた。デッドマンソルジャーの体は横に倒れ、リックの剣が抜ける。覆いかぶされた暗かったリックの視界が晴れた。そこにはスケルトン剣士が立っていた。
「さぁ。次はお前だ」
「カタカタ!」
スケルトン剣士が音を手ながら剣を構える。リックに向かってスケルトン剣士が両手で持った剣を振りかざした。直後……
「えっ!?」
ソフィア矢が骸骨の頭蓋骨を打ち抜いた。デッドマンソルジャーと同じように、頭蓋骨の目から赤い光が消えて骨が崩れ落ちた。
「ありがとう。さぁ先を急ごう」
「はい。いきますよ。キラ君さん」
振り向いて礼を言う、リックにソフィアは優しく微笑み、キラ君を呼んだ。嬉しそうにキラ君は、また先頭に立って、リック達を誘導し始めた。
リック達はキラ君の先導で王家の墓を進んでいく。何度かデッドマンソルジャーとスケルトン剣士の襲撃があったが、俺達は順調に地下三階の最深部の部屋に到着した。地下三階の三分の一を占める、広さの大きな部屋は石造りの扉が閉めてある。
王家の墓は地下四階のダンジョンだが、四階は王の死体安置所と宝物庫になっていてこの部屋の階段から下りるといける。なので事実上この部屋がこのダンジョンのラストフロアに当たる。
確か勇者が宝物庫に入れる実力があるかの試験で、王の死体であるデッドマンキングと戦うんだよな。キラ君はその扉のまでで必死に扉をひっかいている。
「この中にアイリス達がいるみたいだね」
「リック。行きますよ」
「うん。行こう。ソフィア。キラ君。ちょっとどいてね」
キラ君に止めたリックは、扉のノブに手をかけてゆっくりと開く。大きな空間に地面には、赤い絨毯が引かれ、真ん中に王の玉座のようなものが見える。薄暗くて雰囲気は違うが、部屋のつくりは城の謁見の間に近いようだ。
「リック!? あっあれは?」
「ひどい……」
玉座の横に手を上にして、縛り上げらた人間達が並んでいる。朝にリック達が見送った勇者パーティ達だった。彼らは死んでいるのかピクリとも動かない。勇者パーティに何体ものデッドマンソルジャーがかみついて、バリバリ、クチャクチャと気味の悪い音が響く……勇者パーティをデッドマンソルジャーが食べていた。よく見ると絨毯や部屋の床の上には、デッドマンソルジャーと思われる死体がいくつも転がっていた。
「まさか…… もうアイリスは……」
リックは必死にアイリスの姿を探した。
「スラムン」
「おらは大丈夫ズラ! 早く! あいつらを倒すズラよ」
「わかったわ」
スラムンとアイリスの声が部屋に響く。声のした方に視線を送ると、壁際にデッドマンソルジャーの一団が見えた。薄暗くて何をしているかまではわからないが、アイリス達の声がデッドマンソルジャー達からするのは確かだった。
「ソフィア! アイリス達はあそこだ。援護をお願い」
「はい」
リックは壁際のデッドマンソルジャー達の一団に向けて駆けていく。デッドマンソルジャーは全部で五体。近づくと徐々にではあるが、何をしているかリックの目に見えて来た。
デッドマンソルジャー達は壁を背にスラムンを頭に乗せたアイリスを取り囲んでいた。デッドマンソルジャーたちは少しずつアイリス達との距離をつめていく。
「この!」
チャクラムを両手に構えたアイリスが、手を交差させるようしてチャクラムを投げる。二つの円形の金属がデッドマンソルジャー達に向かっていく。大きな音が部屋に響いた。
「あっ!」
「もう…… ダメズラ。室内だから計算をしないとダメズラ」
「ごっごめんなさい」
アイリスのチャクラムは綺麗に一直線に三体のデッドマンソルジャーの首を吹き飛ばした。だが、やや斜め上に放たれた、二つチャクラムはデッドマンソルジャーを斬りつけて後、上に向かっていき天井に突き刺さってしまった。
「うぅ…… さっきはうまくいったのに」
「そこで調子に乗るからダメズラよ。うっ…… まずいズラ…… オラ…… もう魔力が……」
しなしなとアイリスの頭の上で、つぶれたようになるスラムン。直後に討ち漏らした二体のデッドマンソルジャーがアイリスに向かっていく。
「まずい!」
リックはそれを見て走る速度をあげた。
「アイリスーーーー!」
「キャー!」
悲鳴を上げしゃがんだアイリスは、スラムンを抱きかかえ背を向ける。デッドマンソルジャーがアイリスに向けて剣を振り下ろしたのだ。全力で走るリックの横を、空気を切り裂く音が通りすぎていく。
「ぐぎゃあああああああああああ!」
「さすがソフィア!」
振り向いたリックにソフィアが微笑む。アイリスに向けて剣を振り下ろした、デッドマンソルジャーの首がソフィアの放った矢で吹き飛んだ。最後に残ったデッドマンソルジャーがソフィアの方を向く。
「よそ見するな」
リックは距離を詰め、腕を引いて剣先を前に向ける。勢いよく残ったデッドマンソルジャー頭部を剣で突く。ボロボロの兜に穴があき、デッドマンソルジャーの頭部に剣が突き刺さる。リックの剣をグリップを持つ右手に、やや硬い衝撃が伝わり、デッドマンソルジャーは目の奥の赤い光が消えて体が崩れ落ちていくのだった。
リックはアイリスの前に立った。アイリスは前を向きしゃがんだまま、スラムンを抱えた顔をあげてリックを見た…… リックを見た彼の目は涙でうるんでいた。リックは無事なアイリスを見て微笑み声をかける。
「大丈夫か? アイリス」
「リックーーーーー! やっぱり! 来てくれるって信じてたーーー! さすが! 私の未来の旦那様!」
ぴゅーっという空気を切り裂く音が二人の間を切り裂いた。目に涙をためて両手を広げ、リックに抱き着こうとしたアイリスの座った膝元に矢が……
「何するのよ! 危ないでしょ!? どうせ化け乳の仕業でしょ?」
「そうですよーだ! 私も居ますから勝手なことしないでくださいね」
「むかー! リック! ひどいのよ。あいつ!」
眉間にしわを寄せソフィアが、リック達の方に駆けてきた。リックはソフィアを指しながら彼に向かって叫んでいる。
「油断しちゃダメズラよ。来るズラ!」
「ソフィア! あぶない!」
赤い光がリック達を照らし、強烈な風が吹き付ける。リックはとっさにソフィアを抱きかかえて覆いかぶさる。周囲に砂煙が舞って衝撃が床から伝わってくる。何か強烈な魔法のようなものが近くに着弾したようだ。
「ソフィア! 大丈夫?」
「はい。ありがとうございます。リック」
「よかった」
抱きしめているリックの腕の間から、顔を出しているソフィアは嬉しそうにうなずく。砂煙が収まり周りとみるとリックとアイリスのちょうど間に赤い柄の槍が突き刺さっていた。リックはその槍に見覚えがあった。
「ちょっと?! なんで!? リックはわたしじゃなくてソフィアなのよ」
「ニヤリです」
「キーっ!」
両手をあげるアイリスに笑みを浮かべるアイリス。だが、アイリスの前にはスラムンと体を広げ包み込むようにし、その後ろにはキラ君がアイリスの前に仁王立ちをしている。リックは二人がアイリスをかばうの見てソフィアを守ったのだ。二人ともアイリスの立派な仲間だった。
リックは立ち上がり天井を見上げ叫ぶ。
「居るのはわかってる。出てこい! ジェーン!」
「はぁ…… またあなたたちですの! どうしてレイクフォルトに? あなたたちは王都の兵隊でなくて?」
ジェーンが玉座の前へとどこからともなく下りて来た。ため息をつきリックに声をかける。
「あいにくと王国の兵士は人手不足でね。出張でここまで来たんだよ。俺達は兵士は命令があればどこにでも行くもんだからな」
「どこにでも…… チッ…… お兄ちゃんは見捨てたのに…… 王国の犬どもめ……」
「あぁ。犬で結構。なんといわれても俺は友達を守る」
眉間にシワを寄せ犬とリックを罵るジェーンだった。リックは笑いながら、右腕を伸ばし剣先をジェーンに向け答えるのだった。




