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一兵卒だけど無双する ~ 最強の王国兵士、勇者も姫騎士も冒険者もみんな俺が守る! ~  作者: ネコ軍団
冒険者編 エピソード2

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第58話 フクロウ狩り

 翼を羽ばたかせながら大きく開き威圧するように、ヴァリアントオウルはゆっくりとリック達の前に下りて来た。下りて来たヴァリアントオウルは大きくて丸い目でリックたちを見下すような視線を向けている。

 

「リック。もうちょっとだけ……」

「えっ!? もう…… はいよ。でも、すぐにあいつが来るよ」


 リックはチラッと自分を見て、静かに出してきたソフィアの手を握る。


「はい。もう大丈夫です」


 手をはなしたソフィア、リックが少しだけ視線を、彼女に向けるとそれに気づいたソフィアは優しく微笑みを返す。優しくかわいいソフィアの微笑みリックも思わず笑顔になった。心の中で何があってもソフィアを、絶対に守るから大丈夫だよとつぶやくリックだった。


「あー! だから…… そういう……」


 すごい遠くの方でかすかにミャンミャンが、何か言ってるようなのが聞こえるが…… きっと気のせいだと自分に言い聞かせるリックだった。ヴァリアントオウルの目が光った。


「おわ!」


 リックとソフィアの間に熱線が走っていく。とっさに左右わかれて攻撃をかわしたリック達は、ヴァリアントオウルを挟むようにして回り込んで向かっていく。リック達が立っていた足元の地面の草が焦げ音をあげた。


「えい」


 走りながらヴァリアントオウルの左から、ソフィアが矢を放って相手の注意を引く。ヴァリアントオウルがソフィアの方に体を向け、翼を前に出し羽で体を覆ってで矢を防いだ。


「いまだ!」


 リックは走りながら剣を抜き、ヴァリアントオウルの背中にまわり込だ。背後にいるリックに、ヴァリアントオウルの顔が、回転してきて目が光る。

 平然としてジッとヴァリアントオウルを見つめる、リックに何度も同じ手は通用しない。熱線を素早く右に飛ぶようにしてかわし、狙いを絞らせなくするため、小刻みに左右にステップをしながらヴァリアントオウルに近づくリックだった。リックの動きについていけずに、狙いを定められないヴァリアントオウルは首を動かすだけだった。


「よそ見してていいんですか? 私もいますよ」


 素早く放たれたソフィアの矢は、翼と胴体のつなぎ目や耳や尻尾といった、固い羽で覆われていない部分を的確に射抜く。


「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 森にヴァリアントオウルの鳴き声が響く。翼を羽ばたかせ上空にヴァリアントオウルは逃げていく。鳴きながらヴァリアントオウルは、リック達の上を旋回している。


「ソフィア。撃ち落とせる?」

「大丈夫です! 次で翼を使えなくできますよ」


 旋回を止めたヴァリアントオウルは、リック達から離れた空中でこちらをむいて、浮いたようにその場で停止している。翼を開いて鳴いて威嚇をしているようだ。素早くソフィアが矢を取り出して弓を構えて狙いをつけた。


「ふぇっ!?」

「ソフィア!」


 矢が放たれるより先に、ヴァリアントオウルが左右の翼を羽ばたかせた。同時にいくつものソフィアに向かって羽が飛び出した。この羽はタンタンを麻痺させ時と同じだ。羽ばたいた風によって、態勢を崩したソフィアは避けるのは無理だった。

 リックは剣を捨てて風圧をなんとかこらえソフィアに向かって飛ぶ。ソフィアを押し倒した一緒に地面を転がるリック、彼の背中をかすめて羽が通り過ぎていく。

 リックはソフィアを強く抱きしめて、一緒に倒れ込み二人で地面を転がっていく。ソフィアと抱き合ったまま数メートルほどリックは転がった。リックはころがりながら思わず抱きしめてしまった、ソフィアの体は柔らかくて抱き心地がいいなどとのんきなことを考えていた。


「大丈夫!? ソフィア?」


 転がりが止まってリックはソフィアの顔を覗き込んだ。ソフィアは眼鏡がずれ呆然とした表情して彼の顔を見つめていた。


「ふぇぇ…… 目が回りました。でも大丈夫です」

「よかった」


 リックは立ち上がるとソフィアに手を伸ばして彼女を引っ張り上げる。ソフィアが居た場所の地面には羽が突き刺さり、周囲には白い細かい光の玉のように見える粉みたいな物質が浮遊していた。ヴァリアントオウルはいったんリックから離れ、大きく旋回しながら戻ってこようとしていた。


「えっ!? ノッソフィア!?」

「動かないでください」


 口を微かに動かしながら、ソフィアが顔を近づけ、リックのおでこに手を当てた。ソフィアの顔が近づき、彼女の髪いい匂いが鼻に届いたリックは顔を恥ずかしそうに赤くする。ソフィアの手から発せられた、優しい薄い紫の光が二人を包み込む。


「こっこれは?」

「毒や麻痺などの状態異常から体を守って治癒する魔法ですよ。この羽には麻痺の効果がありますからね」

「そうかありがとう」


 顔が近くて恥ずかしいからリックは、視線をソフィアからそらす。ソフィアはリックの行動に不思議そうに首をかしげていた。


「はい。これでしばらくは大丈夫ですよ」


 リックのおでこから手をはなして微笑むソフィア。リックは魔法道具箱から予備の剣を取り出して剣を構えた。リック達に向かってヴァリアントオウルはもう一度翼を羽ばたかせた。

 再び羽がソフィアに向かって飛んでくる。リックはタイミングを合わせ、飛んでくる羽を、一枚、また一枚と剣で叩き落とす。周囲に麻痺をもたらす粉が舞うが、ソフィアの魔法が守りリックの動きは止まらない。


「リック! すごいです」

「うん。ソフィアは俺が守るからね。早くあのヴァリアントオウルを撃ち落として」

「ふぇ! はい!」


 手に矢を持ったソフィアは手を空に向けた。口がかすかに動き呪文を唱えると、雷鳴が轟いて矢が青白く光る。青白くなった矢をつがえて弦を引き絞りヴァリアントオウルを狙う。弓を構えて立つソフィアは、いつもはふわふわとした感じではなく、引き締まり大人っぽくリックの瞳に映り彼は彼女から目が離せなくなる。


「はっ!」


 青白い光がソフィアの弓より放たれ、一直線にヴァリアントオウルの翼の付け根に向かって飛んでいく。


「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 甲高く悲壮感にこもった、ヴァリアントオウルの悲鳴が森に響く。悲鳴の大きさに周囲の木、がざわめき鳥が飛んでいく。


「うわあ」


 ヴァリアントオウルに刺さった矢が、発光して光が大きくなって周囲を包み込み、リックの目の前も真っ白になった。

すぐに光が消え、リック達の目の前には上空から落下した、ヴァリアントオウルが腹を下にして倒れていた。ヴァリアントオウルはまったく動かないな。リックはソフィアの方に顔を向けた。


「ソフィアはここに居て」

「はい。リック。気を付けてくださいね」


 リックはヴァリアントオウルの生死の確認に向かう。彼はゆっくりと落ちたヴァリアントオウルに、近づいて剣でちょんちょんと突いた。


「おっ!?」


 ヴァリアントオウルはビクンと痙攣したように翼を動かした。リックは慌てて剣を構えるが、動いたの一回だけで後は動かない。リックは翼を持ってゆっくりと持ち上げる。


「うわぁ……」


 声をあげるリック、ヴァリアントオウルの翼の下は真っ黒で、焦げ臭いにおいが漂って来る。


「どうですか!? リック! 私はヴァリアントオウルさんを倒せましたか?」

「うん、倒せてるよ。ソフィアの矢の威力はすごいな。翼の根元から体の半分がマッ黒に焦げてるよ」

「やったー!」


 リックの返事に嬉しそうに、ソフィアが叫びながら、彼の元へと駆け寄ってきた。


「これは…… そうだ! ギルドカード!」


 くちばしの端から紐が垂れているのが見えた。ココのギルドカードのことを思い出したリックは紐を引っ張る。引っ張ると紐の先に袋がついていた。紐の先についてた袋は、縫い方が雑な袋で、何か文字みたいなものが縫い付けてある。これがココのギルカードが入った袋だ。


「おっ! どうやら倒せたみたいだね。みんな出ておいでー」


 森の入口で様子を見ていたメリッサがみんなを呼ぶ。ヴァリアントオウルの周りにみんなが集まってきた。


「ソフィア…… なに!? 危ないよ」

「リックが助けてくれたです。いっぱいありがとうです。だから感謝です」


 ソフィアがリックに抱き着いた。本来ならうれしいはずのリックだが表情がさえない。なぜなら、それを見るミャンミャンの表情がすごい怖いから……


「また…… メリッサさん! イーノフさん! 良いんですか? あんなの放置して!」

「防衛隊としてはいただいた意見を参考に、しかるべき対処をできるように、前向きに検討を加速していきますので何卒今回はご了解いただいても……」

「まぁイーノフもこう言っているしさ。ミャンミャンもとりあえず今日は……」


 笑顔のイーノフが真面目に答えているようなそぶりを見せる。この回答はカルロスがよく使う、王国民からの苦情への言い訳だった。ミャンミャンは納得がいかないって表情をしながら渋々引き下がる。イーノフとメリッサがリックとソフィアに近づいてい来る。


「二人ともよくやったね。今日は褒めてもいいよね? メリッサ?」

「フン。あんなのに手間取るんじゃないよ。リックは後であたしと特訓だよ。でも…… 無事でよかったよ二人とも」

「メリッサ…… もう少し素直に言えないの!?」

「うるさいんだよ! 相変わらずイーノフは細かいねぇ」


 褒められた二人だったが微妙な顔をする。イーノフもメリッサともに制服についた、さっきのココの体臭の強烈な臭いが、残っていたのだ。リックは少し離れたところにいるココに気付いた。ギルカードを渡すためにリックはココに近づく。


「これって? ココのなんだよね?」

「そうだよぅ! よかったよぅ! どこにあったの!?」


 リックが差し出した袋を嬉しそうにココは受け取った。


「ヴァリアントオウルの口の中だよ。これがギルドカード入れなの?」

「えっ!? うん、そうだよ。でも…… これ!? おかしい?」

「おかしいってどうしたんだい?」


 ココは袋の紐をジッとみている。ココの様子を見たメリッサが覗き込んで来た。


「どうしたんだい? ココ? カードは無事かい?」

「うん! あたいのギルドカードはなんかベチャベチャしてるけど…… 無事だよぅ」

「そうかい。よかったね。あっ!」


 メリッサが袋の紐をココと一緒に見て驚いた顔をした。リックはなぜ二人が驚いてのかわからなかった。


「その袋の紐…… ナイフかなんかで傷つけられてるね」

「メリッサにもわかるかい!? やられたよぅ。まったく!」

「えっ!? 俺には普通に……」

「なんだい!? リックはわからないのかい!? ココちょっとそれ貸して! ほら、これだよ」


 メリッサがココからギルドカード入った、紐がついた袋を受け取ってリックに見せた。ココの袋の紐の切れた部分が、半分ほど綺麗に整っている。紐にナイフで切り込みを入れておいて、ココが落としやすく細工されていたのだ。


「紐を傷つけてココがギルドカードを無くすようにしむけたのかねぇ。まったく手の込んだことするよ」

「あたいも年かもねぇ? 大事な袋に傷がついてるのに気づかないなんて」

「なーに。新人二人連れて毎日クエストして特訓して忙しく面倒みてるんだ! 気付かないこともあるよ……」

「でも、どうして?! こんなことを?」


 リックが尋ねるとココとメリッサさんは黙って考えている。話の途中から近づいてきた、イーノフが顎に手を置いてリックに答える。


「ココがギルドカードを無くしたら、ギルドマスターから追い落とせるって考えるやつもいるんじゃないかな?」

「そっそんな……」

「しょうがないよぅ、リック! あたいだって、ギルドの全員から好かれてる訳じゃないからね」


 少し寂しそうに答えたココ、彼女はカードを取り出し、袋を見つめている。袋を見るココ目がウルウルとして泣きそうになる。


「ギルドカードも大事だけど、この袋はあたいがタンタンからもらったんだよぅ! だからよかった。ありがとうリック!」


 袋はタンタンからのプレゼントだったようだ。タンタンが紐を見てすぐにココのギルカードだと気づいたのはそのためだった。よく考えれば袋には、ココとタンタンの頭文字が書かれていた。ココは大事そうに、袋の紐の切れた結び目を撫でている。おそらく修理して彼女は、また大事に使うのだろう。


「うぅーん! ココお姉ちゃん」

「タンタン! よかった! ココ! みんなタンタンが」


 ミャンミャンの背中に背負われていたタンタンが目を覚ました。嬉しそうにミャンミャンは、タンタンを背中から降ろすと、頭を撫でて抱きしめていた。


「あっ! ココお姉ちゃん?! もしかしてココお姉ちゃんが俺を助けてくれたの? ココお姉ちゃん! だーいすき!」


 目を覚ましたタンタンは首を振って、ココを見つけると起き上がって抱き着いた。少し驚いたココであったが、笑顔で嫌がるでもなく笑顔で、タンタンの頭をなでている。


「よかったよぅ。タンタン。でもあたいだけじゃなくね。みんなでタンタンをたすけたんだよぅ」

「いいの! 僕はココお姉ちゃんが来てくれてのが、うれしいんだよ!」

「タンタン…… ありがとぅ! あたいもタンタンが無事でうれしいよ」

「へへっ! ココお姉ちゃんいい匂いする……」


 背の高さが同じくらいなので、タンタンがココに抱きつくと顔が、ちょうどココの髪と同じくらいだ。タンタンは嬉しそうにココの髪の匂いをかいでいた。


「(タンタン…… みんな頑張ったんだけどな…… なにより君のお姉さんがさみしそうにしてるぞ……)」


 複雑な顔をするリック、ミャンミャンは怒った様子で、タンタンに近づいていく。


「ちょっと! タンタン! 私だってね…… 一生懸命あんたのことを」

「お姉ちゃん…… ミャンミャンお姉ちゃんも大好きだよ。ニコ!」

「もう…… しょうがないわね。タンタンは……」


 声をかけるまでは怒った顔してたのに、タンタンが笑顔で大好きって言ったらデレデレし始めるミャンミャンだった。タンタンはココから離れようとせずに頬を寄せている。見た目には仲良しの男の子と女の子の、ほほえましい光景に見えるが、実際は十歳の少年が五十を過ぎた熟女に抱き着いている光景だ。孫とおばあちゃんとに近い。


「ココお姉ちゃんのほっぺ柔らかい」

「こっこら! タンタン! 恥ずかしいよぅ」


 タンタンがココに頬ずりをしている。仲がいいのようだが、それにしてはいやにベタベタとしてる。まるで二人は恋人のよだった。


「ココさんタンタンさんは仲良しさんですね。じゃあ私とリックも!」

「えっ…… うわぁ」

「キャッ!」


 リックに抱き着こうとした、ソフィアのおでこにミャンミャンの手が、伸びて来て止められてしまった。抱き着かれる準備をしていたリックは残念そうにしていた。


「けっ! こっちでベタベタなんかさせません! あっちでも弟がベタベタでわたしはやってられないですから! だからダメです」

「ふぇぇ…… リック! ミャンミャンさんがやっぱり怖いです」


 顔は笑顔だがミャンミャンは目が笑ってないから怖い。ソフィアが必死にリックの元に行こうと、右に左に動くがミャンミャンは、的確にブロックしてる。リックは体を横にしてミャンミャンの脇から手を伸ばす


「はーい!」

「キッ!」

「うわぁ!? やっぱまずかったか……」


 リックとソフィアはこっそりと、ミャンミャンの背中越しに手をつなごうとしたが、ミャンミャンに二人とも睨まれ阻止されるのだった。

 こうしてギルドカードは無事にココの手元に戻り。無事に冒険者に報酬は支払われた。後日、ココの紐を傷つけた犯人探しが、秘密裏に冒険者ギルドで行われたが犯人は不明だった。

 ただ…… 冒険者ギルドに出入りして怪しかったのは、タンタンについて嗅ぎ回る緑の服の女と冒険者ギルドの図書館にいたピンクの色の髪の女だという。


「(緑の服を着たタンタンについて嗅ぎ回る女って…… 犯人はあいつか!)」


 ココからの報告を読んでいたリックが顔をあげた。


「なんてな……」

「「「??」」」


 詰め所に居たメリッサ達が急につぶやいたリックに首をかしげていた。ギルカード紛失事件は解決した。これからも起こるであろうトラブルにリック達は気を引き締めるのだった。

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