表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/263

第1話 あの人の名前は?

 今から九年ほど前…… ここは世界最大のジュリアス大陸の、三分の二を支配する強国、グラント王国の王都グラディア。今日は王都移転百周年を祝う式典が催され、王都を縦断する、石畳の舗装された大通りの沿道は人で賑わい、通りのいたるところは、国の旗や花などで装飾され、華やかな雰囲気に包まれていた。通りの真ん中を、きらびやかなパレードの一団が通っていく。

 パレードを見つめる観客の中に、母親と子供が居た。ぴったりと母に寄り添う少年は、薄い茶色のズボンに白いシャツ、少し細めの輝いた黒い瞳に短い黒髪をした、どこにでもいる普通の、おとなしそうな少年だった。彼は目の前を通るパレードを静かに見つめていた。


「あっ!!」


 パレードを追っていた、少年の視線が動かなくなり、ジッと一点を見つめている。

 少年の目の前を一台の馬車が通りすぎていく、二頭の黒く立派な馬に引かれたの装飾された黒い馬車、その上には一人の綺麗な金髪の女の子が居て、沿道に向かって笑顔で手を振っていた。少年は彼女に目を奪われていたのだ。通り過ぎえていく少女のことが知りたくなった彼は母親の手を引いた。


「ねぇ?! お母さん、あの馬車に乗った綺麗な子は誰?」

「リック。あの方は王女アナスタシア様だよ」


 少年の名前はリック・ナイトウォーカー。これが彼の運命を決める、グラント王国の王女アナスタシアとの出会いだった。アナスタシアは、綺麗なドレスを着ているためか、もしくは生来の気品のせいか、同じ七歳だというのに彼よりだいぶ大人に映っていた。

 アナスタシアが乗った馬車の少し後ろを白い鎧をまとい、白馬にまたがった金髪のかっこいい男がついてくる。彼は周囲を見渡して観衆には、基本笑顔であったが時折するどい視線を送っていた。男はアナスタシアと目が合った時には優しく微笑む。パレードにいる兵士の中で、ひときわ目立つ白く美しい鎧を着た、男は勇ましくそしてかっこよかった。リックはアナスタシアのそばにいる彼が気になり、母親に再度尋ねる。


「お母さん、王女様の後ろにいる、白い鎧の人は?」

「あれはこの国の騎士様だよ。王女様を守ったり悪い魔物を退治するすごい人だよ」

「へぇ!? 騎士様かぁ! かっこいいなぁ」


 王女様を見守り、優しい笑顔を国民に振りまく騎士の姿は、リックにはものすごく輝いてみえていた。通り過ぎていく、騎士の後ろ姿を見送るリック、次の瞬間には、彼は自分も騎士になりたい強く思っていた。


「お母さん、僕、騎士になりたい! なれるかな?」

「えっ? それは……」


 リックの母親は言葉につまり、それ以上答えることはなかった。なぜなら…… その頃からグラント王国や荒れ始めていた。魔王の人間への宣戦布告や、魔王討伐を期待された勇者の死、その後に起きた勇者適正者の強制招集…… 騎士団は内部抗争に明け暮れ治安は悪化し、治安の悪化で依頼が急激に増えた冒険者ギルドは、キャパシティオーバーから管理能力を低下させた…… グラント王国を覆う影は徐々に大きくなっていたった。

 リックは騎士になり王女のそばに立って、彼女を助けたいという思いを強めていった。彼の両親はそんな彼の意思に、賛同することはなかった……

 十六歳になった彼は家出同然に、王都グラディアに向かい、そこで開催される騎士団の入団試験へと臨む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ