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第253話 今日じゃない日を掴め

 テレポートゲートのくぐったリック達、白い光に包まれたトンネルのような道を少し歩いて抜けた。

 

「着いたか…… 初めて使ったけど少しだけテレポートボールに似てたな」


 後ろに振り返って自分が通って来た、光のトンネルを見てつぶやくリックは前を向いた。

 リックの目に上空には昼間なのに薄暗い紫色の空が広がり、周囲は黒い荒野に囲まれた小高い丘の上にリック達は立っていた。丘の一キロほど先に白く綺麗な城壁に囲まれた城が見える。

 あれが魔王プロラルドがいる魔王城だ。ここは世界の北端にある魔大陸、古くから魔族が住み火山と岩だらけの闇の魔力に侵食された、黒い荒野が広がる、地獄に最も近い場所と言われている。二十年ほど前に、魔王プトラルドは四十五代目の魔王として即位し、人間との戦いが始めた。


「ずっと見てると飲み込まれるよ。準備しな」

「はっはい」

 

 魔王城を見つめていたリックの後ろからメリッサが声をかける。返事をしたリックは彼女についていく。周囲にたくさんの騎士達が戦の準備を始めていた。


「すごいな…… グラント王国だけじゃなくて近隣の友好国からも、兵士が集まってるんだな。あそこには冒険者みたいな集団もいる。みんなアイリスの為に集まってくれたのか。あいつきっと喜ぶぞ!」


 歩いて周囲を見ながら目を輝かせるリックだった。集まったのはグラント王国騎士、防衛隊に加え、同盟関係にある友好国の兵士や冒険者がいた。皆、アイリスの為に集まったのだ。


「あっ!?」


 声をあげたリックは、走って戦の準備をしている、人たちの中へと向かいとある人物に声をかける。


「あなたも来たんですか?」

「もちろんじゃ! 今の魔王のやり方に賛同はできん。それにアイリスちゃんには借りがあるからのう。なぁみんな!」

「「「「おう!」」」


 振り向いて笑ったのは、先々代の魔王ブッシャーだったブッシャーの周りにはリブルランドで共同生活を送る魔物や人間が居て彼の問いかけに威勢よく返事をした。リックはブッシャーに礼を言ってその場を去りメリッサの後についていく。

 軍勢の中心でエルザは、戦の準備が進むのをみて、頷いて嬉しそうに見つめている。リックはエルザの元に来て彼女に声をかける。


「でも、エルザさん達はすごいですね。よくこんなところに…… テレポートゲートを設置できましたね」

「あぁ、協力者がいるんですよのよ。こちらへみなさん」


 エルザが振り返ってリックに背を向け、右手を上げ協力者を呼ぶ。


「あっ!? カルロスも来たのぅ!? やったよぅ」

「リックさん!」

「ポロンちゃん!」

「ココ!? ミャンミャンもタンタンも!?」


 エルザの呼ばれて、リック達の前にココとミャンミャンとタンタンの三人が姿を現す。ココ達が先行しててテレポートゲートを設置したのだった。カルロスが一緒で喜んだココが、抱き着こうとしたが、カルロスは手で彼女の額を押して防ぐ。その姿を見てタンタンがカルロスを睨み付けている。

 リックはカルロスを見てあきれ、ミャンミャンの元へ向かい、彼女に声をかける。


「ミャンミャン、そういえばシーリカは?」

「いますよ! あそこ!」


 ミャンミャンが指を指した。魔王城から反対側に丘の下を彼女は指さしていた。そこにはバリケードが築かれ大きな陣地が構築されている。


「(シーリカ…… それにエメエメとハクハクにブラックタートルとヴァーミリオンスネークもいるぞ!)」


 陣地の中心には巨大なクリスタルが置かれその前にシーリカがひざまずき祈りを捧げていた。クリスタルを中心に優しい緑の光が陣地を覆っていが。ミャンミャンは両手を口にあて大きな声でシーリカを呼ぶ。


「シーリカ! リックさん来たよーーー!!!」

「はーい! リックさーん! 傷ついたらいつでも戻って来てくださいねーーー」


 振り向いて笑顔でリックに手を振るシーリカの声がかすかにリックに届く。


「シーリカ達は救護班です。あそこで癒しの祈りを捧げて中に入れば傷が回復します。ハクハク達はシーリカの護衛です」

「そうか……」

「私とタンタンとココは戦場を回りながら負傷者を回収してシーリカの元へ届けます」


 得意げに自分の役割を説明するミャンミャン、リックは彼女の話を静かに聞いていた。


「わかった。気を付けて…… みんなで王都に帰ろう」

「えっ!?」


 リックはミャンミャンの両手を力強くつかみ、真顔で彼女の目をジッと見る。


「はい!」


 うなずいたミャンミャンはリックの手を握りしめて笑顔を向ける。丘にゴーンという戦をしらせる銅鑼が鳴り響いた。


「始まるよ…… リック! おいで!」


 メリッサがリックを呼んだ。ついに魔王城へと攻撃が始まる。エルザが先頭で軍団が進み始める。グラント王国の騎士、兵士、冒険者、友好国の兵士で構成される軍団は、五十万人規模の大軍団になっていた。

 リックとソフィアのポロンの三人は軍団の中央に皆に囲まれ馬車で移動する。馬車の御者台にはゴーンライトが座り、馬車のすぐ横には護衛の馬に乗ったメリッサとイーノフの二人がいる。さらにその外側をシェリルが率いる、ビーエルナイツの精鋭第一攻撃部隊が馬車を囲う。

 この馬車はアイリスへの救援物資を運ぶこの戦いの最重要物資だ。リックとポロンとソフィアは荷台にいて、力持ちのポロンがアイリスへの支援物資の入ったリュックを背負っている。リックとソフィアはポロンの護衛という役割だ。

 魔王城へと軍団が近づくと、接近を察知した魔王城の扉が開き、中かからオークやゴブリンたちの魔王の軍団が出てくた。その数はかなり多くさらにサーベルウルフやヴァリアントオウルなどの魔物もいる。

 魔物軍団はリック達よりも数は勝っていた。


「止まれ!」


 エルザが右手をあげ叫ぶ。銅鑼の音が響き軍団が進行を止めた。リックが乗った馬車の前が開き、その間を通りエルザがメリッサの横へ駆けてきた。


「では…… メリッサ将軍! お願いします!」

「えっ!? あたしがやるのかい? あんたがやりなよ。この軍団はあんたのだろ?」

「いえ…… 今日はメリッサさんを将軍として全軍の指揮を任せてます。お願いします」

「頑張るのだ! 恥ずかしくないのだ!」


 ポロンに頑張れといわれ、メリッサはため息をつき、魔物軍団に視線を送る。


「はぁ…… しょうがないね」


 エルザと一緒にメリッサは、軍団の前へ出て行った。黒い影となった魔王軍が軍団の前に整列を始めた。メリッサが馬を横にして、軍団に顔を向け槍を上空に掲げた。


「ここに集いし!!! グラントの英雄達と同胞のみんな!!!!! まずはありがとう!!! あんた達と一緒に戦えて光栄だよ!!!」


 大きなよくとおる声でメリッサが叫んだ。全員が彼女に視線を送って姿勢を正す。だが、迫りくる魔物の軍団をみた皆の顔は恐怖青くなり緊張でこわばっている。メリッサは皆の様子を見つめながら、目を鋭くし眉間にシワをよせ厳しい顔でまた口を開く。


「あんた達は怖いかい? 迫りくる魔物たちを見つめる、あんた達の目は恐怖に怯えてるよ。フフ、実はあたしも少し怖い。一緒だね。あんた達には……」


 視線を下に向けメリッサは、少し言葉に詰まり間が開く。少しして彼女は意を決した顔で腹の底から声をあげとある人の名前を呼ぶ。


「勇者アレックスの時と同じように! 強き魔物たちによって勇者が打ち破られ! 故郷が魔物達に蹂躙される光景が見えてるかもしれない!!!!!」


 メリッサは前を向いて魔王軍を槍で指し示す。彼女は迫りくる魔物たちを見て、少し下を向きこちらを向くと、顔をすっとあげ真剣な顔をした。


「でも、それは今日じゃないよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 馬上で槍を持つ手を上空にかかげて叫ぶ。大きなメリッサがさらに大きく見え、全軍に背中を向け槍を空に向けるメリッサは、群れを守る獅子のように大きくそして頼もしい。

 そして…… 紫の雲に覆われていた空が、不思議と彼女が槍をかかげた場所から晴れていき、日が差し込み、彼女を神々しい光が照らしだす。


「今日は戦って栄光をつかむ日だよ!!!!!!!!!!!!! 黒き闇に覆われた魔王城の屋根に我が祖国グラントの旗を打ち立て、この長く苦しかった魔王との戦いに決着をつける日だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 魔王城の屋根を槍でさしたメリッサ。その後、一瞬だけ彼女は黙り辺りは静寂に包まれる。沈黙を破ったのもまたメリッサだった。


「グラントの英雄たちよ!!!!!! 家族、友人、かけがえないのない全てのもののために、その剣が折れるまで振り続けるんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! あたし達という光の剣はここで勇者を助け必ずや魔王を討ち倒す!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 メリッサの力強い言葉に並んでいた、兵士達の恐怖は薄れ、徐々に表情が和らぎ、魔物達への闘志がみなぎった表情へと変わっていく。


「勇者にばかり目立たせるんじゃないよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! グラント王国の英雄たちの意地をみせな!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 大きくリック達前で槍を横に振りぬいて全員を鼓舞した。メリッサさんは馬を返して魔物が迫る前面をむいた。ニコッと顔をわらって顔を軍団にむけたメリッサ。


「さぁみんな!!!! 顔をあげ前を向きな!!!!!!!! 行くよ…… 勇者にあたし達というプレゼントを届けるために!!!!」


 再度、槍を上空に掲げた、メリッサは一歩前に踏み出した。全員が一斉に武器をかまえる。


「進めーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!! 勇者アイリスの為にーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 魔王軍に向けてメリッサがで叫んで駆け出す。彼女の背中に引っ張られるように軍団が動き出す。


「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」


 グラント王国の騎士、兵士、他国の兵士、魔物とアイリスの為につながった、世界中の戦士達が雄たけびをあげる。五十万の不揃いの大軍はメリッサに導かれるようにして魔物の群れへと突っ込んでいく。


「あんたら邪魔だよ!!!! 道を開けろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 魔物に向かって槍を投げて数千匹を一撃で、吹き飛ばして穴をあけるメリッサ、彼女は魔物に一撃を食らわせると、リック達の馬車の横に戻って馬を走らせ、御者台に座ったゴーンライトに指示をだす。


「あたしとイーノフでリック達の道を確保するから、ゴーンライト、あんたはリック達を守るんだ!」

「わかりました」

「えっ!? ゴーンライトさん!? 何を……」


 ゴーンライトは右手で手綱を操りながら、左手を横に重ねて置いてあった二枚の盾にかざす。なにやらぶつぶつと呪文のようなものを唱えると左手が黄色く光りだした。光が手から盾にうつり、ゴーンライトが左手を動かすと、盾が浮き上がって、荷台の上に浮かんでいる。

 浮かび上がった盾が、魔物の軍団から放たれた矢を防ぐ。その後も次々に飛んでくる矢を盾は、まるで意思を持っているかのように動き防いでいく。リックは荷台から御者台に顔をだし驚いている。


「こっこれは!? 一体?」

「ふふ、イーノフさんに教えてもらった物体を浮かして自分の意志で操る魔法です。これで盾がリックさん達を守りますので安心してください」

「すごいのだ! ゴーンライトさん!」

「だから…… えっ!?」


 ポロンが馬車を操作してる、ゴーンライトさんを見て嬉しそうに笑っている。初めてポロンにまともに名前を呼ばれた、ゴーンライトは驚いて少しの間とまっていた。


「だっだろう? ポロン!」

「かっこいいのだ!」

「ほんとだ。すごい! ゴーンライトさんが初めてかっこよく見えたな」

「ちょっと!? リックさん! ひどいですよ!!」


 振り返って叫ぶゴーンライト、リックとポロンは顔を見合せて笑う。

 エルザが指揮するよく訓練された騎士達と、ココが鍛えた名うての冒険者達は魔物群れを駆逐していく。特にメリッサの活躍は凄まじく、槍を赤い柄の槍と青い柄の槍の二本を使って向かってくる敵をなぎ倒していく。赤い柄の槍で近づく敵を切り裂いて、青い槍は投げて敵の陣形に穴を開けて道を切り開く。メリッサの青い槍は魔法の槍で、彼女の手から離れても、手を動かすだけで、いつでも手元に戻って来る。遠距離、近距離と二つの槍を使い分けながら、すでに数万の敵を一人で蹴散らしていた。

 メリッサは二つの槍を持って一人で戦場を支配しつつあった…… いや…… 正確には二人だ。彼女の横には小さい魔法使いが居て、魔法障壁で矢を防いだり、敵を足止めし支援をしている。

 騎士団と防衛隊と冒険者、勇者のためにと思いを一つにした、軍団は魔王城へと迫る。しかし、軍団を出陣させるため、開いていた魔王城の大きな扉が閉じられようとしていた。


「あっ!? メリッサ! 門が閉まるよ!」

「イーノフ! 門ごと吹き飛ばしな!」

「えっ!?」

「いいだろ。どうせ魔王のもんだよ。吹き飛ばしたって地獄の底から弁償の請求なんか来やしないよ」


 メリッサが槍で魔王城の門を差してイーノフに叫ぶ。一瞬躊躇したイーノフだったが、メリッサの言葉に笑って杖を両手に持って上にあげる。


「ふふ。そうだね…… 行くよ! 光の精霊よ。全ての力を我に! 標的落下彗星ターゲッティングメテオ!」


 イーノフが呪文を叫ぶ。彼の両手から、赤い大きな光が上空へと向かい消えた。直後に、貴族の邸宅くらいありそうな、大きな炎をまとった岩の塊が上空から魔王城へ落下していく。

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 星がつぶれるように大きな爆発音が黒き荒野を走り抜けていった。巨大な爆発と土煙が舞い視界が遮り、地鳴りがしてリックとソフィアとポロンを激しい衝撃が襲う。三人は馬車から振り落とされないように必死にしがみつく。あまりの巨大な爆発に魔物も人間も一時戦いの手と止めて魔王城の方を見つめるほどだった。やがてゆっくりと煙が消えると魔王城の姿が見えきた。岩の塊は魔王城の城門と城壁を吹き飛ばしていた。特に城壁と城門が完全に吹き飛んで跡形もなく、魔王城に大きな穴があき三分の一ほどは崩れていた。その光景に魔物達の顔もこわばって動きが止まっている。

 馬上でしてやったぜという顔をしてる、イーノフさんの頭をメリッサさんが槍の柄で軽く叩く。


「いた!? 何するんだよ!?」

「バカ! あんたやりすぎだよ! 魔王城だけじゃなくて、あたし達まであやうく吹き飛ぶとこだったじゃないか!!!」

「えっ!? いや…… でも…… 城門は吹き飛んだだろ? だったら別に……」

「あれは吹き飛ばしたんじゃあなくて消したって言うんだよ。まったく…… アイリスだってあの中にいるんだよ!」

「大丈夫だろ。アイリスは勇者さ。はぁ…… シーリカ様が近くにいないのが残念だよ。でも…… 今の僕の活躍は見て…… ぐはぁ!」


 顔をしかめるリック、メリッサが槍の柄でデレっとした顔をした、イーノフさんの頬を殴った。イーノフはかっこつけていた馬上から力なく落ちた。


「(もう!? 何してるんですか! 魔王城の前なのに…… いつも通りなんだから…… いやいいのか。いつも通りで! だってメリッサさんとイーノフさんはいつも通りが一番強いんだからな……)」


 魔王軍に囲まれた戦場でも、いつものようにふるまう二人の先輩にリックの頬ば思わず緩む。


「みんな! 魔物さんが止まってる今のうちですよ」

「はっ!? 今だつっこめ!」


 ソフィアが魔王城を指して叫ぶ。我に返ったメリッサがすぐに軍団に指示を出した。リック達はイーノフの魔法でできたすきに魔王城へとなだれ込んだ。ちなみに落馬したイーノフは、メリッサにぞんざいに槍をひっかけられ馬に戻さた。戦場ではなく痴話げんかで出来た傷をさすりながら・・…

 魔王城の前でリック達は、馬車を降りて中へ。第四防衛隊は最上階の魔王の間へと目指しかけていく。途中の道に多数の魔物の死体が転がっていた、これはおそらくはアイリスが、魔王の間へと向かう時に倒した魔物だろう。

 何度も階段を上り、最上階の黒い大きな扉の前まできた。扉の向こうでアイリスと魔王プロラルドが戦っている。


「魔王様の部屋に向かっているぞ! 殺せ!!」

「「「「「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」」


 大きな扉の前へ来たリック達に、城内に残っていた魔王軍が最後の抵抗か迫って来ていた。


「来るんじゃあないよ!!」

「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」」」


 メリッサが迫る魔物軍団に向けた槍を投げ、両手を広げて立ちはだかる。彼女の横にイーノフとゴーンライトが並ぶ。


「さぁ! リック、ソフィア、ポロン、扉を開けてあんた達は先に行きな!」


 振り向いたメリッさは左手の親指で、扉を指しリック達に先に行くように指示する。


「えっ!? でっでも!?」

「迷うな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 躊躇したリックに向かってメリッサが左手を伸ばし彼の肩をつかんで怒鳴りつけた。


「メリッサさん……」


 彼女の目はうるみそこに映るリックの姿はゆがんでいる。


「あたし達の目的はなに? アイリスを助けることだろ? アイリスに必要なのはリック…… あんただよ。行きな。アレックスの時みたいに手遅れにならないように」


 槍を構えて魔物たち牽制しながら、メリッサは少し寂しそうな顔をした。かつて自分達が間に合わず、最愛の人を殺された、その事で義妹は悪へと身を落とし、囚人と暮らしている。もう二度と同じことを繰り返すわけにはいかないのだ。


「うん。メリッサの言うとおりだ。リックは行くんだ。間に合わず後悔したらまた同じだよ。大丈夫。僕たちがこの扉には誰も近づかせないから……」

 

 そっとメリッサの背中に手をおいて優しく撫でてから、イーノフは杖を体の前に出していつもと違う少し怖い顔して魔法を唱え始める。


「そうです。ここはメリッサさんとイーノフさんと僕で絶対に守ります。だから行ってください」


 盾を二枚で地面を叩き気合をいれるゴーンライト。三人は振り向いて笑顔でリック達にむかって頷いた。


「わかりました。ありがとうございます。行こう! ソフィア、ポロン!」

「はい!」

「魔王も全部どっかーんしてやるのだ!」


 頼れる先輩たちに背中を任せて、リック達は魔王の部屋の間の扉に、手をかけて開いて中へと入っていくのだった。

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