第250話 魔獣ゾルデアス討伐戦
一斉に放たれた矢が、砦へと近づく魔獣ゾルデアスへ伸びていく。だが、矢がいくら刺さってもゾルデアスは、ゆっくりと平然と近づいてくる。
「そんなひょろひょうろの矢が我に効くものか!」
余裕で笑いながら中央の魔獣ゾルデアスの頭が叫ぶ。リックは悔しそうに見つめ、タンタンとポロンに向かって叫ぶ。
「ポロン! タンタン!」
「タンタン行くのだ! どっかーんなのだ!」
「うん!」
タンタンがヒモを引っ張ると、投石機から大きな石が発射される。放物線を描き巨大な石が、魔獣ゾルデアスへと飛んでいく。
「よし!」
一番右端の頭に石が直撃し、頭が半分くらいに潰れて枯れた花の茎のように、首が地面へと倒れていく。
「次はお前だ!」
「何をいうか! 我は何度倒しても甦るぞ?」
石が当たって倒れた右端の頭は、すぐ再生しまた起き上がった。
「チッ! そうかい!? だったら復活しなくなるまで切り裂いてやるよ!」
「なっ!? 人間風情が生意気な…… くらえ!」
五つある頭の中央の魔獣ゾルデアスの頭が、リックを睨み付け口を大きく開く。口の中に小さな光の球が現れた。光はどんどん大きくなり、周囲を強烈に照らす。
「リックさん!? なんですか? あれ?」
光りに照らされて白くなった、ミャンミャンがリック横で、魔獣ゾルデアスを指して彼に尋ねる。
「俺にもわからない。おそらく魔法かなにかだろう。でも、なんとなく悪いことが起こるのはわかる。砦の前でなんとか防がないとな。
「えっ!? 防ぐって!?」
城壁のへりに立ったリックが下を覗き込む。地面からリックが立つ城壁まではかなり高さがある。
「結構高いな…… でも、メリッサさんだってここから…… よし!」
意を決したリックはミャンミャンに顔を向けた。
「ミャンミャン! 危ないから城壁の後ろにみんなを避難させて!」
「リックさん? リックさんなにを!?」
「じゃあ、行ってくる!」
「えっ!? リックさん!? まっまって!?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
リックは雄たけびを上げながら、城壁から地面に向かって飛び下りた。
「うぐ!!」
大きな音と共に、リックの両足に激しい衝撃が伝わる。しかし、衝撃はすぐに消えしびれもなく、リックは案外いけるなと拳を握って笑った。
「おっと! 着地できて喜んでる場合じゃない。」
我に返ったリックは、すぐに魔獣ゾルデアスに向かって駆け出した。魔獣ゾルデアスが開いた口にある光はどんどん大きくなっていた。振り返ったリックは城壁に上にいるソフィアに叫ぶ。
「ソフィアー! 俺に電撃魔法を撃て! 一番強いやつで!」
「はい! わかりました」
よ立ち止まったリックは剣を抜き、剣先を下に向けいつものように構える。ソフィアが手を上空にかざし、呪文を唱えると大きな青白い稲妻がリックへとむかってくる。
「よっと!」
むかってくる雷にタイミングを合わせて剣を上に振りぬくと、リックの黒い刀身の片刃の剣が雷を切り裂いていく。彼は半分ほど稲妻を切り裂いて剣を横に回転させて雷を巻き付けた。リックの剣が青白い光を放つ稲妻を帯びる。これが彼の得意技である他力魔法剣だ。
リックは魔獣ゾルデアスが何かを発動する前に先手を打つ。
「くらえ!」
「遅いわー!」
魔獣ゾルデアスは口を、さらに大きく開け叫ぶと同時に、大きな光線が砦に向かって発射された。
「さすがにはええじゃねえか…… でも! いける!」
リックは剣を構えてジッと光線をみつめる。大きな光が彼の前へ迫る。大きな光がリックを照らし彼の姿は光に包まれ周りから見えなくなっていく。
「いまだ!」
タイミングを合わせて光線に向かって魔法剣を振りあげた。音がして青白く巻き付いた魔法剣と、ゾルデアスの光線が空中でぶつかりあう。リックの魔法剣は光線を弾き返し光線は曲がって上空へと向かっていった。
空高く舞い上がり伸びていき光線は、魔獣ゾルデアスともに現れた黒い雲をはらい、空へと吸い込まれるように消えていった……
「うわ!!!」
上空へと吸い込まれた光線は、巨大な爆発を起こし、炎のような赤い光が砦を照らし、爆風が草木とリック達に吹き付け、平原に爆音が轟く。
「くう! まぶしい……」
降り注ぐまばゆい赤い光にリックは目を手で隠し顔をそむけた。
「ふぃ…… なんとかそれたな。あんなの砦に直撃したら危なかったな」
リックは顔を覆った手をゆっくりと外して上空を見上げると、魔獣ゾルデアスが現れた時に覆っていた、雲の一部ははらわれたまま青空が覗く。爆風が吹き付けた砦も無事だった。しかし、皆は驚き腰抜かしたり、爆風で落ちないように、城壁の壁に必死にしがみついていた。
「さて…… 次はこっちの番だな」
砦の様子を横目で見たリックは、剣を下に構えて魔獣ゾルデアスへと、ゆっくりと歩き出した。彼が動き出すと、砦の兵士や冒険者から歓声があがる。
「わっ私の破滅の光線を…… ならばもう一度……」
近づくリックに魔獣ゾルデアスは声を震わせていた。リックは腕を伸ばし、剣先を魔獣ゾルデアスへと向け叫ぶ。
「俺は二度同じ手はくらわない。次は光線を切り裂いてお前の首をはねてやるよ」
「なっ!? 舐めるなよ…… たかが人間風情が!!!」
「ふん。ずっと昔に人間に負けた野郎がほざくなよ」
魔獣ゾルデアスが口を開けたるとまた光が集約していく。しかも、今度は五つの首すべが口を開いた。破壊光線を五つの首ではなってリックを本気で消し去るつもりのようだ。
リックはいつのものように剣先を下に向けジッと魔獣ゾルデアスを見つめている。
「待つんだよぅ。リック…… もう終わりだよぅ!」
「えっ!?」
振り返ったリックにココが城壁から飛び下りて駆けて来るのが見えた。ココはリックの横まですぐに駆けて来た。
「ココ!? 終わりってどういうことだよ」
「剣をおさめるんだよぅ。リック!」
「はぁ!? いいから早くしなよぅ」
ココはリックに剣をおさめるように指示し、魔獣ゾルデアスの前にひざまずく。膝の上に腕をおき頭をさげるココに困惑するリック。視線をゾルデアスへ向けココはいやらしく笑い顔をあげた。
「魔獣ゾルデアス様! お話をさせてほしいよぅ」
「うん!? 貴様は何者じゃ?」
「あたいはこの南の砦の指揮官をしている冒険者ギルドのココだよぅ。あたい達は降伏するよぅ」
「はぁ!? ココ!? 降伏!? 何を言ってるんだよ? これから……」
「ほほぅ…… どういうつもりじゃ!?」
「あたいはさっきからずっと戦況を見ていたんだよぅ。魔獣ゾルデアス様にはかなわないよぅ。だから降伏するだよぅ。砦の冒険者たちもみんな武器をおさめてるよ」
確かに城壁をみると冒険者達は武器をおさめ両手をあげている。冒険者の他に兵士やソフィアやポロンも手をあげいる。リックは砦を見て戸惑ってココに問いかける。
「ココ!? いったいどういうつもりだ?!」
「冒険者は強いものにつくんだよぅ」
「裏切るつもりか…… ならいくらココでも……」
リックはココを睨み右手に持った剣に力をこめた。
「えっ!?」
顔をリックに向けたココは、ウィンクをして笑顔になった。
「ココ…… なにか考えが!?」
「シー! 声が大きいよ。ちょっとだけあたいとシーリカに任せるんだよぅ」
小声で話すココの表情は自信にあふれている。リックは少し躊躇したが、ココを信じ剣を鞘におさめ彼女と同様にひざまずいた。
「なかなかいい心がけじゃな」
魔獣ゾルデアスは二人が並んで、ひざまずいてるのを見て満足そうに笑っている。
「では、忠誠の印として王国の聖女シーリカより、魔獣ゾルデアス様への捧げものがあります」
「ほぅ……」
「おーい。城門を開けるんだよぅ」
立ち上がって振り向いたココは両手を振った。ゆっくりと砦の門が開いた。扉が開くとブラックタートルの頭の上に乗ったシーリカが見える。ブラックタートルの背中に大きな樽が三つ、くくりつけてありハクハクとエメエメがそれを支えている。
ブラックタートルの後ろにヴァーミリオンスネークもおり、ブラックタートルと同様に背中に樽を二つ括り付けられていた。シーリカはヴァーミリオンスネークからも、ブラックタートルと似たような石を預かっており祈りを捧げることでいつでも具現化できる。
ブラックタートルはゆっくりと魔獣ゾルデアスの前までいくと。頭の上にシーリカを乗せたまま、顔を魔獣ゾルデアスに近づけるように前にだした。シーリカはブラックタートルの上で魔獣ゾルデアスに頭を下げる。
「おい。そこの子犬と猫はまさか?」
ブラックタートルの背中で、樽を支えるハクハクとエメエメを見て、魔獣ゾルデアスがブラックタートルに尋ねる。
「はい。この者達はかつて僕と一緒に戦った守り神の子孫でございます。みな魔獣ゾルデアス様に降伏いたします」
四つの守り神すべてが降伏すると聞いて、魔獣ゾルデアスは満足そうにうなずいた。続いてシーリカが魔獣ゾルデアスに話を始める。
「あゎゎゎ、私は現在この地を治めるグラント王国の聖女シーリカでございます。これは魔獣ゾルデアス様に貢物でございます」
「このにおいは!? まさか?」
「はい。魔獣ゾルデアス様の大好物のブドウ酒でございます」
魔獣ゾルデアスの五つの首は、シーリカの口からでたブドウ酒という言葉に喜んでいるようだ。ブラックタートルが魔獣ゾルデアスの顔を見てニッコリと笑った。
「ココ、シーリカ、白銀狼、翠球山猫! 準備をしなさい」
「あゎゎゎ! はい」
「わかったよぅ」
「わかったにゃ!」
「わかったぞよ!」
ココとシーリカが、ヴァーミリオンスネークと、ブラックタートルの背中に乗った酒樽を下して、魔獣ゾルデアスの首の前に並べる。並べられた樽の蓋をエメエメとハクハクが外していく。樽にはエメエメとハクハクが咥えて、開けられるように取ってみたいのがついていた。樽になみなみと注がれているブドウ酒をみて、待ちきれないといった様子の魔獣ゾルデアス。
すべての樽の蓋が開けられると、ブラックタートルは魔獣ゾルデアスに向かって、にっこりとほほ笑んだ。
「さぁ、どうぞお召し上がりください!」
「そうか!? ははは! 数千年も寝ておったらお主も物分かりがよくなっのう」
魔獣ゾルデアスの頭たちは、いっせいにブドウ酒の樽に舌を伸ばした。舌を頻繁に動かして貪るように酒を飲んでいる。
「あぁ……」
リックに向かってココが、右腕を上下に動かし、立ち上がるように合図をする。リックはうなずいてゆっくりと立ち上がった。魔獣ゾルデアスの酒を飲む、勢いはすさまじくブドウ酒が地面にこぼれていた。
シーリカと四つの守り神がゆっくりと下がっていく。ココはブドウ酒を飲む魔獣ゾルデアスを笑顔でみつめている。
「「「「「がはっ!?」」」」」」
ブドウ酒を飲んでいた魔獣ゾルデアスが急に苦しみだし、ブラックタートルを睨みつけた。
「おっおぬしら…… ブドウ酒に…… なっ何を混ぜた!!!!!」
にっこりと笑うブラックタートルが横を向く。ココがゆっくりと歩きながら前に出る。
「へへ、左から順に、麻痺毒、睡眠毒、出血毒、幻覚毒、石化毒、だよぅ」
「最初から…… このために酒を!?」
「そうだよぅ。あんたの好物をブラックタートルから聞いたからね」
ココがバカにしたように空いた瓶を持って、魔獣ゾルデアスの頭の前で、空いた瓶を見せびらかす。
「しかも毒は味が濃く酔っ払って味覚が狂うお酒に混ぜるのがいいからちょうどよかったよぅ」
「なめおって! この!」
魔獣ゾルデアスの体がうっすらと紫に光り出した。苦しそうな顔をしていた五つの頭が、元に戻りココを見てうっすらと笑っている。
「どうじゃ! 我に人間風情の毒など効くはずが……」
「ふふ…… 全員攻撃だよぅ! 武器を取って!」
ココが合図をすると一斉に矢が放たれる。そして城門からミャンミャンが率いる、兵士や冒険者が突撃してくる。リックは剣を抜いて構えた。
「小癪な!? ぐはぁ!? 血が……」
左の首は麻痺でしびれ、左から二番目の頭は眠り、真ん中の頭は血を吐く。左から四番目の頭は叫びながら、何も地面を威嚇し続けて、左から五番目の首は首が徐々に石化が進行していく。
左から五番目の首はタンタン達が投石機から、発射した石に当たり首のがぽっきりと折れたバラバラに崩れる。
「クソ! 早く。復活を……」
魔獣ゾルデアスの体が紫に光りだした。しかし、光はすぐにおさまり、首は崩れたまま時間が経過しても再生しなかった。真ん中に首は口から血を流し、その光景を見て驚愕の表情を浮かべている。他の弱っている首たちも、兵士や冒険者たちの攻撃を受けて苦戦している
「なぜじゃ!? なぜ!? 回復せんのじゃ!?」
「あゎゎゎ! 毒だけではなくあのお酒には光の聖杯に注いだお水をいれてあります」
「光の聖杯の水じゃと!?」
「あゎゎゎ! そうです。光の聖杯は正しい手順で飲まないと罰があたります。そう…… 罰とは加護が亡くなり光の力を失うこと…… 光の力をうしなったあなたはもう再生されません」
「なっなんだと……」
「しかも、光の聖杯のおかけで毒の効果も倍増だよぅ! だから普通ならあんたに効かないような毒もきいたんだよ」
シーリカがブラックタートルの上でほほ笑んで、ココが腰に手を当てて得意げに笑う。苦しむ魔獣ゾルデアスの頭に、ココが短剣を投げると、彼女の短剣が少し下に突き刺さった。
「ぐぁ! こっこんなもの!?」
ココは攻撃が終わると、シーリカの手を引いてブラックタートルから、下して彼女を砦へと連れて戻る。
「後は頼んだよぅ!」
「さぁ! みんな! 弱ってる魔獣ゾルデアスを一気に倒すんだ!」
「おう!」
「行くにゃ」
「任せてください!」
ブラックタートルの合図でヴァーミリオンスネークが、麻痺で寝ている首にかみついて締め上げていた。
「フニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
幻覚を見ている左から四番目の頭には、エメエメが大きな声で鳴いてさらに混乱させている。エメエメが疲れると、ハクハクと交代して今度はハクハクが遠吠えで混乱させる。ミャンミャンと兵士達は寝むった頭に攻撃を加える。魔獣ゾルデアスは真ん中の頭を残して次々に倒れていく。
「こうなったら……」
残った魔獣ゾルデアスに首が周りを見ながら悔しそうにつぶやくと、大きく左右に
「キャッ!」
「うわああああああああああ!!!」
暴れる魔獣ゾルデアスに、ミャンミャンや守り神たちは吹き飛ばされてしまった。
「みんな! 下がれ!」
「でも……」
「大丈夫。俺がやる……」
リックはミャンミャン達を下がらせる前に出て一人で魔獣ゾルデアスへと向かって行く。魔獣ゾルデアスの十メートルほど手前で止まったリックは右腕を伸ばし剣先を魔獣ゾルデアスへと向け口を開く。
「決着をつけようぜ…… ゾルデアス!!!!」
ゆっくりと腕を下して構えるリック、その表情は自信に満ち余裕なのかわずかに口元が緩んでいる。
余裕の表情を見せるリックに魔獣ゾルデアスの心が怒りに満ちていく。魔獣ゾルデアスは自分の圧倒的な力で人々が恐怖におののく姿みたかった。だが、見せられたのは自分が恐怖におののく姿だった。こうなったら彼にもうどうでもいい。この大陸を消し炭のように消し去ると決意する。
「貴様…… このまま貴様の国ごと吹き飛ばしてくれる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 全力破壊光線!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
魔獣ゾルデアスの全身が、紫色に強烈な光をはなち、口を大きく開く。リックに向かって巨大な破壊光線が魔獣ゾルデアスの口から発射された。直径数十メートルはあろうかという巨大な光線は空や平原から見える地平線の向こうまで染めていく。
「速さ…… 威力…… 本当に全力ってわけか」
高速で迫って来る光線をジッと見つめながらリックがつぶやいた。右手に持った剣を力強く握りしめた。自分の間合いに入るまで、剣先を下に向け構え光線を引き付けるリック。
「でもな。俺には通用しねえんだよ!!!」
叫びながら目をカッと見開いて剣を振り上げた。光線とリックの剣がぶつかりあう、リックの剣は鋭く伸びて行き光線を切り裂きながら弾く。リックが剣を振りぬくと、破壊光線は上空へと向きを変え、空に向かって行きながら七本に裂けた。
「ばっばかな…… 破壊光線が……」
魔獣ゾルデアスは人事られないと言う表情で声を震わせている。リックは満足そうに空に伸びていく七本の光線を見つめている。
「しまった! みんな! 逃げろ!」
振り向いて叫ぶリック。割れた破壊光線が途中で勢い失い、折れ曲がるようにして、砦へと落ちていく。リックは慌てて走り出すが間に合いそうにない。
「任せてください!」
「えっ!?」
ブラックタートルが後ろ足で地面を蹴って、手足を浮かせて回転しながら飛び上がった。回転移動しながら、ブラックタートルは甲羅に手足と首を甲羅におさめた。甲羅の手足が出ていた穴から、炎がとびだして加速しながら砦の上へと飛んでいく。
砦の上空とブラックタートルの甲羅に光線がぶつかった。
「くう!」
空中で破壊光線とブラックタートルが激突し爆発が起こった。激しい音と爆風が吹き付け城壁の一部が破壊され、黒煙がブラックタートルを覆って見えなくなった。
黒い煙が消え一部が焦げたブラックタートルの甲羅がフラフラと城門の前へと落ちた。ミャンミャンがすぐにブラックタートルの元へ駆けていく。
「ねえ? 大丈夫なの!?」
「ふぅ…… はい。リックさんが光線の威力を削ってくれましたから!」
ミャンミャンの声に反応して、煙をだしているブラックタートルの甲羅から、手足と首と尻尾をだし、ブラックタートルが返事をした。振り返ったミャンミャンはリックに向かって手を振ってブラックタートルが無事だと合図する。リックは左手を上げミャンミャンに答える。
「なっ!? うおおぉぉぉぉーーー! なぜだ! なぜだ! なぜだああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
叫び声が聞こえる。リックはミャンミャンに向かって、小さくうなずくと背中を向けゆっくりと歩き出した。
魔獣ゾルデアスの頭は破壊光線で力を使いはたしたのか、地面に顎をつけ横たわっている。目の前にリックが立つと、目を大きく開いた。
「貴様は何者だ? なぜ我が破壊光線を防げるのだ!!!!?????」
「知らねえよ。グラント王国第四防衛隊リック・ナイトウォーカー。何者も何もただの兵士だ」
「たっただの兵士だと……」
「あぁ。一応騎士でもあるけど」
小声でつぶやいたリックは飛び上がった。腕を引いた彼は魔獣ゾルデアスの額に剣を突き刺した。リックの剣は魔獣ゾルデアスの額を貫く。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
悲鳴がし平原にこだまする。剣を突き刺された魔獣ゾルデアスの瞳から生気が抜け真っ白になる。剣から手をはなしてリックが着地した魔獣ゾルデアスは完全に動かなくなった。魔獣ゾルデアスを見つめながらリックは小さくうなずいて右手を上げた。彼の姿を見た、兵士や冒険者たちから、大歓声があがるのだった。