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第225話 冒険の終わりはハッピーエンド!?

 モリトール村へと戻ったリック達、先頭のポロンが宝箱をかかえ。誘拐されたパロメを連れたリック達に、村の人々は騒然としていた。リック達はモリドール男爵の部屋までやてきた。兵士から報告を聞いたのか、慌てて部屋へと入って来たモリドール男爵は、すぐにパロメを見て驚いて声をかける。

 

「パッパロメ!? その格好はいったいどういうことだ? お前は亡霊騎士(ゴーストナイト)に……」

「ごめんね。パパ…… 私はエディの屋敷を守るために亡霊騎士(ゴーストナイト)をやっていたの。あの日パパが見た亡霊騎士(ゴーストナイト)も私よ」

「えっ!? あぁうん…… まぁとにかく無事でよかった」


 複雑な顔でモリドールは、パロメを軽く抱きしめると、リック達に笑顔を向けた。だが、エディを見る目だけはきつく、汚い物をみるような表情をする。


「お主たちよくやってくれた。パロメを戻ったし…… だが、エディ! お主は許さん!」

「まっ待ってください! 僕は屋敷を買い戻しに……」

「はっ!? 買い戻すじゃと? はん!? お主、金はあるのか?」


 エディに詰め寄って睨み付けるモリドール、エディは慌てることなく、落ち着いた表情でポロンに声をかけた。


「ポロンさんお願いします」

「わかったのだ!」


 ポロンが宝箱を地面に置いて、開くと大きな宝箱の中には、金貨が敷き詰められていた。あふれんばかりの金貨にモリドールは驚きの表情を浮かべている。


「なっ!? この金は? どうして?」

「知り合いに借りました。僕とパロメの契約では所有者が代わっても買い取った倍のお金で買い戻せるはずです」

「クッ…… ええい! 契約は無効じゃ! こっこいつ、エディをひっ捕らえろ」

「えっ!? つっ罪はなんですか? お嬢様も無事ですし……」

 

 モリドールがエディを指さし、兵士に命令を出すが。兵士達は躊躇して動けない。エディ前にポロンとタンタンと、ナオミとエドガーの四人が、来てを守るように立つ。


「モリドール男爵やめるのだ。契約は有効なのだ」

「はっ!? 子供がなにをいうのか! 黙りなさい!」

「ふぇぇぇ! 違います。ポロンは子供じゃありません。王立第四防衛隊のポロンです。立派な兵士です」

「そうですよ。モリドール男爵! これ以上もめると王国の治安統括組織である、ビーエルナイツに仲裁してもらうことになりますよ?」

「なっ!? エルザ卿にだと……」

「ビーエルナイツは厳しいですからね。いくら貴族でも契約を不当に破棄したら最悪の場合はここの統治権を失うことになりますよ」

「パパお願い…… 私…… エディのこと…… お願い」


 涙目のパロメさんがモリドールに懇願している。モリドールは驚いてパロメの様子を寂しそうに見つめていた。


「パロメ…… わかった。エディよ。わかった。森の屋敷はお主のじゃ…… 好きにするがいい!」

「はい。ありがとうございます」

「パパ! ありがとう!」


 モリドールは諦めたような声で、エディが屋敷を買い戻すことを承諾した。後日、契約をかわし金を払い、正式に森の屋敷は、エディのものとなった。

 リック達はモリドール男爵の邸宅を後にした。しかも、エドガーとナオミとタンタンとミャンミャンには、謝礼でかなりの金額をもらった。リックとソフィアとポロンにも、報酬の話があったが、彼らは兵士の業務の一部なので報酬は受け取れない。


「ふぅ…… だいぶ道草食ったね」

「しょうがないわよ。エドガー! こういうのが冒険だからね」

「そうなのだ! 冒険なのだ」

「うん…… 僕四人で冒険するの楽しいよ」


 ベストウォールに戻る途中、四人は楽しそうに会話していた。

 翌日、祝福の泉の水を持ってリック達はこの旅の最終目的地であるウッドランド村へと向かった。

 ベストウォールからウッドランド村までは、馬車でも四日、徒歩だと二週間くらいかかる。時間がかかるので、ナオミの転送魔法で一気にウッドランド村まで向かう。

 ポロン達はナオミちゃんの転送魔法、リックとミャンミャンはソフィアの転送魔法でウッドランド村に向かう。ウッドランド村は王国の西の外れの太古の森にある村だ。太古の森は文字通り、大陸に古くからある森で木の背が高いうっそうとした森が広がり、ウッドランド村以降の森は未開の地となっている。リック達は昼間でも薄暗い森の細い街道に到着した……


「重いよ…… ナオミ姉ちゃん!」

「なにが重いですって!? エドガー覚えてなさい!」

「わっわっ!? ポロンちゃんやめて! 回さないで!」

「タンタンは軽いのだ!」


 声がしてリックが振り返ると、少し後ろでポロン達がこけていた。倒れたエドガーの上にナオミが尻もちをついて、倒れているポロンの上にタンタンが寝ていたが、ポロンがヒョイっともちあげて両手の上でクルクル回している。まだ、ナオミはあまり転送魔法をうまく使いこなせないようだ。街道を少し歩くと村が見えてくた。

 村には幹の太さ太い、大きな木が何本も立っていて、小さい光の玉が飛んでいるのがわかる。太い幹の木は巨大で高さは百メートル以上もありそうな木もあった。幹の太さはリック達が普段使う詰め所よりも太かった。

 

「すごい! 木がそのままお家になってるの?」

「そうなのだ。ここがウッドランド村なのだ!」


 ポロンが得意げに話す。ウッドランド村の木の根元には扉がついおり、ポロンの説明のよると大きな木をくりぬいて中に家が作られている。光がフワフワと浮いているのが見える。ポロンの説明によると、この光は大きな蛍で、飼いならされて村を照らしてくれるとのことだった。


「あっ!」


 ポロンがすごい勢いで一軒の家に向かって走っていった。その家の前には杖をついた大きな人影が……


「ポロン!? どうして? ここに? あっ!? 村長め…… 大げさに手紙に書いたな…… 僕は魔物に少し足をやられただけで全然平気なんだよ。うわ!」


 飛び上がってポロンが大きな人に抱き着いた。彼女が抱き着いた人は、丸い大きな体に短い茶色の髪に、丸く少し垂れた目をして口の周りにひげを生やした、優しそうな顔をした中年男性だ。緑色の兵士の制服にリック達と同じライトアーマーを身に着けている。

 彼がポロンの親代わりでウッドランド村の防衛隊隊長プッコマ・シェールツだ。


「ヒッグ…… プッコマ隊長…… ズズ…… わたし…… 大丈夫なのだ? グス…… 足は痛くないのだ? うわーん! 会いたかったのだーー!」

「ポロン…… そうか…… ありがとう……」


 泣きながらポロンが、プッコマにしがみついてる。彼女はやはり無理していたようだ。ナオミとエドガーが顔を見合わせて嬉しそうにして、ミャンミャンとタンタンの二人を見る表情がどこかやさしい。

 ソフィアも目に手をあて、リックはそっと彼女にハンカチを渡す。ソフィアはリックから受け取ったハンカチで涙を拭くのだった。

 リック達が近寄っていくと、優しくポロンを撫でていた、プッコマが彼に視線を向ける。


「ポロン…… この方たちは?」

「わたしの仲間なのだ! みんなプッコマ隊長なのだ!」

「仲間?」

「もう…… ちゃんと説明しなきゃダメだよ。ポロン……」

 

 リック達は一人ずつ自己紹介をし、エドガーが今日来た目的をつげる。


「そうですか…… みなさんで私の為に…… 祝福の泉を…… ありがとうございます」

「ポロンはいっぱい頑張ったですよ。いっぱいほめてあげてくださいね」

「はい! ありがとうなポロン」


 プッコマはポロンの頭を優しく撫でていた。リック達はすぐにポロンの家に通された、ポロンの家は村の東の大きな木の根元に扉がついた家だ。ポロンの家につくとリック達はリビングに通された。椅子に座ったプッコマにポロンが嬉しそうに祝福の泉を取り出して渡す。


「プッコマ隊長! これを飲むといいのだ」

「あぁ、わかったよ。ありがとう」


 コップに注がれた、祝福の泉の水にプッコマが口をつけた。すぐにすごい驚いた顔でプッコマがポロンを見た。

 

「え!? これはすごい! もう治ったよ」

「ほんとのなのだ?」

「うん! みてみてポロン!」


 立ち上がって杖なしで膝を曲げたりして動いてる姿をポロンに見せてる。ポロンが渡した祝福の泉を一口飲んだだけで、プッコマのケガは治ったようだ……


「いたた……」

「無理しちゃダメなのだ! ねんねなのだ」

「いやだから大丈夫だって」

「ダメなのだ!」


 痛みが残っていたのか、足を押さえたプッコマがしゃがむと、ポロンが頬を膨らませてベッドに寝るように言っていた。大丈夫だと言い張るプッコマはポロンに怒られていた。しかし、怒られているプッコマさんはすごい嬉しそうだった。ソフィアがリックの顔を覗き込んだ。


「あぁやって無理して心配かけるのはリックと一緒です」

「えぇ!? 違うよ!」

「一緒ですよ!」

 

 いたずらに微笑むソフィアに、リックは不服そうに口をとがらせるのだった。

 

「ほらこっちに寝るのだ」


 ポロンがプッコマを部屋へと押し込んでる。体格が大きく、メリッサよりも身長のあるプッコマだが、力じゃポロンには勝てないようだ。


「うん!?」


 リック達がいるリビングには、玄関の扉とポロンがプッコマを押し込んだ部屋の扉と、それともう一つ扉があり、まだ部屋一つあるようだ。おそらくポロンが、ここに居る頃に使っていた部屋だろう。リックはもう一つの部屋の扉を指してポロンに尋ねる。


「ポロン、こっちはポロンのお部屋?」

「そうなのだ! わたしのお部屋なのだ!」


 笑顔でリックにうなずくポロンだった。


「ポロンの部屋はポロンが居た頃のままにしてあるよ」

「プッコマ隊長は寝てなきゃダメなのだ!」

「わかったよ」


 部屋に押し込められたプッコマさんが顔を出して、ポロンが居た頃のままだと告げたが、すぐにポロンにまた部屋に押し戻される。エドガーがポロンの部屋を見つめすぐに口を開いた。


「あっあの!? ポロンちゃんの部屋って入ってもいいの?」

「うん? いいのだ」

「ちょっと待って! なんでエドガー君がポロンちゃんの部屋に行くんだよ! 僕も行く!」

「くおら! エドガー! あんたなんでポロンの部屋に用があるのよ!」

「くっ苦しい……」

「タンタン、あんたもよ! 何しにいくの!? 用事ないでしょ? それに行くならポロンちゃんと一緒よ!」


 部屋がポロンの居た時のままで残ってると聞いて、タンタンとエドガーが部屋に入ろうとして、ナオミとミャンミャンにめちゃくちゃ怒られていた。ウッドランド村にいる間は、ポロンはずっとプッコマさんから離れなかった。プッコマは少し恥ずかしそうだったけど、ずっと嬉しそうに笑顔をポロンに向けていたのだった。

 リック達がウッドランド村に帰ってから数日後…… 勤務が終わり、寮に戻ったリック達は夕食を終え、まったりと過ごしていた。ポロンにまたプッコマからの手紙が届いたようで、ソフィアに読んでもらうためにまた持ってきた。

 ソフィアの膝の上に座り、二人でプッコマさんの手紙を開きソフィアが読む。


「プッコマ隊長のお手紙はなんて書いてあるのだ?」

「リック……」

「なに!? どうしたの!?」


 ソフィアがポロンを膝の上から、おろして立ち上がり気まずそうに、プッコマからの手紙をリックに見せてくる。プッコマの手紙には、ポロンの体調を心配する内容とか、応援してるとか暖かい言葉が並んでいた。


「うん。やっぱりポロンの事が心配なんだね……」

「あの…… 追伸を……」

「えっ!? なっ何これ!?」


 リックが手紙の追伸に目をやって声をあげた。

 

「(うわぁ。本当になんだよこれ…… タンタンはいやらしい男だから近づくなとか、エドガーは将来有望だが、あのナオミという女とできてるぞ気を付けろ。あと、お前が好きだと言っていたリックは女がすぐ近寄って来る。信用するな! ミャンミャンという女が狙ってるし、おそらく他にも女がいるだろう。それにもうソフィアというエルフと大分関係が進んでるぞ! と追伸に書いてある)」


 プッコマの手紙の追伸に、ナオミ達やリックとソフィアの事について書いてあった。わずかな時間しか滞在できなかった、リック達の関係を的確に見抜くとは、さすが防衛隊の隊長といったところか。困った顔でソフィアを見たリック。


「こんなのポロンに言えないよ」


 ソフィアがリックに、同意し力強くうなずいた。


「どうしたのだ? ソフィア? お手紙を読んでほしいのだ」

「えっと…… リックどうしましょう?」


 ポロンがリック達の元へとやって来て首をかしげる。ソフィアに助けを求められたリック、とっさに彼は適当に嘘をつく。


「こっこれからもみんなと仲良く元気に過ごせってさ!」

「おぉ! わかったのだ!」


 リックはポロンの頭を撫でながら声を震わせ嘘をつくリックだった。ポロンはうれしそうに手をあげてリックに返事をした。満足したのかポロンは二人に背を向け戻っていく。


「いいんですか?」

「ポロンはこれでいいよ。今はまだね」

「はい。そうですね」


 笑顔でうなずいて返事をしたソフィアだった。リックは嬉しそうに歩くポロンに微笑むのだった。

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