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第218話 小さな兵士への依頼

 鍛冶屋から戻ったリック達は普通に任務をこなしていた。ポロンはプッコマの事が気になるのか、ずっと元気がなく過ごしていた。

 翌日。昼過ぎにポロンだけがカルロスの席に呼ばれた。


「隊長さん。なんかようなのだ?」

「ポロン。お前さんに依頼だよ」

「ほぇ!? わたしに? 誰からなのだ?」

「うん…… えっとね。エドガーとナオミちゃんからだよ」

「おぉ!? エドガーとナオミからの依頼なのだ? すごいのだ」


 茶を飲もうとしたソフィアが手を止めて、リックに驚いた顔を向けた。リックは隣に座ったソフィアと顔を見合わせ小さくうなずいた。彼はポロンとカルロスを指さし、リックとソフィアはこっそりと二人の会話に耳を傾ける。


「エドガーとナオミちゃんが怪我を治せる祝福の泉の水を取りに行って、ある人に届けたいから護衛をしてくれってさ」

「おぉ! わかったのだ。誰に届けるのだ?」

「えっとね…… 王国の西にあるウッドランド村のプッコマ・シェールツさんだって」

「えっ!? プッコマ隊長にとどけるのだ?」


 ポロンが驚いた表情でカルロスを見た、彼は細い目をさらにほそくしてにっこりとほほ笑んだ。


「(そっか…… ナオミちゃんとエドガーが。昨日の話を聞いて二人でポロンの為に考えてくれたんだろう。よかったな。ポロン)」


 エドガーとナオミがポロンを気遣ってくれたことに感謝するリック。だが、ポロンは悲しそうな顔をして考えていた。


「無理なのだ…… わたしはプッコマ隊長に会えないのだ」

「頼むよ。ポロン! あんたナオミと一緒に行ってあげてよ」


 ポロンの背後に近づいたメリッサが、彼女の頭を撫でながら声をかけてる。振り向いたポロンが驚いた様子で、メリッサを見上げ首をかしげた。


「メリッサがどうして頼むのだ?」

「ごめんねぇ。どうしてもナオミが行くって聞かないからさ。あたしがポロンが一緒なら良いって言ったんだよ」

「だったらメリッサが行けばいいのだ! 譲るのだ!」

「えっ!? あっあたしは…… そりゃあ…… それは…… えっと…… 忙しいからね」


 腕を組んで慌てた様子で、メリッサがポロンに答えてる。


「(メリッサさんウソ下手すぎでしょ……)」


 リックが首を横に振った。メリッサは昨日にナオミに泣きながら、ポロンをプッコマ隊長のところに連れて行きたいとせがまれた。彼女はナオミがウッドランド村に向かうのは反対だったが、渋々ナオミに同意しポロンを同行させる方法をナオミに伝えたのだ。リックとソフィアの向かいに座る、イーノフは苦笑いしながら、ナオミに頼まれメリッサを説得した際に腫れた頬を押さえていた。

 リックは立ち上がり、ポロンの肩に手をおいて声をかけた。


「それならポロンも行くしかないね。ナオミちゃん達を守ってあげないと!」

「でっでも…… プッコマ隊長と……」

「何を言ってんの? ポロン! あんたプッコマ隊長と約束したんだろ? 立派な兵士になるって! だったら王国民からの依頼は断ったらダメだろう」

「そうだぞ。お前さんね。正式な王国民の依頼なんだからな。ちゃんと受けなさい。これは命令だよ」


 カルロスとメリッサがほぼ同時にポロンを説得する。うつむいてポロンは少し考えてから顔をあげた。


「わかったのだ…… 行くのだ!」


 笑顔でうなずくポロン。カルロスとメリッサさんが、少し笑いながらやれやれといった様子で、顔を見合わせ笑うのだった。行くと決めたらやはりうれしかったのか、ポロンは笑顔でソフィアのところに行って準備をするから手伝えと言うのだった。


「ふぅ…… まったく強情で素直じゃないんだから……」

「ははは、一度決めたらなかなか変えないところは、お前さんと変わらんじゃないか。それに第四防衛隊(うち)に素直な隊員なんかいないよ……」


 カルロスの机に片手をついて、ため息をついたメリッサに、あきれた顔で笑いカルロスは話しかけていた。ポロンがメリッサを見て不思議な顔をした。


「でも…… リックとソフィアとナオミ達にしかプッコマ隊長との約束を教えてないのに、なんでメリッサが知ってたのだ?」

「えっ!? あぁ、それはナオミに……」

「メリッサさんは触った人の心を読めるですよ!」

「ほぇぇ!? メリッサは魔物みたいなのだ」

「そりゃあ。当たり前だよ。なんせメリッサさんなんだからな」

「こら! リック! あんた覚えてなよ」

「えぇ!? なんで俺だけ……」


 なぜか、最初に言ったソフィアではなく、リックの顔を睨みつけるメリッサだった。ポロンは笑いながらソフィアと一緒に護衛に行く準備を始める。

 

「ポロンちゃんが落ち込んでるって!?」

「えっ!?」


 いきなり詰め所の扉が勢いよく、開き叫びながらタンタンが一人で入って来た。タンタンはポロンのところに行き、彼女の両手を握りほほを赤くした。リック、カルロス、メリッサ、イーノフがタンタンに不快な顔を向ける。


「おぉ! タンタン!? どうしたのだ?」

「エドガーとナオミお姉ちゃんが冒険者ギルドに来て、ポロンちゃんの親代わりプッコマ隊長って人が怪我して落ち込んでるって聞いて…… 僕、居ても立っても居られなくて…… 大丈夫?」

「ありがとうなのだ。大丈夫なのだ! エドガーがプッコマ隊長のところまで護衛を依頼してくれたのだ」

「えっ!? 護衛って!? エドガーと行くの?」

「そうなのだ! ウッドランド村に行くのだ!」


 ポロンはタンタンにエドガーと二人でウッドランドに、向かうと誤解されるような言い方をする。ソフィアが困った様子で二人の顔を見る。嬉しそうに話す、ポロンにタンタンの顔がどんどんときつくなっていく。リックはタンタンの様子など、どうでもよく早くポロンから手を離せと念じている。


「おのれっ! クソドワーフ!!!!! ポロンちゃんに優しくして抜け駆けをするなんて…… ドワーフの癖に行動すばやいなんて…… リス耳……」


 エドガーを聞くに堪えない言葉で罵倒した後、怒り顔でポロンの耳をいとおしそうに撫でるタンタン。彼の奇妙な行動にリックはドン引きする。


「(もう…… タンタン。あのな。エドガーはポロンのためを思ってだと思うけど…… 君と違って節操なく獣耳の女の子に愛想を振りまくだけじゃないと思うのだが……)」


 リックはタンタンを見ながら首を横に振っている。


「はぁはぁ。タンタン君…… 待ってよ」

「ふぅふぅ…… 本当になんで一人で行っちゃうのよ……」


 エドガーとナオミの二人が、タンタンから数分遅れで、詰め所のやってきた。走ってきたのか二人は、詰め所の壁にもたれてかかって、肩で息をしていた。


「おぉ!! ナオミとエドガーも来たのだ」

「ポッポロンちゃん!?」

「エドガー! ちょっと…… ポロンにはもう伝わってるのかしら?」


 エドガーの腕の袖を引っ張り、ナオミが小声で話しかける。二人の様子を見たカルロスが声をかけた。


「あぁ。ポロンには君たちの依頼のことはもう伝えてあるよ」

「そうですか! よかったぁ!!!」

「あっ! エドガーーーー! どういうことだ? ポロンちゃんを護衛として連れて…… ポロンちゃんの親代わりの人のところになんか……」

「えっ!? ちょっとなんで怒ってるの?」

「なら丁度いいわ。タンタン君! あなたも一緒に行くわよ。私達とウッドランド村に」


 ナオミの言葉に、怒っていたタンタンが、目を大きく開いて止まった。


「えっ!? ナオミお姉ちゃんも行くの? それに僕も?」

「当たり前でしょ! なんたって私達はナエタポ冒険団なんだから! もう誘いに行ったのに急に走り出すだもんびっくりしちゃった」

「ごめんなさい。ポロンちゃんが心配で…… うん。行く! ポロンちゃんの為に頑張る。ありがとうエドガー君、ナオミお姉ちゃん」


 笑顔で話す三人、特にタンタンは、さきほどまでエドガーのことをクソドワーフと罵っていたのだが…… 段々と盛り上がった三人の声は、大きくなり見かねたメリッサがナオミに注意をする。


「ナオミ! あんた達いい加減しなよ。ここは騒ぐ場所じゃないよ」

「ママ…… ごめんなさーい。ねぇ!? みんな今から家のお店にこない。今日はお休みだからお店で今回の件の相談しよう!」

「ナオミお姉ちゃんのお家に行っていいの? やった!」

「わかった。僕はお店でやることがあるから、少し遅れていくよ。ナオミ姉ちゃん」


 エドガーとタンタンとナオミちゃんが楽しそうに話してる。ポロンはカルロスの机に近づいて自分を指した。


「わたしは行っても大丈夫なのだ?」

「リック、ソフィア、お前さん達はポロンを行かせても平気かい?」

「大丈夫です。ポロン行っておいで!」

「後は任せてください」

「そうか。ポロンお前さん行っといで」

「おぉ! ありがとうなのだ。行ってくるのだ」


 リックはポロンにいってらっしゃいと、手を振って送り出す。嬉しそうにポロンはナオミ達と一緒に詰め所から出ていった。勤務終了時間になると、向かいに座るメリッサがリック達に声をかけてきた。


「ふぅ…… リック、ソフィア、あの様子じゃポロンはうちに泊まるだろうから今日は二人で帰りな」

「そうですね。じゃあ、すいませんがポロンをお願います」

「お願いです」

「あぁ。任せときな」


 メリッサが笑顔で右手をあげリック達に答えるのだった。リックとソフィアは二人で帰ろうと立ち上がった。


「ソフィア、リック、帰る前にちょっと来てくれるかい」


 カルロスが帰ろうとしたリック達を呼び止めた。リックとソフィアはカルロスの机の前に並ぶ。


「わかってると思うが…… お前さん達は二人は……」

「あぁ。後から付いて行って四人の護衛するんですよね」

「リック! 話が早いじゃないか。じゃあ頼んだぞ! なるべく四人で解決させて手をだすんじゃないぞ」

「はい。わかりました」

「わかったです」


 前回四人で行った鉱山のクエストのように、二人はポロン達の護衛を指示された。リックとソフィアは二回目の護衛のポロンの護衛になる。

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