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第217話 故郷からの手紙

 とある日の夜。今日も無事に怪我も無く勤務が終わり、リック達は家へと帰って来ていた。

 ポロンとリックの二人が、食卓につきキッチンから料理を持ったソフィアが、出て来るのを今か今かと期待した表情で待っている。


「今日はニボーフィッシュを焼きました!」

「ほぇー! 美味しそうなのだ!」

「本当だね!」


 キッチンの奥からソフィアが、トレイを持って自信満々な顔でテーブルに丸い皿を置いた。置かれた皿には香ばしく、焦げ目のついた黒い斑点がある焼き魚が置かれていた。

 皿を食卓に置いたソフィアはすぐに振り返ってキッチンへと戻ろうとする。


「まだ食べちゃダメですよ。仕上げが…… ポロン!」

「バレたのだ!」


 ソフィアは首だけ食卓に向け、リックとポロンにまだ食べるな注意した。だが、その時にはすでにポロンが、テーブルの上に身をのりだし、魚に手を伸ばしていた、彼女はソフィアと目が合ってしまったという顔をする。


「はぁ…… ポロンダメだよ。作ってくれたソフィアがどうぞって言うまで食べちゃダメなんだからね。それにみんなで一緒に食べた方が美味しいよ」

「わかったのだ……」


 リックに注意され、少しポロンは残念そうに座りなおす。ソフィアが優しく注意するリックをジッと見た。

 

「リックはちゃんとポロンを見ててくだささい!」

「えぇ!? ごっごめん……」

「リックが怒られたのだ!」

「もう! ポロンがつまみ食いしようとするからだろ!」


 ソフィアはリックにポロンを、しっかり見るように言って、キッチンへと戻っていった。恥ずかしそうにするリックになぜかポロンは嬉しそうに笑っていた。すぐにソフィアがキッチンから、何やら瓶を持って戻って来た。彼女が持つ透明の瓶には、色とりどりの四角い野菜とトロットした赤い液体が入っていた。

 瓶を開けソフィアは、中の液体を丸い皿の魚にかけた。焼きたてのアツアツの魚の上に、かけられたソースは、ジューっという食欲をそそる音を立と湯気を立てる。リックはソフィアの瓶を指して彼女に尋ねる。


「ソフィア!? なにそれ?」

「ソフィア特製ソースです! さぁ食べますよ!」

「やったのだ!」

「うん。美味しそう!」

「ふふふ」


 特製ソースと聞いて目を輝かせる二人。ソフィアは二人を見て微笑む。ソフィアはフォークとナイフを使って、器用に魚を切り分け、取り皿に盛り付け二人の前に置く。


「じゃあいただきますです」

「いただきますなのだ!」

「いただきまーす」


 魚を取り分けたソフィアは、リックの隣に座り、三人で挨拶して食事が始まった。

 ナイフで魚を一口サイズにしたリックはフォークで斬った魚を持ち上げた。魚の身に赤色のソースはトロリとよくからんでいて、細かく刻んだ野菜がたっぷりとソースには浮かんでいる。

 顔に近づけると香草のさわやかないい香りと、焼かれた魚の身の香ばしさと、さらには熱い身かかったソースのジューという音が、合わさり彼の食欲は限界を超えた。もう待ちきれないとばかりにリックは魚を急いで口に運ぶ……


「うん! 野菜の甘みとピりッと辛いソースが…… 香ばしい魚によく絡んで…… うまーーーーーーーーい!」


 絶妙な焼き加減で、ホロホロした柔らかい魚に、香りがよく少し酸味があるソースが絡まり、すごい美味で、リックは思わず声をあげた。


「うまいのだー!」

「ほんとうまいよ。ソフィア」

「よかったです。いっぱい食べてくださいね」


 言われなくてもいっぱい食べるぞ意気込むリックだった。


「あっ! ずるいぞ! 取りすぎだぞポロン!」

「早い者勝ちなのだ!」

「あー! もう!」

「ふふふ。大丈夫ですよ。無くなってもまだありますよ」


 リックとポロンは、魚を奪い合い、あっという間に皿は空になった。ソフィアは二人が食べるのを見つめ嬉しそうにほほ笑むのだった。


「ごちそうさまー! ソフィアありがとう美味しかったよ」

「おそまつさまでした」

「ご飯おいしかったのだ! ごちそうさまなのだ」

「ほっぺについてますよ」


 ソフィアがポロンのほっぺたについた魚を取って口に入れていた。リックはまだまだ子供だなとポロンとソフィアを見て笑っていた。


「えっ!? なに!?」

「リックもついてるです。子供ですね」

「ちょっと…… 恥ずかしいよ」

「いつも私にやるから仕返しです!」


 ソフィアがリックのほっぺたについた、魚を取って口に入れて嬉しそうな顔をするのだった。

 食事が終わり、ソフィアは食器を片付け、キッチンで洗い物をしている。この後は寝るまで、家でまったりとくつろぐだけだ。


「ソフィアはいま話しかけて大丈夫なのだ?」

「大丈夫ですよ。どうしました?」


 キッチンの流しで洗い物をしている、ソフィア近くにいってポロンが話しかけていた。

 

「後でソフィアにお願いしたいことがあるのだ」

「わかりました。もうすぐ洗い物おわりますからね」

「やったのだ! テーブルで待ってるのだ!」

「わかりました」


 嬉しそうにポロンが、キッチンから飛び出し、リックの前を通って自分の部屋へとむかった。すぐに手に手紙をたずさえポロンが戻ってきた。


「(あぁ。プッコマ隊長さんからの手紙がきたのか……)」


 ポロンの親代わりである、ウッドランド村の防衛隊隊長プッコマから手紙が来たようだ。ポロンには定期的にプッコマ隊長から手紙が来る。まだ、字がよく読めないポロンは、リックかソフィアに手紙を読んでもらっている。ちなみに、ポロンとソフィアのどっちが読むかは、特に決まっておらず、その日のポロンの気持ちによって決まる。ソフィアが洗い物を終えてテーブルに戻った。


「ソフィアにお願いなのだ。プッコマ隊長からの手紙を読んでほしいのだ」

「はい。いいですよ」


 嬉しそうに笑って、ソフィアの膝の上に座り、ポロンが手紙を読んでもらっている。

 

「どうしたのだ? ソフィア?」

「ポロン…… これはプッコマ隊長さんからの手紙じゃないですね」

「ちがうのだ? なんでなのだ? プッコマ隊長になにかあったのだ?」

「任務中に怪我をしてしまったみたいで、今回は手紙を書けないからウッドランド村の村長さんが代わりに手紙をくれたみたいです」


 ソフィアの言葉にポロンがうつむき、リス耳が前に倒してしょんぼりとしてる。やさしくポロンの頭をなで、ソフィアが心配そうにしてる。リックは黙ったまま二人の様子を心配そうに気に掛ける。


「プッコマ隊長…… 心配なのだ……」

「命に別状はないみたいですけど…… しばらく起きられないみたいです」

「ポロン!? お休みをもらってお見舞いに行ってきなよ」

「そうですよ。プッコマ隊長さんも喜び……」

「ううん…… ダメなのだ…… プッコマ隊長と約束したのだ。わたしは立派な兵士になるまでウッドランド村には帰らないのだ!」

「あっ! ポロン!」


 ソフィアの膝から泣きそうな顔した、ポロンが飛び下りて部屋に駆けて戻っていった。心配したソフィアがポロンを、部屋に追いかけて行った。それからポロンは朝まで部屋から出てこなかった。

 翌日、ポロンはいつものように、起きて元気にしていたが、時折うつむいて心配そうな顔をしていた。リックはポロンを心配していたがなかなか声がかけられずにいた。詰め所に出動したリックは席につく。しばらくすると、ソフィアがポロンを連れてリックのところへとやってきた。


「今から親方さんのところに行くですよ。リックも付き合ってください」

「あれ!? エドガーのところに? なんかあったっけ?」

「旅行の時に使ったポロンの鎧をメンテナンスにでしてもらったんですよ。他にもいくつか雑用があるんで来てください」

「わかったよ」


 返事をしたリックが立ちあがった。りっく達は詰め所の裏通りにあるエドガー鍛冶店へとむかう。


「あっ! ポロン!」

「ナオミちゃんです」

「ナオミなのだ! こんにちはなのだ……」

「まだおはようだよ。ポロン! あれ!? ポロン達もエドガーの鍛冶屋に行くの?」

「そうだよ」

「私も今日のお弁当を届けるの! 一緒に行こう!」


 裏通りの鍛冶屋の前にナオミがおり、ポロンを見て笑顔で声をかけてきた。リック達はナオミちゃんと一緒にエドガー鍛冶店へと入る。

 石造りの鍛冶屋について扉を開けると店内の棚には武器や防具が飾られ、店のカウンターには、白い立派な髭を生やした老人が眠そうに座っていた。


「親方さんをお願いします」


 ソフィアが声かけると、静かにうなずいた老人はゆっくりと奥の鍛冶場に消えていった。老人は鍛冶屋のエプロンを着けた、優しそうな黒い瞳のお爺さんである。ただ…… その瞳の奥の眼光はまだまだ力強い。この老人は実は……


「いらっしゃい。リックおにーちゃん!」


 エドガーが元気よく鍛冶場から出てきた。慌てて出て来たのかほっぺたにすすがついたままであう。


「えっと…… ポロンちゃん。ちょっと待ってね」


 エドガーがポロンを見て、嬉しそうにしゃがんでカウンターの下へ隠れた。


「この間はお土産ありがとうね。これ…… お礼!」

「おぉ…… ありがとう」

「あれ!? ポロン…… うわ!」


 カウンターの下から取り出した、二つのクルミクッキーの箱の一つを、エドガーはポロンに渡す。クルミクッキーはポロンの好物で、ドンバル国への旅行でポロンが、エドガーの土産に買ってきた、星の砂浜の砂が入った瓶詰めの礼だった。

 エドガーの行動にナオミが彼の胸倉をつかんで締め上げてる。


「私も一緒に買って渡したのになんで!? ポロンだけにお礼があるの!?」

「ナッナオミ姉ちゃん…… 苦しい」

「いいからさっさと答えなさいよ。なんでポロンだけなの?!」

「まぁまぁナオミちゃん!」

「フニャー!」


 慌ててリックがナオミを、エドガーから引き離そうと手をかけると、横を向いたナオミはフーとうなって牙をむいて彼を威嚇する。以前にも似たようなことがり、リックはポロンにだけ渡したら、こうなるとわかってるのに同じ行動を繰り返すエドガーにあきれる。


「ナオミ姉ちゃんにもあるよ…… こっこれ……」

「あっそう!? なんだ。早く言いなさいよ!」


 苦しそうな顔をしてエドガーは、ナオミにもポロンに渡した物と同じものを渡す。


「(そういえば…… さっきカウンターから箱を二つだしてもんな。よかった。さすがエドガー…… 同じ間違いはしないな)」


 エドガーが必死にナオミちゃんに箱を渡そうとすると、ナオミは恥ずかしそうにし、彼から手をはなし上機嫌で箱を受け取るのだった。


「ポロン、エドガーにお礼を言わないとね」


 嬉しそうなナオミは、ポロンに礼をいうように促す。ポロンは少し元気なさそうな顔をエドガーに向ける。


「ありがとう…… なのだ……」

「あれ? どうしたの? ポロン元気ないみたいだけど?」

「実は……」


 ソフィアが二人に、ポロンの親代わりのプッコマ隊長が、怪我して寝込んでいることを説明した。話を聞いてナオミんがポロンの頭を優しく撫でる。


「ポロン…… 心配でしょ? お見舞いに行かないの?」

「ダメなのだ。約束したのだ立派な兵士になるまで帰らないのだ!」

「ポロンちゃん……」

「エドガー大丈夫なのだ。プッコマ隊長は強いのだ! わたしも心配してないのだ」


 心配そうにポロンを見つめる二人、ポロンは無理に大きな声で元気な振りをして答えていた。用事を済ましたリック達は、鍛冶屋から詰め所へと戻る。エドガーとナオミは帰る時もポロンを心配そうに見つめていた。

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