表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/263

第216話 さようなら師匠

 リーナと二人で通路を駆けていくリック。先ほどと同じで通路は真っすぐ伸びて曲がり角はない。これも前と同じで、通路の先には大きな扉があり、中に入ると天井の高く広い空間が広がっていた。ただ…… 前の部屋と違い床に赤い絨毯が引かれ、先には台座のようなものがみえた。


「あれ!? なんだ!? うわ!? まぶしい……」


 赤い光と青い光が突如発生し、台座の上でぶつかり合った。リックはまぶしく、腕を目の前かざす。光は中々消えず、リックはリーナを連れゆっくりと二人で光に近づく。


「えっ!? クソ!」

「キャッ!」


 ぶつかり合っていた光が大きくなって爆発した。大きな音がして爆風がリックとリーナさんを襲う。とっさにリックはリーナに抱き寄せ、爆風に背を向け、足を踏ん張って耐える。


「あぶねえな…… あれ!?」


 振り返ったリックの前に、マントをつけた小さな人が、吹き飛ばされていて尻もちをついていた。

 

「クソ! ジックザイル…… 僕の話を聞くんだ!」


 吹き飛ばされてきたのはイーノフだった。イーノフの前には騎士の鎧を着けた白髪の老人ジックザイルが立っていた。


「フン…… 年老いた私に負けるとは腕が鈍ったな。イーノフよ」


 彼のシワが深く刻まれて顔はいやらしく笑い、目は細く青い鋭い目がイーノフを見つめていた。イーノフもジックザイルも、周りが見えてないようで、リック達に気づいおらず。互いにらみ合って緊張した雰囲気が漂っている。

 ジックザイルが剣を抜いてゆっくりとイーノフへ向かって歩いて来る。


「クッ……」


 起き上がろうとしたイーノフが、膝をつき。手に持った杖を地面につけ、何とか体勢を保っていた。すぐにリックとリーナが駆け寄り、リックはイーノフの肩を持って支える。


「大丈夫ですか!?」

「リック!? なんで君が!?」

「みんなが遅いから迎えに来たんですよ。それよりイーノフさんは何してるんですか?」

「ちょっとね…… 師…… ジックザイルに話があるんだ…… おっと!?」


 リックをみて笑いながら答えた、イーノフは支えなられながら立ち上がった。だが、リックが手をはなすと、すぐにふらついて倒れそうになる。リックはすぐにまたイーノフの肩に手をまわして支えて声かける。


「もう…… 無茶しないでくださいよ。リーナさん、イーノフさんをお願いします」

「はい」


 リーナにイーノフを任せたリック。彼女がイーノフの肩をささえるの見ると、リックはイーノフから手を離した。リックが前に出て、いつものように剣先を下に向け構えると、ジックザイルは驚いた表情をし彼を見た。


「お前は…… 確かリック…… 何年か前に森で会った時と比べていいツラになったじゃないか。殺すのが惜しいな」

「黙れ! お前を逮捕する!」

「逮捕だと!? 罪はなんだ? ここは我が騎士団の……」

「ジックザイル…… いや師匠…… メリッサやエルザさん達が戦っている魔物は合成魔物ですよね。ここで魔物と人間の合成をしたのはわかってます」

「そうだ! リリヤさんをここに連れてくればハッキリするぞ! お前が派遣した騎士達も俺達が逮捕してるしな」

「チッ! あの小娘はやはり殺してから廃棄すべきだったな」


 リックの顔をみて、ジックザイルがうっすらと笑った。だんだんとジックザイルの目が赤く妖しく光り始めた。


「あの目…… 幻惑魔法か……」

「リック! ジックザイルから離れるんだ!」

「同じ手を何度も食らうかってんだよ!」


 ソフィアから借りたハンカチを素早く、リックは目にあてて結び、さらにハンカチを当ててる目をつむり、完全に視界を閉じた。

 

「(フフ、ハンカチやっぱりお菓子くさいや。眼の前は真っ暗で何もみえないけど…… ソフィアの匂い…… 見えなくても怖いものなんかない)」


 視界が完全に暗闇に包まれリックの口元が緩む。


「リックさん!?」

「君は何を考えてるんだ!? やめるんだ」

「平気です。申し訳ないですが、リーナさんとイーノフさんは決着がつくまで黙っててもらえますか。集中しなきゃいけないんで」


 静かになったな。二人とも納得してくれたのだろう。リックは小さく息を吐いて集中し、神経を周囲に張り巡らせ右手に力を込めた。


「ははは! なんだ!? それで我が魔法を防ぐのはいいがどうやって私を攻撃する!?」


 ジックザイルの笑い声がリックに届く。彼は小さくうなずいた。


「(声は…… 右斜め前方からする…… 俺が目を見えなくしたから余裕をこいてるようだな? 足音が緩慢だぜジックザイルさんよ)」


 笑い声に紛れていたジックザイルの足音を聞くリック。足音が止まった。まだジックザイルは、リックの剣の間合いには入っていない。


「(あいつと気配と空気の流れは同じ…… おそらくジックザイルがゆっくりと手を引いて…… 魔力を感じるぞ…… 幻惑魔法の他に魔法を出そうしてるな)」


 わずかに感じる空気の流れと温度の違いと、音を察知してリックはジックザイルが何を行うのか把握していた。


「(やつの左手……)」


 空気が集約して魔力が集中していくのが感じ取るリックだった。少しずつ体を右斜めに向け足を少しまげたリック。


「死ねぇ! リック!」


 ジックザイルの左手からはなた、リックは空気の流れと温度と音から、大きな魔力が彼に向かってきているの感じとっていた。


「残念だよ。剣で攻撃された方が難しかったのに…… なっ!!!!」


 右斜め前から接近する、魔力の塊に体勢を低くし、左前方に二歩ほど踏み出した。リックの横を二メートルほどの氷の刃通り過ぎていき、彼の後方で地面に突き刺さった。


「えっ!? なぜだ!? 貴様」


 声を上げてリックが自分の魔法をかわしたことにジックザイルが驚いている。


「(かわせたみたいだな。後、声を出すと居場所がわかるぜジックザイルさんよ。あんたのでかい魔力は空気の流れでどこから発射してどう接近してるか感じられるんだよ)」


 ジックザイルの声を聞いて笑うリックだった。


「さぁ! 一気に終わらせてやる」


 リックは腰を落として魔力を感じた方へ駆け出す。右腕を引いて剣先を前に向けた。


「なっ!?」


 ジックザイルは、リックに反応し横へ移動し逃げた。しかし、自分の姿が見えないはずのリックが動いた方へと体を向けあっという間に距離を詰められる。驚愕の顔で迫り来る、リックをただ見つめるしかできないジックザイルだった。


「ここだーーーー!」


 ジックザイルの居場所に剣をつきだすリックだった。


「ぐははあああああああああああああああああああああ!!!!! なっなぜ…… なぜだあああああああああああああ!!!!」


 地面に金属の何かが落下する音がリックの耳に届く。ジックザイルの右肩に、リックの剣が刺さり、彼が持った剣を落としたのだ。リックは幻惑魔法の魔力が、消滅する気配を感じる。

 リックは小さくうなずいて、目隠しのハンカチを外した。ジックザイルが苦悶の表情を浮かべ彼を睨んでいるのが見えた。剣を抜いたリックは淡々とジックザイルの喉元に剣を突きつける。


「貴様!? どうやって…… 私の場所を……」

「ははは。音と気配と魔力だよ。特にお前の魔力は大きからな。素早く動いたところで魔力の残り香を感じ取れば追えるのさ」

「なっ!? そんなことできるわけ……」

「できるさ。ってかやってみせたろ? 俺は目をつむって戦うルールで、アイリスという勇者と戦争ごっこで遊びまくったからな。視界や聴覚の両方なくても右手が空気に触れてれば戦える」

「アイリスだと!? あのS1級の…… クソ!!!!」


 悔しそうなジックザイルを見てリックは笑いながら答えている。ちなみに目を隠して戦うルールは、アイリスがリックと実力が拮抗して負け始めた頃、あいつがどうしても勝ちたくて採用されたものだ。このルールは、魔法が使えるアイリスの方がかなり有利で、複数の標的に当たる攻撃魔法とかつかえば自動でリックを追尾してあたる。なので、リックは空気の流れや相手の魔法に温度変化などを感じ取って、攻撃するように練習した。


「リック!? 君は…… 本当にめちゃくちゃだよ」

「本当です。でも…… すごい素敵です」


 リーナに素敵と言われ照れるリックだった。リックは縄を取り出してジックザイルを見つめる。


「ジックザイル! お前を逮捕する!」

「ふははは…… やるな…… イーノフよ…… 良い後輩じゃないか……」


 笑って俺をみるジックザイル、もうあきらめたのか彼は、抵抗するそぶりをみせない。肩が負傷してあがらないジックザイルの手を、無理矢理につかみリックは縄にかけた。


「待ってくれ。リック!」


 リックの手首をつかんでイーノフが彼を止めた。リックは驚いた振り返るとイーノフは、申し訳なさそうな顔をする。


「すまないが、ジックザイルの身柄は僕に預けてくれるかな!?」

「なっなんでですか!?」

「申し訳ない。隊長やエルザさん達にも許可はもらってる……」

「えっ!? わっわかりました」


 リックはゆっくりとジックザイルから手をはなす。真剣な表情をしてイーノフがジックザイル前に立つ。ジックザイルは前に立つイーノフを見下ろして睨み付けていた……

 

「ジックザイル。ちょっと話をしよう」

「なんだ!? 落ちぶれた師を見てバカにする気か?」

「違うよ。そんなことするほど防衛隊は暇じゃありませんよ。あなた達が無駄な仕事をいっぱいくれますからね」


 表情を少し緩めたイーノフは手を腰につけた袋へと伸ばす。


「師匠…… これを……」


 腰につけた道具袋からイーノフが小さい瓶をだした。中には緑色のひかる液体みたいなのが入っていた。


「こっこれは……」

「あなたの孫…… エミリオ君の魂ですよ。いつかあなたと話す機会があったら…… 渡そうと持ってきました」

「エッエミリオ!? どうして!? おぬし!? いったいなんのつもりで……」

「これを持って私達の前から消えてください。師匠…… あなたなら彼を復活させるくらいたやすいでしょう?」


 笑顔でイーノフがジックザイルにエミリオを渡そうとした。せっかく追い詰めた、ジックザイルを逃がそうとする、イーノフにわけがわからず慌てた様子でリックが声をかける。


「イーノフさん!? 何を言ってるんですか?」

「いいんだ。リック…… これで…… 昔の真面目だったあなたに戻ってください」

 

 ジックザイルも事態がよく飲み込めず固まっていた。イーノフは話を続ける。


「あなたの借金はエルザさん達が、王国の借金として肩代わりしてくれるそうです。今までの罪は数少ない騎士団の功績と相殺してくれるそうです。ただし条件が一つあります……」

「うん!? エルザさん達が!? なんでジックザイルの借金の肩代わりを……」

「うん…… 二か月くらいスノーウォール砦に僕が通えば肩代わりしてくれるってさ……」

「えっえぇ!? それが条件なんですか?」

「エルザさんったら…… 後でおしおきです!」


 苦笑いでジックザイルが、イーノフを同情したような瞳で見て、リーナさんは怒って呆れた顔をしてる。皆の反応にイーノフがしまったという顔をした。


「あっ! 違う…… それは僕に出された条件で…… あぁもう!!!! リック! 話に急に入ってこないでよ……」

「えぇ……」

「うぉっほん!」


 イーノフは恥ずかしそうに咳ばらいを一度して、仕切り直してジックザイルの顔を真剣に見つめた。


「ジックザイル。条件は…… あなたにここの建設と軍団を作るように命令した人間を教えてください……」


 下水道にある施設を作らせた、人間を教えるというイーノフが出した条件に、うつむいて少しの間ジックザイルは考えこんでいた。


「そうか…… それが狙いか…… エルザとか言ったかあの女は一体…… まぁよい。ここを作れと命令したのは…… レ……」

「危ない!!!」


 黒い炎の玉が現れてイーノフとジックザイルを襲う。リックは体を投げしてイーノフに覆いかぶさり倒れ込んで床に転がった。


「いたた…… あっ!? クソ……」


 体を起こし振り返ったリック、彼の目に黒い炎に、包まれジックザイルが見える。


「ぐわぁぁぁぁーーーー! イ…… イーノフ…… エミ…… エミリオを……」


 ジックザイルは叫びながらエミリオの魂が入った瓶を、必死に腕を伸ばしてイーノフに渡そうとする。だが、ジックザイルの腕もすぐに黒い炎に包まれた…… 瓶は手から落ちて地面に跳ね返り、ジックザイルの後ろに転がっていってしまった。

 

「師匠ーーー! なんで……」

「うわっ!? イーノフさん!?」


 リックを突き飛ばして、イーノフさんが立ち上がって、ジックザイルの前で呆然としてる。


「誰だ!!!」


 叫ぶリックの声が地下に響く。ジックザイルの後ろに全身を覆う、黒いフード付きのマントを付けた間が立っていた。

 

「強欲じじいめ…… 余計なこというんじゃないですわ…… はぁ…… お前たちが最近アナスタシアの周りをチョロチョロしてるネズミね……」

「おまえは!? 誰だ!?」

「わらわが簡単に名乗るわけなかろう……」


 近づいてくるフードをかぶった人間に、リックは剣を構える。リーナもムチに手をかける。だが、リック達を制してイーノフが、前にでて杖をフードをかぶった人間に向けた。


「リック…… 下がれ…… 師匠…… よくも…… お前は許さん!」


 イーノフが怒った表情で杖を構える。ジックザイルとの戦闘の、傷が癒えていない彼の足は震えていた。


「おや…… わらわに逆らうのか!? 傷だらけではないか。よろしい殺して……」


 フードをかぶった人間が手を上にかざした。マントをまくり上げてかざした手は白く細い。フードの突きの人間の手の上に黒い炎の玉が出てきた。


「クソ!」


 イーノフの横に立つリック。驚いた顔をし、リックをみつめるイーノフに、彼は笑顔でうなずく。


「おっと! 危ないな! 投げるなら投げるって言ってくださいよ……」

「グっ!」


 体を斜めしたリックの横を、空気を切り裂きながら、何かが猛スピードで飛んで行った。フードをかぶった人間が出した黒い炎に槍が貫通し小さな爆発を起こした。膝をついて悔しそうに振り返るフードの付の人間。そこには壁に青い柄の先に刃がついたシンプルな長い槍が、刺さっているのが見えた。


「大丈夫かい!? イーノフ、リック!」

「みんな!」


 振り返るとメリッサさんとソフィア、ポロンとゴーンライトとエルザが武器を構えてきていた。


「チッ! 下民はすぐにポコポコ湧いてくるから嫌いじゃ…… もう帰るかのう。そうだ! これは面白そうだだからもらっていくわ」

「あっ! エミリオ!」


 フードをかぶった人間は転がっていた、エミリオの魂が入った瓶を拾った。


「待ちな! あんたを逮捕……」

「フンッ! わらわは下民の相手はせんのじゃ」


 地面に手をついたフードを被った人間、手をついた周囲から黒い炎が沸き上がった。黒い炎はフードの付の人間を包み、高く舞い上がってすぐに消えた。炎が消えるとフードをかぶった人間はいなくなっていた。


「イーノフ。大丈夫かい?」


 メリッサがイーノフさんの横に立って、彼の肩に手をおいて声をかける。


「ありがとう。大丈夫だよ。メリッサ…… えっ!?」

 

 振り返ったイーノフさんが笑顔で答える。二人の横にポロンとソフィアが、ニコニコと笑顔で立っておりイーノフが驚く。


「あっあの、ソフィアとポロン…… なに?」

「うわ!? あんたら何してるんだ?」

「そこで抱きしめてあげるですよ。メリッサさん」

「ちげーよなのだな」

「こらー! リック!」

「えっ!? なんで!? 俺!?」


 メリッサがリックを睨み付け、捕まえようと手を伸ばす。


「くそ! 捕まってたまるか!」


 リックはすぐに逃げ出す。だが、一つおかしいこういう時にすぐに反応しそうなエルザが何も言わない。

 

「あーん! ポロンちゃん今のはちげーよじゃないのよ。メリッサさんは男体化という要素が……」

「エルザさん! だから任務中は!」


 ポロンの横で首を横に振るエルザ。また余計な言ったエルザはリーナに叱られるのだった。その後、地下施設の再捜査を行ったエルザ達、地下牢のような場所で拘束された人々を見つけ救出した。操られていたビーエルナイツは、魔法をかけたジックザイルが死んだことにより、全員元に戻っていた。

 第一区画の下水道にあった、騎士団の兵器工場は壊滅し、ジックザイルを失った騎士団は完全に機能が停止された。リックが憧れ目指した、騎士団は消滅してしまった。

 地下施設から帰還して数日後、第四防衛隊の詰め所にリリヤが訪ねてきた。


「ありがとうございました」


 顔の右半分が犬になっていたリリヤは、イーノフが作った薬によって元に戻っていた。村の人達も同様に救われ、リリヤは泣きながらイーノフに礼を言っている。


「いえ…… 僕は兵士として当たり前のことをしただけです」

「でも、私の体を治してくれて…… ありがとう。魔法使いの兵士さん…… これを食べてください! じゃあ、私、帰ります……」


 顔を真っ赤にしたリリヤは、イーノフに箱を渡し、リック達にも頭を下げて詰め所からでていった。カルロスがそれをみて、なぜか嬉しそうにニヤニヤとしていた。


「イーノフ、お前さん何をもらったんだい?」

「わかりません。お菓子じゃないですかね? みんなで食べましょう」

「いいのだ? やったのだ。お菓子なのだ」

「お菓子うれしいです」


 イーノフの机にソフィアを除くみんなが集まり。ソフィアは菓子と聞いて真っ先に紅茶を淹れ始めた。


「あけるのだー!!!」


 ポロンが嬉しそうに箱をあけた。


「「「「あっ……」」」」


 箱の中を見たリック達が声をあげた。中身はケーキで、クリームの上にチョコソースで、メッセージが書いてあった。


「なんて書いてあるのだ?」


 ポロンが隣にいたゴーンライトにメッセージを読めと尋ねる。


「えっと…… えっとね…… リックさん! 同じチームですよね? 教えてあげてください……」

「えぇ!? ずるい…… えっと…… わかんないな…… 俺にもわからない言葉だよ……」

「かっこいい……」

「ソフィア?! 読んじゃダメ!」


 紅茶をトレイにのせて持ってきたソフィアが、ポロンの肩越しにケーキのメッセージを読もうとした。慌ててリックが止めた。リックはチラッと前を向く、向かいに立っているメリッサは眉間にシワを寄せがすごい顔でケーキを睨みつけていた。

 ケーキの上に書いてあったメッセージは”かっこいい魔法使いさんこんど二人で一緒に遊びに行きましょう”だった。


「ふーん。へぇ…… 良かったねえ。かっこいい魔法使いさん!」

「やっやめてよ!」

「うるさいよ。デレデレして!」

「ひぃ!」


 メリッサがイーノフに顔を近づけ詰め寄った。リックはイーノフさんは悪くないのではと思ったが、メリッサが怖いので、イーノフに助け船はださず。心の中で必死に彼に謝るのだった。

 この後、しばらくの間イーノフは沈んだ顔をしていた。それが師匠が死んだからなのか、メリッサに殴られたからかのか、スノーウォール砦に通ってるからのはわからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ