第211話 砂漠の町ではお静かに
リックはポロンとソフィアを連れて、砂漠の町テナルポリスへとやってきた。
「(ふぅ…… 危なかったぜ。どうせいま逃げても帰ったら怒られるんだけどね。ったく。ゴーンライトさんもさぁ、たまには気を利かせて間違えれば俺が怒られないですむのにさ…… なんてね。俺がちゃんと調べて覚えればいいだけです…… ごめんなさい)」
目の上に手をかざし、太陽が照りつける空を見上げながら、反省するリックだった。しかし、すぐに切り替える性格なので、今後も予習が改善することはないだろう。
「暑っついなぁ…… まだ砂漠の近くにいるだけなのに……」
リック達の周りには、緑の小さい草が生えていて、近くに草を刈って作った街道が見える。街道の少し先に、黄色い砂の、砂漠が広がっている。砂漠に入ってすぐのところに、茶色いの石を積んだ、壁に囲まれて見える町がテナルポリスだ。
三人が街道をあるいて砂漠に近づくと、草原と砂漠の境目が、はっきりと分かれていた。街道を砂漠に近づきながら、リックは砂漠と草原がきれいに分かれた境目を物珍しそうに見つめていた。
「砂漠さんです」
並んで歩いていたソフィアが、前に出て砂漠に向かって、嬉しそうに駆けて行く。リックが砂漠の方に目をやると、黄色の綺麗な色した砂が、波打ってみたいになって遠くまで続いている。
「どうしたの? ポロン?」
ポロンがリックの袖を引っ張って来た。リックはしゃがむとポロンは、口に手を当て彼の耳元でささやく。
「リック…… なのだ!」
「えっ!? わかったよ。じゃあ俺はこっち!」
「わかったのだ。支給品の飴一個なのだ」
「フフ、負けないよ!」
駆けて行ったソフィアが、砂漠と草原の境目に、しゃがんで砂を手ですくっている。左手で砂をすくってゆっくりと右手で砂をつまんだ。
「えっ!? ソフィア! ダメだよ!」
「反則なのだ!」
リックがソフィアに近づこうとするのをポロンが止めた。
「ふぇぇぇ…… ザラザラしてるです…… ペッぺです」
ソフィアが目をつむり苦い顔して、舌を出して砂を吐き出した。それを見たポロンが、リックの横で勝ち誇った顔をした。
「あーあ…… 信じてたのに…… ソフィア……」
首を横に振るリックと彼の横で笑うポロンだった。振り返ったソフィアが、不思議そうに、リックとポロンを見ている。
「どうしたんですか? 二人とも私をジッと見つめてるです」
「わたしの勝ちなのだ!」
「チェ。はい支給品の飴一個ポロンにあげる」
リックは道具袋から白い飴玉を出して、ポロンに渡すと嬉しそうに彼女が自分の道具袋に入れていた。この飴はビーエルナイツ所属になった際に、支給されるような飴で保存食の一つだ。栄養価が高く長時間の戦闘になっても簡単に、食事がとれるようにと支給されている。また、この飴は戦闘中以外でもつい食べたくなるほど甘く美味で、支給されるとすぐにポロンとソフィアはリックにくれとねだるほどだった。
ソフィアがリックとポロンのやり取りを見て声をあげた。
「ふぇ!? 何してるですか?」
「ソフィアが砂漠の砂を口にいれるか賭けてたんだよ」
「やっぱり食べたのだ!」
「もう…… 俺はさすがに砂は食べないって信じてたのに……」
「さすが王都一の食いしん坊なのだ!」
「はははっ。何でも口にいれるソフィアは確かに王都一の食いしん坊だな」
笑うリックにソフィアが目を吊り上げて眉間にシワを寄せた。
「怒りました!」
怒ったソフィアは目に涙をため、リックの胸をポカポカ叩く。
「ひどいです! リックは私をバカにしたです」
「ごめん。別にバカにしたわけじゃなくて……」
「私が何でも口にする人みたいだと思ってるです!」
「ちっ違うの!? すぐなんでも口にいれるじゃん!」
「フンだ! もう知りません!」
口をとがらせたソフィアは腕を組んでそっぽを向いてしまった。リックはそっと優しく彼女に声をかける。
「ねぇソフィア?」
「ツーンです! リックとは口きかないです」
「えぇ!? それは寂しいな。ごめんね…… 許して」
手を合わせて謝るリックの姿を、横目で見たソフィアは、指をあごに置いて何かを考えていた。
「本当に反省しました?」
「うん、ごめんね……」
「ふぇ…… じゃあはい! 撫でるです」
「えっ!?」
ソフィアは両手を広げて抱っこしろとアピールしてくる。
「もう…… わかったよ」
俺はソフィアの背中に手をまわして抱き寄せた。ソフィアは目をつむりリックの胸に額をつけた。そっとリックは彼女の綺麗な銀色の髪に手を伸ばし軽くなでる。
「これでいい?」
「ダメです。撫でながらソフィアはかわいいっていうです」
「えっ!? 言わせる気?」
胸から額を離し、ソフィアはリックの顔を見上げ微笑んでうなずく。リックが困った顔をすると頬を膨らませる。
「言うです!」
「わかったよ。ソフィア…… かわいいよ」
「ふぇぇ……」
嬉しそうな顔したソフィアは再びリックの胸に額をつけた。
「うーん。やっぱりラブなのだー! ちげーよなのだ」
「こら! ポロン!」
「わたしもリックにするのだ!」
「ポロンでもダメです!」
「わっわ! くっ苦しい……」
ポロンがリックに抱き着いた。抱き着いたポロンを、ソフィアが引き離そうとする。ポロンははなされまいと、必死にリックの腹にしがみつき、締め付けてくる。ソフィアは必死な顔だが、ポロンは遊んでるだけなのだろう、彼女の顔はうれしそうにして笑っていた。
「ほら、もう、二人とも終わりだよ。行くよ!」
「あぁ! 足りないのだ」
「私も!」
「ダメ! 後で!」
二人をなんとか引き離したリックは、一人でテナルポリスへと向けて歩いてく。ソフィアとポロンは二人とも不満そうにリックの後をついていくのだった。
テナルポリスの町は、明るい白みのつよい茶色の四角い家がならぶ綺麗な町である。町の東の外れには大きなオアシスがあって水は砂漠の近くでも豊富らしい。リックは門番にたっている緑色の兵士と挨拶をして、エルザが雇った案内人ガーザとの待ち合わせ場所である、酒場アセルセンがどこか尋ねる。
「すいません。アセルセンという酒場はどこに?」
「アセルセン? あぁ! そこの通りをまっすぐいって三本目の大きな通りを右に曲がった先にあるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「もしわからなかったら、近くの人に聞くといいよ」
兵士の礼を言って町の中へとリック達は入った。テナルポリスは活気のあって、人通りが多く通りの左右にはたくさんの屋台が並んでいた。
「ダメだよ。二人とも! 果物とか見ても買わないよ……」
ソフィアとポロンが果物屋や肉屋の前で何度か立ち止まる。リックはその度に二人の手を引き、無理矢理にひきずっていく。門番の兵士に言われた、三番目の道を右に曲がった。曲がった先は、道の幅がせまくなり、屋台はなくり四角い綺麗な家が並ぶ、静かな通りだった。
まっすぐ通りを進むと、コップに酒がそそがれた看板が、軒先に下がっている店が見えてきた。店の正面には酒場アセルセンと書いてあった。リック達は扉を開けアセルセンの中へ。店内はかなり広くにぎやかだが昼間でも薄暗い。木でできたテーブルが並び店の奥に大きなカウンターが見えた。扉を開けてリック達入って来ると全員が顔を向けた。
「さてと…… とりあえずガーザさんを探さないとな」
店内のを見ながらつぶやくリック。奥のカウンターから店主らしき中年男性が、入り口に立つリック達に叫ぶ。
「この酒場に兵士さんがなんの用だ?」
「人と待ち合わせだよ。ちょっと失礼するよ」
「チッ…… もめ事起こすなよ」
「もめる相手次第だな」
リックは静かに首を左右に振り、店内を見渡してハッとした表情をし、店主に向かって叫ぶ。
「あっ! ガーザってやつと待ち合わせなんだ? 今はいるか?」
「ガーザ? 今日は来てないよ。どうせ、あいつならその内くるから大人しくどこかに座っててくれ」
「わかった」
ガーザは居ないという。リック達は店主の言う通り、空いてる席に座ろうと店内へ進む。
「(いま気付いたけど…… ガーザさんの顔を知らないけど…… 大丈夫かな)」
歩きながら考えをごとをするリック。彼はガーザの容姿をエルザから聞いておらず店内に彼が入って来たとしてもわからない。さっきの店主にガーザの人相を聞いた方がいいのかなと歩きながら悩んでいた。
「おっと!」
考えながら歩いていた、リックの前に誰かが足を出してきた。もし足に引っかかれば盛大に転んでいただろう。
リックが顔を上げると、足を出してきた若く目つきの悪い男が、彼を睨んだ。男は青い袖のない上着に、黒い革のズボンを履いて腰に曲がった剣をさしていた。男は鼻をつまんで馬鹿にしたようにしゃべりだす。
「おい! くせーな。犬くせぇ! 王国の犬がこんなところにくんじゃねえよ」
「あぁ。そうだな。悪い悪い。どいてくれ通るから」
「うるせえな。出てけって言ってるんだよ!」
「あぁ…… そうかい!!!!!!!!!!!!!」
男がリックの前にだしていた足を彼は上から勢いよく踏みつけた。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
バキっという盛大な音がして、男が苦痛の表情を浮かべて倒れ込み叫び声をあげた。店内に居た他の客は足を折られて男を見て顔をしかめていた。これはメリッサ流の兵士に、絡んできたやつへの対処法だ。好戦的な相手は、甘い顔したらつけあがるので、一気に力の違いを見せてやると、効果があるというのが彼女の持論だった。
両手で足を押さえながら顔を上げ、男は苦痛に顔を歪めリックに叫ぶ。
「てめえ何しやがる! 兵士がこんなことしていいと……」
「いやぁ、いい音がしたね。次は首を斬り落とそうか? どんな音がするか楽しみだよ」
「ヒッ!? すいません」
剣に手をかけてリックは、倒れている男の顔を覗き込む。最初はリックを睨み付けていた男だったが、うっすらと笑いながら話す彼に急にしおらしくなる。よくあることだが、男はリックが若く、相棒も女性と子供ということで、舐めてかかったのだろう。彼が世界でも屈指の実力者だとも知らずに……
しおらしくなった男に、リックは笑顔のまま姿勢を戻した。
「逮捕しないのだ?」
「いいよ。今日は別に酒場に誰かを捕まえに来たわけじゃないし」
「そうですよ。捕まえて連れて行っても絡まれただけで足を折ったリックが怒られます」
小さくうなずくリック。足止めをしただけで、足を折るのはさすがにやりすぎだ。下手に逮捕すれば、リックがやりすぎだと叱責されるだろう。
「うん!? はぁ……」
男達がリックの前に立って道をふさぐ。体の大きな四人の男達はリックを見つめ、そのうちの一人が前にでて来る。前に出た男は、褐色肌で、髪の毛のまったく生えてない、坊主頭の男だ。男はリックの顔をみてニヤニヤとしている。
「どいてもらっていいかな?」
「うるせえ、ここは兵士がくるところじゃねえ! それに貴様たちはガーザの知り合いなんだろ? 俺達はあいつに用があるんだよ。」
「へぇ。ここは兵士がくるところじゃねえか……」
あきれて笑うリック。男が発する言葉はよく聞くが、実際にグラント王国内で兵士が、行ってはいけないところなどほぼない。あるとすれば国王が妾と寝る寝室か、彼が用を足してる時のトイレくらいだろう。まぁ、それも時と場合によるが……
「あいつには俺達のボスに借金があんだよ」
「はぁ…… 借金ねぇ。でも、それは俺達には関係ないよな?」
「あんだと?」
男は少しイラついた表情をしていたが、後ろにいるソフィアとポロンを見て少し表情が緩む。
「おい! いい女連れてるじゃねえか」
「やめろ!」
「うるせぇな。ガーザの借金はこいつ売ればいいな。その前に俺達が味見するけどな!」
「俺はそっちのガキがいいなぁ!」
男がリックの横から、ソフィアに近づき彼女の手を、つかもうとした。ポロンに向かっても一人が、興奮した様子で声をだした。
「やめてください」
「おい! 汚い手でソフィアに触るな!」
「なんだ!? こいつのてめえの女かよ? おい。お前らこいつを殺せ! 女二人はガーザの借金の代わりにもらっておく」
「へい!」
男たちが腰につけた剣に手をかけた。ガーザの借金などリックには関係ない。任務中なので穏便に済ませたかったが、自分の大事な物を傷つけると言い放った奴を、許せるほどリックはお人好しではない。
「げぇ!? こっこいつ!」
剣を素早くぬいたリックは、ソフィアのそばにいる男の距離を詰めた。
近づいたリックを睨み付けた男が、右手で剣を抜く。だが、その動きをリックは完全に把握していた、男が剣を抜いた直後に彼の腕に向かって、リックが鋭く剣を振り上げた。
剣は鋭く伸びて、男の肘と手首のちょうど真ん中で、彼の腕を切り落とした。男の手が剣を持ったまま空中に回転し、リックの視界に赤い血の水滴が飛ぶのが見える。
さらにリックは剣を返し、鞘を持った左手を、手首の下あたりで斬りつけた。男は腕をあげ手首のない、左腕から血が吹き出して、手首から先は鞘をしっかりと握ったまま彼の腰に血を流しながらぶら下がっている。
男は苦痛に顔を歪め、膝をついて仰向けにたおれた。息はしてるようでだが、ショックで気絶してるのか、男はほとんど動かない。
「あぁ。そうだよ。ソフィアは俺の女だよ…… ごめん…… もうしゃべれないか」
血が滴る剣を持ちながら男を見下ろしつぶやくリックだった。彼は店内に転がっていた、剣を持った男の右腕を持ち上げた。
「ほら! くれてやるよ」
「「「ひいいい!!!」」
リックは剣を握ったままの男の腕を、道をふさぐ男たちに投げる。道をふさいでいた三人の男達が、投げられ無造作に転がる、腕を慌ててさけた。
「なっなんとかしろよ! お前ら!」
「いやだよ。俺はこんなに強いなんて聞いてないぞ!?」
「おっ俺だって!」
男たちが互いを押し、言い争いをしてる。ゆっくりとリックは剣先を下に向け、かまえて近づく。リックをみる男たちの顔は、青ざめ恐怖にひきつっていた。
「次はお前たちだ! ソフィア、ポロン、戦闘態勢を!」
「わかったのだ!」
「はい」
二人が武器を構えると、男たちは武器を一斉に捨てた。地面に膝をついて必死にリック達を止める。
「まっ待ってくれ…… 俺達は何も……」
「はぁ!? いきなり道をふさいで、武器をちらつかせて何もしてないはないだろ?」
「すっすいませんでした…… おい!」
「あっ!?」
三人の男たちは駆けだして、三人の横を通り、さっさと店の外へと逃げ出して行ってしまった。
「まぁいいや。俺達は忙しいからな。もめごとをしに来たわけじゃないしな…… あれ!? はぁ…… しょうがないな」
三人の男達は腕を斬られた男を置いて逃げてしまった。リックは倒れている、男の横に立ち、ソフィアに声をかける。
「ソフィア、こいつを治療してあげて!」
「わかりました」
死んだら店の人に迷惑になるので、リックはソフィアに治療を頼む。転がった右腕を拾いリックは、男の近くに置いて、ソフィアは回復魔法を唱える。
「はい。終わりましたよ」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「おい! お前…… クソ!」
治療が終わると、男が立ち上がりリックを見ると、化け物に会ったかのように怯え、悲鳴を上げ店を飛び出して行った。
顔を見合せてリックとソフィアは苦笑いをするのだった。入り口の見える丸いテーブル席に俺、ソフィア、ポロンの並びで座る。
「さて、座ってるだけのも気まずいしなんか頼むかな? でも、こういうところお酒しかないからな。俺とソフィアはまだいいけどポロンはさすがにお酒は…… うん!? どうしたの?」
隣に座ったソフィアが、リックの腕をからめて声をかけきた。
「リック……」
「なに? ソフィア」
「さっき私のこと俺の女って……」
「あっ! ごめん…… あの…… いやだったよね?」
「ふぇぇ…… 違うんです」
ソフィアが耳が真っ赤になってうつむいた。すぐに顔をあげたソフィアはリックの顔を見てほほ笑んだ。
「うれしかったです。私…… リックのです……」
「ソフィア…… うん」
頷いたリックにほほ笑んで、ソフィアが抱き着いてきた。
「うん…… ソフィアは俺のだよ。誰にも渡さないからね」
リックはソフィア肩を抱いて耳元でささやく。嬉しそうに笑ったソフィアは目をつむり顔をあげる。
「えっ!? ちょっとそれは…… ポロンもいるし……」
「早くです!」
「だめだよ。恥ずかしいよ」
「じゃあ、こうするですよ!」
「わっ!?」
リックの顔をつかみ、ソフィアは引っ張り少し強引に引き寄せると、彼のおでこに優しく口づけした。
「おぉ! ラブなのだー! ちげーよなのだ」
「そうだ! ちげーよ! そうじゃねぇだろ! ってかさ砂漠は暑いんだからさ。そういうのはやめーや!」
ポロンがリック達に向かって嬉しそうに声をかける、彼女の後ろで、褐色の肌の見知らぬ男も、リックに達に文句を言ってる。まったく知らない男だがポロンとともに妙になじんでいる。リックは慌てて男に誰か尋ねる。
「だっ誰ですか?」
「あぁ。俺? 俺はガーザ。あんた達がリックにソフィアにポロンだろ? うん。聞いていた通りだ! エルザの姉さんからあんた達の案内人を頼まれたんだよ。よろしくな」
笑いながらリックの問いかけに答えたのが、エルザが雇った案内人のガーザさんだった。彼は黒い瞳で茶色の短い髪形をして、顎に髭の生えた褐色肌の男性で、白いズボンに白いシャツを着て袖のない青い上着を着ていた。ガーザは背中に丸い盾を背負って、腰には先ほどの男たちと同様に曲がった剣を腰にさしている。
「よろしくお願いします。俺はリックです」
「ソフィアです」
「わたしはポロンなのだ!」
リック達と一人ずつ握手したガーザはリックの向かいの席に座る。
「おやじ! 酒持ってこい!」
「ガーザ、お前…… 金は持ってるんだろうな? さっきもブォルザーのところの部下が借金を取りて手にきてたんだぞ?」
「あぁ、心配するな。仕事が入って前金もらったからな」
金貨袋を手に持ち、自慢げに店主に見せるガーザ。不安そうにガーザを見るリック、彼はブォルザーという男に借金がありさきほどもそのことでリックは絡まれたのだ。ただ、エルザが選んだ人物でもあり、仕事はきちんとこなすことは間違いないだろう。
店主がコップに、茶色の酒を注ぎ持って来た、ガーザはコップを受け取り、笑顔で嬉しそうにコップに口をつけた。
「かー! うまいねぇ。それであんた達は砂漠に藍玉蠍を狩りに行くんだろ?」
「はい。それでエルザさんがガーザさんに案内を依頼したんです」
「わかってるよ。さぁこれ飲んだらすぐに出発するぞ! グイーーーーーーーーー! プハーーーーーーーーーーーー!!」
「えっ!? ちょっと!? まっ待って」
「なーに! 仕事と酒と女は早くこなすもんだぜ!」
ガーザはグイっとコップを傾けて一気に酒を飲みほ、立ち上がると彼はリック達を店の外に連れ出した。店主が複雑な顔でリック達を見送るのだった。