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第207話 星の砂浜で、またな

 クロコアイバーソンの討伐から数日後。アイリスが旅立つことになった。旅立つ前にジオキラック村へとボロンカの見舞へとリック達は向かった。彼女は少し落ち込んでいたけど元気そうだった。


「ありがとう。ボロンカさんのおかげで竜巻鎧(トルネードアーマー)を手に入れられたわ」

「僕も…… ボロンカさんにお礼をいいます。これでアイシャと結婚…… でも今は……」


 何故かボロンカの元にベンディが居てリック達と遭遇した。ボロンカによるとベンディはあれからジオキラック村に滞在し、毎日見舞いに来ているという。


「私は何も……」


 うつむいて暗い顔をする、ボロンカの手をアイリスが握って真面目な顔をした。


「ボロンカさん、魔物に呪い殺された人間は魂を体から離されて封印されてるの。でも、魔王を倒せば呪いが解けるのよ。もしかしたらそれで蘇生できるかもしれないの」

「本当ですか!? そしたらブローソンが……」

「うん…… だから私は絶対に魔王を倒すからね」

「はっはい!」


 アイリスの言葉にボロンカはすごい嬉しそうに返事をしていた。なぜかベンディはアイリスの言葉に複雑な表情をする。ボロンカに挨拶をしたリック達は次にアイリスを見送るために、星の砂浜にある港に係留されてる、グラントフローレンス号にやってきた。桟橋に乗ったアイリスは髪の後ろに手を回す。


「あっ! お前はもう良いのか? まだドンバル国でてないだろ?」

「港の桟橋からはこの格好でいいって許可もらったもん。それにもういやよ! いつまでも自分を偽るなんて!」


 アイリスは髪を下し、ズボンの上からいつものミニスカートを履き、ズボンを脱ぎだした。着替え終わると化粧道具を出し歩きながらメイクをする。アイリス達はタラップに乗った、リックとソフィアとポロンは手前に立って並ぶ。


「待ってください!」

「あれは…… アイシャさん…… アイリスのことを見送りに来てくれのか」


 アイリスの船が係留されている、桟橋に向かってアイシャさんが駆けてきていた。船の乗降用に渡された、タラップの前に立って彼女は、首をキョロキョロと動かしている。首をかしげたアイシャはリックに尋ねる。


「すいません。リックさん。アイリス様は!?」

「えっ!?」

「なーに!」


 目の前にいるのに、呼ばれたアイリスがアイシャに返事をすると、彼女は少し不機嫌な様子で口を開く。


「すいません。あなたは!? 誰ですか?」

「はぁぁ!?」

「私は旅立ってしまうアイリス様にどうしても想いを伝えたいんです。ふざけないでください」

「えっ!? だってあなた…… ベンディさんは?」

「あっあいつですか?! ベンディならボロンカさんを追いかけてジオキラック村に行っちゃいました…… ブローソンさんとの傷を僕がいやすらしいです。あの裏切り子豚野郎……」


 ベンディはアイシャからボロンカに乗り換えるたようだ。彼がボロンカに毎日見舞いをしていたのは下心があったかだった。苦労したのにすんなりと乗り換えたベンディにあきれる。


「だから、私のことを守ってくれた勇者…… アイリス様に全てを捧げたいんです」

「いやよ! 私はリックのだもん」

「はぁ!? さっきからあなたは一体なんなんですか? さぁ早くアイリス様を出しなさいよ」


 アイシャさんがアイリスに詰め寄っている。アイシャは規則に従っていた男性姿のアイリスしか知らず、女装したアイリスを見たことがないので、目の前にいる人間がアイリスだと気づいていない。リックはめんどくさそうに頭をかかえるのだった。


「アイリス様ー! あなたのアイシャが来ましたよー!」

「はぁ!? だから、私がアイリスよ! アイリス・ノームは私なの! スラムン、お願い!」

「わかったズラ!」


 アイリスの頭に乗っていた、スラムンが彼の顔にへばりついてウネウネト動く。スラムンは水気と動きにより、アイリスの化粧は布で拭かれたように化粧がはがれていく。


「おわったズラ」

「ありがとう!」


 アイリスの顔からスラムンがどくと、アイリスはすっかり凛々しい青年へとかわっていた。アイシャはアイリスを見て驚きの声をあげる。

 

「えぇ!? ほんとうにあなたが!? アイリス様……」

「はぁ…… またお化粧しないと…… ほら! これでわかったでしょ?」

「そうズラよ。アイリスはいつも女装しているズラよ」

「違うでしょ! 私はこっちがほんとなの!」

「こら。もうやめろ!」


 アイリスとスラムンが言い争いを始めリックが止める。アイシャは真実を知って、ショボンと落ち込み帰っていった。桟橋で待機していた使用人もなんと言葉をかけていいかわからないようだった。その様子を見ていたソフィアがなぜかアイリスに怒る。


「アイリス。ひどいです!」

「いいじゃないの! どうせいつかわかるんだし、それに私の旦那様はリック……」

「旅行のついでに邪魔者を処理したかったです……」

「こら! 聞こえてるわよ! ソフィア!」

「もうまた…… こら! やめろ!」


 ソフィアをアイリスが追いかけていく…… しかし、ソフィアは桟橋と港の境目で、港側に一歩だけ入ったところで、わざと止まって振り返った。

アイリスが女装できるのは、桟橋だけなのでアイリスが近付くと、監視の兵士が集まってきて、港の入り口でアイリスを睨み付けている。

 桟橋の兵士に睨まれて、入れないアイリスが悔しそうにしてる。ソフィアはそれを見てベーっと舌をだしてる。


「ソフィア…… 意外と策士だな。って! こんなことしてる場合じゃない。おい! やめろ!」


 リックはスラムンと一緒にアイリスをなだめて、渋々アイリスは船へと戻って出発することになった。タラップに乗ったアイリスにリック達は桟橋に並び見送りを再開する。


「じゃあね。リック、ありがとね。旅行中だったのに手伝ってくれて」

「気にするなよ。俺達は友達だろ?」

「はぁ…… 嫌い! それじゃあ、もう少し旅をしたら、グラント王国に戻るわね。伝説の剣をもらいに行かないとね」

「あぁ。待ってるよ」


 振り返ってリック達に笑顔を向け、アイリスは船へと乗り込んだ。

 伝説の剣はグラント王国に保管されている。四つの伝説の防具を全て手に入れたアイリスは最後に伝説の剣を手に入れるつもりだ。


「(次にアイリスが帰ってきたら忙しくなるな…… ジェーンがアイリスが狙っていくるだろうし……)」


 リックは動き出したグラントフローレンス号を見つめていた。動き出したグラントフローレンス号から、身を乗り出しリック達に、アイリスはずっと手を振るのだった。

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