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第205話 クラッシュさせるモブキャラ達

 バーランドの邸宅はコロコナの町という、ドンバル国の北に位置する町で、ここにベンディも暮らしている。石造りの城壁に囲まれた大きい町で、バーランドの邸宅は町の中心の一番大きな建物だ。

 リック達はソフィアの転送魔法でコロコナまでやって来て、城壁を抜けて町に入った。町の中では人々が忙しくなにやら動き回っていた。店の看板を綺麗な花で囲んだり、おめでとうと書かれた垂れ幕があったりと装飾されていた。どうやら結婚式の準備をしてるようだ。結婚式の準備が進む町をアイリスが慌てた表情をする。


「リック! これってみんな結婚式の準備をしてるのよね。多分、ブローソンとアイシャさんの結婚式だよね?」

「だろうな。少し急いだ方がいいかもな。ベンディさん、バーランドさんの邸宅まで案内をお願いします」

「はいこっちです」


 ベンディの案内でリック達は、町の中心にあるバーランドの邸宅へと向かう。大きな通りの先にある堀に囲まれた、三階建ての城のような大きな邸宅が見えて来た。これがバーランドの邸宅だった。堀にかかる橋を渡ろうとすると、警備をしていた革の鎧に身を包んだ軽装のバーランドの私兵が二人リック達を止めた。


「止まれ、なんの用だ?」

「俺達はバーランドさんに用事がありまして……」

「すまんが。バーランド様は明日のアイシャ様の結婚式の準備で忙しいのだ。今日は遠慮してもらおうか」


 リックとアイリスは顔を見合せてうなずく。町の結婚式の準備は予想通りアイシャの結婚式だった。そうなると相手を確かめる必要がある。リックは口を開く。


「結婚式の相手ってブローソン・ダバディですか?」

「おぉ!? よく知ってるな。ブローソン様はバーランド様の課された試験を見事にクリアされたのだ」


 笑顔で答えるバーランドの私兵。リックはバーランドと話し、ブローソンとの結婚をやめさせようと考えた。


「バーランドさんに合わせてくれ」

「悪いな我が主人は準備で忙しい。日を改めろ」

「頼む! 中に入れてくれ。俺達はバーランドさんに話が……」

「ダメだ! ダメだ! 帰らないと応援を呼んで逮捕するぞ!」


 槍をリックに向けて、威嚇する兵士二人。リックは押し通ろうと、剣に手をかけたが、すぐにソフィアが彼の肘を引っ張った。アイリスも俺の前に立って両手を広げた。


「ダメですよ。喧嘩したら!」

「リック! ソフィアの言う通りよ。ここで騒ぎを起こしたらあんたが捕まるだけよ」

「でっでも…… 何とかしないと」

「ポロン、リックを連れて行くです」

「わかったのだ!」


 ポロンが右手でリックの右手をつかみ、剣から手をはなさせた。次に左手でポロンに、腰をつかまれたリックは引きずられていく。


「あそこに連れて行くです」

「わかったのだ!」

「お願いね。ポロンちゃん!」

「ちょっ!? ポロン!? もう離して……」


 引きずられたリックは、通りにある酒場まで連れて行かれた。酒場に入って六人掛けテーブル席に無理矢理に座らされた。


「なんだよ! もう!」


 立ち上がろうするリックの肩にアイリスが手をかける。


「リック、ダメよ。もう少し落ち着いて! とりあえずそこで大人しくしてなさい。私とベンディさんで町の様子をもう少し詳しく聞いてくるから」

「いやだったら、俺も……」

「ダメよ。門番ともめ事起こした後に町の詮索なんかしたら怪しまれるでしょ。ソフィア、ポロンちゃん、リックのこと見ててね」

「わかりました。ポロン、リックを押さえてください」

「わかったのだ!」

「あっ! こら!」


 ポロンがリックの席の後ろにまわり、腰当てのベルトをつかんだ。ポロンの力で掴まれては、リックでも簡単には立ち上がれない。


「じゃあ、ベンディさん行きましょう」


 ベンディとアイリスが連れ立って酒場の外へと向かった。


「はぁ…… もうわかったよ。大人しくしてるよ」


 ポロンの頭を撫でて謝ると、彼女は安心したような表情をし、ベルトから手を離した。リック達はアイリスが帰って来るのをまった。しばらくしてアイリスが帰ってきた。戻って来たアイリスは、浮かない表情をし、リックの前に座った。


「どうだった? アイリス、何かわかったか?」

「ブローソンのやつはバーランドの邸宅のはなれに赤いワニを連れて宿泊してるみたいね。見た人の話だとボロンカさんも一緒みたい。でも、ダメね。はなれも警備が厳重で近寄れないわね」

「そうか。夜に侵入して、ブローソンを倒してボロンカさんを救出するか……」

「うーん。ちょっと難しいわね。警備に見つかる可能性が高いわよ。見つかればボロンカさんも危ないし、バーランドさんや町の人達を敵に回すことになるわよ」


 首を横に振るアイリス、侵入して騒ぎになればボロンカを危険に晒すことになる。リックは少し考えて口を開く。

 

「明日の結婚式で何とかするしかないか」

「そうですね」

「でも、私達は招待されてないからね…… 招待されるのはバーランド関係のある人か町の人だけみたい」

「そうか…… 俺達は確かにアイシャさんとはなんの関係もないしな……」


 アイシャにアイリスは一度で、リックに至っては会ったこともない。そんな人間を結婚式に呼ぶわけないだろう。難しい顔で考え込むアイリスを見てリックはハッとする。一緒に探りに行ったベンディが居ないのだ。


「そういえば? アイリス、ベンディさんは一緒じゃないの?」

「あぁ。ごめんね。言うの忘れてたわね。教会に言ったらベンディさんだけ神父さんが話があるって連れて行っちゃたの。もうすぐ帰ると思うわ」

「そうなんだ…… ベンディさんだけに話しってなんだろうな」

「さぁ!?」


 リック達は策を考えながらベンディを待った。少ししてからベンディは、一人でリック達のもとへと戻ってきた。


「遅れてすいません。アイリスさん」

「大丈夫ですよ。それで神父さんはなんですって?」

「そっそれが…… 明日の結婚式で歌を歌ってくれって頼まれました…… 今は他に町に歌手がいないみたいで…… はぁ…… なんで僕がアイシャとブローソンの為に…… 断ろうかな」


 寂しそうにつぶやくベンディ、いくら仕事でも自分が結婚したかった、相手の結婚式で歌わされる彼にリックは同情する。ベンディを見たリックはハッと目を見開く。ベンディが歌手として招かれれば、結婚式に出られる。その際にブローソンは神父の前に居てボロンカの監視に隙がでできるはずだ。リックはとある作戦を思いついて口を開く。


「これは使えるぞ。ベンディさん! 断わらないで引き受けてください!」

「えぇ!? わっわかりました」

「リックどうしたんですか?」

「何を思いついたのよ? 教えてよ」

「いや、結婚式なら神父の前でアイシャさんとブローソンの二人になるだろ? そこに俺達が突撃してブローソンの悪事をばらすんだよ」

「えっ!? でも、どうやって教会に行くのよ?」

「みんなちょっと! 耳を貸して」


 皆が身を乗り出してリックに顔を近づけてくる。リックは静かに声が漏れないように、口に手を当てて思いついた作戦を話を始める。

 

「ベンディさんにお願いして…… 一緒に俺達も歌手に成りすまして…… そして歌を使って…… こうすればいいだろ?」

「えぇ!? いや! 絶対にいや! 恥ずかしいわよ」

「私も自信ないです」

「やるのだ! 歌うの楽しそうなのだ!」


 リックが考えた作戦を伝えると、ポロン以外は乗り気じゃなく拒否する。作戦の内容に自信があったリックは皆の反応に少し戸惑う。


「じゃあ他に何かいい策があるのか?」

「えっ!? それは…… ソフィア! 何かある?」

「ふぇぇぇぇ!? ないです……」

「だろう? じゃあ決まりだ」


 渋々うなずくソフィアとアイリス、三人の会話を聞いていた、ベンディも少し複雑な顔をする。リックはベンディさんに声をかける。


「じゃあベンディさん手配をお願いします」

「わかりました。神父さんにみなさんの素性を隠して、僕からアイシャを驚かすための演出だと伝えておきますね」

「ありがとうございます」


 結婚式に潜入する手はずは整った。リック達は明日の結婚式に潜入しボロンカを救出する。リック達はコロコナの町で宿を取った。

 翌朝、結婚式が行われる教会へと向かう。町の教会は花のアーチが作られてきらびやかに装飾されている。ベンディとリック達は教会で合流し控室へと通された。


「やあ。みなさん。よくいらいしてくれました。じゃあこちらで準備をお願いします」


 白髪の穏やかそうな神父がにこやかに控室におりリック達を迎えてくれた。控室は小さな四人掛けのテーブルと、衣装をかける小さなハンガーラックが置かれていた。

 控室で、リックとソフィアは出席者の一組の夫婦、ポロンは教会の少女聖歌隊の一人に、アイリスは結婚式を行う教会の修道士にみんな服を着替えて化けるのだった。

 着替え終わったリック達は結婚式会場を下見する。結婚式が行われる礼拝堂は、中央に赤いじゅうたんが引かれ、通路があり左右に分かれて長い椅子が並んでいえる。奥には高くなった祭壇があり、祭壇の手前は舞台のように上がっており、中央に神父が立つ教壇と左手にはパイプオルガンと、聖歌隊用のひな壇が並んで置かれている。パイプオルガンを弾きながらベンディが歌を披露する予定だ。光を取り入れるように壁の上についた、窓には作業用の通路が見える。リックはスラムンとキラ君に顔を向けた。


「スラムンとキラ君は二階の通路に隠れてボロンカさんを見ていてくれ。俺達ばブローソンの隙を作るから合図をしたら彼女を救出してくれ」

「わかったズラよ。任せるズラ」


 リックはスラムン達を、結婚式の行われる教会の二階に潜ませたのだった。

 結婚式会場に人が集まりだす。リックとソフィアは控室から出て、出席者に紛れて通路側の長いすに腰かけた。ポロンは祭壇の左手の壇上に並んだ聖歌隊に加わり


「おい…… あれ……」

「なんでワニが……」

「あの人のペットかしら……」


 客達がざわめいている。リックがそっと視線を向けると、クロコアイバーソンが会場に入ったきた。


「ボロンカさん……」


 クロコアイバーソンを連れていたのは、うつろな瞳をしたボロンカだった。のっそりとのっそりとクロコアイバーソンは、ゆっくりと会場の前へと移動する。リックとソフィアはボロンカとクロコアイバーソンに、気づかれないように顔をそむけ、彼らが横を通り過ぎていくのを待った。クロコアイバーソンとボロンカは二人に気付かず通り過ぎていった。


「最前列だな」


 ボロンカとクロコアイバーソンが最前列の席に座るのを確認しうなずくリック。視線を二階へ向けるとスラムンが、キラ君の頭の上に乗ってリックに顔を向け飛び跳ねた。スラムンもボロンカの位置を把握したという合図だ。ボロンカの前に壇上と椅子の間に、クロコアイバーソンが丸くなってうずくまっている。


「(ブローソンはクロコアイバーソンに、ボロンカのことを監視させているのか。まったく、魔物を連れて教会に入りやがって非常識な奴だな…… 俺達もだけど……)」


 席が八割ほど埋まると、礼拝堂の扉がいったん閉じられ、神父が祭壇の前に立って右手を開けると扉が開いた。扉が開くとそこにはタキシード姿の小太りの男性と、草原のティアラとそよ風のベールを着けた、白いウェイティングドレス姿の女性と腕を組んで立っていた。

 小太りの男性は頭が薄く横に少しだけ髪の毛が残って、立派な口髭をした威厳のある男性だ。彼が富豪バーランドだ。ウェイティングドレスの女性はアイシャだ。彼女は金髪の長い髪を後ろでまとめて、青い目でやや気の強そうな雰囲気を持っている。入り口に立つアイシャをベンディが切ない顔で見つめていた。二人がゆっくりと前に歩き出した。結婚式が始まった。


「おめでとうございます!」

「アイシャ! 綺麗だよ」


 祭壇へと進む、バーランドとアイシャに、招待客が声をかけ祝福する。


「キャア! かっこいい」

「ブローソン様!」


 女性たちの歓声が響く。リックは静かに視線を後ろに向けた。


「来やがったな……」


 礼拝堂の入り口にタキシード姿のブローソンが立っていた。彼はゆっくりと歩いて


「では、二人に祝福を……」


 ブローソンは壇上の前で止まっていた、バーランドからアイシャを受け取り二人で神父の前に進む。

 神父が静かにつぶやくと、厳かな空気のなか、ベンディが奏でるオルガンの音が静かに奏でられてる。


「これより二人の誓いを行う。まずはこの結婚に反対する者は今名乗りでるか永遠に口を……」

「反対だ。この俺がな!」

「なっ!?」


 リックが手を挙げて立ち上がり、神父に向かって叫ぶ。同時にアイシャとブローソンが振り向いた。


「お前は……」

 

 ブローソンは立ち上がったリックを見て目を大きく見開いて固まっている。アイシャは眉間にシワがより不審な表情をリックに向ける。神父がニヤリと笑った。


「だって俺達の祝福が終わってないからな! イエーイ!」


 リックが右腕をベンディへと伸ばし、合図を送ると陽気な音楽が鳴り響く、アイリスが祭壇の前に向かい、ソフィアが立ち上がり、ポロンは壇上を飛び下た。騒然とする客のなか四人は踊りだした。


「やっやめろ!? 何のつもりだ!?」

 

 ブローソンは叫ぶが、陽気な音楽と笑顔で踊る、リック達とそれをほほ笑んでみてる神父。結婚式の出席者は驚きざわついているが神父の表情を見てこれが結婚式の余興だと気づき笑顔に包まれる。


「結婚おめでとう。アイシャ! 僕からのサプライズだよ!」

「ベッベンディ!」

「お前……」


 パイプオルガンを弾いていたベンディが声をあげた。アイシャは幼馴染からの余興のプレゼントがあり嬉しそうに笑う。


「コロコナで運命の出会いを果たした二人は……」


 ベンディの美しい歌声が響く、二人を祝う歌詞を連ねる彼に、観客が手拍子を始めた。リックとソフィアが手拍子に乗り祭壇へと近づく。二人がボロンカの横に来て立ち止まるろベンディは一瞬だけ演奏を止めた。


「だが、ブローソンお前…… 最低だ!」


 怖い顔をしたベンディが振り向いて叫びまた演奏を始める。再開した演奏は曲調が明るい物から一気に暗くなった。リックがブローソンを指さしその曲調に合わせて歌詞を続ける。


「へい。お前のやったこと言ってるよ!」

「あなたはジオキラック村のボロンカさんを人質に取って!」

「私達からそよ風のベールと草原のティアラを奪ったです」

「しかも、わたしたちを殺そうとした悪いやつなのだ!」


 音楽に合わせて、俺、アイリス、ソフィア、ポロンの順に歌う。


「おい! やめろ!!!!」


 ブローソンが怒鳴り声をあげた。ブローソンの態度にアイシャは後ずさりして離れる。アイリスは踊りながら壇上右からブローソンの背後へ、ポロンも聖歌隊から離れて踊りながらアイシャの背後と近づく。


「ねっねぇ!? 今のほんとなの? あなたが人質を……」

「ウソだ。違う! これは全部こいつらの作り話だ! おい! 誰か兵士を呼べこいつらを叩きだせ!」


 慌てて否定するブローソン、声が上ずり明らかに動揺しているブローソン。その姿を見て出席者は何やらヒソヒソと話を始めた。出席者の達の反応にブローソンはさらに動揺し顔をしかめる。アイシャとブローソンの反応を見て神父が苦い顔していた。


「じゃあ当事者に聞いてやるよ! 今のは真実だよね! ボロンカさーん!」


 リックとソフィアが横を向いて、ボロンカさんに問いかけた。

 

「えっ!? はっはい!」


 ボロンカがリックの問いかけに大きく頷いて返事をする。客のざわめきが一層大きくなる。


「クソ! クロコアイバーソン! ボロンカを!」


 ブローソンがボロンカを指して叫ぶ。クロコアイバーソンは目を開けボロンカに視線を向け口を開ける。


「スラムン! お願い!」

「任せるズラ!」

 

 二階からスラムンを乗せたキラ君が飛び下りた。


「フギャ!」


 キラ君はクロコアイバーソンの上顎に着地して踏みつける。クロコアイバーソンの口が強引に閉じられた。クロコアイバーソンの上顎を踏み台にして器用にボロンカの前に着地したキラ君は二枚の盾を出して彼女をかばう。

 スラムンはキラ君が、クロコアイバーソンの上顎を、踏みつける、同時に飛び下り、体を変化させ、クロコアイバーソンの口に巻き付いて開かせないようにした。口を閉ざされたクロコアイバーソンが暴れて跳ねる。尻尾で椅子やベンチをなぎ倒す、暴れるクロコアイバーソンの姿をみた出席者が悲鳴をあげて逃げ出した。。


「さぁ終わりだよ。ブローソン! お前はあの赤いワニを使って、ボロンカさんを人質にして俺達からそよ風のベールと草原のティアラを奪ったんだ!」

「クソ! だから何だっていうんだ? 試験はそよ風のベールと草原のティアラを持ってこいってだけだ! 奪ってはいけないなんて……」

「最低…… あなたなんかと結婚なんてしないわ……」

「アイシャ! 貴様!」


 ブローソンがアイシャを捕まえようと手を伸ばした。だが、アイシャの背後にいたポロンが、アイシャと入れ替わり、ブローソンの腕をつかだ。


「えっ!?」


 ぐしゃっと音がしてブローソンの右腕が抜け、ポロンの手にはブローソンが右腕が握られていた。


「おぉ! 弱いのだ!」

「クッ…… クロコ……」

 

 苦しそうな膝をついた。ブローソンの右肩がボロボロと、砂みたいになって崩れていく。ポロンが持っていたブローソンの右腕も、腕の先から崩れていて砂のような細かい小さい粒が風に舞っていた。ポロンの力で破壊されたというよりは、ブローソンの体がもろく勝手に崩れたというのが正しいようだ。


「どっどうして……」

「大丈夫よ」


 ブローソンの姿にアイシャは後ずさりして、顔を押さえてしゃがみ込む。アイリスが彼女の元へと駆け寄り、肩を抱いて支える。


「ブローソン!」


 キラ君を連れボロンカが壇上に駆けあがり、ブローソンに駆け寄り、崩れかけていく彼を両手で抱きかかえた。


「ブローソン!? いやよ…… どうして?」

「ボロンカ…… ごめん…… 君を傷つけてしまって…… でも…… 僕はこれでやっと解放される……」


 左手でボロンカの頬をさわり、ブローソンは先ほどまでの強気な声から、優しい声になり彼女に謝っている。


「謝らないでいいの…… やっぱり…… 昨日からのあなたは本当のあなたじゃなかったのね」

「俺は…… 君と…… 昔みたいに仲良くしたかった……」

「私も……」


 泣きそうな顔をしてボロンカがうなずいた。ブローソンの顔は安心したような様子で少し笑っているように見える。


「これからは一緒に…… ジオキラック村で……」

「ごめん…… もう無理なんだ」


 首を横に振って無理と答えるブローソ。涙を流してボロンカが彼に叫ぶ。


「どうして? いやよ!」

「俺はもう死んでるのさ…… 今は呪いで魂を…… 本当は父さんと一緒に…… そこのクロコ……」


 崩れる体でブローソンは必死にクロコアイバーソンを指した。リック達の視線がクロコアイバーソンに向けられた。スラムンに口を閉じられ、暴れたクロコアイバーソンの体が白く光り出した。

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