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第200話 つかの間の休息

 海で夕方までソフィアとポロンとナオミとリックの四人で遊ぶ、泳いだり砂浜を追いかけっこしたり、パラソルを立ててのんびり昼寝したりと休暇を満喫する。

 遊び疲れて宿に帰ると、もう夜の食事の時間となっていた。宿でも食事をだしてくれるのだが、カルロスの提案で全員で近くの有名なレストランへと食事に行くことになった。薄暗い夜の砂浜の近くの道をみんなでレストランへと向かう。

 先頭はカルロスとノノ、二番目はゴーンライト一家、その次はメリッサとイーノフ、ナオミとポロンと続き最後尾にリックとソフィアという順で進む。


「はいよ」


 前を見てさみしそうな顔した、ソフィアがリックに手を出してきた。リックはソフィアとそっと手をつなぐ、彼女はリックを見てほほ笑む。目の前でナオミとポロンが、仲良く手をつないでるから羨ましくなったようだ。


「リック! 空を見てください」

「うわぁ、グラディアとは違って星がよく見えるね」


 ソフィアが空を指さした。彼女の細く白い指の先には、綺麗な星達がいくつもまたたいている空が広がっていた。海上は大きな建物がないせいか星がよく見える。王都は城や高い建物があるし、夜歩く時は巡回ばかりだから星空を見る余裕もない。


「ふふふ。二人で星を見れてうれしいです」

「そうだね…… でも、今度は二人きりで……」

「えっ!? はっはい……」


 手をつなぎ星を見ながら、恥ずかしそうに顔を赤くする、ソフィアとリックだった。


「おぉ! あそこだ」


 カルロスが嬉しそうに通りの先を指す。彼が指した方へ視線を向けると、桟橋の先に海浮かぶように建てられた大きな木でできた建物見える。あの建物がレストランで、桟橋の上には足元を照らす、ランプが建物まで並んで光っていた。

 店の前で花柄のシャツを着た、ウェイトレスがリック達を迎えてくれた。店内は丸い形をして中央に四角いカウンターのようなものがおいてあり、カウンターの中はキッチンとなっていた料理人が料理をつくってるのがのぞける。

 さらに店の壁はなく天井だけだけで、円形の店内に置かれて席から、すべてで海が見えるようになっていた。キッチンのある四角いカウンターの前には、人の腰くらいの高さの細長くい長方形のテーブルが、いくつも置かれて料理がところせましと並んでいた。

 リック達はウェイトレスに席へと通された。ちなみにこの店は金を先に払い、並んだ料理を各自が好きに取って良いという、いわゆるビッフェ形式のレストランだった。席についたリック達にカルロスが店のシステムを説明した。


「じゃあ後は各自適当に食べていいからな」

「ポロン! 料理に取りに行こう!」

「行くのだ」

「あっ! こら! 二人とも、走ったら危ないよ」


 カルロスから説明を聞いて、すぐにポロンとナオミが取り皿を持って飛び出していった。慌ててイーノフが二人を追いかけて行く。リックもソフィアと一緒に料理を取りにむかう、並んだ料理を彼女は、目を輝かせて見て嬉しそうしていた。

 各自おもいおもいに料理を取りにいき、戻った順でみんな勝手に食事を始めていた。


「うーん! このパンで魚のフライを挟んだやつ美味しい! ローズガーデンでも出せないかな!? 川魚ならとれるし!」

「ブリジットは研究熱心だね……」

「当たり前よ! ローズガーデンの名物を増やしていくのよ。そうすれば囚人たちの社会復帰が円滑にできるのよ」

「そうだね。ブリジットはえらいね」


 真剣な顔でブリジッドがフィッシュバーガーを食べながら熱く語っている。ゴーンライトがニコニコして、ブリジットさんの頭を撫で、彼女も嬉しそうに目を閉じる。


「へへ。ありがとう。だからゴーンライト帰ったら試作よろしくね」

「えぇ!? 僕がやるの!?」

「当たり前でしょ? あなた私に料理つくらせる気?」

「そうよ。ママがかわいそう! パパやってあげてー!」


 ブリジットとキャロラインに迫られて、ゴーンライトは困った顔で、果実をつまんでいた。リックはゴーンライトを見て乾いた笑いをするのだった。

 豪快に骨付き肉にかぶりついた、メリッサがゴーンライトの一家の話を聞いて少し驚いた顔をする。


「へぇ。ゴーンライトが料理なんかつくれるのかい?」

「そうなんですよ。うちの旦那は元料理人なんですからね」

「そうなんだ!? じゃあ、今度あたし達に食べさせてよ!」

「ダメだよ。パパはママの命令でしか料理をつくらないの。お家ではママの言うことが一番なの」

「ちょっと! キャロライン恥ずかしいこと言わないで!」


 キャロラインを止めるゴーンライト、その場に居た人間は特に反応しない。どうみても彼がブリジットに勝てるとは思えないからだ。ゴーンライト一家をみてノノは嬉しそうに笑っていた。


「なるほど、ゴーンライトさんところはブリジットさんが主導か…… 僕達と一緒だ……」

「聞こえてるよ! イーノフ!」

「ごめんなさい……」


 南国風に果実をアクセントに効かせた焼き魚をつまみながら、イーノフがボソっとつぶやいたのを目ざとく聞いていたメリッサが睨み付けていた。慌ててイーノフは謝るのだった。

 カルロスはチラッとノノを見たるだけで、彼女は気づいてない。こういう会話で余計なことを言わず、視線だけで自己主張をするのが経験ななのだろう。リックはカルロス、イーノフ、ゴーンライトを見てハッと目を開いた。第四防衛隊のパートーナは皆女性の方が強くて尻に敷かれているのだ。リックはふと視線をソフィアに向けた。彼女はリックの視線にすぐに気づいた。


「どうしました?」

「ううん。なんでもない。料理は美味しい?」

「はい! 美味しいです! リックにもあげます」


 笑顔でソフィアは、自分の取り皿にあった、肉団子をリックに一つくれる。


「(よかった。心配しすぎだよな)」


 柑橘系の果実で酸味を少しつけたソースをかけた肉団子を何個も口にいれて、幸せそうに食べるようなソフィアが、強くなって尻にしくなんてことしないとリックは確信……

 

「ふっ…… 安心するなよ。リック…… お前さん達も今だけだぞ……」

「うわぁ! ボソッと変なこといわないでください!」

「ノノだって昔は…… いた!」


 リックの後ろに忍び寄り、ボソッとつぶやくカルロス、しかし、彼はさらに後ろから忍び寄っていたノノに耳を引っ張られ料理が、置かれたテーブルまで引きずられていく。


「もう…… 何やってんだが…… しっかし、さすがに元凄腕の冒険者達だな。近づかれてもまったく気配に気付かなったよ。まぁ能力の無駄遣いだけど……」


 泣きそうな顔で引きずられるカルロスと、口元だけ笑って目に殺意を込め引っ張るノノを見てリックがつぶやくのだった。その後もにぎやかな食事は続く。


「でも、ブリジット。お前さんはそんなに名物に力をいれてどうするんだい?」

「いつか王都にローズガーデンの料理を売り込みたいんですよ。王都で人気になれば囚人たちのやる気も違ってくると思うんです」

「なるほどねぇ。じゃあ僕達も協力するよ」

「はい! お願いします! よかった。私の力をつかってゴーンライトさんを防衛隊に採用してもらってよかったです」

「お前さん…… あからさまにそう言うことを言わない方が」

「あら!? 何を言ってるのよ? カルロスだって元冒険者の伝手で姉さんをこき使うじゃない……」

「なっなに!? いたいよ! ノノ! 足を踏まないでくれ」


 リックはノノの隙の動きを見て感心する。彼女は目線を動かすこともなく、的確にカルロスの足を踏みつけていたのだ。


「(ブリジッドさんは王都にローズガーデンの料理を売り込みたいのか。確かにローズガーデンだけ売ってるのと王都で売るんじゃやる気が変わるかもな)」


 目の前で料理を食べながらうなずくブリジッド、リックの横ではソフィファがよだれを垂れしている。


「ローズガーデン名物を王都で…… 牢獄プリンが王都で…… 楽しみです。ジュルル」

「そうだねぇ。あっ! もう…… よだれ拭いて……」

「えっ!? はい」

「えぇ…… もう」

 

 顔をリックに突き出すソフィア、リックはナプキンでソフィアの口元のよだれを拭く。自然にリックがソフィアのよだれを拭くのを見た皆が白けた顔で二人を見るが気づかない。


「そろそろ俺達もデザート取りに行こうか?」

「はい」


 リックとソフィアは席を立ち、料理の並んだテーブルへと向かう。ソフィアはアイスや菓子が並んでいるのをみて目を輝かせる。しばらく悩んでようやくソフィアがデザートを選び終わり、席に戻ろうとするとナオミとポロンとすれ違った。二人は連れ立ってデザートの置かれたテーブルへと向かう。

 席にもどって、ソフィアが満足そうにアイスを頬張っている姿をリックが見ていると……


「こら! ナオミ! ポロン! そんなに取って食べきれるの?」

「あっ! 見つかった!」

「まずいのだ!」


 取り皿いっぱいに、アイスやフルーツや菓子を盛った、ナオミとポロンが席に着こうとした。二人の皿を見たメリッサに注意されている。


「まぁまぁ。メリッサ! ポロンもナオミちゃんもたくさんお菓子があってつい……」

「イーノフ…… まったくあんたはそうやって甘やかす。じゃあ食べきれなかったらあんた食べなよ!」

「うぅ…… 頑張って! ポロン、ナオミちゃん!」

「平気よ。ねぇポロン!」

「任せるのだ! イーノフ!」


 ナオミとポロンは仲良く分け合ってデザートを食べている。不安そうに見つめるイーノフに、心配はないですよ、きっと食べ切れなくてもソフィアが喜んで食べるからと、心の中で声をかけるリックだった。


「みんなで食べると美味しいですね。パクパク!」

「もう…… ソフィアの場合はいつも美味しいって言ってる気がするけど…… 食べ過ぎて腹壊さないでね」

「平気ですよ。子ども扱いしないでください!」


 子ども扱いしないでというソフィア、彼女を見てリックは笑う。生クリームを鼻につけていわれても説得力はない。リックは微笑みながら彼女に手を伸ばす。


「ソフィア! こっちむいて」

「ふぇ!? ふぇぇぇ……」


 リックはソフィアの鼻についた生クリームを手で取ってなめた。恥ずかしそうにソフィアはリックから顔をそむけるのだった。

 料理を取りに行っていた、ノノが一枚の紙を持って読みながら戻って来た。


「ねぇ!? みんなこれをみてー! 面白いのみつけた」


 楽しそうにノノがみんなに呼びかけて紙を見せてくる。


「ノノ、お前さん。それはなんだい?」

「お店の掲示板に貼ってあったのよ。なんかこの国の星の砂浜の所有者、大富豪バーランドの娘の結婚相手を募集してるんですって! なんでも試験に合格したらバーランドの娘と結婚できるみたい」

「大富豪の娘と結婚? すごいね。しかも試験に合格って誰でも参加できるのかい?」

「そうみたい。これには十五歳以上の健康な男性って参加資格書いてあるわね。えっと…… 試験の内容は大地の地底湖で草原のティアラを風車の洞窟からそよ風のベールを取って来る試験らしいわね」


 風車の洞窟と聞いて驚くリック。その洞窟は昼間アイリスがむかった場所だった。アイリスの結婚を望んだ相手とは、バーランドの娘だったのだ。


「しかも、結婚相手には家宝の竜巻鎧(トルネードアーマー)をくれるらしいわよ」

「えっ!? 竜巻鎧(トルネードアーマー)って伝説の防具の一つじゃないか!?」

「すごいわよね。カルロスやりなさいよ! 試験合格して竜巻鎧(トルネードアーマー)をもらったらトンズラして売っちゃいましょうよ!」

「ノノ…… お前さんね。僕達はもう冒険者じゃないんだから、そんなことはできないの! それに結婚は独り身じゃ無きゃダメでしょ!」

「なんだつまんない! 独り身…… なら、イーノフさんやリック君に……」

「ダメ!」


 笑顔で話をするノノ、元冒険者らしい香ばしい発言がところどころにあった。イーノフやリックをそそのかそうとし、カルロスにダメと言われて、口をとがらせ、つまらなそうな顔してノノはジュースを飲むのだった。ノノの話は終わり食事が続く。

 

「じゃあ、お前さん達そろそろお開きにするよ」


 カルロスが周りを見ながら口を開く。結局、ポロンとナオミが大量に取った菓子は食べきれずに…… ソフィアが全て平らげていた。二人はもちろんメリッサにこってりと怒られた。

 翌朝、少し早めに目覚めたリックは、朝食の前に散歩でもしようと、宿の入り口に向かっていく。リックが起きたら一緒に寝ていたソフィアも起きて散歩についてきた。昨日、興奮して遊び疲れたのだろう、ポロンはリック達が起きてもまだ寝ていた。入り口のカウンターに座った宿のおかみが、リック達の姿をみると慌てた様子で声をかけてきた。


「お客様、どちらへ?」

「ちょっと、散歩ですよ」

「よかった。遠出は控えてくださいね。特に風車の洞窟に行ってはいけませんよ」

「えぇ!? どうしてですか? あっ! ごめんなさい」


 驚いて思わず大きな声をだしてしまったリック。彼の声に少しおびえたように宿のおかみが話を続ける。リックはすぐに大声をだしたことをおかみに謝るのだった。


「はっはい…… 昨日ですね。風車の洞窟に強力な魔物が現れたです」

「強力な魔物って!? じゃあ、バーランドの試験は?」

「はい。何人かの挑戦者が怪我して帰ってきたり、亡くなった方もいるみたいで……」


 リックは風車の洞窟の話を聞き、散歩に出るのをやめて部屋へと戻る。廊下を歩くリックは、アイリスが心配で顔で少しイラついているようだった。その態度にソフィアが不安そうなに話しかけて来た。


「リック。大丈夫ですか?」

「うっうん。ソフィア…… 心配かけてごめんね」

「大丈夫です。アイリスが心配なんですね」

「えっ…… うん。ありがとう」


 ソフィアがリックの手をしく握り、微笑んで彼女はうなずいた。眼鏡越しに見える彼女の綺麗な瞳に、リックは落ち着きを取り戻し、決意を後押してくれた気がした。

 自分の部屋の階まで戻り、リックは同じ階にあるカルロスの部屋の前まで、やってきて扉をノックするのだった。

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