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第199話 見慣れた友人

「なんだ……」

「ムっ!」


 振り向くとリックの少しうしろで、アイリスが立って手を振っていた。リックの反応が薄くかったのでアイリスは少し不機嫌な顔をする。アイリスは綺麗な砂浜を駆けリックへと近づく。彼の頭には仲間のスライムのスラムンが乗っていた。リックに近づくとスラムンが挨拶をする。


「こんにちはズラ。リック! 最近よく会うズラね」

「スラムン、こんにちは。そうだね。この間雪花祭りで会ったばっかりなのにまた会ったね」

「なっ!? スラムン、恋人が一日でも離れていたら一大事なのよ! ねぇリック、さみしかったわよね?」


 上目で頭の上に乗った、スラムンに口をとがらせて怒った後に、アイリスはリックにむかってほほ笑んで問いかける。


「恋人? 誰のことだ?」

「何よ!! ひどいわね」


 腕を組んで不満げに口をとがらせるアイリスだった。リックはアイリスを見て笑って話を続ける。


「そういや。雪花祭りの時もそうだけど、なんかいつもアイリスに会う時は後ろから声かけられる気がする」

「まぁね。リック見かけたら背後に回るのよ。これは基本よ!」

「はぁ!? なんでそんなことをわざわざ……」

「だってあなた前から私が来たら絶対逃げるでしょ?」

「おっ!? よくわかったな。そりゃあ。アイリスを見かけたら逃げ出すのが俺の基本だからな」

「やっぱり! 逃げるなんてひどいくない!?」


 プクッと頬を膨らませて、アイリスはリックに詰め寄ってきた。リックが逃げるのが当然であるなぜなら……


「はっ! もしかして私の姿を見たら、恥ずかしくて逃げちゃうのかしら!? いやーん」


 手を頬にあてて恥ずかしそうに、アイリスがクネクネと体をよじっている。顔を赤くするアイリスにリックは、目を細めて白けた顔をし首を横に振った。


「いや。アイリスに会うと…… 絶対に後で面倒なことが起こるから逃げたくなるんだよ」

「はぁぁ!? なによそれ!? リック嫌い!」


 腕を組んでアイリスがリックを睨む。まぁ、リックが嫌がるのはしょうがない、勇者であるアイリスが絡む任務は、魔物の大軍が来たり大きな魔物を捕まえたりなどと、大変なのことが多いからだ。


「いいの? リックが逃げてる間に、私にリックよりいい人ができて私とられちゃうかもよ」

「別にアイリス取られてもな…… でも取られるのか…… 少しいやかな」

「ほッ本当? つっついに私の想いがリックに……」

「そうだなぁ。取られたら友達じゃなくなるとかいやだな。俺達は幼馴染だし。ずっといい友達でいたいじゃん!」

「ケッ! リック嫌い!」

「ぷぷぷずら……」


 腕を組んで考えながら、リックが笑顔で答えたら、アイリスは眉間にしわをよせて彼を睨む。直後にリックの答えにスラムンが吹き出し、アイリスに捕まれ両手で横に引っ張られるのだった。


「やめるズラ」

「謝りなさい。スラムン!」

「もう、やめろよ。スラムン伸びちゃうぞ!」

「あっ! もう……」


 リックはアイリスからスラムンを取り上げ、彼の頭へと戻した。アイリスはまだリックの顔を怒った顔で見つめいた。


「それにお前はリブルランドやマウンダ王国の女性達から求婚の申し込みが殺到してるらしいじゃん? 俺よりいい人なんかいっぱいいるだろ?」

「ちょっとなんでそれを知ってるのよ!? ただの兵士なのに!?」

「そりゃあ、俺は騎士だからな。国外のことくらい……」

「フン! えらそうに…… 騎士っていっても名前だけなの私も知ってるんだからね」

「うっうるさいな! 気にしてること言うなよ!!」


 名前だけの騎士と、気にしていることを言われ、アイリスに叫ぶリックだった。怒ったリックの顔をみてアイリスが、笑いながらや舌をベーって出すのだった。


「はは! リックが怒った。さっきの仕返しだよー! まったく私がリック以外の結婚の申し込みなんか受ける訳ないでしょ?」

「でも、リブルランドの王女様はかわいいらしいぞ?」

「いやーよ。王女様って女じゃない。私はリックがいいの。それにさなんでグラント王国の勇者の私がアナスタシア王女がいるのに他国の王女と結婚するのよ」


 アイリスの言うことももっともである、グラント王国の勇者である彼が魔王を倒したなら、普通であればグランド王国の王女アナスタシアがアイリスを迎えて結婚するのが自然だ。


「うーん…… アナスタシア様ねぇ」


 腕を組んで考えるリック。昔の彼ならここで嫉妬にかられるところだが。今は少し複雑な事情があるのであまり嫉妬はしない。アイリスが考えこんでいる様子のリックの顔を覗き込む。


「なっなんだよ?!」

「ねぇ!? もし私がアナスタシア様と結婚したらどうする?」

「どうするって? そりゃあしょうがないよ。アイリスは勇者だからさ。でも、アイリスはアナスタシア様から結婚を申し込まれたの?」

「ううん。全然そんなことはないのよ。静養中で今は会えないけどアナスタシア様とは前に言った時は友達みたいに仲良くなっただけ。でも、お城に行くとグラント王国の王様からはよく婿になってくれって言われるわねぇ。失礼よね。私はお嫁さんになりたいのに!」


 首を振って口をとがらせ不満そうにするアイリスだった。国王がアイリスとアナスタシアの結婚を進めるのは不思議ではない、アイリスは現状では一番成功している勇者なのだだから。

 目を大きく開き何かに気付いたアイリスがつぶやく。


「はっ!? そうよ! 私が王女と結婚する…… リックの憧れの王女様だから…… 王女を人質に取ってリックを手籠めにできる…… フヘヘ!」

「こら! アイリス! また下衆なこと考えてるズラね…… いい加減真面目に勇者をやるズラよ」

「なっなによ。いいじゃない別に妄想してるだけなんだから! ねっ!? リック?」


 いやらしい顔をしてアイリスがリックの顔を覗き込む。黙っているリックの事を不思議そうな顔で見つめている。


「あれ!? リックは怒らないの? 私がアナスタシア様を好きにしちゃうわよ。グヘヘ」


 舌なめずりをして、いやらしく笑いながら、アイリスがリックに顔を近づける。


「あぁ…… うん別に……」

「えっ!? 変なの! アナスタシア様よ? あなたの子供の頃からの憧れの……」

「そりゃあ、子供の時と今とでは状況が……」


 リックの反応を見て、アイリスは驚き少し不満な様子だった。


「(お前は知らんかもしれんが…… 本物のアナスタシア様はあのエルザさんさんだぞ…… 憧れるかっつーの! 何故か俺達のことを聞きたがったり、自分の管轄地域を趣味の店でつなぐような性根の腐った人なんだからな)」


 冷めた目でアイリスを見つめるリック、アイリスはわけがわからず首をかしげるのだった。


「リックー!」

「あっ! ソフィア! うん!」


 呼ばれて振り返ったリックが笑顔でうなずいた。彼の視線の先に上下に分かれた、水色と白のシマシマ模様の水着の腰に青い花柄のパレオを巻いた、ソフィアに向かって笑顔で手を振ってかけてきていた。駆け寄ってくるソフィアの胸が、動くたびにブルンブルンと震えていた。リックは彼女の体に目が離せなくなる。


「私の胸ばっかり見てます!」

「ちっちがうよ」


 近づいたソフィアはリックの視線に気づき、慌てて胸を手でかくし、彼の顔を覗き込んでプクッと頬を膨らます。


「違うよ! 見てない…… ごめん。見てた」


 ツーンとして口を尖らせて横をむくソフィア。恥ずかしそうに謝るリックを横目で見てソフィアは微笑んで舌をだす。リックには砂浜のまぶしい光に照らされた、ソフィアは特に綺麗で輝いてみえた。


「ソフィアおねえちゃーん、先に行かないでよ」

「待つのだー」

「ごめんなさい。こっちですよ!」


 ナオミちゃんとポロンの声がしてソフィアが手を振った、ソフィアに向かって走ってくる。勢いよく駆けてきた二人はリックを見ると少し恥ずかしそうにゆっくりと歩きだした。

 ポロンは緑、ナオミは赤の上下がつながったおそろいの水着をきて、二人とも腰にヒラヒラした布がついて尻尾が背中に見える。


「あらー! ポロンちゃんにソフィア。こんにちは。みんな水着かわいいわねぇ。いいなぁ。あれ? こっちの子は?」

「ナオミちゃんだよ。メリッサさんの娘さんだよ」

「へぇ!? そうなんだよろしくね。ナオミちゃん」


 リックの隣にいたアイリスがソフィア達の話かける。


「あれ!?」


 ソフィアがリックの隣にいる、アイリスの前に行ってじっくりと見つめた後、リックの顔を見て不思議そうな顔してる。ソフィアだけでなく、ポロンとナオミも、アイリスを見つめて止まった。


「どうしたの?」


 首をかしげてリックがソフィアに尋ねる。ソフィアはアイリスを見ながら静かに口を開く。


「リック! この人は誰ですか?」

「ほぇー。かっこいい人なのだ!」

「うん。すごいかっこいい! 超かっこいい! リックおにーちゃんの友達? 紹介して!」

「はぁ!?」


 ソフィアがリックの顔を見つめ、真剣な表情でアイリスが誰か尋ねてる。リックはソフィアがわざとわからない振りをして、言ってるのかと思いさすがにアイリスでもその扱いはひどいと驚く。


「えっ!? みんな何を言ってるんだ? アイリスだよ! 勇者の! 見りゃわかるでしょ。スラムンが頭に乗ってるじゃん…… あれ!?」


 リックの言葉にソフィアとポロンとナオミちゃんが固まった。三人とも驚いた顔して口が半開きに開いてる。


「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!? あぅあぅ!? アイリス?」

「ウソなのだ!!!!! ウソなのだ!!!!!! ウソはいけいのだ!!!! アイリスが男になったのだ!!!!!!!!!!!!!!!!」

「えっ!? アイリスさんって女性じゃ…… ないの???」

「いや…… ポロン、ナオミちゃん、アイリスは一応男だ」

「リックー! 失礼ね! 女の子よ!!」


 三人が驚くのも当然だ。今日のアイリスは普段と違う。ここドンバル国は戒律が厳しく、男性が女性の格好することや、女性が男性の格好をすることを禁止されている。なので、アイリスは普段と違い女装していないのだ。アイリスの長い先端が、特徴的な長い髪を束ね、後ろで結び、横の髪は黒い髪留めで止め、化粧をしていない顔は、鼻は高く目は切れ長で凛々しい顔になっている。

 服装は普段の厚手の青地に服は変わらないが、下半身がミニスカートからズボンに変わっており。腰にはアイリスが使う武器、チャクラムの金属の輪が二つをぶら下げている。

 ソフィアとポロンとナオミが、驚愕の表情でアイリスをずっとみていた。特にナオミは、アイリスにうっとりした表情をしていた。

 

「(へぇ…… まったくみんな気づかないもんなのかな!? 俺としてはあんまり変わってないと思うし、それに声とかでわかると思うけど…… まぁ俺は子供の頃からアイリスのことしってるしな)」


 リックにとってはこのアイリスが子供の頃から見慣れており、むしろ普段の女装をしている方が違和感がある。アイリスは三人の反応に不満そうに口をとがらせる。


「何よ…… ソフィアやみんな私のことへんな顔でみて失礼しちゃうわ」

「ごめんなさいです」

「ごめんなのだ」

「ごめんなさーい」

「まぁしょうがないズラよ。オラだって朝起きた時にアイリスの顔みたらビックリするズラ」

「スラムンまで! 化粧しないで髪を結んだだけなのに!」


 頭の上を飛びあ跳ねるスラムンに怒るアイリスだった。一緒に旅をしているスラムンまで驚くくらいなので、ポロンやソフィアが驚くのも当然ではある。アイリスがリックの肘のあたりをつついてくる。


「うふ。やっぱりリックだけは一目みて私だってわかるのよね」

「そうなんですか? リックすごいです」

「これはやっぱり愛の力よね!?」

「いや昔から見慣れてるだけだ。愛なんてない! ソフィアだってポロンだってその恰好で毎日遊んでたら俺と一緒の反応になるよ。それにお前はあまり顔つきは変わってないだろ」

「ぶぅぅぅぅ! リックのバカー!」


 ブスっとした顔で、アイリスが腕を組み、リックを睨むのだった。


「そういえば、リック達はなんでここドンバル国に居るズラか?」

「そうそう。何でみんな水着なのよ? 仕事は?」

「防衛隊のみんなで旅行なんですよ」

「ちょっといいの? 兵士が王国のお金つかって旅行なんて!」

「違うよ。教会から…… この間の雪花祭りの時に聖女シーリカを護衛してジャイルを逮捕したご褒美だよ」

「ちょっと待ってよ。あれ最終的に解決したの私だよね? なんであんた達が!?」


 自分を指さしてリックに問いかけるアイリス。確かにシーリカから光の聖杯を取って彼女を救ったのはアイリスだ。アイリスは教会から何ももらっていないようだ。アイリスは不機嫌な顔して、リックとソフィアを交互に睨んでくる。ソフィアは気まずそうな顔してアイリスから視線をそらす。しかし、リック達は教会にちゃんとアイリスに助けてもらったっと報告してあるのだ。なぜアイリスには褒美がないのだろうと、リックとソフィアが困っているとスラムンが飛び跳ねながら答える。


「何を言ってるズラか! 教会からの謝礼を持ってきた若い神官に抱き着いて拒否されて、海に謝礼を投げ捨てたのは誰ズラか!?」

「こら! ちょっとスラムン! それは内緒でしょ」

「内緒じゃないズラ! 後悔して泣いてるアイリスのこと見かねて、タカクラが一生懸命海の中を探したの忘れたずらか!?」

「アイリス! お前…… そんなことしたのか? タカクラ君…… しかも冒険者ギルドだけじゃなく…… 教会にまで……」

「うるさいわね。それとこれとは別問題よ!」


 胸を張って開き直るアイリスだった。スラムンはアイリスの頭の上で、怒ったようにさらに激しく飛び跳ねる。


「だいたいアイリスの冒険がうまくいくのはほとんどがリック達のおかげズラ! 一回アイリスが助けただけじゃ足りないズラよ」

「ウッ…… それはわかってるわ! 旅行は良いとしてもリックに水着をみせるなんてはしたないわよ。ソフィア! 私だって…… 水着きれば……」

「なんで? 私だけ? ポロンだって、ナオミちゃんだって」

「二人のはかわいいの! あんたのは胸は強調されてるは、へそは出てるわ! 布の切れ込みが激しいからお尻は大きく見えるし、腰に布巻いてて…… 全体的になんか卑猥なのよ」

「ふぇぇぇぇ……」


 アイリスに卑猥と言われ、ソフィアが落ち込みうつむいた。リックはアイリスを止める。


「こら! アイリス! 言い過ぎだぞ」

「フンだ! リックはソフィアばっかり!」


 真剣な顔してポロンが、ソフィアの前に立って、両手を広げてアイリスに顔を向けた。


「やめるのだ。ソフィアをいじめちゃだめだなのだ。それにお尻はしょうがないのだ。ソフィアは太ったのだ!」

「こら! ポロンそれは言っちゃダメよ!」

「ダメなのか?」

「そうよ! 太ったとか女の子に言っちゃダメなの!」

「ふぇぇぇぇぇ…… くすん」


 ポロンの思いがけない追撃に、ソフィアはさらに落ち込んでしまった。ナオミがポロンの横で注意する。悪気ないとはいえ、ポロンはソフィアにかなりのダメージを与えた。

 

「リック。私…… 卑猥ですか? 太ってかわいくないですか」

「ソフィア……」


 リックの手を引っ張って上目つかいで、訴えてくるソフィアの綺麗な赤い瞳に、うっすらと涙が浮いていた。

 

「もう…… そんなことないよ。ほら、こっちにおいで…… 俺には、ソフィアが一番だよ。」

「リック…… リックがそう言ってくれればいいです」


 そっとソフィアを抱き寄せるリック、抱き寄せた彼女の頭を優しくなでる。ソフィアは安心した表情をして、目をつむりリックの胸に額をつけていた。リックはソフィアに微笑み彼女の頭を優しく撫で続ける。横でアイリスが大きなため息をつく。


「はああああぁぁぁぁぁぁ…… 毎回毎回さ。この茶番いるの? なんで戒律厳しい国なのにこの二人を逮捕に来ないのかしら!? 私は戒律を尊重して守ってるのに!!!」

「ちげーよなのだな」

「そうね。ポロン、わたしも違うと思うわ」

「だいたいアイリスが原因ズラけどな」

「なんだよ。みんなして! ポロンとアイリスがソフィアを泣かせるからいけないんだろ!」


 リック達二人の横にみんな並び、目を細めて彼らをみつめていた。リックは恥ずかしくなり、ソフィアをそっとはなす。ソフィアが名残惜しそうにリックの胸を見つめる。ふと視線をリックがアイリスにむけた、なぜ彼がここにいるのか気になったリックは尋ねる。


「アイリスは何しにドンバル国に?」

「私はちょっとね。ここで結婚するのよ! しかもとびっきりの美人とね!」

「結婚? お前がか? でも、さっき話してた時は結婚はしないって?」

「なーんてね。違うよ。本当にするんじゃないのよ。ただ、ちょっとね! ビックリした? くやしい?」


 ニコっと笑うアイリス。リックとソフィアは真剣になにやら会話をしてアイリスに背を向けた。


「やっぱりこれくらいですかね……」

「二人だしそうだね。でも、俺は少し多く出すよ。幼馴染だし…… 出勤はメリッサさんにお願いして」

「そうですね。休暇中に申し訳ないですが……」

「ちょっと、ソフィアとリック!? 何してるのよ!?」


 アイリスに見えないように、リックとソフィアが二人で相談してると、アイリスが何やら叫んで来た。ソフィアがニッコリとほほ笑んで答える。

 

「結婚お祝いのお金をどうするかと二人の出勤がどうかの確認です」

「うん。俺とソフィアの大事な友人の結婚式だからな。調整して二人で絶対に出席するからな!」

「ねぇ! 話を聞いて! 私が結婚するのは違うのよ。嘘なの!」

「ポロンもアイリスの結婚式に行くのだ」

「ありがとう。頼むな」


 元気よくポロンが手をあげる。リックは自分の友達の結婚を、祝ってくれるというポロンを嬉しそうに撫でて褒める。


「ポロンも一緒だとお祝いは三人分ですね」

「だね。後は三人分の滞在費とか……」

「だから違うっての! 私はリック以外とは……」

「いや遠慮するなって! 金とか心配するなよ。騎士になって少し給料あがったからな」

「ねぇ!? ちょっと?! 何で簡単に信じるのよ。普段は何聞いても適当に聞き流す癖に!!! ほんとよ。私は違うのリック以外とは結婚しないの!」


 必死に叫ぶアイリス。ソフィアとリックはそんなアイリスに優しく微笑む。


「あっ! まずいズラ! 待ち合わせに遅れるズラ! ほらいそぐズラよ。早く風車の洞窟に向かうズラよ」

「ちょっとスラムン! 待って! 今大事な話が……」

「ダメズラよ。遅れたら大変ズラ! じゃあリック達またズラ!」

「うん。スラムン達も気を付けて…… アイリス結婚おめでとう!」


 スラムンが頭の飛び跳ねると、アイリスは渋々歩き出した。ニヤリと笑ってソフィアがアイリスの近くで何かをつぶやく。


「これで…… リックは…… のです! ニヤリです」

「クッ! あんたわざと!? 覚えてなさいよ! ソフィアーーーー!」

「何してるズラ 行くズラよ!」

 

 両手をあげて叫びアイリスが、ソフィアを捕まえようと両手を伸ばすと、スラムンが顔に張り付いて止めた。ソフィアは勝ち誇った顔でリックの隣へと戻って来るのだった。

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