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第185話 地竜の背中へ飛び乗って

 リック達はマッケ村から、テレポートボールでベッスポ砦へとやってきた。到着した場所の、脇から伸びる街道の先見える、満月に照らされた巨大な砦がベッスポ砦だ。ベッスポ砦は大きな谷の入り口を、ふさぐように作られた巨大な砦で、はるか昔にこの地を治めていた王が、対厄災の地竜戦用に、この地方にいくつか作った砦の一つだ。

 谷の入り口に巨大な城壁が築かれ、谷の壁にそってバリスタや投石器、他には足止めの用の木材や岩が落とせるように積まれていた。

 リックの耳にズシーーン、ズシーーーンという地竜の足音がマッケ村にいたころよりも大きくて地面が微かに揺れている。リック達より先に来ていた、輝く白の鎧を身に着けたビーエルナイツが砦に警護についている。砦で警護を担当していたビーエルナイツに挨拶してリック達は砦へと入った。砦の中は荷物がつまれた馬車が何台もならんでいて、数百人のビーエルナイツ達が作業をしていた。

 リック達に気付いた白い鎧に、黄色いマントをつけたビーエルナイツの一人が振り向いた。


「ミシェルさん」

「リック氏!! 来てくれたのでござるな。ありがとうでござる…… えっ!? 女連れでござるだと!? ちげーよ!」

「えぇっ!? そっそんな!?」

「せめてメリッサ氏なら…… 男体化の妄想ができるでござるのに…… ほんと使えないでござるね」

「いやいや……」


 腕を組みミシェルは、リックと一緒に居るのが、ポロンとソフィアなのかと攻めて来た。リックはビーエルナイツの面倒くささに辟易するのだった。


「ミシェルさん! 今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。早く厄災の地竜の侵攻を防がないと!」

「はぁ…… まぁそうですけどね。はい、リックさん、これがこの砦の防衛施設です」


 急に真面目な、口調の変わったミシェルがリックに、手に持った紙を見せてくる。紙はこの砦の見取り図で、利用できる兵器や施設が書いてある。


「おぉ! さすがだな」


 谷の壁に沿って、配備されたバリスタや投石器の、他にも攻城戦用の攻城塔と車輪付きの破城槌(はじょうつい)まで用意されていた。リックは見取り図を一通り見て、視線を外しミシェルに声をかける。


「現在の状況はどうですか?」

「はい。さきほど誘導部隊をだしました。後一時間くらいで厄災の地竜をこちらに誘導してくれるはずです」

「わかりました。俺達はどうすればいいですか?」

「リックさんは攻城塔の部隊を指揮して厄災の地竜に乗り移って攻撃をお願いします。ソフィアさんはバリスタ部隊の援護をお願いします。ポロンちゃんは私と一緒に破城槌をお願いします」

「了解です」


 ミシェルがリック達に役割を伝えた。リック達はうなずいてミシェルに返事をする。


「まずは砦の正面から弩と攻城塔で相手の気を引きます。隙をついて破城槌で地竜の足を攻撃し動き鈍らせエルザさん達の援軍を待ちます」

「エルザさん達が来たら総攻撃ですか」

「いえ…… 厄災の地竜はそんなに簡単に倒せません。ベストウォールには厄災の地竜用に用意した兵器があります。それをエルザさんがもってくるまで時間を稼ぐのです」


 ベストウォールにエルザが、厄災の地竜用に兵器を用意しおり、それの準備ができまで、砦を守るのがリック達の役目だった。リックとソフィアとポロンは顔を見合せてうなずいた。


「ソフィアはバリスタ部隊の支援だ。バリスタの操作とかは大丈夫?」

「はい。まかせてください」


 ソフィアの方を向いてミシェルの指示を伝えると笑顔で胸を叩く。次にリックはポロンに視線を向けた、ポロンの緑の綺麗な瞳とリックの目があう。


「ポロンはミシェルさんと一緒に、破城槌で砦の外で地竜を迎え撃つんだよ」

「わかったのだ」

「ミシェルさんの言うことを聞いて無理をしないんだよ」

「了解なのだ」


 うなずくポロンの頭を撫でるリック。ポロンはミシェルの元へと意気揚々と歩いていった。ソフィアもバリスタへ向かい配備につく。


「さてと俺は攻城塔に乗って地竜の背中に乗るのか……」


 リックはつぶやいて砦の奥にたたずむ攻城塔を見つめるのだった。

 砦にある攻城塔まで歩くリック。攻城塔は車輪のついた、木でできた城壁より高い塔で、車輪を後ろから兵士が押すことで移動する。塔の前面の板がはね橋のように下に下りると、城壁へ渡れる橋になるように作られている。今回はその橋を利用して地竜の背中に乗り移る。

 ソフィアが指揮するバリスタ部隊が、地竜を攻撃して進行速度が遅くし、リック達が攻城塔から橋を架けて背中に渡り攻撃する、すきをついたポロン達が破城槌で地竜の足を攻撃し足止めをするのが主な作戦だ。

 

「リックも無理しちゃダメですよ」


 塔に乗り込むリックに、城壁の上にいたソフィアが声をかけてくれた。城壁の上に配置されたバリスタに乗ってソフィアは、ほほ笑んで手を振っている。ソフィアがいる固定式バリスタは大きな弓を横にして台座に乗せたものを木で足を組んで固定してものだ。狙いを出せるように弓は下に角度がつけられ、また、左右に動かせるように、床が回転するようになっている。ソフィアが乗ったバリスタは巨大な矢を射出するようになっているが、戦場では複数の矢を射出するタイプや炎の玉を打ち出すものなどバリエーションがある。


「ここで待機か……」


 門が開く大きな音がし、城門が開かれリックが乗り込んだ塔は、城壁から数十メートル離れた谷の奥側へと運ばれた。リック達は塔の一番上の柵に身をひそめていた。ソフィアが率いるバリスタ隊は、城壁の上と谷の側面で待機し、ポロンがいる破城槌は城門の裏側にいつでも飛び出さるように待機していた。全員が持ち場につき厄災の地竜の到着を待つ。


「もう少しだな」


 リックがつぶやく。攻城塔の木の壁が震えが大きくなっていく、ズシーンと響く足音も大きくなり、厄災の地竜が近づいて来るのを感じる。リックの周りに数十人のビーエルナイルが座って待機している。ビーエルナイツ達は武器を、しっかりと握りしめ顔は青ざめ少し緊張しているようだった。

 十数分後…… 攻城塔の下で叫ぶ声が聞こえた。


「厄災の地竜を連れ来たぞーーー!!!」


 柵の隙間からリックが外の様子を覗く。攻城塔の下を馬に乗ったビーエルナイツが駆けていった。彼は剣を握りしめ、厄災の地竜の接近に備える。


「ブシューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 大きな生物の息の吐く音が近付いて、リックの周りのビーエルナイツ達の顔もこわばっていく。


「ヒッ!」

「静かにしろ!」


 リックの隣にいた、ビーエルナイツの女性騎士が悲鳴をあげ、リックは慌てて彼女の口を塞ぐ。攻城塔の壁の隙間から、黄土色の大きなトカゲのような瞳が見えた。感情のない瞳孔が開いた瞳がゆっくりと前に進む。瞳の周囲は赤黒い鱗に覆われている。


「これが厄災の地竜か…… やっぱでかいなぁ…… 攻城塔の横から見えるところが頭だとすると…… 砦の城壁から顔をだせるくらいの大きさくらいか…… 小さな村くらいの大きさはありそうだな」


 動く瞳をみながら淡々と話すリック。周囲のビーエルナイツ達は厄災の地竜の大きさに圧倒され黙ってしまっている。厄災の地竜が興奮し、攻城塔を攻撃されたひとたまりもない。リックは塔の中にビーエルナイツに、静かにするように指を口に当てて合図を送る。


「射撃準備です。横の塔には当てないように気を付けて頭を狙ってください」


 ソフィアの叫ぶ越えがかすかに聞こえる。シュバっという音がした後、空気の切り裂かれる音が近づいてくる。一斉に厄災の地竜に向けてバリスタの矢が放たれたのだ。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 矢が命中し厄災の地竜が咆哮をあげる。鳴くのをやめた厄災の地竜はジッと砦に顔を向けた。大きな足音がし、攻撃されても勢いは止まらずに、ゆっくりと砦へと歩き続ける。

 リックが居る攻城塔の壁の隙間からみえる、厄災の地竜の姿が顔から胴体にかわっていく、背中の上にはとさかのようなひし形の大きなうろこが生えていた。

 合図の銅鑼の音が響き、リック達が乗っている、攻城塔の扉がひらき、はね橋が厄災の地竜の背中に向かっていたが伸びていった。


「よし! いくよ。攻撃を開始! 全員背中に乗り移れ!」


 リックは剣をぬいて橋を渡って厄災の地竜の背中へと飛び乗った。リックとビーエルナイツ達は、厄災の地竜の背中にのると、ひたすらに背中を斬りつたり槍で突く。

 厄災の地竜の背中には、四角い大きいとさかが背骨にそって、左右に幅は二メートル、前後三メートルくらいの間隔で生えている。


「うわあああああああああああ!」

「「キャッ!!」」

「おっ落ちる!」


 四足歩行であるく厄災の地竜は、背中が痛いのか暴れだした。リック達が乗っていた攻城塔に体当たりして吹き飛ばす。何人かのビーエルナイツがバランスを崩して落下していった。


「とさかに縄をかけてバランスを保て! 危なくなったらテレポートボールで離脱しろ!」

「「「「はい!」」」」


 リックとビーエルナイツ達は、とさかにヒモをかけ、体に固定して落ちないようにする。


「まっまずい!」


 厄災の地竜はリック達に乗られた背中を、城壁に背中こすりつける気のようで、スピードを上げて城壁へと向かって行く。


「今だ! 進めーーーーーーーーーーー!!!」


 暴れてる厄災の地竜に向かって、ビーエルナイツ達が押す車輪付きの攻城槌が向かっていく。破城槌の上にのってミシェルが指示をだし、車輪を押している人の中にポロンが居た。。

 二人の破城槌は厄災の地竜の横にまわりこみ右前足へ側面についた。。


「こっちなのだ!」


 ポロン達がスピードをあげた厄災の地竜に踏まれそうになる。破城槌を押していたポロンが必死に左に押して向きを変えていあ。


「動き回るななのだ!」


 リックの耳にポロンの叫び声が届く。どうやら暴れた厄災の地竜が動き回って破城槌を打ち込めないようだ。


「ソフィアーーー!」


 厄災の地竜の背中から、リックは砦の城壁にいるソフィアに向かって叫ぶ。


「リック!? 何ですかー!?」

「ポロン達を援護するよ。バリスタで目を狙って!」

「了解ですー!」


 ソフィアが固定式のバリスタを操作して狙いをすます。とさかにかけていた体を固定していた、ヒモをほどいたリックは剣を抜いて構えた。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 バリスタ矢が厄災の地竜の目元に突き刺さり動作が一瞬止まり、矢が刺さるとほぼ同時にリックは背中を何度か斬りつける。厄災の地竜が顔を上げて苦しそうに声をあげた。


「ミシェルさん。いまだ!」

「はい。目標に近づけ!」


 ミシェルさんの指示で、ポロン達が破城槌を操作し、厄災の地竜の足元にむかっていった。再度、厄災の地竜の右前足側面に回り込んだ。


「ここまでくれば当たるはずよ。ポロンちゃんお願い」

「わかったのだ!」


 車輪を押していたポロンが、攻城槌の後ろにまわり、縄に吊るされた先端の尖った大きくて太い木で、出来た槌を引いた。


「ミシェルさん、準備できたのだ」

「よし! 発射!」

「わかったのだ。ドッカーンなのだ!」


 槌をポロンがなげるように、攻城槌を厄災の地竜の足にむかって押し出した。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 グシャっというあまり聞きたくない鈍い音がして、厄災の地竜が大きな叫び声をあげながらバランスを崩した。


「うわあああ!! まずい。倒れるぞ! 何かに捕まれ!」


 とっさにリックは自分の剣を、厄災の地竜に突き刺し、しっかりと握って体を固定する。前足がつぶれバランスを崩した、厄災の地竜は、ゆっくりと前のめりに倒れた。


「やったのか!?」


 リックは揺れがおさまると、ゆっくりと立ち上がり、厄災の地竜から剣を引き抜いて周りを見渡す。厄災の地竜に背中の先に頭がへたりと地面についているの見える。


「うん!? クソが!」


 前から気配感じ、前を向いたリックの視線に、キラと金属が光ったのが見えた。直後にリックに向かって槍が飛んで来る。リックは飛んでくる槍にタイミングを合わせて剣を振り上げた。剣と槍がぶつかり槍は回転しながら、飛んでいき厄災の地竜の背中に突き刺さる。


「なんだ…… 誰か間違え投げたのか…… いや。違う…… これはビーエルナイツの槍じゃない。」


 投げられた槍は灰色の刀身に赤く塗られて木製の柄をしていた。ビーエルナイツが使用している槍は、木製の柄ではなく、刀身から全てがが金属のより強固な槍なのだ。

 槍が飛んで来たのは、厄災の地竜の頭の方角だ。リックは視線をそちらにむけた。厄災地竜の頭の上にある、とさかの陰に人影がみえた。俺は剣を構えて頭の方を向いて叫ぶ。


「誰だ! そこにいるのはわかってるぞ」

「ほう…… やるな。うん!? 貴様は第四防衛隊の……」

「おっお前は!? グレーデン!」


 リックの前に現れたのは、かつてのルプアナの町長グレーデンだ。グレーデンはうっすらと笑みを浮かべ、ゆっくりと地竜の背中の歩いてくる。グレーデンは黒い帽子と高そうな黒い服を着て腰に剣をさしていた。


「お前…… なんでここに!?」

「貴様こそ何してる?」

「俺は厄災の地竜を止めにきたんだよ。まさか…… お前が厄災の地竜を?」

「はははっ。だといったらなんだ? あのわがまま勇者の時みたいに私をとめますか?」


 笑いながらグレーデンは、ゆっくりと近づきながら腰につけている剣を抜く。グレーデンはここでリックと対決するつもりのようだ。リックは、受けて立とうと、剣先を下に向け構えた。


「お前はいったい何のために?」

「この腐ったグラント王国を革命するんですよ。ジックザイルやあんた達みたいなやつらからこの国を解放して作り直す。彼と共にね……」

「彼だと!?」


 リックの前にグレーデンの後に隠れていた、背が小さく顔が、大きくいやらししい細い目をした男が現れた。

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