表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/263

第183話 幼い頃の思い出

 大きな体を横に揺らしながら、濃い緑色の皮膚に腹の出た体型の、フォレストゴブリンボスがリックに近づいてくる。リックはソフィアとホアキンの前に立ち、剣先を下にして構え、フォレストゴブリンボスと対峙する。

 牙の生えてヨダレを垂らした醜い顔についてる、細い目でリックをみると手に持った石の手斧を、リックに向かって振り下ろした。


「へっ」


 振り下ろされる斧を見てリックの口元が緩んだ。彼にとってフォレストゴブリンボスの一撃は、難なく対処できる鋭さと速さだった。リックは斧の軌道に狙いをさだめ剣を振り上げた。リックの剣に当たり、ガキっと音がし、斧にひびがはいり、彼の剣は石斧にめり込んでいく。

 リックの剣はフォレストゴブリンボスの石斧をいとも簡単に弾いた。目を大きく見開き、フォレストゴブリンボスが、斧を見つめていた。


「ぐふぅ!!!!!」


 悔しそうに顔を歪ませ声をあげ、フォレストゴブリンボスは、もう一度斧を振りかざした。


「どうした? 驚いた顔して? 俺の剣は硬くてよく斬れるんだよ…… ってわかるわけないか」


 笑顔でリックは、フォレストゴブリンボスに声をかけていた。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーー!」


 叫び声をあげながら、フォレストゴブリンボスは、リックにむかって手斧を再度振り下ろしてきた。剣先を下に構えたまま、リックは振り下ろされた、フォレストゴブリンボスの斧を左にかわした。

 大きな音がして地面に斧がめりこんで土が周囲に飛び砂埃が舞う。リックはそのまま左移動し、フォレストゴブリンボスの右へと回り込んだ、彼の目の前にごつごつした手が斧の柄を握っているのが見える。

 冷静に淡々とリックは、フォレストゴブリンボスの、右手首に向かって剣を振り上げた。バシューっと音がしてフォレストゴブリンボスの右手首が真っ二つに斬り落とされた。フォレストゴブリンボスの右手首は、石斧を握り紫色の血を吹き出し、畑を紫に染めていく。


「うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーー!!!」


 フォレストゴブリンボスは、空を向いて叫び声をあげ、左手で右手首を押さえる。つづいてリックは叫んでいる、フォレストゴブリンボスの右足首を剣で斬りつけた。叫び声をあげてフォレストゴブリンボスがうつ伏せに倒れた。

 リックは倒れたやつの背中にすぐに乗って、首の後ろから喉にむけて剣で突く。


「グボォ!」


 リックは右手に剣に柔らかい手応えを感じる。彼の件はフォレストゴブリンボスの首を貫通した。フォレストゴボリンボは低く静かな音を立て動かなくなった。


「よし」


 リックはフォレストゴブリンボスの背中の上で、剣を軽く振り血を拭い、鞘に納めてホアキンの横に座っているソフィアの元へ向かう。嬉しそうに笑顔のソフィアが腕を広げてリックを迎えてくれる。ホアキンはまだ尻もちをついて座っている。


「さすがです。リック」

「ありがとう」


 笑顔でソフィアに声をかけて、横にいたホアキンに視線を送るリック。ホアキンは不満そうに彼を睨むように見ている。リックは頭を気まずそうにホアキンに声をかける。


「親父…… 大丈夫か。ひっ久しぶり。俺さ…… 一応…… 騎士にはなれたよ。ビーエルナイツだけど……」


 ぎこちなく笑うリック。騎士とはいえビーエルナイツの傘下になって、階級の名称が騎士に変わっただけだが、それでも騎士には変わりない。リックは尻もちをついていたホアキンを起こそうと手を伸ばした。


「はああああぁぁぁ!? 騎士になれたからなんだ。しかも私の畑をこんなに破壊しやがって!」

「えっ!? いってぇな! てめえ!!!」


 ホアキンは差し出されたリックの手をはたいた。リックは尻もちをついているホアキンを蔑むような目で見た。


「命より畑が大事か! 仕事だからしょうがないけど…… お前なんか助けるんじゃなかった。そのまま……」

「リック!」


 ソフィアが悲しそうな顔し慌ててリックに向かって叫んだ。リックはしゃべりかけた言葉を飲み込む。


「なっ!? うるせえ! 私だってお前になんか助けら…… クソ! いったい何しに帰ってきた!? いまさら畑とかはやらんぞ! さっさと出行け!」

「あぁ。そうかい! クソが! 言われなくても出ていってやるよ」


 ホアキンはリックをジッと睨んで立ち上がり、ポロンがあけた穴をくわで埋め始めた。リックはさっさと畑を出ようとホアキンに背中を向けあるきだす、ソフィアがリックの隣に駆けて来て心配そうに顔を覗き込んで来た。


「ごめんね。大丈夫だよ。ありがとう」

「そうですか……」


 悲しそうにリックから顔を背けるソフィア、リックの元にポロンもかけて来た。ポロンは穴を埋めるホアキンに、顔を向け不機嫌そうに口をひらく。


「なんなのだ? ひどいのだ! ポロンが文句いってやるのだ」

「あっ! いいよ別に…… いつものことだから」

「イーッなのだ!!!」


 ポロンが頬をあげてホアキンにイーッてしている。リックは笑ってポロンの頭を撫でる。


「ありがとうね。ポロン。でも、イーなんかしないのかわいい顔が変なままになっちゃうよ」

「おぉ! じゃあやめるのだ」

「それに別に喧嘩してる訳じゃないんだ。俺が畑を継がないで騎士なりたいっていうのを反対してたから……しょうがないよね」


 リックは小さな声でつぶやくと、逃げるように実家の畑を後にするのだった。

 詰め所に戻る途中、畑を横断するように流れる川をみかけた、リックが立ち止まった。


「うわぁ懐かしい! 久しぶりだ。そうか! 畑の近くだったよな……」

「ふぇぇ!? リック? 待ってください?」

「待つのだー!」


 笑顔でリックは二人を置いて川沿いの道を林の中へ入っていく。ホアキンの畑近くの川沿いの道は、林に入ってすぐに開けた河原へと出た。

 

「リック? ここは?」

「ここは、俺が昔よく遊んだ河原だよ。懐かしいな」


 河原の砂利を上を歩きながら懐かしそうに周囲を見渡すリック。彼は川せり出した二メートルほどの真っ黒な岩を見て目を大きく開く。


「そう! あの岩」

「岩がどうしたんです」

「あの岩の上からよくヤゴローと一緒にあの岩から川に飛び込んだ。そうそう。アイリスは俺と手を握って一緒じゃないと飛び込まなかったんだよ。あいつ強いのに腰がひけて…… ははっ楽しかったな」

「ふふふ」


 懐かしそうに岩を指してしゃべるリック、ソフィアは彼の子供時代の話が、聞けてうれしいのかずっと微笑んでいる。


「前に話していたアイリスと遊んだところですね」

「うん。ここでよくアイリスと戦いごっこをしたんだよ!」

「ふぇぇぇ!」

 

 話しを聞いたソフィアは、興味深く河原を見渡している。リックは岩に近づき、ポロンは彼に続く。


「ははっまだ黒いや」


 リックは真っ黒な岩を触って嬉しそうに笑っている。ポロンが首をかしげている。


「なんなのだ?」

「俺とアイリスが戦いごっこしてた時に、アイリスの炎魔法を避けるのこれを盾にしてたんだよ。それにこの岩の上綺麗に水平だろ? 昔はもっと大きかったんだけど氷魔法やらなんやらで削れたんだ」

「ほええええ」


 唖然とした顔をするポロン。リックの言う通り岩の上は切り出されたようにきれいに削れていた。かつて岩ははるかに大きかったが、リックとアイリスとの戦いごっこで、魔法や攻撃を防ぐの使われ今の大きさになった。得意げに話すリックの後ろでソフィアがあきれた顔をする。


「小さい頃からそんなことを…… なんかリックが強い理由が分かった気がします」

「ははっ。どうしても騎士になりたくてさ。朝から夜までずっと戦ってたんだよ。アイリスがS1級の勇者なんて知らないからさ。二人とも本気で…… いやぁ。第四防衛隊の訓練よりも壮絶だった」


 笑いながら懐かしそうにリックは、河原の岩を見ながら話している。

 リックは本気と言っているが、初めの頃、アイリスは手を抜いて、リックに合わせていた。ただ、アイリスが勇者村に行く頃になると、リックは反撃(カウンター)と見切りを覚え、アイリスが本気で戦っても彼が圧倒するようになっていた。


「あっ! あそこは…… いいや…… あそこは別に……」


 リックが川の近くの大きな木が、二本立っている場所から目をそらした。不自然な動きをしたリックに、ソフィアがそばにやってきて声をかける。


「リック? どうしたんですか? あの木がなにかやなんですか?」

「うん…… あそこは俺がアイリスと結婚式ごっこをやった場所なんだ…… あの二つの木を教会に見立ててね」

「アイリスと結婚式……」

「まぁ。昔の思い出だよ。あんまりいい思い出じゃないけどね。うん? どうしたの? ソフィア?」

「ふぇ!? なんでもありません」

「あれ!? 待って! ソフィア」


 ソフィアは駆けて行き、二本の木の下へ行ってしまった。リックはあまり近寄りたくないのでソフィアを追わずにいた。木と木の間に立った、ソフィアはリックに振り向いて、ほほ笑んで手招きした。リックは嫌だったが、ソフィアを悲しませたくないのでゆっくりと近づく。


「うわ!」


 近づくとソフィアはリックの腕に抱き着き、そのまま彼の頬に口づけをした。驚くリックに頬を少し赤くして、ニッコリとソフィアは微笑む。


「これで私との思い出もできました」

「うっうん。ありがとう…… うれしいよ」

「フフっ。はい」

「えっ!?」


 目をつむったソフィアが顔を上にむけ、唇をリックに差し出した。白く輝く柔らかくて少し甘い、ソフィアの唇がリックの視線を釘付けにする。ソフィアがリックにキスをするように求めている。リックはゆっくちと自分の唇と彼女の唇を重ねる……


「ラブなのだ? ちげーよなのだ!」

「うわ!」

「ふぇ!? ポロン? いた!」

「いたいのだ!!」


 ソフィアの後ろの木に登り、キスするソフィアの肩から顔をだしたポロン。驚いたソフィアとポロンが頭をぶつけてしまった。ポロンは地面に下りて頭を押さえソフィアもしゃがんで頭を押さえる。


「あーあ、もう気を付けて二人とも……」

「もうポロン…… フフ」

「痛いのだ…… ははっ」


 ソフィアとポロンは頭を押させ、顔を見合せて笑う。二人に釣られてリックもいつしか笑っていた。リックの苦い思い出が河原はポロンとソフィアとの楽しい思い出に上書きされた。ただ、彼の中で結婚式ごっこが苦い思い出なだけで、アイリスと過ごした日々はかけがえないの物に変わりはなかった。

 詰め所に戻り、リックはヤゴローに報告した。リック達は仮の宿舎として、ヤゴローの実家の宿屋に泊まることになった。ヤゴローは熱心にリックが実家に泊まらないなら、詰め所じゃなくて実家の宿屋に泊まれって勧めたのだ。詰め所にリック達が泊まったら何もないが、ヤゴローの宿屋に泊めれば、グラント王国からヤゴローの実家に宿泊費用が払われるからだ。

 村の中心にある二階建ての建物が、ヤゴローの実家の宿屋だった。リック達は宿屋に移動し、夕方になってもうすぐご飯を食べにいくかなという頃、部屋で休んでいるとポロンを連れてソフィアがリックの横に真剣な表情で来た。リックは何かあったのかと首をかしげてソフィアを見た。


「リックのお家に行きましょう!」

「えっ!? なんで?」

「行くのだ! リックのお母さんに会うのだ!」

「そうですよ。お母さんに挨拶しないと…… 嫌ですか?」


 ソフィアが申し訳なさそうにリックを見た。ホアキンとまた会うのが嫌なリックだったが、会いたいというソフィアの気持ちを無下にするも忍びない。彼は小さくうなずき条件をだす。


「わかった。でも、親父が居たらすぐ帰るよ」

「はい!」


 リックの条件に笑顔でうなずいて同意するソフィアだった。彼女はすぐに行動にでる。まず、リックの背中に回り込み彼を押す。


「ソフィア!? どうしたの?」

「ポロンと私は準備があるんで出ていってください」

「そうなのだ。出ていくのだ」

「わかったよ……」


 準備があるからと、リックは背中を押され、部屋を追い出されてしまった。

 しばらくしてソフィアが部屋から出てくる。


「やっぱり綺麗だなソフィア……」


 出て来たソフィアにリックは見とれてつぶやく。マッケ村に来る前に買った、白いブラウスに黒いロングスカートの落ち着いた、服装をしたソフィアは普段より大人っぽくて新たな魅力があった。ポロンも新しい白いワンピースの服を着て嬉しそうにリックの前でまわって見せてくる。

 リックは二人を連れて実家に戻る。慣れた様子でリックは村はずれの小高い丘にある実家へ二人を連れて行く。


「残念……」


 実家の窓を見てつぶやくリック。灯りが付いていて中に誰かいるのが確実だ。留守だったら行かずに済むのとリックは肩を落とし、家の前に行って扉をノックした。


「はーい! なんだ? リック? 久しぶりね。元気だった?」


 扉が開いて中から、黒い長い髪を後ろで縛り、白い帽子をかぶり、エプロンをつけた、恰幅の良い優しい顔つきの中年の女性が出て来た。彼女がリックの母親のサラ・ナイトウォーカーだ。

 優しく問いかけるサラ、リックは少し気まずそうにうなずく。


「うん。おふくろは?」

「私も…… じゃないわよ! あんた! 何度も何度も手紙をだしたのにろくに返事もしないで!」

「わっわ! ごめんなさい!」

 

 普段は優しいのサラだが、連絡をよこさない息子に、怒り拳を上にあげて目を吊り上げる。


「やめてください」


 ソフィアがサラを止める。止めにはいったソフィアを見た、サラは怒りの顔から笑顔になる。


「いらっしゃい。あなたがソフィアちゃんね。いつもリックがお世話になって…… ふふ。丁寧な手紙の印象と同じでかわいい子ね。うちのバカ息子にはもったいないわ。来てくれてありがとうね」

「初めまして、ソフィア・シュラウドです。こっちはポロンです。こちらこそリックにはお世話になってます」

「ポロンなのだ! リックの仲間なのだ!」

「うん。ポロンちゃんもいつもリックのこと面倒てくれてありがとうね」


 母親とソフィアは親し気に挨拶して握手をして、なんか前から知り合いのような雰囲気だった。リックはなぜソフィアがサラと親しく会話して、しかも、サラにポロンのことを伝えていないのに、知っているのかと困惑するのだった。


「ソッソフィア? なんで俺のおふくろと親しいの?」

「実は前からお手紙のやり取りをしていたです」

「そうなの? なんで?」

「ダメですか? だってリックお母さんからのお手紙に返事をしてないから……」

「それは別にダメじゃないけど……」


 リックとソフィアの会話を聞いた、サラは彼を睨みつけて呆れた表情をする。


「そうだよ。ソフィアちゃんはね。あんたの代わりに私に手紙をくれて、あんたの近況とか教えてくれたんだよ。本当にあんたにはもったいない子だよ。ソフィアちゃん。リックはいらないから家の子になるかい?」

「ふぇぇぇ!?」

「ひっひどい。いくらなんでもいらないはないだろ!?」

「黙りな! この馬鹿息子!」

 

 リックはしょんぼりとうつむく。サラはソフィアの肩に手を置いて、ソフィアとポロンを家へと招き入れていてた。リックは睨まれてほっておかれてる。扉を閉める直前、サラが顔をだしてリックを見た。


「あんたはどうするの? もう帰ってもいいけど?」

「入るよ……」

「そっ。おかえり」

「あっ…… ただいま」


 リックは実家に帰った。木で出来た二階建ての家、玄関を入ってすぐに二階へ向かう階段があり、二階にはリックの部屋がある。廊下を歩きながらリックは懐かしそうに家を見る。前を歩くサラに声をかける。


「ハリスとリサはもう寝たのかな」

「厄災の地竜が来るって言うんで子供たちはベストウォールのおじさん家に避難させたよ」

「そうか……」

「そのせいで人手不足でお父さんもまだ畑仕事してるのよ…… はぁ…… あんたが家に来るって知らせてくれたなら一日遅らせたんだけどねぇ」

「ごっごめん」


 ハリスはリックの弟でリサは妹だ。家にいる頃はよく喧嘩もしたが会えないとなると少し寂しくなるリックだった。リック達は階段横の廊下を歩いて奥の扉へと入った。扉の先は居間で六人がけの木のテーブルと椅子が置かれている。テーブルの上にはサラが作った料理が並ぶ、リックはテーブルを見て思わず声をあげる。


「えっ!? なんで……」

「お先です!」


 リックの実家に、テーブルにエルザがおり、美味しそうに食事を取っていた。エルザはリック達に手を挙げて挨拶をして微笑む。


「エルザさんがなんでここに?」

「こら! リック。団長さんになんて口をき聞くの!」

「いっつもそうなんですよ。生意気なんですよ! リックは! お母さま! もっと言ってやってください」

「すいません。後で叱っておきますので……」

「なっ! おふくろ! 違うから。エルザさん。何を余計な言ってるんですか!? やめてください! 本当になんできたんですか?」


 エルザに謝るサラを止めて、彼女の肩をつかんで遠ざけるリックだった。騎士団長どころかエルザは王女なのだが、明かすわけもいかないのでとりあえず遠ざけるリックだった。エルザは手に持っていたフォークを置き、胸につけたナプキンで口をぬぐうと不満そうに口を開く。


「何でって部下の仕事ぶりを監視よ……」

「部下って!? 確かにビーエルナイツの傘下になりましたけど、直接の指揮は隊長が?」

「なーんてね。違うのよ。今日…… ここにフォレストゴブリンが出たでしょ?」

「えっ!?」


 急に真剣な表情になったエルザ、リックは彼女の問いかけてに答えるように頷く。リックの答えに、エルザは軽く息を吐いてから、話しを続ける。

 

「ふぅ。フォレストゴブリンはその名の通り森にいて滅多に出てこないはず。それがでてくるとなると……」

「まさか!? ここの近くに厄災の地竜が?」

「わかんないけどね。ただ、注意をしてほしいと伝えに来たのよ」


 にっこりと優しく微笑むエルザだった。リックはエルザの気遣いに感謝…… するわけもなく、情報を伝えるだけなのに、わざわざ実家にエルザが来る理由にならないと、疑問に思い彼女を睨みつける。ビーエルナイツは大軍団であり、団長のエルザが情報伝達に動く必要はまったくないからだ。エルザはリックの視線に気づかず話を終えるとニヤリといやらしく笑った。


「じゃあ、仕事終わり! お母様…… リックの昔のことを……」


 エルザはサラを呼び止めて話しを始めた。その後、エルザは食事をしながら、執拗にサラにリックとアイリスの思い出を聞き出そうとしていた。どうやらリックとアイリスのことをサラから聞き出すのが本当の目的のようだ。リックは心の中で強く帰れと念じるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ