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第182話 故郷マッケ村

 リック達がマッケ村の守備指令を受けて二日後の早朝。ビーエルナイツからリック達に出動指令があった。西部地方中心の町であるベストウォールからビーエルナイツに早期の守備体勢の構築依頼があったのだ。リックとソフィアとポロンは、カルロスに挨拶をしてから、マッケ村へと出発する。


「じゃあお前さん達よろしくな」

「はい。行ってきます」

「メリッサ達はベストウォールの町にいるから、何かあったら連携をとってくれ」

「わかりました」


 カルロスに挨拶を終えた、リック達は詰め所の前へ並ぶ。三人は制服のポケットからテレポートボールを取り出して握る。このテレポートボールは握って行先をいうだけで、一瞬で王国の町や村や施設に転送していくれる魔法道具だ。非常に高価な魔法道具であり、無くしたら減給だったのだが…… ビーエルナイツに防衛隊が組み込まれて以降は、なくしても始末書だけよくなった。だからと言ってなくして良いわけでもないではないが……


「マッケ村!」


 詰め所の前でテレポートボールを握ったリック。うっすらと光に包まれて周囲の景色が変わった。


「相変わらず静かで何もないところだ」


 見覚えのある街道にリックがつぶやく。隣に並んでいたソフィアとポロンが笑顔をリックに向ける。着いたのはマッケ村の近くの街道だ。先に小さい木の柵と、遠くに大きな山が連なっている景色見え、街道のすぐ横には平行に村の中まで小川が流れている。村の手前は広い畑がある。

 

「うん!?」


 リック達がマッケ村に歩き始めると、近くの畑で農作業をしていた一人が、彼らに手を振って近づいてくる


「あっ…… やっぱり! リックだー! 久しぶり」

「おぉ! あれ? なんで畑に?」

「はぁぁ? 何言ってんのよ。ここはうちの薬草畑でしょ。前に教えたじゃん」

「そうだっけ? 覚えてないよ」


 声をかけてきた村人は、リックに向かって走って手を広げる。リックが彼女の家の畑を覚えてないと、答えたら不満げな表情で頬を膨らましていた。

 リックに声をかけてきた村人は…… 緑の長く先端が巻かれた少し特徴的な髪をして、プニっとしたほっぺたに濃い茶色の瞳をした女性で、服装は丈夫そうな布の青い上着と、同じ色の短いスカートに黒のタイツをはいていた。


「ダメです。させません! なんでここにいるんですか!? 船で旅をしてるはずなのに」

「わっ! 違う! ソフィア! ダメ!」


 ソフィアが村人に弓を構える。村人はソフィアを見ると、立ち止まって怖そうな表情をした。


「きゃあーーーーーーーーーーー! リック! 何!? あの人! 私に弓を向けてるわよ? どういうこと? 兵士ってこんな野蛮なの?」

「あっ! ごめん、違うんだ! ソフィア。この人は違うよ。だから弓を向けちゃダメだよ!」

「だってアイリスが、リックに抱き着こうとしたです」

「あぁ!? 違うよこの人は…… それに本当ならアイリスにも弓を向けちゃダメなんだよ!? まぁ…… あいつはそこら辺の人と違って、勇者で頑丈だから矢の一発くらい平気だけど…… でも、この人はダメだよ! 普通の人なんだから!」


 必死にソフィアを止めるリック。村人はアイリスに似ているが実は違う人間だったのだ。


「違うよ。この人はアイリスに似てるけどミラっていう名前の俺の友達だよ」

「リックのお友達!? でもアイリスにしか……」

「目元にほくろがあるでしょ? 瞳の色も少し違うんでしょ!?」

「本当です」


 リックに声をかけてきたのはマッケ村の彼の友人ミラだった。見た目はアイリスにそっくりだが、彼女は別人で彼女の家は雑貨屋を営んでいている。ミラとアイリスの見分け方としては、ミラは目元にほくろがあるので見分けられる。ミラがアイリスに似ているのでなく、ミラを参考にしてアイリスが女装しているのだ。なぜ、アイリスが彼女そっくりになったか、それはミラが女性の中でリックと一番親しくしていたので、リックの好みはミラのような女性だとおもっているからだ。まぁマッケ村でリックの同世代の女性はミラだけなので、必然的にリックの一番親しい女性となるのだが…… なお、ミラとアイリスは仲が良く、勇者村に移住になった後もミラとは手紙の交換をしていた。

 ソフィアが弓を降ろすと、おそるおそるゆっくりとミラがリックに近づいてくる。近づいてきたミラを、ソフィアとポロンが不思議な表情で見てる。


「リック!? その人達? 大丈夫なの?」

「ううん、ごめんね。ミラ、ちょっとアイリスと勘違いしたみたいなんだ」

「なーんだ…… えぇ!? あなた…… アイリスとまだ一緒に何かしてるの?!」

「いや…… 一緒っていうか。ほら、あいつは勇者だから、一緒に仕事することが多くてね……」

「そうなんだ…… 素敵! 運命はあなた達をまた導いたのね! 私はいつでもあなた達二人のことを応援してるからね」


 目をキラキラ輝かせてリックの両手を握るミラ。リックがしまったという顔をした。ずっと目を輝かせてリックの両手を握り、励ますように話すミラ、ポロンとソフィアはその光景を見て驚いた顔をしていた。


「いい? あなた達の愛はどんな困難が壁があっても乗り越えられるわ!」

「いや前にも言ったけど、俺は越えたくない壁は超えないぞ」

「えっ!? 何よ! あなたアイリスの女心を……」

「あいつは友達だ。はい。もう終わり! じゃあねミラ。さっきは驚かしてごめん。俺達ちょっとここの兵士と話があるから! ポロン、ソフィア、行くよ!」

「あぁ! 待ってよ。もう少しアイリスとあなたの話しを……」

「ほら、ポロン、お姉ちゃんにバイバイしな」

「バイバイなのだ」


 ミラはまだ何か言いげにしていたが、リックはさっさとポロンとソフィアをつれてマッケ村へと向かう。ポロンはリックの村が物珍しいのか、キョロキョロと顔を左右に動かして、少し先を歩く。ソフィアは横を向いてミラを睨みつける。


「あの人…… アイリスに似てるだけでじゃないくて、アイリスの味方するんですね」

「こら! 睨み付けないの。しょうがないんだよ。なんかミラとアイリスは馬があうみたいでさ。仲良しの友達だから」

「リックはアイリスにあげませんよ」


 前を向いたソフィアはこぶしを握って何か決意した表情をしていた。リックはソフィアを見て微笑む。


「わかったよ。いいよ。ずっとソフィアので……」

「えっ!? ほんとですか?」

「聞こえた? うん…… 俺はずっとソフィアので、ソフィアはずっと俺のだよ」

「リッリック……」

「でも、もう村の人にむやみに弓をむけないで」

「はい」


 ソフィアは顔を真っ赤にして小さくうなずく。リックは笑顔で彼女の頭を撫でるのだった。

 リック達は木で出来たゲートをくぐってマッケ村へと


「ふぅ…… 今は王都が見慣れた光景だからここはすごく小さく見えるな」


 周囲を見渡して懐かしそうにつぶやくリックだった。マッケ村は家が十数軒ほどの小さな村で、村の中央に広場があり、近くに村の防衛隊の詰め所がある。

 リックは村の広場から離れた村外れの、少しだけ高い丘の上に立つ、小さな家へ視線を向けた。あの家がリックの実家だ。


「(親父やおふくろは元気かな…… いや…… 今日は仕事で来てるんだ。まずは仕事をしないとな)」


 三人は村の中央広場の東にある、木造りの平屋の建物に入った。中は机が十ほど並べられて、奥には二段ベッドが、二つ設置されていた。建物の内装はリック達の詰め所に似た感じだが、広くて建物は新しくて立派だった。


「ガキの頃はなんとも思わなかったけど…… ここ第四防衛隊(うち)の詰め所よりも広かったんだな…… 田舎の村の防衛隊より狭い詰め所なのか…… 王都の所属なのに……」


 建物はマッケ村の防衛隊の詰め所だった。一番奥に防衛隊の隊長らしき人物が座っている。リックは挨拶しようと近くと、彼は隊長を見て目を大きく丸くした。


「あれ!? お前……」

「おぉ! リック! なんだ!? 王都の騎士っていうから立派な人くると思ってたのにお前かよ」

「うるさいぞ。ヤゴロー。でも、なんでお前がここにいるんだよ?」


 マッケ村の防衛隊隊長は、緑色の防衛隊の制服を着た丸い顔をした、リックよりも横にも縦にもでかい体格をした大きな男だった。彼もリックの幼馴染で昔よく遊んだ友人のヤゴローだ。ヤゴローは昔から体格が大きく、五、六歳くらいまで乱暴な子供だった。いまだにそれでアイリスに少し嫌われている。アイリスとリックが戦いごっこで遊ぶようになり、二人が強くなりヤゴローは大人しくなった。


「俺が防衛隊になんでいるか? 俺はお前が村を出て行ってすぐにマッケ村の防衛隊に入ったんだよ。しかも隊長だぞ。すごいだろ」


 自慢げに胸をはってリックを上から見下ろしてヤゴローが話す。だが、リックも防衛隊の人間であり、マッケ村の事情は知っているので、冷たい目をやゴローに向ける。


「何が隊長だよ! マッケ村の防衛隊は他の町から応援ばっかりで、村の出身者が入隊したら自動的に隊長だろ。王都の防衛隊の俺が知らないとでも思ったのか」

「うっうるせえよ!」

「でも、ヤゴロー。お前は村の宿屋を継ぐんじゃなかったのか?」


 リックの問いかけにヤゴローは少し悔しそうな顔をした。


「それがよぉ。お前が村をでてすぐにトウゴが六歳の誕生日をむかえて宿屋を手伝いはじめたんだよ。そしたらあいつに…… 宿屋の才能があってさ。トウゴが手伝いをはじめたらすぐに客は増えるし…… 儲かるし……」

「へぇ。すごいな。トウゴにそんな才能が!? 良かったじゃん!」

「なに!? よかねえよ。両親はトウゴを跡継ぎにするって言って俺はでてけって…… だから、俺はここの防衛隊に……」

「ヤゴロー…… そうか」


 ヤゴローは頭角を現した弟に追われて、家を追い出されたのだった。自分と同じように仕方なく防衛隊に入ったヤゴローにリックは同情するのだった。ちなみにだいたいの防衛隊は人手不足ですぐに入隊できる。人気があってなかなか入れないのは、観光地のレイクフォルトの防衛隊くらいだ。

 親し気に話すリックとヤゴローにソフィアが近づいて来た。


「リックはマッケ村の防衛隊の隊長さんとお友達なんですか?」

「えっ!? うん。こいつはヤゴローっていう俺の友達なんだ。ヤゴロー。俺の仲間ポロンとソフィアだよ」

「はぁ…… あぁ。すいません。つい久しぶりだったので二人で俺はマッケ村の防衛隊の……」


 ソフィアを見たヤゴローは、目を大きく見開いて顔を赤くする。


「おっおい! リック! このかわいい子はお前の部下か!?」

「えっ!? ソフィアは俺の部下じゃないよ。一緒に任務をする相棒だよ」

「ソフィアさんって言うんですか…… 俺はリックの友達でこのマッケ村の防衛隊の隊長ヤゴローといいます。よろしくです。あっあの名物のマッケ漬けとかいかがですか? 歯ごたえがあって美味しいですよ」

「リックのお友達ですね。よろしくです」


 ヤゴローがソフィアの手を掴んでニコニコして挨拶した。しかし、挨拶を返したソフィアは、笑顔だったが手をすぐに振り払う。しかもリックを見ていやそうな顔をする。リックは心の中でごめんねとつぶやく。


「おい。ソフィアにベタベタするなよ。お前…… ミラに言いつけるぞ!?」

「こっこら! やっやめろ!? なんでお前が…… 村を離れてたくせにミラとのこと知ってるんだ?」

「ふふふっ。なんでだろうかなぁ!?」


 勝ち誇るリックだった。リックはミラとヤゴローが恋人同士で、将来は結婚をする約束しており、二人の力関係はミラの方が主導権を握っていることまで知っている。村から出て行ったリックがミラと自分のことを知っていたヤゴローは動揺し声を震わせる。まぁ、リックの情報源はアイリスでミラはアイリスと頻繁にやり取りをしている。アイリスはミラから聞いたことをリックに流しているのだ。当然、ヤゴローはミラと話したことが、アイリスからリックに伝わってるなんてわからない。


「クソ!」


 ヤゴローが勝ち誇るリックを悔しそうな顔で睨む。


「(うん!? そうか、怖かったね。ヤゴローは大きいもんね)」


 ソフィアがリックの背中に隠れ、横から顔を出し、ヤゴローをジッと軽く睨み付けていた。リックはソフィアの頭を撫でて、ソフィアが気持ちよっさそうな顔をするとヤゴローは二人を睨んでリックに叫ぶ。


「おいリック! お前はソフィアさんとはどういう関係なんだよ」

「どういう関係って…… 相棒だよ。相棒! 大事な相棒だよ。ねぇソフィア」

「そうですよ。相棒です。リックは大事です」


 互い顔を見合わせて頷く、すぐにリックのすそを掴んでポロンが、リック達うらやましそうに見つめる。


「あっ! ごめんね。ポロンも大事な相棒だよ」


 ポロンの頭をリックが撫でると、彼女は嬉しそうに目をつむっていた。ヤゴローはリックとソフィアのポロンの三人を見て、なぜかリックに怒りの表情を向けため息をつく。


「はぁ…… 昔からこいつはなぜか女に…… いやアイリスは男だが…… もういいや! リック。こんなところに厄災の地竜なんか来ねえから。久しぶりの里帰りなんだしゆっくりしていけよ。早く実家に戻ってサラおばさんに顔を見せてやれよ」

「そうだな…… 時間があればな」

「ダメですよ! せっかく服を買ったですから、今日の夜ごはんの前に行きますよ!」

「行くのだ!」

「こら、ポロン! ソフィア?」

「ははっ! なんだ!? リック、お前も尻に敷かれてるんだな!? 俺の仲間だ!」

「うっうるせえ!」


 ヤゴローは言ってやったぜみたいな顔をして、自分の机に戻って笑うのだった。


「うん!?」


 扉を勢いよく叩く音がして小さな男が詰め所に駆け込んできた。


「おぉ! トーゴ! どうした?」


 ヤゴローが立ち上がって男の子に声をかける。入って来たのは、深い青色の髪につぶらな黒い瞳に華奢な体をして、ヤゴローとは全然にていない男の子。彼はヤゴローの弟のトウゴだ。トウゴは白いシャツを着て、茶色の皮の肩ひもがついた半ズボンを履いていた。トウゴはヤゴローの前に行くと慌てた様子で口を開く。


「ヤゴローおにいちゃん。大変だよ。フォレストゴブリンに畑が襲われてるの!」

「なっなんだって!? ほんとうか? トウゴ! 襲われているのはどこだ?」

「ナイトウォーカーさんの畑だよ! 今、ホアキンさんが…… 魔物と……」


 ホアキン…… 父親の名前を聞いたリックは、すぐに厳し顔をしトウゴに詰め寄る。


「おい! トウゴ!? 親父の畑がフォレストゴブリンに襲わてるのか」

「えっ!? もしかしてリックお兄ちゃん?」

「そうだぞ。リックが帰って来たんだよ。リック。どうする? お前が行くか?」


 真面目な顔で、ヤゴローはリックを見つめた。ソフィアとポロンの視線がリックに集中する。リックは一瞬躊躇したがすぐにうなずいた。自分はマッケ村の守備に来ている、魔物に村が襲われたら、防衛隊の隊員として対処するのが当然だからだ。


「もちろんだ。ここで今すぐに動けるのは俺達だけだろ? 行くよ」

「わかった。俺もすぐに他の隊員を集めて援軍に行く。先に行ってくれ! トウゴ、すまないがリック達を案内……」

「おいおい。大丈夫だよ。久しぶりでも自分の家の畑くらいわかる」

「そうか!? じゃあ頼んだ。トウゴ、お兄ちゃんを手伝ってくれ!」

「わかったよ」


 ヤゴローがトウゴを連れて詰め所から出ていく、リックはポロンとソフィアの方を向くと二人は笑顔で頷いた。


「リックのお家の畑を助けるのだ!」

「任せください」

「ありがとう。じゃあ行こうか。二人とも」

「はい」


 リック達三人は詰め所を出ると、村の広場を抜け外へ出て街道から離れ畑の奥に進む。ナイトウォーカー家の畑は、街道沿いにあるミラの畑から一キロほど奥にあり、畑も家と同様にマッケ村で一番端だ。狭い農道を自分の家の畑へ走るリックだった。


「あっあれは!? おっ親父!?」


 畑へとやってきたリック。二方が林に面した畑の中央で一人の男が剣を握り、数匹の深い緑色をしたフォレストゴブリンと対峙していた。フォレストゴブリンの手には手斧や棍棒が握られていた。

 黒いズボンに青いシャツを着て護身用の剣を構える。白髪交じりの黒い短い髪で鼻の下から長い髭を生やした中年男性、目つきはリックと一緒で悪い。男の名前はホアキン・ナイトウォーカー、リックの父親である。


「うわああああああああああああ!!!!」


 一匹のゴブリンがホアキンに、斬りかかろうとし、手斧を振りかざい飛び上がった。恐怖にひきつった顔をした、ホアキンは飛び上がった、ゴブリンに驚いて尻もちをついていた。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 斬りかかろうとした、フォレストゴブリンの頭に矢が突き刺さり倒れた。


「ありがとう。ソフィア……」

「大丈夫です。早くお父さんを助けてください」

「あぁ」


 素早く矢をつがえたソフィアが、フォレストゴブリンを射抜いた。リックはソフィアに礼を言ってポロンを連れ畑へ向かう。


「よしポロン。あの畑のゴブリンの真ん中をどっかーんしてくれ。ソフィアは親父を頼む」

「わかったのだ」

「はい」


 ポロンがハンマーを構え、ゴブリンに向かっていく。ポロンの背よりも大きいハンマーは、長い持ちの手で、先端がどんぐりの形をしている。

 リックは親父の前に立つ、ソフィアは尻もちをついた、親父の肩に手をかけて支えて抱き起こしていた。


「怪我はないみたいです」

「ありがとう。ソフィアはそのまま保護をしてくれ」

「おっお前? リックか? この人達はなんだ?」

「俺の仲間達だよ。とりあえずあいつらは俺達が片付けるから……」


 ホアキンはリックを睨みつけて顔をしかめる。


「お前になんか…… それにお前は王都の兵士だろ! なぜここに居る?」

「申し訳ありませんね。第四防衛隊(俺達)は任務によって管轄が変わるんですよ。親…… ナイトウォーカーさん」

「なっ!?」


 何か言いたそうにしているホアキンを一瞥して、リックは剣を抜いた。剣先を下に構え、前に出るリックだった。


「どっかーんなのだ!」


 飛び上がったポロンが、フォレストゴブリンに向かって、上からハンマーを叩きつけた。一匹のフォレストゴブリンが、よける間も潰されて大きな音がして畑の土が舞い上がった。横にいた近くにいたフォレストゴブリンが、衝撃で吹き飛ばされて地面に転がった。


「どっかーん。どっかーんなのだ!」


 さらにポロンはハンマーを、体の横にもっていって構えて、吹き飛ばされたフォレストゴブリン二匹に追撃をする。一匹は起き上がろうしたところを横から、ハンマーが飛んできて頭が潰れた。もう一匹は逃げようとし、背中を叩かれて背中から、くの字に曲がって膝から崩れ落ちた。


「これで全部か……」


 フォレストゴブリンをポロンが全て倒し、リックはホアキンの方に体を向けた。ホアキンがまだ不安そうなで周囲を見渡していた。


「リック。まだ終わりじゃない。やつらのボスがいるはず」

「えっ!? ボスだって!?」

「リック! あっあれ!」


 ソフィアが慌てた様子で、畑の左手の林を指さした。林から大きな足音がし、大きな影が近づいてきていた。


「なるほどね。お前がボスか……」


 木と木の間からリック達の倍くらいはあろうかという、大きな石斧を持ったフォレストゴブリンボスが、ゆっくりと姿を現して歩いてきた。


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