第179話 勇者と栄光の騎士達
しばらくして、魔物たちの進軍が止まった。おそらく、リック達が予想以上に粘るので、いったん引いいて軍を立て直し、再度進撃を始めるつもなのだろう。メリッサは城壁を背持たれにして、槍を肩において座っている。リックは彼女の横にやってきて座った。
「お疲れさん。ふぅ。さすがに数が多いね」
ニコッと笑ってメリッサは彼に水筒を差し出した。笑顔で水筒を受け取ったリックがすぐに口をつけた。水を飲んだリックがメリッサに返答する。
「そうですね。でも、隊長達がくれば……」
「あぁ……」
小さくうなずいて空を見上げるメリッサだった。疲れた表情のメリッサだが、その目や雰囲気は希望に満ちていた。リックとメリッサは黙って城壁の上に座り魔王軍が進軍が再開されるのを待っていた。
「あれ? でも随分と相手の攻撃の間隔が開いてるね……」
「そういえば?」
なかなか動かない魔王軍、メリッサが不思議に思いリックに声をかけた。リックが体を起こし振り返ると、王都マティダの前の平原を埋めつくて魔王軍が隊列を組んで迫っていた。だが、魔王軍は足を止め、みな右方向をむき、なにやらざわめいていた。
リックは魔物達と同じ方向に視線を送った……
「なっなんだ!? あれ? メリッサさん!」
王都の右手にある小高い丘に、巨大で柔らかなドーム状の白い光が現れ、中から大量の何かが出て、丘が黒い影で埋まっていっていた。リックとメリッサは城壁からその光景を眺めている。
「あれは? なんですかね?」
「転送魔法だね。大量の人間が一気にここに飛んできてるみたいだ」
「魔王軍の増援ですか?」
「いや…… それだったらもっとあいつら喜ぶだろう。あの反応は何も知らされてないって感じだよ」
「じゃあ、あれが隊長の援軍…… でも、すごい数ですよ。何人くらい、いるんでしょうね?」
「五万かな…… いや…… そんなもんじゃないね」
光の中から出て来たのは、白い鎧に身を包み、馬に乗ったグラント王国の騎士だった。騎馬軍団がマティダの平原に隊列を組んで並ぶ。
「エルザさん……」
上空に大きな光が現れ、その中に真っ白な馬にのったエルザの姿が映し出された。映し出されたエルザは目じりを下げいやらしく笑っている。
「ふぅ…… 高いだけあって楽々と軍団を移動できましたわ。やっぱり私の言った通り、テレポートゲートを買って良かったわね。ロバート!」
「小説を買いにいったついでに商人から勧められて買っただけですよね!? それと魔導式空中映写装置がもう動いてますから余計なこと言わないでください。国の恥ですから!」
「えっ!? もう!!! ロバート! 大事なことは早く言いなさいよ! さぁ! 早く全員を配置につかせなさい。我がグラント王国の大事な国民が窮地におちいってるのよ」
顔を真っ赤にして真面目な顔をしロバートに指示を出していた。
「お前さん達ー! お待たせー!」
光の中でカルロスが馬に乗り、城壁に向かって手を振っていた。
「やっぱりエルザさん達をつれてきたんですね……」
「予想通りだね。まったく……」
リックとメリッサは顔を見合せて苦笑いをする。エルザのほかにロバートとリーナ、さらにシェリル達も隊列に加わっている。エルザは馬に乗り軍団の配置が完了するのを見て次の指示を出す。
「ロバートは、ミーサ、バネッサを連れ三人で右翼を率いて城門付近の攻撃部隊を蹴散らすのよ。カルロスはシェリルと左翼を率いて回り込みながら敵の退路を断ちなさい」
「はっ! 行くぞみんな」
「はいよ。お前さん達いくぞー」
「残りは私に続け! リーナはわたしの護衛よ」
「はい。エルザさん!」
エルザの力強い声がこだまし、空中の白い光は消えていく。マティダに現れた、十万を超える白い騎士達は、綺麗な隊列を組み並んでいる。騎士達の前で、リーナを連れたエルザが剣を抜き、空に向けて腕を伸ばした。
「グラント王国の白き栄光の騎士達よ!!!!!!」
「「「「「「「「「 うおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」
草原に響き渡る騎士達の声。エルザの声に反応し槍を掲げて騎士達が一斉に叫んだ。騎士達の声は魔王軍を震え上がらせ、離れた城門に居るリック達まで届く。
「さぁ、目の前に広がる暗闇を恐れず進みなさい! 敵の盾を砕き。歯向かう者はその槍で払い。立ちはだかる全ての敵をこの世から消し去りなさい!!!! 敵の屍の先に我がグラント王国の栄光の陽が昇るのよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「「「「「「「「 うおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
エルザさんの言葉に騎士達が、こたえて雄たけびをあげる。空気の振動は魔王軍を通り抜け、遠く離れたリック達がいる城壁をも超えていく。
「進めーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! 我らに栄光を!!!!!! 敵を破滅に!!!!!!!! 殺せ!!!!!!!」
「「「「「「「「「「殺せ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
巧みに馬を操り横にかけながらエルザは叫び続ける。騎士達はさらに大きな雄たけびを上げる。自分達に向けられた、十万の殺意に魔王軍は縮み上がり、指揮官も兵士の一人も逃げること…… いや指一つ動かせなかった。
「殺せーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
剣を天にかかげエルザが、魔王軍に向けて駆け出した。
「「「「「「「「「「「「「「殺せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」」」」
エルザに続き槍を構えた、騎士達が雄たけびをあげ魔王軍へ突撃した。
向かって来る騎士達に我に返った、魔物たちは駆けて来る騎士に向け、矢を放つが、騎士達は構わずに突っ込んでくる。魔物の矢は鎧や盾に弾かれ倒れた騎士はごくわずかだった。急いで投石機を方向転換せようと、トロールが慌てている。魔法が使える魔物達は、急いで詠唱を始める。だが…… 魔物達の行動はすべて無駄に終わる。
五万の魔物の兵に十万以上の騎士達が、突撃してあっという間に飲み込まれていった。隊列を組んでいた魔物たちは、ぶつかった瞬間に馬に突き飛ばされるか、槍に突かれて蹴散らされていく。騎士達は体の大きなトロルは取り囲み、毒を仕込んだクロスボウで穴だらけにして、ゴブリンは魔法を使って焼き尽くされ、オークを馬で吹き飛ばして倒れているものには容赦なく、馬で踏みつぶされるか、槍で腹に穴をあけられていく。騎士達が通った後は無数のばらばらになった、もう何も言えなくなった、魔物の躯だけが静かに置かれていた。
城壁の上からリック達はエルザ達が魔物を蹴散らすさまを見つめていた。
「すごいな…… 会うたびに人は増えて装備もよくなるし、よく訓練もされてどんどん強くなってる」
呆然とエルザ達を見つめるリックがその目は輝いている。自分が子供の頃、憧れ目指した騎士は、グラント王国にはなかったが、今それが目の前に姿を現した。
「あぁ。そうだね。よし! あたし達も出るよ」
「はい」
リック達は城門を開け、魔王軍に突撃した。魔王軍たちは城を出たリック達を見ると、武器を捨て持ち場を放棄して必死に走って逃げて行ってしまった。開いた城門のすぐ先でリック達は呆然と逃げていく魔王軍を見つめていた。
「やったわね。私達の勝ちよ!」
前に居たアイリスが振り返ってにっこりと微笑んだ……
「危ない!」
背後からアイリスに向かって、大きな剣が投げつけられた。リックはとっさにアイリスを突き飛ばした。リックの目の前に向かって来る、大きな青い刀身の剣。右手を振り上げてリックは剣を弾く。剣は回転しながら飛んでいき、近くの地面に突き刺さる。
リック達の背丈の倍は、あろうかろいう大きな剣からは、なんといえない怪しい雰囲気がただよっている。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
すぐにリックはアイリスの元へと駆け寄り、左手でアイリスの腕をつかみ、引っ張って立ち上がらせた。
「リック! 前!」
アイリスが前方を指さした。リックは左腕でアイリスを背中に隠して前を向く。リック達から数十メートル先の空に、大きな人のようなものが、浮かんでいるのだ見えた。
「クソ…… 外したか! 邪魔な勇者め」
浮かんでいたのは人型の魔物で悔しそうにつぶやきながらリック達の前へと飛んで下りて来た。
目の前に来た男は、襟の大きい黒い裾が地面に着きそうな、長いコートをつけて、コートの中は動きやすそうな、ズボンに黒の綺麗な貴族服を着てる。魔物は見た目は少し大きい人間の男のようで、長い白い髪に、人間のような長く白い、三日月型の髭を生やし、目が大きく丸い。
「おまえ? 何者だ?」
リックは右腕を上げ魔物に向かって、剣先を向けて叫ぶ。
「俺は四邪神将軍の一人、背信侯爵のモンドクスだ」
「じゃあ。あんたがこの軍隊の総大将ね。覚悟しなさい! よくもマウンダ王国を!」
「フン。この国の王をコインで惑わし、混乱したところを攻め込むところまでは完璧だったのだが…… 邪魔しおって!」
「残念でした! さぁ、リック! やっちゃって!」
「おい!? 俺が戦うのかよ? もう……」
モンドクスを指し、リックに向かい笑顔で、指示をだすアイリス。兵士の背中に隠れる勇者にモンドクスは首をかしげる。
「何をしてる? 勇者よ。貴様が出てきて戦わんか。メイガスを討った力を俺に見せてみろ!!!」
「はぁ!? 私はメイガスなんか倒してないし。倒したのはこのリックだよ」
「なんだと!? こいつがメイガスを…… 面白い。勇者の前にまず貴様からだ」
モンドクスがリックを見て笑う。面倒なことに巻き込まれたとリックは顔を歪ませる。だが、友人の頼みだ、リックは諦めて前に出て剣先を下に向け構える。
「リック。あんた面白そうなこと一人でするんじゃないよ。モンドクス…… あんたはあたし達グラント王国第四防衛隊が相手してやるよ」
横に一列に並んでメリッサ達が武器を構えて近づいて来た。
「はははっ。全員まとめてなぎ倒してくれるわ! この国が落とせなくとも勇者とメイガスを討った者の首を持って帰れば魔王様も納得されるだろうしな」
モンドクスとが手を伸ばすと、大きな青い剣が地面から抜け、回転しながら素早く彼の手に戻っていった。両手で剣を持ち、腰を落としてリックに剣を向けて構え、モンドクスはニヤッと笑う。
「俺は四邪神将軍の一人だぞ? 貴様らが束になってかかって来たところで負ける訳がなかろう」
「負けるわけがないだと? 馬鹿だなてめえは…… お前の後ろを見てみろよ。あいつらみたいに必死に逃げたら追わないでいてやるぜ」
「なっ!? きっ貴様ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
左手でモンドクスの背後で、敗走する魔物達を指し挑発するリック。眉間にシワを寄せモンドクスは、リックに向かって駆け出した。リック達は全員で武器を構える。
「一気に片付けるよ。まずはゴーンライト! あんただよ」
「はい! 闇土障害物!」
ゴーンライトが盾を重ね、垂直に振り下ろして地面を叩く。モンドクスの前の地面が、せりあがっていき土の壁となった。ゴーンライトが作り出した壁はモンドクスの胸ほどの高さがある。
「はぁ? なんだこりゃ? 舐めてるのか」
モンドクスは馬鹿にしたような笑みを浮かべ、左手を剣から外しゴーンライトが作り出した壁にかけた。壁を飛び越えるつもりなのだろう。
「今だ! ソフィア」
「はい」
「うわ! クソ!」
メリッサの合図で、ソフィアが弓でモンドクスが、壁に手をかけた左手を射抜いた。モンドクスは苦痛の表情を浮かべて壁から手を離す。
「ポロン! あいつの足をどっかーんだよ」
「わかったのだ」
ポロンが駆け出して距離を一気につめていく。壁より低いポロンの姿はモンドクスから見えない。
「壁を消しな」
「はい」
ゴーンライトが盾を地面から、離すと壁が消える。同時にメリッサがモンドクスへ向かって走りだした。
「クッ…… えっ!? あっ! クソ!」
モンドクスは壁が消えると、走りだしたメリッサに気付き剣を構えた。しかし、その隙をついてモンドクスの横を、ポロンが駆け抜け、素早く背後に回り込む。
「どっかーんなのだ!」
叫びながらポロンは、横からハンマーでモンドクスの膝に叩きつける。
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
鈍い音がしてモンドクスは、両足をハンマーに払われて、横から地面に叩きつけられるように倒れた。同時に持っていた剣が右てからはなれて地面に転がる。
「なっ何者だこいつら……」
驚いた表情でモンドクスは、素早く立ち上がろうとして、体をうつ伏せにして右手をついた。
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「大丈夫かい? 四邪神将軍さん? イーノフ!」
モンドクスの上に、飛び上がっていた、メリッサが槍を投げた。槍が右手を貫通して地面に突き刺さる。苦痛の表情を浮かべがモンドクスが左手で槍を掴もうとする。
「はいよ。メリッサ! 精密誘導爆破!」
「うわぁ!」
モンドクスが槍を掴もうとした、左手で爆発が起こった。モンドクスは苦痛の表情をして思わず左手を引く。
「じゃあ美味しいとこはあんたにあげるよ。リック!」
「はい」
リックが距離をつめモンドクスの前に立つ。顔をあげたモンドクスと、剣を持って彼を見下ろす、リックの目が合う。絶望的な表情をするモンドクスだった。
「よっ!」
「きっ貴様ら何者だ!? なっなぜ…… こっこの私が……」
剣を構えてモンドクスに笑顔で挨拶をする。モンドクスの顔は恐怖に、ひきつり声が震わせリック達が何者か尋ねる。
「何者って…… さっきそこの彼女が言ったろ」
右手に持った剣を振りかざしリックは、左手の親指で後ろに立つメリッサを指さした。
「グラント王国の第四防衛隊…… ただの兵士さ」
「なっ!? ただの兵士なわけ……」
リックはモンドクスに向かって、剣を振り下ろした。手応えがしてモンドクスの首が地面に転がった。
「しっかし、全然、勝負にはならなかったな。四邪神将軍か…… まぁ第四防衛隊には邪神より強い槍を使う巨大鬼神がいるからな…… あっ!?」
首がなくなり動かなくなったモンドクスを見てつぶやくリック。直後にモンドクスの体が、メイガスのように、白い灰のようになって消えていく。
「あれ!? また……」
灰になったモンドクスの体の上に銀色の指輪が転がっていた。リックは指輪を拾い上げた。魔物はリック達の周りにはすでにいなくなっていた。遠くの方で悲鳴が聞こえる、エルザ達が魔物を追いかけ殲滅しているのであろう。
「リックー!」
アイリスがリック方に駆け寄ってきた。アイリスがリックの手元の指輪をジッと見つめている。
「うん? この指輪ほしいのか?」
「銀色かぁ…… ちょっと私の趣味じゃないわね。いらないわ。あっ! そうだ! 今なら宝物庫警備がいないうちにきわどい危険な下着をしっけい……」
「おい! こら! まったく勇者のくせに火事場泥棒みたいなことを考えやがって…… あっ! 行っちゃった」
アイリスにリックの声は届かず、凄い勢いで城に向かって駆けて行ってしまった。
「まぁ、いいか。どうせコインと引き換えにもらう予定だったものだし……」
アイリスが向かった城門には、既にグラント王国の旗がなびいていた。マウンダ王国の国王は逃亡し、緊急保護特権で王都の市民は、いったんグラント王国のビーエルナイツの支配下に置かれることになる。
「(これで実質的にマウンダ王国は、グラント王国のビーエルナイツの傘下か…… エルザさん達が外国を統治…… 大丈夫かな)」
風になびく王国旗を見つめ、深刻な顔をするリックにソフィアが近づいて来た。
「リック? それ? なんですか?」
「あぁ。これ? なんかモンドクスの中からでてきたんだ?」
ソフィアはリックが手に持っている指輪ジッーと見つめていた。なぜかソフィアは嬉しそうに微笑んでいる。
「どうしたの? ほしいの? あげようか?」
「はい。私がもらいます」
「じゃあ。はい」
「ありがとうです」
「ソフィア、指輪なんかどうするの?」
ソフィアは手の装備を外し、モンドクスからでた、銀色の指輪を自分の左手の薬指にはめた。手を前にだしてリックに見せてきた。
「似合うですか?」
「うん!」
似合うと言われ嬉しそうに笑うソフィアだった。リックはその笑顔を見て、指輪をあげたこと満足する。ソフィアはリックの腰に視線を向ける。
「確かメイガスからでた指輪もありましたよね?」
「うん。これだよ」
「これを貸してください」
「はい」
リックは自分の道具袋から、以前にメイガスを倒した時にでた、指輪をソフィアに渡す。メイガスの指輪は、金色でモンドクスは銀、ソフィアは二つの指輪を見比べてみたいようだ。
「二つも指輪もってどうするの?」
「こうするですよ」
「えっ!? ソフィア?」
イタズラにほほ笑んだソフィアは、リックの左手をつかんだ。ソフィアは彼の左手の装備を外し、薬指にメイガスから出た指輪をはめた。そしてリックの左手をソフィアの左手を重ねて満足そうに微笑む。
「リックとおそろいです」
「うん。そうだね」
「お互いの左手の薬指に指輪って結婚したみたいですね」
「はは! そうだね」
手を重ねたリックとソフィアとお互いに見つめ合う。リックは恥ずかしいのか、顔を赤くするソフィアは、そんな彼に優しく微笑むのだった。右手でリックは彼女を抱き寄せ二人は目をつむった。
「ダメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「きゃっ!」
「うわぁ! なっなんだ!?」
リック達にむかって叫ぶ声が響いた。ものすごい勢いでアイリスが走って戻って来た。戻って来たアイリスは、リックとソフィアの間に、手をいれて離しソフィアを睨み付けた。
「はぁはぁ。ソフィア! あんた何してるのよ!?」
「アイリス見てください。リックと私の結婚指輪です!」
「はぁ!? ちょっとリック!? どういうことよ!? 私というものがばばば……」
「だって、お前いらないっていったじゃん。だから二人でつけたんだ。ねぇ。ソフィア!」
「はい!」
「がばばばばば……」
首をかしげて、リックとソフィアは、互いみつめあいながら頷いた。アイリスは二人を見て、悔しそうに地団太を踏むのだった。
この後…… 二人はポロンにも見つかって、ポロンが自分もと指輪を欲しがり、リックとソフィアは順番に指輪を貸すことになった。なぜなら、ポロンに貸すのを断ったら泣きながら、ポロンがカルロスとゴーンライトの結婚指輪を取ろうとし、二人から苦情が来たからだ。
マウンダ王国を救ったアイリスはまた旅立ち、第四防衛隊は王都へと帰還する。