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第169話 ブレイブキラーは彼の手に

 クルクルとハンマーを回しながら、元気よくポロンは石像に向かって駆けていく。リックはいますぐにでも助けに行きたいのを、グッとこらえ彼女の背中に気をつけろと心の中で声をかけるのだった。リックは隣に立つタンタンを見てから顔をソフィアに向けた。


「ソフィア! ポロンのフォローをお願い。タンタンは俺からあまり離れるなよ」

「うっうん」

「はい」


 ポロンの近くにいる鎧達を、ソフィアが弓で狙う。放たれたソフィアの矢が、次々にポロンの前の鎧を射抜いていく。援護されたポロンは大きな石像へ駆けて近づく。


「おっと! ポロン達ばかりを気にしててもダメだったな……」


 視線を自分のすぐ前へと向けたリック、彼らにも十体程の鎧がむかってきていた。リックは剣を下に向け構える。タンタンは彼の背後に移動し短剣を両手に持って構えた。大きな音がリックの耳に届く。ポロンと石像がぶつかりあったのだろう。


「ポロン…… 無茶しないんだよ」


 リックは前を向いたまま、ポロンの方を向かずにつぶやくのだった。彼個人としては、すぐにでもポロンの元へと駆け出したいが、兵士の同僚として彼女を信頼し前を向き自分のやるべきことをする。


「よし! タンタン。一気に片付けるぞ」

「うん」

 

 うなずくタンタン。リックは膝を曲げ、腰を落とし、体勢を低くし、右腕を引いて駆け出した。鎧の集団はリックを囲うつもりなのか、横に広がっていく。


「まとめてかかってこい!」


 正面と右左から三体の鎧が、一斉にリックに向かって剣を振ろした。


「右…… 正面、左の順!」


 カっと目を見開いたリックは、体の向きを変え、剣が振り下ろされる前に、右にいた鎧の胸を突く。ガシャという音がし、右の鎧がくの字曲がって崩れた。すぐに右足を前にだし、剣を鎧から引き抜くと、体の手前に右腕を持ってきながら体の向きを正面に戻す。右手首を返して、正面にいた鎧の胴体を、剣で横から斬りつけた。大きな金属音がして鎧の胴が、斜めに切り裂かれて鎧が崩れていく。


「最後だ」


 リックは剣を振りぬいた姿勢で、左足を踏ん張って軸にして、体の向きを変えた。剣を持った右腕を引きながら、残った左側来る最後の一体の正面を向く。振り下ろされる剣をかわすように、彼は左前に出ながら剣を振り上げる。

 リックの剣は鎧の右腕を切り裂いていく。切り裂かれた鎧の右腕を、剣を握ったまま空中を回転して地面に落下した。右腕を切り落とされた鎧は、必死に残った左腕に持つ盾を、リックに向けたようと体をひねろうとしてる。


「遅い」


 リックは前に出て鎧の背後へと抜け、振り向いて背後から兜を剣で斬りつけた。音を立てて鎧の兜が地面に落ちた。ガラガラと音を立ててゆっくりと鎧が崩れ落ちていく。

 満足そうに右手に持った剣を見てうなずくリックだった。


「さて…… 後は残りの奴らを片付けないとな」


 最初の三体がやられて、鎧の勢いはなくなった。次々に鎧がリックに向かって行くが、彼は簡単に鎧をなぎ倒していった。


「よし! これで最後だ」


 最後に残った鎧の胸に、リックが剣を突き刺すと、ガラガラと音を立てて崩れた。


「うわぁ…… リックおにーちゃんはやっぱりすごい! あっという間に鎧を全部倒しちゃった」

「ありがとう。すごいとか言われるとちょっと恥ずかしいな」


 リックの少し後ろにいた、タンタンが声をかけてきた。タンタンは目を輝かせてリックを見つめている。


「リック! こっちの援護を」

「どうした!? ソフィア!」


 ソフィアが叫んでリックを呼んだ、彼女の方に振り返ると、そこには石像と対峙するポロンが立っていた。ただ、旗色が悪いようで、大きな石像と対峙していたポロンは、ハンマーを頭を地面につけもたれかかるようにして今にも倒れそうだ。


「さっきからあの石像と打ち合いを続けてて……」

「わかった。ソフィアは回復の準備をして!」

「はい」


 ソフィアに指示をし、リックはポロンの元に急いだ。


「ふぅふぅ…… 強いのだ! でも、負けないのだ!」


 肩で息をしてポロンは、苦しそうにハンマーを両手で持ち上げた。


「ポロン!? 大丈夫か?」


 リックとタンタンはポロンの側に駆けよる。リックが声をかけ、彼女の肩に手をかけた。肩にかけられた、手を振り払うように上下に肩を動し、ポロンはリックに振り返る。


「リック!? 私は大丈夫なのだ。負けないのだ」

「いやいや、もう無理だよ。後は任せて」

「そうだよ。ポロンちゃん。リックおにーちゃんに後は……」

「いやなのだ! ポロンが倒すのだ! ナオミやエドガーやタンタンを怖がらせたあいつを……」

「ポロン……」


 泣きそうな顔でポロンがリックに訴える。ポロンは仲間の為に戦っていて意地になっているようだ。リックは彼女の頭を撫でようと手を伸ばす……


「どっかーんなのだ!」

「あっ! ポロン! ダメ!」


 ポロンは撫でようとしたリックの手を払い、ハンマーを構えて石像に向かっていってしまった。リックはすぐに彼女の後を追いかける。石像が向かって来るポロンに、向かって拳を振り下ろす。


「負けないのだ!!!!!」


 背中までハンマーを振り上げた、ポロンは石像の拳にハンマーを叩きつける。ポロンのハンマーと石像の拳がぶつかりあって爆発したようなドゴォという大きな音を立てた。


「クッ! ポロン!」


 砂煙が上がり、リックは手で顔を覆い、一瞬だけ視界がなくなった。少しすると晴れだ視界の中に、ハンマーを拳に叩き込んだ状態で、立つポロンの姿が見えて来た。だが、石像が何事もなかったかのように拳を振り上げた。体力が尽きたのか、ポロンは膝をつき、彼女の手から離れたハンマーが力なく地面に上に倒れる


「うー…… 負けたのだ!」

「逃げろ! ポロン!」


 リックアは叫びながら、剣を構えて石像に向かって行く。石像はポロンに向かって拳を突き出した。膝をついて悔しそうな顔をしてるポロンに大きな拳が迫る。リックは必死に走るが間に合わない。


「あっ!」


 何かが一瞬で石像の額へと飛んでいき、ぶつかり金属がキーンという甲高い音を立てる。石像の動きが止まり、拳はポロンに触れる寸前で止まった。

 回転しながらぶつかった、物体が地面に突き刺さる。


「あれは…… ブレイブキラー!?」


 振り返ったリック、彼の後ろでタンタンが、右腕を体にクロスさせた状態で下に向け、必死な顔で肩で息をしながら立っていた。タンタンが石像に向かって、ブレイブキラーを投げ、動きを止めたのだ。


「タンタン! ありがとう!」

「リックおにーちゃん! あいつを…… ポロンちゃんをいじめたあいつを倒して!」

「あぁ。任せておけ!」


 リックは力強くタンタンに向かって頷く。タンタンはリックに向かって笑顔で手を振るのだった。


「こっちだ!」


 何かを探すように周りを見ていた、石像はリックの声に反応し彼の方を向いた。剣先を下にして構えたリックに、石像は顔に横に右拳を持ってきて殴りかかってきた。

 殴りつけにくる拳をギリギリまで引き寄せるリック。彼の目に冷たい石でできた大きな拳が迫ってくるのが見えている。


「いまだ!」


 タイミングをあわせ、リックは体を左に移動させながら剣を振り上げた。リックの横を拳が通りすぎ、振り上げらえれた剣は、石像の手首へと向かって行く。硬い感触がリックの右手に伝わる、石像の拳は手首から先が切り落とされ吹き飛んだ。殴りかかり、前かがみになった石像の懐に体勢を低くしてリックは潜り込む。


「うわぁ!」

「悪い。危ないから少し離れてろ」


 振り向いて叫ぶリック。石像の拳は回転しながら、タンタンの目の前に落下した。驚いたタンタンが声をあげた。

 

「そこだ」


 リックは右手に力を込め、石像の右足を狙う。再度硬い感触がリックの右手に伝わる、彼の剣は石像のふくらはぎから下をスパッと切り裂いた。そのまま前に出てリックは、石像の背中側へと抜ける。

 リックの背後で後ろで大きな音が響いた。ゆっくり彼が振り返ると、片手と片足を斬られた石像はバランスを崩し倒れていた。正面に回り込んで、石像の前にくると、赤い目の光が今にも消えそうになっている。石像の表情がないからわからないが、リックには赤い目の光がなんとな信じられないみたいなことを訴えてる気がした。


「まぁ…… 確かにお前の体は硬くて本来なら簡単には切れないかもしれないけど、力持ちのポロンと何度も打ち合ってたらもろくもなるだろうよ。さぁ。ごめんな。これで終わりだ」


 リックはタンタンがブレイブキラーをぶつけ、傷になってる石像の額に、剣をゆっくりと突き刺した。額に剣を刺された石像は、赤い目の光が完全に消えた。リックは石像の顔に足をあて、剣を引き抜き、鞘におさめて振り返りゆっくりと歩き出す。


「リック! すごいのだ! 強いのだ」

「えっ!? あっ! ポロン!? もう…… あぶないよ!」


 ポロンが駆け寄ってリックの手前で、ジャンプして彼に飛びつこうした。


「それに飛び上がりすぎだよ…… 俺はメリッサさんじゃあるまいしそんなに大きくないんだから……」


 なぜかポロンはリックより、はるか高くジャンプし、落ちるようにしてリック向かって手をひろげて下りて来る。


「よっと…」


 リックは落ちて来る、ポロンを受け止めようと、手をひろげた……


「あっ!? あれ!?」


 目測を誤ったようで、ポロンはリックの頭の上を通過していく。


「危ない!」

「わっ!? なのだ!」

「うわぁぁぁぁ!」


 リックはとっさにポロンのわき腹の辺りを掴んで引っ張った。ポロンは体勢を戻そうとして、彼女の下半身がリックの顔に向かって来た。ポロンの下半身がリックに覆いかぶさるようにしてぶつかった。リックはバランスを崩して背中から倒れた。


「イタタタ…… うん!? ここは!? なんか薄暗い……」


 リックの目の前には白くて、パンパンの太ももと、青と白のチェック柄の布が見えた。


「おわ! リックがわたしのお尻の下にいるのだ」

「やっぱりここはポロンの尻か!? わっわっ! ごめんね。苦しいからどいて……」

「くすぐったいのだ! やめるのだ!」

「本当に苦しいから…… 早くどいてって!」


 視界が洞窟の天井に変わり、ポロンの柔らかい感触がリックから離れていく。立ち上がったリックは顔を手で拭う。


「リック!」

「ほんっとにどうして? リックさんはそう変態なんですか!?」

「あゎゎゎ。さすがに私もこれは……」

「そうだ! リックおにーちゃんは変態兵士だ! 訴えてやるぞ!」


 タンタンはリックに向かって叫んで、怒った顔のソフィアがリックに顔をちかづけてくる。さらにいつの間にか戻ってきていた、シーリカとミャンミャンがリックを見て呆れた顔をするのだった。

 リックからどいたポロンは楽しそうに、エドガーとナオミと話している。


「えっ!? なに? ソフィアはなんで!? 怒ってるの? これは事故だって!」

 

 手を上にかざしてかざした、ソフィアは何かを唱える。リックは次に起こることを覚悟し目をつむった。直後に彼は青白い電撃の光に包まれるのだった。


「ギャーーーーーー!」


 叫び声をあげるリックを、タンタンはすごいすっきりした顔で笑ってみていた。


「反省したらポロンにエッチなことしたの謝ってください」

「うぅ…… ポロンごめんな」


 ソフィアに首を掴まれた座らされた、リックの目の前にポロンが立って嬉しそうにしている。


「ポロンはいいのだ。リック大好きなのだ!」


 ニコッと笑ってポロンがリックの方に近づいてくる。


「ポッポロン?! ちょっと!? ダメだよ」

「いくらポロンでもダメです!」


 ポロンは手を首に回してリックに抱き着いて頬ずりをし始めた。慌てた様子のソフィアが、ポロンをリックから引き離そうとしてる。


「なんでなのだ!? よくお家でソフィアとリックはこうしてるのだ! ソフィアもリックが好きで抱き着くのだ。だからわたしもリックが好きだから抱き着くのだ」

「えぇ!? 何言ってるんですか? 私とリックはそんなことしてませんよ」

「ウソなのだ! いつもしてるのだ! 夜とかベッドの……」

「ダメです!」

「はい! ポロン静かにしようか」


 リックとソフィアは慌ててポロンの口を押さえた。


「もがもが……」

「ダメだよ。そういうことは外で言っちゃいけないんだよ」

「そうですよ…… もう……」


 ソフィアとリックは顔を赤くして、恥ずかしそうにポロンを押さえつけるのだった。


「ふーん…… ソフィアさんとリックさんってポロンちゃんの前でも…… ほんと最低」

「あゎゎゎ。王国の聖女としては幼い子にこんな過激なところを見せる兵士は感心できませんね」


 ミャンミャンとシーリカは、目を細くジトっさせてリック達をみていた。リックは不満そうに口をとがらせ、ソフィアは恥ずかしそうに顔を赤くしてうつむいている。


「(べっ別に家なんだから…… いいだろ! なっなんだよ!?)」


 タンタンがリックにものすごい敵意を向けていた。その横でナオミが興味津々といった表情で、リック達を見つめてエドガーは、ちょっと困った顔をするのだった。

 こうしてタンタンのクエストは終わった。リック達はナオミ、エドガー、タンタン、ポロンの四人と一緒に鉱山の出口に向かった。タンタンとシーリカとミャンミャンとは、途中で別れエドガーとナオミを、それぞれの家に送り届けた。

 全員を無事に送ったリック達は、詰め所へと戻り、鉱山で見たものをカルロスに報告をした。


「ふーん。鉱山にそんな場所があるのか。わかった。すぐに誰か派遣するよ」

「俺達も行きます」

「いや。お前さん達は疲れたろ? 王都南平原担当に後は任せてくれていいよ」

「わかりました。後…… これがその部屋にあったメモです」

「うむ」


 カルロスはリックからメモを受け取ると、すぐに人を手配して、鉱山の中にあった部屋へ部隊を向かわせたのだった。

 翌日…… 調査隊から報告があり。彼らが到着した時には、中にあった文字などはすべて消えていたという。あの謎の空間と部屋一体何だったのか謎で終わってしまった。調査隊の報告が終わり、しばらくしてリックとソフィアが、カルロスから呼ばれた。カルロスの机の前に来た二人、彼は腕を組み真剣な表情で一枚のメモを見ていた。


「それは? 俺が拾ったメモですよね。そういえば俺は中身を見てませんでした。何が書いてあったんです?」

「あぁ…… お前さん達は確か? 壁にはシーリカの成長記録と書かれていたといったな?」

「はっはい!? でも、それがどうかしたんですか?」

「これを読むといい……」


 リックはメモを受け取って確認する。メモはところどころ字がかすれて、読めなくなっていた。


「日付は十一年前で…… えっと…… やっとここまで…… 光の聖杯…… 聖女の中に…… 十四歳…… 取り出す…… えっ!?」


 メモの内容を読み上げたリックは、メモを持ったままカルロスに目を向けた。


「隊長!? なんですか? これ光の聖杯が聖女の中って…… シーリカの中に聖杯があるってことですか」

「シーリカの中に光の聖杯…… カルロスおじ…… 隊長! どういうことですか?」

「リック、ソフィア。お前さん達は慌てなさんな。これが正しい情報かはわからない。僕が今それを調べている」

「でも、光の聖杯のことが書いてあるってことは…… あそこはジャイルさんが居たってことですよね?」

「それもわからない。ただ石像や鎧を警備兵として動かせるような魔法使いは第四防衛隊(うち)のイーノフかジャイルくらいだろう」

「ジャイルさんがあんな寂しいところに……」


 悲しい顔をたソフィア、リックは彼女の手をそっと握った。


「いいかい。この事は誰にも言わないでおいてくれ」

「えっ!? でも、シーリカには伝えないと……」

「さっきも言ったろう? これが本当のことかはわからない。それに聖杯が体内あることにどう対応していいかも不明だ。無駄に混乱させるより調査を優先させる。わかったな?」

「はっはい。わかりました」


 リックはカルロスに同意した。彼の言う通り、仮に聖杯がシーリカの体にあったとして、何か影響されるのかわからないし、情報の正確性もない。今は静観し調査を進める方が優先だ。


「ありがとう。普段どおりにシーリカ様に接してくれ。あっ! 特にタンタン君やミャンミャンちゃんには絶対に秘密だ」

「はい」


 念を押すカルロスに力強くうなずくリックだった。タンタンとミャンミャンに話せば、確実にシーリカの耳に届く。


「うん!?」

「タンタンさん。いらっしゃいです」


 事務所の扉が開き、タンタンが入って来る。カルロスはタンタンの姿を、見て慌てて書類を隠している。ソフィアはタンタンを迎え、リックはカルロスの机の前で彼を隠す。


「見て見て!、リックおにーちゃん、ソフィアお姉ちゃん、ポロンちゃん! ジャーン!」

「おぉ、勇者狩人(ブレイブハンター)なのだ!」


 タンタンが事務所に入ってくると、鞘に納められたブレイブキラーをリック達に見せてきた。無事にクエストの金を受け取り、エドガーからブレイブキラーを買いリック達に見せようとやって来たようだ。


「かっこいいですよ」

「うん。よかったな!」

「えへへ。ありがとう」


 ポロンとリック達に自慢げに、ブレイブキラーを見せたタンタンは、カルロスの横へとやってきた。


「隊長さん、ありがとうございました」

「そうか良かったな。これからはブレイブキラーを使って冒険者としていっぱい活躍できるといいな」

「はっはい!」


 カルロスがタンタンの肩に手を置き励ましている。タンタンは笑顔で、恥ずかしそうに返事をする。嬉しそうにタンタンに、リック達は笑顔を向ける。


「タンタンと隊長は同じ短剣の使い手になるわけか」

「そうですね。なにせ隊長は元白銀短剣ホワイトシルバーナイフですから」

「こら。リック、ソフィア! お前さん達はいつまでも古いことを……」


 にこやかに会話するリックとソフィアとカルロスの横で、タンタンは驚いた表情をし、すぐに彼はうつむき小刻みに震えだした。リックがタンタンの様子に気付き声をかける。


「タンタン? どうした?」

「僕…… 短剣使いやめる! この人と同じ武器なんかやだ!」

「えぇ!? どうしてですか?」

「だって、この人は…… ココ姉ちゃんの……」


 タンタンが泣きそうな顔で、拳を握ってカルロスに冷たい視線を送っている。タンタンの急激な変化にリック達が動揺する。


「ココ姉ちゃんのことをもて遊んで捨てた人じゃん! そんな人と同じ武器なんかやだい!」

「こっこら! タンタン君! お前さんね。僕はココに何もしてない。僕にはカミさんがいるんだから、人聞きがわるいこというんじゃない!」


 泣きながら隊長を睨むタンタン。騒いでいるタンタンに向かってポロンが歩いて近づく。


「短剣を使うのやめるのか? タンタンが短剣を使ってるのかっこよかったのだ!」

「えっ!? ほんと? ポロンちゃん!」

「すごかったのだ! わたしを助けてくれた大事な短剣なのだ」


 ニコッとわらったポロンが、タンタンをかっこいいというと、ほほを赤くしてタンタンはニヤニヤとしだした。ただし、タンタンの視線は時折動くポロンのリス耳に向けられていた。リックは冷めた目でタンタンを見る、この獣耳フェチの少年が次に何を言うかは、もう決まったようなものである。


「僕! 短剣使う!」


 力強くブレイブキラーを空に向かってかざすタンタンだった。


「(やっぱり…… そんなこったろうと思ったよ。タンタン、後でミャンミャンに言いつけてやるからな)」


 タンタンはにこやかに手を振り詰め所を出て帰っていった。ポロンは嬉しそうにタンタンに手を振り返し、拒絶されて複雑な顔をしてカルロスはゴーンライトの元に行って愚痴るのだった。

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