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第167話 鉱山の冒険者達

 鉱山の入り口に四人が到着した。鉱山の入り口は幅五メートル高さ二メートルほどで、四角く丸太で補強のため縁どられていた。通路の壁にも同様に木の板が張られているのが見えた。

 タンタンとは鉱山の入口の少し前で立ち止まっていた。ポロンが一人で前に出て内部を探り、エドガーとタンタンとナオミは、ポロンの後ろで並んでたっていた。リック達は四人から、少し離れた岩の陰から、四人の様子をうかがっている。


「どうしたの? タンタン?」


 タンタンの横でナオミが、彼の顔を覗き込んだ。タンタンは青い顔して、怯えており彼を心配したようだ。


「えっ?! ナオミお姉ちゃん…… あのね…… うっ」

「あー! まさか怖いんでしょう? 暗いから!」

「ちっ違うもん! 怖くないもん!」

「もう。しょうがないわね。ナオミお姉ちゃんが手をつないであげましょう」

「ほんと!? ナオミお姉ちゃん大好き」


 笑顔のタンタンが、ナオミんの手を握っている。ナオミは満足そうに笑って、タンタンの頭を撫でていた。


「ふふ。お姉ちゃんの言うこと聞いていい子ねぇ。そうだ。エドガーもお姉ちゃんが手をつないであげようか?」

「僕はポロンちゃんが……」

「あぁん!? なんだって? いいからあたしが手をつないで、あ・げ・る!」

「うわぁぁぁ…… ポロンちゃん……」

 

 ポロンに向かっていたエドガーの手を、途中でナオミが強引に掴み、鉱山の入り口に引きずっていく。声がしたのを聞いた、ポロンが振り返って、三人が入口に向かってるのを笑顔みている。


「うん? もう行くのか? わかったのだ。しゅっぱーつなのだ」


 三人が来たのが嬉しいのか、ニコッと笑ってポロンは、意気揚々と鉱山に入っていった。


「ちょっとちょっと! なんなの? あの猫耳は? 下品な言葉遣いで最低! しかも、私のタンタンにちょっかいだすなんて! 叩き切ってやるわ」

「あゎゎゎ! ダメですよ! やめてください」


 鎌を構えて今にも飛び出しそうな、ミャンミャンをシーリカが必死に押させてる。リックはミャンミャンにあることを伝えようと、ソフィアの方を向いて微笑み彼女に声をかけた。


「ソフィア。ナオミちゃんが誰の子供かミャンミャンに教えてあげて」

「はい。あの子はナオミちゃんと言ってメリッサさんの娘さんです」

「えっ…… メリッサ姉さんの娘!? ははは…… お上品でかわいい娘さんですね!」


 ナオミの正体を聞いて、冷や汗をかき大人しくなって、露骨に態度をかえるミャンミャンだった。ミャンミャンを押さえていた、シーリカが彼女から手を離し驚いた顔をする。


「あゎゎゎ…… それって!? メリッサさんって猫耳ってことですよね?」

「違うよ。ナオミちゃんは小さい頃にメリッサさんに引き取られた養女なんだよ」

「そうですよね」

「もうやめてよ。シーリカ。猫耳のメリッサさんって気味悪いだろ。夢に出てきたらどうすんだよ……」


 リックは首を横に振るのだった。顔をあげて彼は視線をポロン達へと戻す。


「あっ! ポロン達がいない! みんな行くよ」


 すでにポロン達は鉱山の中へと入っていた。リックたちはポロン達を追いかけるのだった。鉱山の通路は、ところどころ木の柱で、補強されて壁も木の板で覆われている、

 リック達が進む薄暗い通路の先に、タンタン達の松明がうっすらと見ている。リック達はすぐにポロン達に追いつき、彼女らの少し後ろを歩いていた。ミャンミャンとシーリカが前にいて、リックとソフィアは後ろを進む。


「はぁ…… 大丈夫かしら。タンタンは小さい頃から暗いの怖がるのよね。あっそうだ! 松明を持っていってお姉ちゃんが照らしてあげる」

「あゎゎゎ。だからそういうところがダメなんです」

「じょっ冗談よ。そんなことしないわよ……」


 ミャンミャンとシーリカの会話を聞いたリックはまたやってるのかと呆れる。ミャンミャンの慌てた様子からとても冗談とは思えない。


「フフ。まったく…… ミャンミャンはタンタンに激甘だな。ダメだよ。過保護にしたらタンタンの為にならないよ。うん!? ソフィア?」


 横のソフィアに視線を向けたリック、彼女の口元がわずかに動いているのに気づいた。


「ソフィア。何してるの?」

「なっなんでもありません! あっ!」


 慌てて口元を押さえようとソフィアが右手を上げた。ソフィアの右手から、明るく光る球が、飛び出してポロン達へと飛んで行った。


「うわ! 急に明るくなったのだ!」

「よかった。これで安心だよ~」


 ソフィアから出た明るい光の玉は、ポロンの上に飛んでいき、彼女の周囲を明るく照らす。ナオミから手を離し、タンタンがポロンの横に移動して嬉しそうな声を上げた。

 エドガーもナオミから手を離し、ポロンの横へ移動し、彼女に声をかける。


「すごい! ポロンちゃん。すごい」

「こら! エドガー! あんたまでポロンと手をつなごうとしないの」

「違うよ。ナオミ姉ちゃん。ポロンちゃんの上で明るいの光ってるから……」

「あっ! ほんとだ。じゃあ、あたしがポロンのすぐ後ろにいるから、エドガーはあたしの隣にいなさい」

「えぇ……」


 光の玉は下水道を調査した際に、ソフィアが使用した松明の代わりとなる魔法だ。リックは目を細めてニヤリを笑ってソフィアを見た。


「ソフィアはポロンの為に魔法を使ったんだね」

「だってポロンも時々暗いのを怖がるから……」

「ふーん。俺に甘いとか言ったくせに! ソフィアも充分に甘いじゃん」

「違います。甘くないです! ただ道が暗いと危ないし松明だって火で危ないから……」

「甘いよ。俺は手を出してないのに!」


 リックは一人だけポロンを助けたソフィアがずるいと思った。彼もポロンを助けたいのだ。リックに甘いと言われて、頬を膨らませたソフィアが彼に顔を近づけ来る。


「なっなに? ソフィア?」

「私は甘くないです!」

「甘い…… ううん、ソフィアはポロンの事が心配だっただけだよね」

「はい……」


 驚いてから少し恥ずかしそうな顔をしたソフィア。顔近づけてきた彼女の頭をリックは軽く撫でたのだ。ソフィアは目をつむって、気持ちよさそうにしている、彼女の銀色の髪はやわらかくて手触りが良い。


「リック……」

「あっ?! ちょっと! 狭いからこんなところで抱き着いたら……」


 嬉しそうに笑ってソフィアが、リックの首に手をまわして抱き着いて来た。恥ずかしそうにするリックを見て微笑むソフィアだった。


「はぁぁぁぁぁぁ…… 何あれ!?」

「あゎゎゎゎ! 最低ですね!」


 前を行くシーリカとミャンミャンが振り返って、リック達を嫌悪感まるだしの顔で睨み付けていた。リックは二人の顔を見て気まずそうにするが、ソフィアは気にせずに抱き着いて幸せそうにしていた。


「はいはい。もう交代ですよ」

「ちょっと!? なに?」

「えっ!? リックー」

「あゎゎゎ。ミャンミャン、五分交代ですよ!」


 リックとソフィアの間に、ミャンミャンが割って入り、彼の手を引っ張って先に行く。引っ張られながら振り向いたリックに、ソフィアが愛おしそうにこちらに手を伸ばしてる姿が見えた。リックを手を伸ばそうとするが……


「うわぁ!」

「ダメです。前を向いて歩いてください」


 ミャンミャンに襟を引っ張られ、リックは強引に前を向かされるのだった。

 少し行くと開けた場所にでた。さっきまでの道とちがって、この場所は、ところどころに壁に板がなくむき出しになっている。どうやらこの辺りに目的のものがあるのか、エドガーがむき出しの壁を触って調べている。


「おっ! これは…… 珍しい!」

「どうしたのだ? エドガー!」

「あっ! ポロンちゃん。この壁を見てご覧。緑色してるでしょ?」

「ほわー! きれいなのだ。これは何なのだ?」

碧鉄鋼石(ミドリッテッコウセキ)っていうんだ。強度が強くていい防具が作れるんだよ」

「おぉー!」


 ポロンが目を輝かせて、エドガーが指している壁を見つめている。エドガーがつるはしでポロンに見せた壁を掘り始めた。しかし、石が硬いのかなかなかうまく掘れないようだ。三人はエドガーから少し離れたところから心配そうに見ている。


「あれ? 硬いな…… なかなか掘れないよ」

「任せるのだ! 離れるのだ!」

「えっ!? うわわー」


 ポロンが両手で持ったハンマーを持ち上げ背中までもっていく。それを見たエドガーは、慌ててエドガーが壁から離れる。エドガーが目の前からいなくなると、ポロンは思いっきり壁に叩きつけた。

 ドゴォォォォーーンという大きな音がして、天井からパラパラと、ほこりが舞って足元の少し揺れる。エドガー、ナオミちゃん、タンタンが頭をかかえてしゃがんでいた。


「もう一回なのだ!」

「「「「えっ!?」」」」

「「「「えっ!?」」」」


 効果に満足できなかったのか、ハンマーをまたゆっくりと上にあげるポロンだった。次にポロンがハンマーでたたくと鉱山が崩落する可能性が高い。


「えっ!? ポロンちゃん! ダメっ! ダメだって! これ以上大きな衝撃を与えたら……」

 

 ハンマーを振り上げた、ポロンにエドガーが、必死にしがみついて止めた。リックはエドガーが、ポロンに触れているのが、気に入らないが、彼がポロンを止めたことに感謝する。


「ダメなのか? なんでなのだ!?」

「これ以上衝撃を与えたら鉱山が崩れちゃうよ! 僕たちみんな潰れちゃうよ」

「おぉ!? じゃあやめるのだ!」

 

 ポロンがゆっくりとハンマーを下した。リック達はみな安堵して胸を撫でおろすのだった。エドガーは小さく息を吐いて、ポロンが叩いた壁を見て笑う。


「ははっ! でも、ポロンちゃんが叩いくれたおかげで碧鉄鋼石(ミドリッテッコウセキ)がたくさん取れそうだ。ありがとう」

「えっへんなのだ!」


 エドガーとポロンが喜んでいる。ナオミとタンタンは、二人を見てどことなく不満そうな表情を浮かべる。しばらくエドガーは、ポロンが叩いてもろくなった緑鉄鉱石を掘り、別の場所に移動しようとまた歩き出した。


「あれ? ナオミお姉ちゃん! これ!」

「なに? タンタン! あっ……」


 タンタンが何かを発見したようで、ナオミを呼び止め、二人は立ち止まる。ナオミは先を歩くエドガーとポロンを呼び止める。


「ねぇ! ポロン、エドガー? これをみて」

「えっ? 何? ナオミ姉ちゃん?」

「どうしたのだ?」


 タンタンとナオミが目の前にある、板が打ち付けられた、壁を指した。ポロンとエドガーが二人の元にやって来たやってきた。隙間から何かが見えるのか四人は板の隙間をジッと見つめている。


「ねぇ。奥になんかあるわよね?」

「そうだね。もしかしてさっきポロンちゃんが叩いた衝撃で!? 開いたのかも!」

「ふーん…… うわ!」


 タンタンが板に手をかけて、軽く引っ張ると簡単に板が外れた。驚いたタンタンは板を持ったまま、尻もちをついてエドガーが駆け寄ってくる。


「タンタン君! 大丈夫? あれ? ここ…… 板をはめ込んであるだけ簡単に外れるよ」

「ほんとだ!」

 

 四人は板をはがしていく、壁から板が取り除かれると人が、一人くらい通れるくらいの穴が開いていた。


「なっなにこれ? エドガー君?」

「えっ!? 僕もこんなとこ知らないよ!」


 首を大きく横に振ったエドガー、彼は何度かこの鉱山に来ているが、穴には気づかなったようだ。


「じゃあ、行ってみましょうよ」

「おぉ!行くのだ!」

「えぇ…… 怖いよ!」

「うん。危ないからやめたほうが……」

「大丈夫よ。タンタン! お姉ちゃんが守ってあげる!」

「そうなのだ。私も守るのだ」

「ポロンちゃん……」

「ナオミお姉ちゃん……」


 ナオミとポロンは楽しそうにして、エドガーとタンタンは怖気づいていた。結局、ポロンとナオミの強引さに負け四人は穴の中に入ることにした。ポロンを先頭にタンタン、エドガー、ナオミちゃんの順で入っていく。リック達は四人が穴に入るのを見届け、穴の前へ移動して中の様子をうかがう。


「もう…… タンタンがこんなところ入って…… 大丈夫かな……」

「あゎゎゎ。でも、ここは一体?」

「さぁわからないね。とにかく四人を追いかけよう」

「はい」


 リック達はタンタン達を追って壁の穴へと入って行く。先頭はリックで、シーリカ、ソフィア、ミャンミャンの順で進む。先に入ったタンタン達の姿はみえない。穴の奥から光が漏れている、先はおそらく部屋か空間になっているのだろう。

 出口が近付いて来た。ゆっくりと出口に近づき様子をうかがうリック、出口から出た少し先でタンタン達、四人が立っているのが見えた。たタンタン達はみな顔を上にむけてる天井を見ていた。リックは同じように視線を天井へと向ける。


「ほわー! なんかいっぱいなんか書いてあるのだ!?」


 出口から頭を出して上を向いたリック、五メートルくらいの高い天井が光っていた。天井にはびっしりとうっすら光る文字が書かれていた。

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