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第163話 知ってた

 リックとタンタンとポロンとソフィアの四人は、詰め所近くの訓練所へとやってきた。訓練所に来たのはタンタンが使える武器を考えるためだ。ここは訓練用の武器も貸し出しがありらいろいろ試せるのだ。


「おっ重いよー! 無理だよ」

「やっぱりポロンのハンマーは持てないですね」

「さすがに無理だよな……」


 タンタンがポロンのハンマーを持ち上げようとしてるがピクリとも動かない。ポロンのハンマーは、リックでも重くて持ち上がるけど、簡単には振り回せないからしょうがない。ポロンは地面に置かれたハンマーを簡単に持ち上げた。彼女にタンタンが声をかける。


「あぁ!! 重かった。でもポロンちゃんすごいね。これを簡単に持てるなんて力持ちなんだね」

「えっへんなのだ!」


 腰に手を当て、ポロンが自慢げにしてる。タンタンがポロンを見て微笑む。

 

「すごーい。どんな手をしてるの? 見せて!」

「こんななのだ!」

 

 どさくさに紛れてポロンの手を握るタンタンだった。ポロンの手をしっかり握ったタンタンは嬉しそうな顔をする。慌ててリックはタンタンの手首をつかみポロンから引き離した。


「弓はダメなんですよね!?」

「そうだね。使ってる武器と別なのを探してるからね」

「残念です…… あっ! リックの剣は? それ薄くて軽そうじゃないですか?」

「えっ!? これ? 確かに軽いけどタンタンに使えるかな……」


 腰にさしたリックの剣に、タンタンは視線を向け目を輝かせる。


「僕、リックおにーちゃんの剣…… 使ってみたい!」

「そうか。ほら使ってみな」


 剣を外してタンタンに渡すリック、彼は慎重にリックの剣を鞘から抜いた……


「あれ? 軽いけどなんかペラペラしてる…… 大丈夫なのかな?」

「どうだい? 平気?」

「ちょっと待って…… 確かリックおにーちゃんはこうやって……」


 なんかタンタンが剣を持ち、いろいろ動きを試していた。どうやら今まで見た、リックの動きを真似しているようだ。


「そうそう。その構えでギリギリまで相手の攻撃を見極めるんだ」


 リックの真似をしてタンタンは剣先を下にして構えた。リックの動きをうまくイメージできたのかうなずくタンタンだった。


「なるほど、なんかできそう!」

「よし! じゃあもっと詳しく動きを教えるぞ」


 リックは訓練用の剣を持ってきた。彼が訓練用の剣で、ゆっくりと打ち込んで、タンタンに動きの説明をする。タンタンはリックの話を必死に聞いていた。何回かやって少し自信がついたのか嬉しそうにしていた。


「ちょっと休憩しよう」

「うん。わかった」


 休憩を取って、リックとソフィアは、近くのベンチに腰掛ける。タンタンはポロンと立ったまま、水を飲みながら二人で話していた。


「ねぇポロンちゃん。試しに僕にハンマーで攻撃してみて」

「わかったのだ」


 笑顔でうなずいたポロンが、訓練用のハンマーでタンタンに向かっていく。ポロンが横からハンマーを打ち付け、タンタンはそれを迎え撃つ。タンタンはポロンの攻撃を引き付けて……


「あっ! あーあ。タンタン…… ダメだよ。ちゃんとタイミングを」


 音がしてあっさりとタンタンは、ポロンに剣を吹き飛ばされる。二人を見ていたリックが失望したようにつぶやく。


「わっわっ! ひぇぇぇ!」

 

 剣をあっさりと弾かれ、腰が抜け尻もちをついた、タンタンが後ずさりしてる。さらにポロンは追撃でハンマーを振り上げた。リックは慌ててベンチから腰を浮かせた。


「ダメダメ! ポロン。もう終わりだよ」


 リックが声をかけると、ポロンが残念といった顔をし、ハンマーを下した。リックとソフィアがベンチから、タンタンに駆け寄っていく。落ち込んだタンタンは膝をかかえて座っていた。


「うぅ…… リックおにーちゃんみたいにうまく反撃できると思ったのに……」

「まぁ俺だって最初からうまくいった訳じゃないよ」

「もうやだ! 怖いもん!」

「そんなこと言わずにもう少し頑張って……」

「無理ですよ。あんなことできるのは変態なリックだけです」

「そうなのだ! 隊長やメリッサも言ってたのだ、あんなのは変態しかできないのだ!」

「こら! 二人とも! もう!! ソフィア! タンタンをお願いね」


 変態を言われ気分を害したリックは、タンタンをソフィアにたくし、飛ばされた自分の剣を拾いに行く。


「(変態って…… 確かに少し変わってるかも知れないけどさ。なんなんだよメリッサさんも隊長もポロンに変なこと吹き込んで……)」


 リックはぶつぶつ言いながら、リックは自分の剣を拾いあげるのだった。


「はぁ……」


 戻ってきたリック、しゃがんでいるタンタンが、泣きそうな顔でため息をつく。ソフィアがタンタンを優しく撫でている。タンタンはソフィアを撫でなれながらチラチラとポロンを見ていた。本当はポロンに撫でてもらいたいようだ。


「あれ? リック! あんた達、何してるんだい?」

「おぉ! メリッサさん。それにイーノフさんとゴーンライトさんも!」


 声がして振り向くと、メリッサとイーノフとゴーンライトの三人が訓練場の入り口に立っていた。三人は中へ入って来て近づく。リックは三人にタンタンが、自分の適性のある武器を探していることを説明した。


「そうかい。じゃあ、タンタンこれを使ってみるかい?」


 メリッサは胸のペンダントに手をあてた、ペンダントの中から青い柄の槍が出て来た。


「うわぁ。重いけど、これなら持てる…… けど長すぎませんか?」


 タンタンは小柄なイーノフより少し小さいので、長身のメリッサ用の槍は、タンタンの身長よりもはるかに大きい。しかも、持てるだけで、扱えないみたいで、必死に両手で持っていた。


「なに言ってんだい? 槍は長い方が有利なんだよ!」

「無理だよ。メリッサ、さすがに長すぎて扱えてないじゃない。これじゃあ槍の間合いに入ってもまともに戦えないよ」

「もうそんなの訓練で…… じゃあイーノフの杖を貸してあげなよ」

「えっ!? タンタン君は魔法使えないだろ?」

「はっはい…… 僕は魔法は……」

「なら、あんたが教えてやりなよ。元々宮廷魔術師で王族に教えてたんだろ?」

「もう昔の話だよ」

「あっあの! 僕は魔法使ってみたいです!」

「えっ!? そうなの!? うーん」


 目を輝かせタンタンが、イーノフを見つめている。少し考えてイーノフが、腰にさしている杖をタンタンに差し出した。


「わかったよ。じゃあ、これを貸すね」

「ありがとう。イーノフさん!」


 イーノフから杖を受け取ると、タンタンは嬉しそうに杖を眺めている。タンタンの手を取って、イーノフが魔法のやり方を説明し始めた。


「じゃあ、簡単なので炎よ出ろって言ってみて! 杖の宝石の方をあの木の人形に向けてね」

「わかりました。よーし」


 タンタンが自信満々に杖を前に出して、訓練用に置かれた木の人形に向けた。


「炎よ出ろ!」


 静寂が訓練場を包む。タンタンが杖を前に向けた必死に体に力を込めている。そして…………


「プゥゥゥゥ~!」


 訓練場になんか大きな音が響いた。これはおならの音だ。尻を手で押さえたタンタンが、真っ赤な顔して泣きそうな顔をした。自信満々に魔法唱えたタンタンから出たのは屁だけだった。リックはあまりのことに、思わず吹き出しそうになるが、笑ったらタンタンを傷つけると思い、口に手を当て必死にこらえる。


「あははっ! 火じゃなくてタンタンのお尻から音が出たのだ!」

「ダメですよポロン…… ププ」

「あっ!? ソフィア! ポロンも! 笑ったらダメ…… ププ…… ははは!」

「あはははっ! そうですね! いい音しましたねぇ!」

「こら! みんなひどいじゃないか! イーノフ何とかしな! ププ!」

「えっ? メリッサ!? 急に言われても…… でも…… 魔法出そうとしておなら…… ダメだ…… ごめんね。あっははは!」


 ポロンが笑いだしたのを、きっかけに全員が堰を切ったように笑いだした。


「うわーん! ひどいや! みんな!」


 タンタンが手を下にして拳を握り、プルプルと震えて泣き出した。


「あぁ…… ごめん。タンタン」

「もういい! みんな嫌い!」


 タンタンは座り膝を抱えて涙を流していた。ソフィアとポロンが横に座って慰めてる。他の人達は気まずそうにしていた。


「うぅ…… やっぱり僕には何も……」


 ずっと悲しい顔をしてタンタンは座り込んでいる。


「うん!? あっあなたは!?」


 リックの後ろからゆっくりと誰かがタンタンに近づく。

 

「槍もダメ、魔法もダメ、ふふっ! こうなったら、僕の出番のようですね」


 タンタンに自信満々な顔で、ゴーンライトが近付く。リックは結果に嫌な予感しかせず、彼を止めようか迷う。


「やぁタンタン君! 武器とは何も攻撃するものだけ……」

「あっ! 盾はいやです! 必要ないです!!!!」


 怪訝な顔でタンタンは、ゴーンライトの言葉を遮るために片手を横に振る。


「はぁぁ…… 僕の武器……」


 ため息をついたタンタンは、ゴーンライトを気にすることもなく、ショボーンとして座り込むのだった。リックはこの結末を予想はしたが、タンタンがあんなにバッサリと断るとは思わなかった。ゴーンライトも落ち込み、暗い表情でリック達の隣に来てしゃがむ。


「あっあ…… そんな! 僕にも興味を持ってよー!」

「元気だすのだ! ローンキイトさん!」

「だから僕はゴーンライトだよ! はぁ……」


 ポロンがゴーンライトの頭を撫でて慰める。ゴーンライトは寂しそうに、ため息をついてしょんぼりしていた。その様子を見た、メリッサとイーノフはやれやれといった感じで、互いに顔を見ていた。


「ふぅ。ゴーンライトがめんどくさくなったし。あたしらじゃ役に立たないみたいだから。もう戻るよ」

「すいません。ありがとうございました」


 メリッサ達はリック達に声をかけて、落ち込んだゴーンライトを連れて詰め所に戻っていった。タンタンは相変わらず、しょんぼりと座り込んで、ポロンが一生懸命慰めていた。

 ソフィアとリックは二人の近くに立っていた。ふと彼の横に立っていたソフィアが、何かを思いついたようで話しかけてきた。


「そうだ! 武器の事なら親方さんに聞くのがいいですよ!」

「親方? あぁ! エドガーか! 確かに! 行って相談してみよう!」

「エドガー? 誰ですか?」

「防衛隊の武器を作ってくれてる鍛冶屋だよ。優秀な人だからきっと相談に乗ってくれるよ」

「それほんとう? 行こう!」

「よし。じゃあ鍛冶屋へ行くぞ!」


 リック達とタンタンは、訓練所を出て詰め所の裏の通りへ向かう。詰め所のすぐにある薬屋の三件隣にある石造りの鍛冶屋へとやってきた。扉を開けると店内の棚には武器や防具が飾られている。いつものようにお店のカウンターには、白い立派な髭を生やした老人が眠そうに座っていた。


「すいませーん。エドガーをお願います」


 声をかけると静かにうなずいた、老人はゆっくりと奥の鍛冶場にきえていく。いつもいる老人は鍛冶屋のエプロンを着けた、優しそうな黒い瞳のお爺さんである。ただその瞳の奥の眼光はまだまだ力強い。エドガーによるとこのおじいさんは実は……


「こんにちはー! エドガー! お弁当届けに来たよー! あっ! リックおにーちゃんとソフィアお姉ちゃんだ!」

「あれ? ナオミちゃん! こんにちは!」


 声がして振り返ると、ナオミが元気よく鍛冶屋へ、飛び込むようにして入って来ていた。ナオミんが近付いてきて、ポロンを大きな目をさせ見つめている。


「うん?! もしかしてあなたがポロンちゃん?」

「そうなのだ。私がポロンなのだ!」


 名乗ったポロンにナオミは、嬉しそうに自己紹介する。


「初めましてママがいつもお世話になってるわ。私はナオミ! よろしくね」

「よろしくなのだ! ママって誰なのだ? ポロンはママは知らないからお世話してないのだ」

「ナオミちゃんはメリッサさんの子供なんですよ」

「ほえぇぇ。メリッサならお世話しているのだ!」


 ナオミは歯を出してニカっと笑ってうなずき、ポロンは堂々と胸を張っている。


「あっそうだ! なんで新人さん来たのになんで歓迎会開かないのよ。まさか!? 裏切って他のお店で開いちゃったの? おばあちゃんそんなことしたら怒るよ。ママより怖いんだから!」

「そんなことしてないですよ! そういえばゴーンライトさんとポロンの歓迎会をしてませんでしたね」

「うん。わかったよ。隊長に言っとくよ」

「へへっ。よろしくね。あれ? こっちの男の子は? 誰?」

「あぁ。彼はタンタンって言って冒険者で俺達の友達だよ」

「へぇよろしくね。タンタン!」

 

 タンタンが恥ずかしそうにナオミちゃんをジッと見てる。


「ネコ耳の…… お姉ちゃん…… かわいい」

「えっ!? やーだ! かわいいなんて!」


 可愛いと言われたナオミが、頬を赤くして恥ずかしそうにしている。


「(また…… タンタンはココが良いんだよな? それにポロンとナオミちゃんもかわいいって…… はっ!?)」


 リックはナオミをかわいいと言ったタンタンに何かを察した。リックの予想通りなのだが、タンタンは獣耳が好きな重度の獣耳マニアだったのだ。

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