第161話 姫の野望
シーサイドウォールでの騒動から数日後。
エルザが詰め所へとやってきた。リック達をカルロスの席に集めて、嬉しそうに机に地図を、広げて見せて来る。
「じゃーん! この地図を見て!」
エルザが広げた地図は、以前見せてもらった月人の、出店場所に丸が記載されている図だった。
「この地図の丸がついてる月人の店舗を私達ビーエルナイツが買い取ったのよ!」
「えぇ!? なんのためにですか?」
「ビーエルナイツが王国東側を統括するための詰め所と……」
今回の王国東地域の反乱を事前に防いだ功績で、ビーエルナイツはシーサイドウォールを中心とした、王国東地域を統括することになったらしい。そのため、月人の跡地を利用し、ビーエルナイツの詰め所を出すという。月人が進出した場所は、王国東地域の主要な町や村で立地が良い、この場所を利用するのは理にかなっている。しかし……
「ついでに王国初の聖魔騎士大戦カード店や小説の店や劇場を開くのよ! ミャハ!」
右手を上げて首をかしげて笑うエルザだった。リックは呆れた顔をした。
「エルザさん? 店や劇場って…… どういうことですか?」
「あなた達が月人で働いている間にポロンちゃんと聖魔騎士大戦のカードや小説とかをたくさん買い占めたのよ。ポロンちゃんの力が強くていっぱい持てたから助かったわ」
「そうなのだ! エルザさんといっぱいカードやご本を買いに行ってたのだ!」
「はぁ!? 何してるんですか? しかも劇場もって?」
「いいのよ。私達はお金があるんだから! 聖魔騎士大戦の他にも色んな名作のカードゲームを作ったり、劇を作ったりするのよ…… もちろん私達好みのものだけどね…… フヒヒヒ」
口元を押さえ不気味に笑うエルザ、彼女の話を真面目に聞いたリックはひどく後悔した。自分達が働いている間、彼女は自分達の趣味を、充実させようと動いていたのだ。ポロンまで使って……
「まったく、何をしてるんですか。ポロンまで使って! 本当に性根が腐ってますよ!」
「あら!? 強く生きるには少しくらい腐ってるくらいがいいのよ!」
胸を張って堂々とする、エルザにリックは唖然とするのだった。
「あれ…… これって……」
ソフィアが地図を見て、何かに気付き地図の丸をなぞっていく。
「丸をたどっていくとシーサイドウォールからスノーウォール砦まで続いてますよ」
「あら!? わかったソフィア? シーサイドウォールからスノーウォールまで女性たちが喜ぶお店を展開する。いわばレディロードね! おーほっほっほ!」
いやらしく甲高く大きな声で笑うエルザだった。第四防衛隊の面々は呆れ、リックを残して通常業務に戻り、机を占領されているカルロスが迷惑そうにする。
「(はぁ…… まったく何を考えてるんだか…… しかもこの人いまや北と東の王国の半分を統括してるんだよな。いいのか!? でも、楽しそうだからいいか。それに一応これでも王女様だしな……)」
笑い続けるエルザをリックは、大きくため息をついて、冷めた目で見つめるのだった。