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第157話 異世界人と働こう

 新人研修を終えた俺達は、ノゾムラに連れられ、二階の月人の店舗へと連れて行かれた。


「どうぞ入ってください」


 暖簾をくぐったリック達が店内を見渡す。


「(建物のは石づくりのはずなのに壁や、柱が木で出来てるみたいになってる? どうやったんだ? これが異世界人の力なんだろうか?)」


 リックはジッと壁や柱などを興味深げに見つめている。壁にはノゾムラの肖像画みたいのが飾られていた。店はリック達の世界の酒場と同様に、テーブル席とカウンターの席があって、テーブル席の方は木の仕切りで区切られている。各席の椅子には、薄い四角い座布団が、置かれている。


「じゃあ、ここまでが店舗です。ここからがキッチンです」


 キッチンの入り口にも暖簾がかけられ、ノゾムラが暖簾を手で押さえ、リック達を中へ入るように促した。


 リック達はキッチンの中へと入った。


「(すごいな…… 調理台は金属でできてピカピカに光ってるぞ!? なんだあの扉のついた四角い箱は……)」


 リックはキッチンに入るとまたまじまじと見つめる。キッチンは中央にステンレス製の大きな作業台があり、店舗から見て左手に奥にコンロやフライヤー並び、正面には業務用の大きな冷蔵庫と冷凍庫が並んでいた。

 

「こっちですよみなさん」


 ノゾムラはさらにキッチンの脇にある、小さな扉へとリック達を連れて行く。


「さぁ、こちらへ。ここは更衣室とか休憩室があります」


 扉の中は簡素な四角いテーブルと椅子が置かれた休憩室だった。休憩室の中に小さい部屋があり、そこが更衣室になっていた。


「それじゃあ。ここでお待ちください」


 ノゾムラは、リック達を休憩室に案内すると、どこかへと行ってしまった。


「なんだ? ここにもノゾムラの絵が飾られている…… あれ…… 他にも何か貼られている」


 入り口の正面に奥にある壁の高い場所に、休憩室を見下ろすようにノゾムラの肖像画が飾られていた。肖像画の下には紙が貼られて何かが書いてある。


「あれ? 異世界の言葉じゃないぞ。こっちの文字だ…… えっと…… なになに…… 休憩を取り飯を食べたがるやつは三流! 一日タップリ働け! 疲れが足りないから寝れないんだ! サービス残業イズジャスティス! お金を要求するやつは腐ってる!!!」


 言葉に出して読み上げるリック。横にいるソフィアとイーノフがリックの言葉を聞いて苦い顔をする。


「ひどいな…… でもこれは…… メリッサさん! こっち来て下さい。」


 リックはメリッサさんを呼び壁に貼られた紙を指した。呼ばれたメリッサがやって来て、紙の文字を読んでいる。

 

「これは業務への指示みたいですね」

「あぁ。従業員への指示だね…… これを給仕や料理人に守らせてたらグラント奴隷禁止法に違反するよ。イーノフ! この紙に書かれたのを記録にとっておきな」

「わかったよ」


 イーノフがポケットから、小さい水晶を出し、壁に貼られてる文字にかざす。イーノフは記憶魔法で水晶に文字を記憶しているのだ。万が一に紙を燃やされたとしても、この水晶に記憶していれば証拠として法廷に提出できるのだ。


「でも、異世界人はすごいよね。いつからか知らないけど、僕たちの言葉と文字を理解しているんだからね」

 

 壁の文字を見てイーノフが感心していた。イーノフに言われたハッとするリックだった。よく考えれば、ノゾムラともさっきから、普通に会話をしていた。異世界の文字をリック達は、理解できないがノゾムラ達はリック達の世界の言葉を使いこなしていたのだ。

 

「きっと僕達が想像するより以前からノゾムーンはこっちの世界に来てるのかもしれません」

「えっ!? そうなんですか? ゴーンライトさん?」


 ゴーンライトがイーノフを見て軽く頷く。


「うん。だって普通にお店を開くとなったら準備期間がかなり必要ですからね。それを複数のお店を同時でさらに彼らはこちらのルールも把握しないといけないんですから……」

「そうだね。以前に呼ばれた勇者カズユキも学習能力は高かったね」


 イーノフが勇者カズユキを、学習能力が高かったと褒めてる。


「(えぇ? そうかなぁ。確かに勇者カズユキは強かったけど…… あんまり頭が良いようには見えなかったけどなぁ)」


 リックはカズユキの強さは、認めていてもあまり頭が良いと印象はなかった。リック達が話していると、ゆっくりと休憩室の扉が、ノックされて開く。


「お疲れ様です…… 私が店長のタナカです」


 静かに一人の男が休憩室に入ってきて、リック達の背後に来て声をかけてきた。入ってきたのはぼさぼさの短い髪で、生気のない顔をした男だった。白い襟付きのシャツに、紺色のズボンをはいて黒い靴を履いている。

 

「えっと…… 君達が新人かぁ。はぁ…… 女の子二人と金髪の子はフロアだから僕について来てね……」


 疲れているのか絞り出すような、小さな声でタナカがリック達に指示をだす。呼ばれたメリッサと、ソフィアとイーノフを、連れて行こうとしている。ゴーンライトとリックは置いて、タナカが出て行こうとするので、リックが慌てて声をかける。


「あっあの! 俺達は?」

「あー…… 君たちは…… キッチンで料理担当だから…… キッチンに行って主任に声をかけてね。」

「はぁ……」


 リックとゴーンライトさんが料理担当でメリッサ達三人は給仕係のようだ。ソフィアの方がリックよりも料理は上手なのに、担当は勝手に決められてしまったようだ。

 気づかれないタナカを監視するリック。彼はタナカの声は蚊の鳴くように小さく、逆にノゾムラは威勢がよくうるさいくらいの声をしていることに違和感を感じた。タナカは顔色も悪く、もしかしたら彼は奴隷なのかもしれないと、証拠になるものがないか確認する。


「じゃあリック。また後でです」

「あっ!? あぁ。後でね」


 タナカは三人を連れて行ってしまった。リックはソフィアに声をかけられ、笑顔で手を振るのだった。リックとゴーンライトは顔を見合せた。


「僕達も行きましょうか」

「はい。行きましょう」

 

 リックとゴーンライトはタナカに指示された通りにキッチンへと向かった。キッチンに入ると、すぐに上下白い服を着て、頭巾をかぶった男が彼らに話しかけてきた。

 

「はぁ…… 君達が新人さんか…… 僕が主任だからね。じゃあこっち来て!」

「よろしくお願いします」

「あっ…… そういうのいいからさっさと仕事して!」


 リックが挨拶したら嫌な顔をする主任。新人研修の時は挨拶を、しっかりしろとか怒られた彼は、異世界のルールの理不尽さに怒りを覚える。なお、主任も顔色がわるく疲れている。

 

「とりあえずまだ制服はないからこのエプロンをつけてね。君たちの仕事は料理を作ることだから、食材の場所と調理の方法はこのマニュアルに書いてあるから覚えといてね。よろしくね」

「えっ!? あっ! ちょっと!」


 リックとゴーンライトに、エプロンとマニュアルを渡し、主任はさっさとどこかへ消えしまった。リック達が、渡されたエプロンは白色でヒモが二本ついおり、マニュアルはプラスチックの表紙にファイルされた紙の束だった。

 リックとゴーンライトさんはヒモを腰に巻いてエプロンを着けた。


「さて…… じゃあマニュアルを確認するか。調査するにはちゃんと仕事してないと怪しまれるからな」

「そうですね」


 二人はマニュアルを開く。マニュアルは、料理の調理の仕方とか、盛り付けなどが、リック達の世界の文字で細かく書いてあった。


「すごいな…… こんな絵は見たことない」

「ほんとうだ。まるで本物ですね」


 マニュアルに載っている盛り付けの、参考の図と書いてある写真を見て、リックが声をあげていた。

 リックは写真を見て異世界の人達が、鮮明な絵がかけてうらやましく思うのだった。もちろん彼がうらやましいと思った理由は、女性、特に裸の女性を鮮明に描いてほしいからであるが……

 

「どうします? リックさん?」

「えっ!? うーん……」


 マニュアルを見ながらリックは考えている。料理の仕方は異世界の方法で、覚えるためには練習をするしかなかった。


「とりあえずこの本に書いてある通りにつくますか」

「わかりました! リックさん料理は僕に任せてください」


 腕をまくりゴーンライトは、自信満々にリックに答えた。


「僕は兵士になる前は料理人として修業してたんですよ!」

「えぇ!? そうなんですか!」

「はい!」


 兵士になる前には料理人だっというゴーンライト。リックは自信ありげなゴーンライトをまじまじと見つめる。ナイフを使えるはずの彼がなぜ盾しか使わない兵士になったのかは疑問だった。


「どうしたんです? 僕が料理人だったのが変ですか?」

「あっ!? いや…… 早く料理を作りましょう」

「はい」

「えっと…… じゃあとりあえずこの刺身の盛り合わせと言うやつを……」


 マニュアルを見ながら、リックはゴーンライトに指示をだす。


「ゴーンライトさん。このマグロと言うやつを取ってください。後ろにある冷蔵庫ってやつの上の段に入ってるみたいです」

「わかりました」


 ゴーンライトさんが部屋の奥にある冷蔵庫に向かう。冷蔵庫はリック達よりも大きい銀色の四角い二段の物で、観音開きの銀色のステンレス製の扉がついている。


「あっ! リックさん! すごいですよ。この扉の中、水晶も魔石もないのにひんやりしてますよ!」

「えっ!? あっ! ほんとだ!」


 マグロを取りに行ったゴーンライトが、冷蔵庫に手を入れて驚きリックを呼んだ。ゴーンライトはどこか嬉しそうだった。呼ばれたリックは冷蔵庫に近づきゴーンライトの脇から中に手をいれた。

 ひやーっとした空気がリックの手に当たる。


「ははっ本当だ」

「ねっ? すごいですよね」


 ゴーンライトとリックは横に並び、冷蔵庫に手を入れたり引っ込んだりを繰り返した。


「楽しいですねぇ。リックさん」

「そうですね……」


 笑顔のゴーンライトとは違って暗い顔をするリック。自分達がこんなことしてる場合ではないことに気付いたのだ。しかも、ちょっとはしゃぎ過ぎて恥ずかしくなった。

 リックは横で無邪気に、冷蔵庫の中へ手を入れたり、ひっこめたりを続けている、ゴーンライトの手首を掴んで止めた。


「そろそろ料理しましょうか」

「あぁ。はい。そうですね……」


 手首をつかまれたゴーンライトが、リックに恥ずかしそうに答える。ゴーンライトもはしゃぎ過ぎたという自覚があるようだ。リック達は手の出し入れをやめて料理に取り掛かるのだった。

 

「えっと…… 確かこの赤いのがマグロか? でもなんかいっぱい魚の切り身があるぞ!? まっいいや適当で!」

「ダメですよ。それは鯛。そっちは鯵ですね。マグロはこれですよ」


 ゴーンライトが、マニュアルを見ながら、魚を選別している。さすが元料理人というだけのことはある。リックはゴーンライトの事を初めて頼りになると思うのだった。リックとゴーンライトは刺身盛り合わせの材料を冷蔵庫からだし作業台へと向かった。


「ちょっと! 何やってるの!」


 まな板や包丁を出し、魚を料理しようとすると、さっきの主任と言われた男が慌てて戻ってきた。


「何やってんのダメだよ! 材料がもったいないでしょ? そのマニュアルを見て頭で覚えて!」

「そっそんな? さすがに僕達だって一度作らないとわからないですよ?」

「いいから! いいから! もう明日は開店で準備してあるんだよ。だから材料は動かさないでね!」


 練習用の食材はなくマニュアルを覚えて本番に臨めという。異世界人は料理を絵と文章だけで料理を覚えられるのかと感心するリックだった。リック達に叫んで注意をして、主任はさっさと行ってしまった。指示を守りリックとゴーンライトは、マニュアルを静かに読むのだった。

 少しして主任が戻ってきた。疲れた顔をして話しかけてきた。


「どう? 覚えた?」

「さすがに? そんな急には?」

「まっいいや。今日はもう帰っていいよ。明日は朝一番で来てね。お疲れ!」

「あっ! ちょっと!」


 主任はリック達に、帰るように指示をして、またさっさとどこかへ行ってしまった。


「もう、帰っていいみたいですね。リックさん、帰りましょうか」

「そうですね」


 エプロンを外してリック達がキッチンを出ると、メリッサ達は先に休憩室に戻っていた。


「どうだった? 二人とも?」

「なんか俺達は本を渡されておしまいでした」

「そっちもかい。こっちもだよ。しかも何かしようとするたびに準備が終わってるんだから触るなってさ」

「そうです! 俺達もでしたよ!」


 給仕を担当するメリッサ達も同じだったようだ。明日にはもう開店なのに、マニュアルを読んだだけで、大丈夫だろうかと不安に思うリックだった。

 リック達は月人の本店を出て詰め所に戻った。詰め所に戻ったリック達をカルロスが笑顔で迎えてくれる。


「どうだった? 異世界のお店は?」

「うーん…… なんかみんな疲れて生気がなかったね」

「あっ! 隊長、これが月人で見つけたものです」


 イーノフが月人で受けた、新人研修の内容や、業務内容をカルロスに報告してる。


「ふーん。新人研修で洗脳して我々を従わせようとしてるのか」

「そうみたいですね。でも、洗脳するという方法が手慣れているというか……」

「なるほど…… 洗脳の手法が確立されてるのか。もしかしたら異世界には洗脳された奴隷がいっぱいいるのかもな」


 カルロスとイーノフが真剣な表情で話している。何かが動く気配がしてリックは横に視線を向けた。ソフィアが首を動かして、詰め所を見渡している。


「どうしたの? ソフィア?」

「ポロンがいないです」

「えっ!? 本当だ」


 ソフィアはポロンを探していたのだ。リックが彼女と同じように、詰め所を見渡したが、ポロンとエルザさんの姿はない。心配してリックがカルロスに尋ねる。

 

「隊長。ポロンとエルザさんは?」

「あぁ。二人なら先に帰ったよ。お前さん達も今日は疲れたろ帰っていいぞ。明日からはノゾムーンの店員としてしばらく働かないといけないからな」

「ありがとうございます」

「リック。早く帰りましょうよ。きっとポロンがさみしがってますよ」

「そうだね」


 ポロンが一人で留守番できているか心配になるリック。ポロンは休日でもリックかソフィアの、どちらかとは必ず一緒に居て王都で一人になたことはない。二人はポロンが心配で急いで家へと帰った。


「ひっかかったのだ! 合体なのだ!」

「あーん! ずるいわよ。ポロンちゃん!」


 家の前で顔を見合せるリックとソフィア。家の中から楽しそうなポロンとエルザの声が聞こえた。二人は扉を開けて中に入る。玄関の向こうからぎやかな話し声がさらに大きくなった。リック達は玄関から広間へ向かう。


「ただいま。ポロン」

「ポロン。ただいまです」

「あっ! 二人ともおかえりなのだ」


 広間ではエルザとポロンがテーブルに向かいあって座っていた。リック達が声をかけると、ポロンは立ち上がり、嬉しそうに二人を迎える。リックが視線をテーブルに向けると、カードがテーブルの上に置かれていた。どうやらポロンとエルザは、仲良く聖魔騎士大戦の、カードゲームをしていたようだ。


「リック、ソフィア、お邪魔してるわよ」

「なんで? エルザさんとポロンが一緒に?」

「今日は二人である任務をしてね。さっき一緒に帰ってきたのよ。それでポロンちゃんがリック達が帰ってくるまで寂しそうだったから一緒に遊んでるのよ」

「そうなのだ! エルザさんがカードゲームしてくれたのだ!」

 

 楽しそうにニコって笑いポロンは嬉しそうにしている。


「よかったですね。ポロン。エルザさんありがとうございます」


 ポロンの頭をやさしく撫でて、ソフィアは夕飯の準備にキッチンへと向かう。


「ありがとうございます。エルザさん」

「ううん。いいのよ。私も楽しかったしね。じゃあそろそろ帰るわね」

「ダメだなのだ! エルザさんもご飯一緒に食べるのだ」

「あぁ。ダメだよ。ポロン。エルザさんは忙しいんだよ」

「やなのだ! まだエルザさんと一緒がいいのだ」


 ポロンがエルザにしがみついて泣きそうになっている。エルザは足にしがみつく、ポロンの頭を優しく撫でる。


「あらあら…… どうしましょう?」

「エルザさん。もしよかったら一緒に夕ご飯食べませんか? ポロンもその方がいいみたいですし」

「えっ!? そう? じゃあ、ごちそうになろうかしら! それにポロンちゃんとまだ勝負ついてないしね」

「やったのだ! さぁ続きをするのだ!」


 嬉しそうにポロンが、エルザにカードゲームの、続きをするようにせがんでいる。リックはソフィアに、エルザの分の夕食を、追加して作ってもらえるように頼みに行く。


「ごめんね。ソフィア、エルザさんの分も作ってくれる?」

「話は聞こえてました。大丈夫ですよ」

「ありがとう。俺も手伝うね」

「やった。ありがとうです」


 ソフィアが振り向いて嬉しそうな顔をする。


「えっ!? ちょっと急に……」


 振り向いたソフィアがリックに抱き着き、彼の頬に手を置き、顔を近づけて優しく口づけをした。リックはそのままソフィアを抱きしめ二人はしばらくじっとしていた。

 少ししてソフィアは顔を離し、リックを見上げていたずらにほほ笑む。


「えへへ! 手伝ってくれるお礼です」

「もう…… 急にしてきたら危ないよ」

「だって…… 今日はずっと離れてたからさみしかったです」

「うっうん。俺もだよ」

「リック……」

「こら! 二人とも何してるの!」


 声に反応してソフィアとリックが振り向くと、エルザがキッチンの入り口から二人を睨み付けていた。エルザさんの後ろから、ポロンも顔をだして、ボーっとした顔で二人を見つめている。


「エッエルザさん!? なんでポロンまで?!」

「またあんたたちは…… ちっげーよ! そうじゃねぇよ」

「ちげーよなのだ!」


 リックとソフィアはエルザとポロンにちげーよと詰め寄られるのだった。この後、ポロンがわたしもなのだとリックにキスをせがみ、エルザもじゃあ私もと言ってソフィアが二人に怒るのだった。

 ソフィアと俺は夕食の準備をして、エルザとポロンはカードゲームの続きをしていた。たまに、キッチンの入り口の方を向くと、エルザさんがチラチラと覗いていた。二人がキスをしないように監視をしているようだ。しかし……


「合体カードで攻撃なのだ!」

「えっ!? ちょっと! これじゃあ、負けちゃうわ!」

「ふふ、覚悟するのだ!」

「私には合体解除カードがある…… でっでも! せっかく合体した聖剣エックスと魔剣ブラディを引き裂くなんて私にはできないわーーー!」


 エルザが悲しい叫び声がキッチンにまで届く。


「(何をそんなムキになって叫ぶのか…… ただのカードゲームじゃないか……)」

 

 夕食を食べ終わるとエルザは帰っていった。ポロンはエルザと食事した時も楽しそうにしていた。それはエルザも同じだった。リック達はエルザを見送ったら早めに眠りにつく。明日からは居酒屋チェーン月人の営業が始まるのだ。

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