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第150話 降り注ぐ病魔

 ジオールが右腕を前に出しリック達に向け口を開いた。


「進めーーー! 勇者とその仲間を殺せ!」


 ジオールの号令で骸骨兵士達が、リック達に向かって進軍を開始した。


「もう許さないんだからね!」

「おい! ちょっと待てアイリス!」


 腰に付けたチャクラムンを外し、両手に持ったアイリスがジオールに向かって駆け出した。


「もう…… ソフィア、ポロン! 俺がアイリスをフォローするから二人は骸骨兵士をお願い」

「はーい。いきますよポロン」

「わかったのだ!」


 片手で軽々とどんぐりの形をした、ハンマーを持ったポロンが駆け出す。彼女はアイリスの、数メートル後ろにまで来ると、地面を力強く蹴った。


「ポーンなのだ」


 掛け声をだしてポロンは身軽に上空へと飛び上がる。アイリスはジオールを守る、骸骨兵士達を攻撃しようとチャクラムを構えた。


「道を開けるのだ。どくのだーアイリス」

「えっ!?」


 飛び上がったポロンがくるくると、片手で軽々とハンマーを回して下りて来た。


「どっかーんなのだ!」


 骸骨兵士達の前の地面にポロンはハンマーを縦に振り下ろして着地した。地面に叩きつけられた、ハンマーから出た衝撃波で、周囲の骸骨兵士が吹き飛ばされて行く。


「えい!」


 ポロンに気を取られた骸骨兵士達に、ソフィアが弓を放って次々と仕留めていく。十数体の骸骨兵士を片付け、ジオールの前が空くとソフィアがリック達に声をかける。


「これで道は開きました。行って下さい。アイリス! リック」

「ありがとう。よし俺達も行くぞ! アイリス!」

「うん」


 リックはアイリスに追いついて声をかける。振り向いたアイリスはリックに笑顔で返事をした。二人でジオールに向かって駆け出す。アイリスはリックを見て小さく頷く。


「よし。わかった。頼んだぞ」


 アイリスがリックの返事を聞いた、直後に両手に持ったチャクラムを、同時にジオールに投げた。リックは走る速度をあげ、アイリスのチャクラムの後ろについて走る。


「フン! こんなもの! はぁぁぁ!」


 気合をいれジオールは、アイリスのチャクラムを拳で次々に弾きかえす。リックの横を左右に離れていくようにして、弾かれたチャクラムが通過していった。アイリスのチャクラムが作ったすきをついて、リックはジオールに近づいてい距離をつめ、懐にもぐりこんだ。体制を低くして持っていた剣を振り上げるリックだった。

 

「もらったー!」

「人間が私にかなうと思うなよ!」


 ジオールは自分の腹の下にいる、リック接近に気が付き、素早く右腕を引き殴りかかって来た。


「さすが将軍ってだけあって攻撃がするどいな…… でも…… 遅い」


 迫って来るジオールの右拳を見ながら、冷静な表情をするリック、彼は剣を素早く引いて体勢を変えて右肩をひく。リックの目の前をジオールの拳が通過していく。

 拳をかわしながらリックは右腕を引き、剣を腕と水平にして剣先をジオールへと向け、足を前へとだした。リックはジオールとすれ違うようにして彼の真横へとやってきた。


「くらえ!」


 拳を振り切ったジオールの肩の横から、狙いすましたリックは彼の肩をめがけて剣を突きだす。とっさにジオールは腕をひいてリックの剣の前に出した。これで俺の剣を防げると、思ってるのかジオールの顔は笑っている。

 リックはかまわず力任せにジオールの腕を剣で突いた。右手にザクッと言う重い感触がリックに伝わる、彼の剣はジオールの右肘から五センチほど上の肉を簡単に貫通した。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 叫び声をあげるジオール、リックは黙って剣を引き抜いた。緑色に光る血がリックの剣にべっとりと付着していた。いやそうな顔して、剣を軽く振って血を払う。苦痛に顔を歪めてジオールは、自分の腕を押さえて叫んだ。


「なっなんだと? 私の肉体が人間ごときに!?」


 腕を押さえた手を離しジオールは、手に付着した緑色の血を見て驚いた顔でぶ。


「残念だったな。これはお前たち魔族が作り出した黒精霊石の剣だからな」

「黒精霊石…… まさかジェーンのやつ……」


 悔しそうな表情で俺を見てジオールは、後ろに飛んでリック達との距離をあけた。


「逃がさないわよ」


 すぐにアイリスから投げられた、チャクラムが彼を追いつめる。首を狙ったチャクラムをしゃがんでジオールがかわす。戻ってくるチャクラムを警戒しているのかジオールは立ち上がらずに振り返った。


「クックソ!」

「ははっ。四邪神将軍さん。甘いわよ!」


 戻ってきたチャクラムはジオールの足元に向かっていく、振り返って慌てて飛び上がる、ジオールの足首をチャクラムが切りつけ血が噴き出す。


「軌道を操作したのか。やるなアイリス」

「へへ。ただ投げるだけじゃ。当たらないからね」


 にっこりと微笑むアイリス、彼は魔法でまっすぐ戻って来るはずに、チャクラムの戻ってくる軌道を操作したのだ。着地したジオールは足を押さえてしゃがむ。


「どう!? もう観念しなさい!」

「クソ! まだまだこれから私の真の力を見せてやる!」


 こちらを睨み笑ったジオールは大きく息を吸い込んだ。ジオールの体がどんどんと膨れ上がって丸くなっていく。


「えっ!? 何よ!!」


 大きく丸い球体のようになったジオールは、気球のようにふわりと、上空へと浮かび上がっていく。


「逃がすかよ! アイリス! チャクラムであいつを!」

「わかったわ」


 アイリスの投げたチャクラムがジオールの体に命中した。だが…… パンパンに膨れ上がったジオールの体は、硬くチャクラムは弾かれてしまった。


「もう!」

「クソ!」

「リッリック!? 何するのよ」


 ジオールは空へと浮かび上がっていく、リックは浮かび上がるジオールへ向かって駆け出した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


 リックは浮かび上がっていくジオールの手前で、地面を蹴って飛び上がった。上空十メートルほどに居た、ジオールへとリックは飛んでいく。腕を引いた彼は剣先をジオールへと向けた。


「届けえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」


 飛び上がってジオールに向かって、必死に手を伸ばして剣を前に突き出した。ジオールの足の先に剣が届くまで来た。


「はははっ。無駄だよ!」


 ジオールはバカにしたように笑いながらリックを見た。彼の体は足が浮かびあがっていき地面と水平に変わった。リックは腕を伸ばしたが届かず悔しそうな顔をした。


「クソ!? へっ!?」


 水平になったジオールが腰に巻いている、ベルトに着けていた道具袋が垂れ下がり、リックの剣がかすった。ビリリと言う音がして、破けた袋から何かがリックの前に落ちて来た。


「いた! もう…… なんだよ」


 落ちてきた物体がリックの肩に、当たって地面に落ちていって音を立てた。リックは物体の後を追うようにして、地面へと落下し着地した。


「うん? これは? 天上の兜……」


 地面に着地したリックの足元に、ジオールの袋から落ちた物がころがっていた。それは天上の兜でリックは拾い上げて手に持った。


「天上の兜が! ふふ、まぁよい。どうせあれは…… アレ…… 以外に誰も使えん……」


 ジオールは天上の兜を持つ、リックを見て少し悔しそうにつぶやいていた。地上にいるリックも同じように、悔しそうな顔で、空に浮かぶジオールを見つめていた。大きかったジオールが手のひらに収まりそうなくらいのおおきになった、これではソフィアの弓もアイリスのチャクラムも届かない。


「こらー! 下りてきなさいよ!」


 両手をあげてアイリスがジオールに叫ぶ。


「いやだね。ほーら。勇者様に贈り物だよ」


 ジオールが口をすぼめると、口から真っ黒な雲が吐き出された。雲はジオールを中心にモクモクと群がって、シミレオの空を覆っていった。薄暗くなる周囲に、空を覆う黒い雲にリック達は不安を覚えるのだった。


「なっなによ!? これ?」

「これは私の体内で生成される雲で、この雲から降らされる雨を浴び続けると人間は弱りやがて死ぬ」

「えっ!? そっ、そんな?」

「なんで私が疾病魔人(デジィーズメイガス)と呼ばれるかわかっていただけたかな」


 ポツリとベトッとした感触の黒い液体がリック達の頬にあたった。ピリピリと刺激がはしる黒い雨粒に、雨を受けた草木は心なしかしおれ元気がないように見えた。


「クソ! どうすれば…… このままじゃ……」


 焦るリックだったが、上空に居るジオールには手出しができない。


「リック! 天上の兜をかぶって!」

「えっ!? どうしてだよ? アイリス?」

「確か天上の兜を装備した者は、空を駆け抜けることができるはずよ!」

「そうか! わかった」

 

 アイリスの言葉に頷い、リックは持っていた天上の兜を、かぶろうと両手で持って頭の上に……

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