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第141話 魔女の恨み

 みなの前に出たリックは、いつものように剣先を下に構えジャイルと対峙する。右腕で左胸を押さえ、ジャイルはリックを睨みつけている。リックはジャイルを睨み返した。


「次は必ず仕留めてやるからな。うん!? こら! どこに行くんだ!?」


 顔を上にあげて叫ぶリック、ジャイルは胸を押さえたまま、空中に浮かびあがった。


「お…… さまからもらった服を…… あなたは絶対に許さないからね」


 リック達を見下ろしながら、ジャイルは両手を自分の前にだした。


「うん? 切った手ごたえはあったのにに…… しかもあいつの胸…… あんなに小さかったか!? いやそれどころか胸…… 無くなってないか!?」


 ジャイルが胸から手を離すと破れた服から、彼女の肌が見えるが傷一つついていなかった。しかも、リックが斬った時はそれなりの大きさがあったはずのジャイルの胸が小さくなっており、破れた服の隙間からわずかに胸と乳首がのぞいている。


「氷の精霊よ。我に力を! 最後氷剣(ラストアイスソード)!」


 叫びながらジャイルが両手をリックにむけた、彼女の両手に白い空気の渦のようなものが集約していく。


「死になさい! リック!」


 冷たく白い湯気のような煙をだしながら、青白く光る氷の剣がジャイルの両手の中から現れた。ジャイルが両手を勢いよく下ろすと氷の剣はリックに向かって飛んで来た。


「クソ! よけたらみんなが…… なら一つだ」


 氷の剣は巨大で、もしリックが避けてしまえば、みんなを巻き込んでしまう。リックは巨大な剣をジッと見つめタイミングを計っている。巨大な氷の剣の影がリックを覆う。


「えっ!?」


 腰を落とし氷の刃にタイミングを、合わせたようとした、リックの頭上になにかが飛んできた……


「あれは……」


 飛んで来たのはリックと同じ制服を着た、両手に盾を持った人間だった。飛んで来た人は盾を体の前で二枚かさね、ジャイルの氷の剣を受け止めた。


「炎の精霊よ。力を…… 灼熱盾(ヒートシールド)

「おぉ! ゴーンライトさん!」


 盾を持って飛んで来たのはゴーンライトだった。彼が魔法を唱えると、二つの盾が炎をまとい、ジャイルの氷の剣があっという間に溶けていく。


「あっ?!」


 氷の剣を防いだゴーンライトは、リック達の前に着地しようとし、足が前に滑って背中からこけたぞ。足をあげ背中から、勢いよく転んだゴーンライトは後頭部を思い切り地面に叩きつけていた。リックとポロンとソフィアは慌ててゴーンライトの元へと駆けていく。


「痛そうなのだ? 大丈夫なのか?」

「いたた! ありがとうポロンさん。大丈夫だよ」

「よかったのだ。すごくかっこよかったのだ! ゴーンサイトさん!」

「だーかーら! 僕はゴーンライトだよ」


 駆け寄ったポロンに頭を撫でられて、恥ずかしそうにゴーンライトは立ち上がる。キョロキョロと周りを見て、すぐにかっこよく着地したように見せていた。


「もう…… 今更そんなことしてもみんな見てましたよ」


 ゴーンライトの姿を見て苦笑いをするリックだった。ただ、なぜゴーンライトは飛んで来たのだろうか。


「ふぅ…… 間に合ったね。まったくあんた重いんだよ! もっとやせなよ。リック、ソフィア、ポロン、助けに来たよ」


 メリッサの声がしてリックが振り向いた。ゆっくりと街道側の平原から、メリッサが左手で右手首を押さえながら歩いてくる。彼女の後ろにはイーノフもついてきている。言葉と動作からメリッサが、ゴーンライトさんを投げたようだ。


「無茶苦茶だな…… 盾だけ投げればいいのに…… いや…… きっと盾を外すの面倒だから人ごと投げたな」


 呆れた様子でメリッサを見ながらつぶやくリック、でも、彼の顔は笑っていて楽しそうだった。


「そんな…… これでも最近やせたんですよ! 心労で……」

「あぁ!?」


 ゴーンライトの横に来たメリッサが、大きな熊が上から見下ろすようにして、顔の近くに自分の顔を持っていく。そっとゴーンライトがメリッサから目をそらす。心労の原因はこれなのではと思うリックだった。

 ジャイルはゴーンライトとメリッサを悔しそうに見つめていた。


「なっなによ。あんた達は!?」

「僕達は王立第四防衛隊だ。あなたを逮捕に来た!」

「なっなに!?」


 メリッサの後ろにいたイーノフが急に飛び出して、ジャイルに杖を向けると炎の玉が杖から発射される。ジャイルはさらに上空に飛んで炎の玉をさっそうとかわした。


「残念でした。おチビな魔法使いさん!」

「チビとは失礼な! でも、どうかな!?」


 にやりと笑ってイーノフの背後で何かが二つ光った。炎の玉をかわしてイーノフさんを馬鹿にしたように笑う、ジャイルに向かって二本の光る物体が向かっていった。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 ジャイルが空中でバランスを崩して地面に落下した。途中でジャイルは、何とか体勢を立て直し、地上に着地して膝をついて顔をあげる。


「誰よ。こんなことして!」


 苦痛にゆがむ顔で、顔をあげたジャイルの右肩に、二本の光る物体のうちの一つが刺さっていた。


「あれは…… 短剣か」


 ジャイルの肩に刺さったのは銀色の短剣だった。ジャイルに刺さった短剣は、刀身だけじゃなくグリップも銀色で、キラキラと輝いていた。


「あー! ダメだねぇ。囮が刺さって本命は外してるよぅ! あんたの腕…… かなり鈍ってるよぅ」

「お前さんもきついこと言うね。僕は現場を離れてから長いんだよ」


 賑やかに話しながら、イーノフ達と同じように祭壇への続く道から、二人の人影が歩いて来た。


「月に一回くらい冒険者ギルド(うち)に訓練にきなよぅ。相手してあげるよぅ」

「そんな暇ないよ。休日は家にいないとかみさんにどやされるんだから……」


 歩いて来たのはココとカルロスだった。二人は並んでリック達に向かって歩いてくる。ココがカルロス手を握ろうとし、察した彼はすっと手を引っ込めた。なぜかタンタンはココとカルロスのやりとりを見てカルロスだけを異様に睨むのだった。

 二人は膝をついているジャイルの姿を見て、ため息をついて少し悲し気な表情をした。


「はぁ、ジャイル。やっぱりお前さんか……」

「何してるだよぅ。あんた!」

「カルロス…… ココ! なんで!? 二人が……」

「リック達は僕の部下、ミャンミャンちゃん達はココの冒険者ギルドの子達だよ。調べたらお前さんが絡んでるみたいだから二人でここまで来たんだよ」


 ジャイルはカルロスの言葉を聞いて、視線をリック達の方に向けて笑った。


「あらぁ!? そうなのね。リックはカルロスの部下なのね…… だから私をイライラさせる訳ね」

「ジャイル。残念だけどお前さんはここで逮捕だ」

「いやよ」

「そうか…… なら僕も本気だ。お前さん達も彼女を!」


 メリッサ、イーノフ、ゴーンライトの三人とココがジャイルを囲む。カルロスがジャイルの正面に歩きながら、ゆっくりと背中に手を回し、腰の後ろのベルトにつけた短剣のグリップを握った。


「はぁ…… これじゃあ。さすがの私も分が悪いわね。本当はリック達ともう少し遊びたいけど…… 今日の目的は達成したからいいわ。じゃあね。カルロス! ノノちゃんによろしく! いつかあなたから奪うから!」

「何をいってる。うちのかみさんはわたさないよ!」

「チャオ~!」


 笑顔で手を振るジャイルに、カルロスが素早く短剣を抜いて構えた。


「うわ!」


 急にジャイルの体が光り出した。激しい光に周囲の人間の目がくらむ目を覆った。少しして光が収まった時にはジャイルは消えていた。


「チッ…… 外したか…… ダメだねえ。ココの言う通り少し訓練して勘を戻さないといけないね」


 厳しい顔をしたカルロスが立っていた。彼の手から短剣が手からなくなっていた。ジャイルが光を発した際に、短剣を彼女に向かって投げたのだろう。だが、少しタイミングが遅く投げた短剣はジャイルが居た地面の少し後ろに突き刺さっていた。


「隊長! ありがとうございます」

「おぉ、リック! ソフィア、ポロン、三人とも無事だな。お疲れさん」

「隊長さんかっこよかったのだ!」

「ありがとう。ポロン」

「久しぶりに隊長じゃなくて、白銀短剣(シルバーナイフ)のカルロスおじさんでした」

「ははっ。ソフィア。恥ずかしいから言わないでくれよ」


 膝をついてポロンの頭を撫でるカルロス、厳しい顔をしていたカルロスがいつものようにゆるい表情に変わる。


「シーリカ、ミャンミャン、タンタン、みんな無事だねぇ。よかったよぅ」

「あゎゎゎ! ココ……」

「ココ! 来てくれたの?」

「ココお姉ちゃん!」

「あぁ! タンタン?! ダメだよぅ」


 ココはシーリカ達と抱き合って無事を喜んでいた。いや…… 正確にはタンタンだけ積極的に抱きついていた。


「ほら隊長、ココ。みんな疲れてるだろうから早く帰ろうよ」


 メリッサがカルロスとココに声をかける。リックたちは王都へと戻り、第四防衛隊の詰め所に帰ってきた。


「はいよ。終わり! ありがとう。でも、わかったね。二度とこんなこと引き受けるんじゃないよ。次はないからね」

「はい…… もう、真面目に行商します。申し訳ありませんでした」


 頭を下げて尋問を終えたカルラが詰め所から出ていく。カルラはジャイルから仕事で、雇われただけで深い関係はないみたいだ。ただ、依頼の内容が裏切ったり、人を脅迫したりするものだけに、メリッサから厳重注意を受けてから解放されていた。


「(反省したみたいだし、本当にお母さんは病気みたいだから、ちゃんと行商がうまくいくといいな)」


 リックはしょんぼりとうつむいて、詰め所を去るカルラを見送るのだった。

 カルラの次にタンタンとミャンミャンから事情を聴く。二人は王都への帰り道に瘴気で足止めされ、風馬(ふうま)の村の宿屋に滞在していた。シーリカが冒険者になる三日前ほど前に、眠りについたところで記憶がなく、気づいたら縛られていてリック達が前に居たという。シーリカはココとカルロスに冒険者になった経緯と理由を説明していた。リックとポロンとソフィアとシーリカとココが、カルロスの机のまわりに集合した。


「あゎゎゎ。ココ、カルロス隊長さん…… さっきのジャイルって言う魔女と二人は知り合いみたいですけど?」

「そうなんだよ。あたいとノノとモトータとジャイルは昔冒険者のパーティを組んでいたんだよぅ」

「えっ!? そうなんですか!? 隊長?」

「そうだよ。もうだいぶ前に解散したんだけど、僕たち四人は熊の子団という名前のパーティでね」


 熊の子団。名前のとおりにノノとココが中心の冒険者パーティで、王都ではそれなりの名が売れていた。


「僕達の中でジャイルは一番若くてね。魔法の才能はかなりのものだったよ」

「あゎゎ。ジャイルはなんのために私達を襲ったんでしょうか?」

「教会への復讐ですよ……」

「カルロス! それは違うよぅ!」

「あゎゎゎ!? 復讐って? カルロスさんどういうことですか?」

「ココ…… シーリカは狙われたんだ。話しておかないと」

「はぁぁ…… わかったよぅ」


 ココとカルロスが昔話を始めた。熊の子団は順調に活動していたが、カルロスとノノが結婚することになり、パーティは解散しノノは冒険者を引退した。カルロスは安定した職業の兵士になり。ココは特定の誰かと組まずソロの冒険者となり、ジャイルは別に新しくパーティを組むことになった。


「あゎゎゎ。新しいパーティですか」

「そうだ……」


 カルロスが心配そうにソフィアの顔を見た。リックはカルロスの視線に気づき首をかしげる。


「はぁ…… ジャイルの新しいパーティの名前はジャイリングシューター……」

「えっ!? お父さんとお母さんが昔いたパーティです!」

「そうだ。ジャイルとソフィアの両親は同じパーティだったんだ。そしてジャイルとソフィアの両親は……」


 ココとカルロスの話が続く。ジャイルとソフィアの両親はある秘宝を追っていた。その秘宝の名前は光の聖杯。光の聖杯は正しい手順で水を飲むと、あらゆる病を治療し、さらに老いることない、活力溢れる若い肉体を手に入れ、永遠に近い命を得られる。ただし、水を飲む手順を間違えると神罰がくだり命は燃え尽きる。何人もの冒険者が聖杯に挑んだ。だが、光の聖杯へと挑んだ者達は、そのほとんどが冒険者をやめるか命を落としたという。ジャイルとソフィアの両親は、聖杯の場所と正しい手順を突き止めることに成功した。

 しかし、当時から貧民への施しや治癒魔法の提供などによって、支持を集めていた教会は聖杯によって人心が離れ、寄付がなくなることを危惧した。危機感を強めた教会は、光の聖杯を民への神からの贈り物だと主張をし、それを狙うジャイルを悪魔の魔女へと仕立て上げた。信心深かったソフィアの両親は、教会からの説得により聖杯の件から手を引いた。

 教会は冒険者ギルドや防衛隊へ手配書を配布してジャイルの行方を追った。逮捕されたジャイルは、火あぶりの刑にされる予定だったが、系の執行直前に逃げ出して姿を消した。ジャイルの家の壁には教会と、途中で手を引いて逃げたソフィアの両親への恨みが書かれていた。


「お父さんとお母さんって? まさかジャイルが?」

「いや。あれは事故だった…… 多分な。ジャイルがソフィアの両親を殺害した証拠はない……」

「ふぇぇぇ……」


 ソフィアがリックに手を出してきて、指を絡ませてきた。震えているソフィアの手をリックは励ますように強く握り、彼はソフィアに向かってほほ笑んだ。ソフィアは少し安心した表情をする。


「あゎゎゎ、ソフィア…… ごめんなさい」

「シーリカは悪くないですよ」

「でも、教会がジャイルに何もしなければソフィアさんの両親は……」

「シーリカが聖女になる前の話しですし…… シーリカのせいじゃないです……」

「あゎゎゎ……」


 うつむいてシーリカが申し訳なさそうにする。話を聞いていたメリッサが口を開く。


「あたしにはジャイルより教会の方が悪いように思うんだけど?」

「そうだな。でも…… 復讐なら直接教会にすべきだ。当時まだ生まれてもない、シーリカに向けるのは間違っている。それに無関係な谷を襲ったことやミャンミャン達への暴行行為は許されるものではない。瘴気によって犠牲者もでたしな」


 ジャイルは教会に恨みを持ち、シーリカに執着するのはそのせいだった。だが、ふとリックに疑問に思う、それなら何でわざわざ風馬(ふうま)の谷を狙いシーリカをおびき寄せる手段を使ったのだろう。シーリカだけを狙うなら、ミャンミャン達を人質にとるだけよかったはずだ。


「どうして? ジャイルは風馬(ふうま)の谷を襲ったんですか?」

「それは多分、光の聖杯が関係してるんだよぅ」

「光の聖杯が関係してる?」

「うん。ジャイルは光の聖杯を手に入れるために動いてるんだと思うよぅ。それを手に入れて教会に復讐する気なんだよぅ」

 

 ココによると光の聖杯を手に入れるのに、王都の周囲にあるブロッサム平原、ローズガーデン、風馬(ふうま)の谷、スノーベリー山の守り神が関係しているらしい。ジャイルが調べた資料は、教会が燃やしてしまったので、詳しくはわからないらしい。


「(光の聖杯か…… どういうものなんだろう。そういえば…… ハクハクがジャイルは守り神を狙っているようなことも言ってたな。ならやっぱりココの言う通り光の聖杯がハクハク達守り神と関係が……)」


 リックがジッと黙って考えていると、カルロスが立ち上がってみんなの顔を見た。


「とりあえず。次はスノーベリー山にジャイルは現れるはずだな。では、シーリカ様が近くに行く時は我々にご一報ください」


 胸に手を当てて笑ってシーリカに、頭をさげるカルロスだった。


「あゎゎゎ。わかりました」


 カルロスにシーリカが返事をした。次にココがカルロスに顔を向け口を開く。


「あたいは光の聖杯についてもう一度調べてみるよぅ」

「頼んだよ。じゃあ。話は終わりだ。解散」


 微笑んでココに向かってうなずくカルロス、ココは頬を赤くして恥ずかしそうにする。その姿を見てタンタンがカルロスに鋭い目で睨みつけるのだった。


「ふぅ…… これでどうやら任務は完了か……」


 疲れた顔でリックがつぶやく。話が終わりシーリカ達はみんな帰っていった。ジャイルは取り逃がしてしまったが、シーリカもミャンミャン達も無事だったので良かったと思うリックだった。


「じゃあ。二人とも帰ろうか」

「はい」

「なのだ」


 リックはソフィアとポロンと、一緒に帰る支度を始める。


「お前さん達! ちょっと待って!」


 帰り支度を始めた三人に、カルロスが声をかけて来た。


「お前さん達にこれだけは伝えておかないといけない」

「なんですか?」

「ジャイルが何故ミャンミャン達が王都を離れているのか把握してシーリカに接触できたかだよ」

「あっ!?」


 カルロスの言葉にハッとするリック。確かにシーリカの予定であれば、ある程度は教会が、公表しており把握はできるが、一冒険者でありまだ無名のミャンミャンの行動を、なぜジャイルが知ることができたのだろう。ましてやミャンミャンは冒険者ギルドのクエストではなく、個人的な結婚式に出席しただけだ。


「隊長? どういうことですか?」

「シーリカの近くにジャイルかもしくはジャイルの仲間がいる可能性があるってことだよ」

「えぇ!? シーリカの近くって教会にですか?」

「あぁ。そうだ。ジャイルは教会のどこかに入り込んでいるのだろう。さっきココとも同じ話したんだけどね。ココも僕と同じことを言ってたよ」

「わかりました。じゃあ俺達の行動もシーリカからジャイルに漏れていると思った方がいいってことですか?」

「まぁ。そういうことだ。気を付けろよ」

「はい」


 大きくうなずいたリックは自席に座り腕を組んだ。難しい顔して考え込むリック、教会に怪しい人物が居たか思い出そうとしていた。


「(うーん…… 教会でシーリカの近くに怪しい人なんかいたかなぁ。ミランダさんか? あっ! もしかして勇者の印の時にお世話になったフェリペさん…… いやぁ。まさかな…… うわ!?)」


 突然、背後から急に手が伸びてきて、リックの肩から胸に巻き付き、何か重い物が肩に乗っかった感覚がして横を向く。


「早く帰るのだ!」

「もう…… わかったよ。危ないから飛びつかないで……」

「ふふふ」


 帰り支度をしながら考えごとをしていリック、なかなか帰ろうとしない彼にポロンが我慢できずに、飛びついたようだ。ポロンの後ろで二人の様子を見ていた、ソフィアが微笑む。リックは急いで帰り支度をするのだった。

 三人は一緒に詰め所を出て並んで手をつなぎ、ポロンが来て少し狭くなった寮へと帰るのだった。

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