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第135話 不可解な聖女

 リック達は詰め所のある、第九区画に戻ってきた。三人は詰め所に向かって通りを歩いている。


「うん!? あれは……」


 通りの向こうから、一匹の子犬がリック達に、向かって駆けて来た。


「お犬さんなのだー!」

「リック。ハクハクさんですよ!」


 子犬はハクハクだった。両手を広げたソフィアに気付き、ハクハクが彼女に向かって来た。ソフィアはしゃがんでハクハクを抱っこして撫でる。ポロンが羨ましそうに、ソフィアが抱っこする、ハクハクを見ていた。


「いいなぁ…… わたしも撫でたいのだ!」

「あっ! やさしくするんだよ」

「大丈夫ですよ。ポロンはできますよね?」

「出来るのだ!」


 嬉しそうにポロンが、ハクハクに手を近づけ、そっと撫でていた。ハクハクは撫でられて気持ちよさそうにしている。守り神であるはずのハクハクが気持ちよさそうに、なでられるのを見て微笑むリックだったが、すぐに何かを思い出し周囲を見渡す。ハクハクはシーリカと一緒に散歩に出たはずだ。


「あゎゎゎ! すいませーん。その犬は私の犬で……」

「シーリカ様」

「あゎゎゎ! リック様?!」


 ハクハクの後から息を切らし、シーリカがおいかけてきて、リック達に気付くと驚いた表情を見せる。すぐにソフィアに抱かれた、ハクハクに気付いて顔を近づけて叱りだした。


「こらハクハク! もう…… なんで散歩から帰ろうとすると、すぐに逃げるんですか!?」


 どうらやハクハクは、以前リック達と散歩に行った時と同じように、帰りたくないと駄々をこねてシーリカから逃げ出したようだ。ポロンがハクハクを叱るシーリカを見上げている。


「ほわー! 綺麗な人なのだ!」

「あゎゎゎゎ!? リック様この子は?」

「はい。その子は第四防衛隊の新人のポロンです」

「ポロンなのだ! よろしくなのだ!」

「あゎゎゎ、シーリカです。よろしくね」


 シーリカは膝をついてポロンにほほ笑む、ハクハクを抱いたソフィアがシーリカの横に立った。


「はい。シーリカ様のところに戻るですよ」

「あゎゎゎ、ありがとうございます。もう逃げたらメーですよ。」


 ソフィアからハクハクを受け取ろうとシーリカが手を伸ばした。リックはシーリカとソフィアの姿になぜか違和感を覚えた。二人を見つめていたリックがハッと大きく目を見開いて何かに気付いた。


「(あれ!? そうだ! 今日は何もないからだ!)」


 そう、リックがいつもシーリカに会う時は、なぜか彼女は着替え中とか風呂とかで、裸かそれに近い状態なのだ。彼はそれでソフィアに怒られて電撃魔法を受けていた。しかし、今日は普通でなにもないのだ。リックはシーリカが、ただ服を着ているってだけで安心するのだった。だが…… 彼は全滅聖女の魔力を甘く見すぎである。


「あゎゎゎ! こらー! ダメですよ! こっちですよ!」

「逃げたのだ!」


 ハクハクがソフィアの胸から、飛び下りて走っていった。シーリカがハクハクを追いかけてリック達に背を向けた。ハクハクはまだ散歩したいようだ。


「あゎゎゎ。こら! 引っ張ったらダメです。」


 捕まえようとし、たシーリカの手をかいくぐっった、ハクハクは彼女のスカートに嚙みついて引っ張った。散歩したいから向こうに連れて行けと言っているようだ。


「もう…… やめろよ。ハクハク」


 リックはハクハクを引き離そうとシーリカに近づいた。


「キャー!」

「シーリカ様」


 ズルべチという音がしてシーリカが前にこけた。足がもつれてしまって顔から地面に行った彼女を心配してリックが駆け寄る。


「あっ!」


 神官服の腰の部分がめくれ、ハクハクが引っ張ったスカートがずり落ちていた。地味な白いパンツに包まれた、シーリカのぷっくりとした尻がリックの目の前にもたげる。リックは尻から目が離せなくなる……


「(うーん。やっぱりぷっくりとして太ももとかすごい弾力がありそうでいいなぁ。シーリカは…… 肌も手入れされて綺麗だし…… おっと…… これは人助けだから触っても良いよな…… うん! 俺は無罪だな)」


 ニヤニヤと笑ってリックは、そっとシーリカ様に手を伸ばした。


「おわ!」


 リックが尻に触れようとする直前に大きく尻が動いた。シーリカが右手で上半身を起こし、反対の左手を腰にまわし、自分の状況を把握したのだ。ゆっくりとリックに振り向いたシーリカが涙目になっていく。リックは自分の状況がまずいことにようやく気付く。


「あゎゎ?! あっ! キャー! いやー! リック様のエッチ!」

「えっ!? あっあの…… これは……」

「ちょっとまって! 俺は国民を救助しようとしてるだけで…… 兵士の義務です。決して下心があるわけではないんですよ」


 慌てて言い訳をするリック、必死すぎている彼は後ろから、銀色の長い髪をしたかわいいエルフが、殺気だって近づいて来るのに気づかない。


「リックぅぅぅぅぅ!!!!!」

「あっ! ちっ違う! ソフィア!」

「変態さんなのだ! お仕置きがひつようなのだ」

「この変態!」


 ポロンがリックを指さして飛び跳ね、ハクハクは少し呆れた表情をしているように見える。リックは元はと言えば、ハクハクが逃げるからであって、自分は悪くないのにと彼女を恨むのだった。

 涙を目に浮かべて、ソフィアが手を上空にかざす。リックは悟りを開いた修行者のように自分の身に何が起こるか覚悟した。


「ぎゃああああああああああああ!!! ソフィア…… しびれるよ」

「フンだ! 反省するですよ」

「反省なのだ! メッなのだ!」


 青白い光に包まれ、電撃にうたれ声をあげるリックだった。電撃にうたれながらリックは、手を腰に当てたポロンにメッと言われるのだった。


「あゎゎゎ! リック様をいじめるのやめてください。それとメッですよ。ハクハク」


 ハクハクに注意をし、シーリカは慌ててずり落ちた、スカートを戻しながら、ソフィアとポロンの前に行き、リックをかばおうとしている。


「ダメです。リックは反省です」

「反省なのだ!」

「まぁ! かわいそうなリック様…… やっぱりと私と一緒に教会に行きましょう!?」


 リックの顔が苦痛に歪む。シーリカの言葉にソフィアの電撃が強くなったのだ。余計なことを言わないで心の中でシーリカに叫ぶリックだった。


「ごめんなさい。ソフィア許してーーーー!!! もうしません!!!」


 リックが必死に謝ると、何とか許してもらえたようで魔法がおさまった。心配そうな顔してシーリカがリックの横に来る。


「ふぅ…… まだビリビリする」

「あゎゎゎ、はぁ。かわいそうなリック様…… やっぱり私と教会に行きましょう」

「いえ! 俺は教会に行きません!」


 シーリカの言葉の後、即座に手を上にかざすソフィア。リックは彼女の動きに気付き、シーリカの提案を即答で否定するのだった。なぜ自分だけがこんな目にと嘆きながらもリックは真面目にシーリカに瘴気調査の件を確認するのだった。


「あっあのシーリカ様! あの受注したクエストの件ですけど!?」

「あゎゎゎ! …… ません!」

「えっ!? 今なんておっしゃったんですか? 俺達は少し聞きたいことがあるんですけど?」

「あゎゎゎ。言えません。ごめんなさい。出発は明日の朝です。西門に集合してください。今はそれしか言えません!」

「えっ!? ちょっと!? シーリカ様!?」


 うつむいたシーリカは、すぐにハクハクを抱きかかえ、声をかけたリックに振り向くことなく行ってしまった。ソフィアとポロンが、リックの横に来て心配そうにシーリカの背中を見送っている。


「どうしたんだろう? クエストの話をしたら急に行っちゃった」

「言えないって言ってましたね」

「隊長に相談するのだ!」

「そうですね。ポロンの言うとおりですよ」

「うん。隊長に報告して相談しよう」


 リック達はすぐに詰め所に向かう。扉を開くとそこにはズーンと落ち込んだ、イーノフが椅子に座って机に突っ伏している。彼の横には肩をさすって励ますゴーンライトがおり、二人がいる向かいの席でブスっと怒った顔をして腕を組んでるメリッサが見える。詰め所には明らかに険悪な空気が流れていた。リックは気まずそうに詰め所の奥にあるカルロスの席へと向かう。

 カルロスはリックを見て右手をあげて声をかける。


「お前さん達か。おかえり」

「あっあの!? どうしたんですか? みんなは?」

「うん。さっきここにシーリカ様が来てね」

「えっ!? シーリカ様が!? 一体なんで?」

「お前さん達がココの依頼を受けて、シーリカ様のクエストを助けることになっただろ?」

「はい。でも、それが何の関係が?」


 カルロスの話によると、達が戻る少し前に、シーリカが詰め所にやってきたらしい。シーリカはカルロス達に冒険者になり、瘴気の発生のクエストを受注したことを説明した。それで隊長と他のメンバーにシーリカの受注した、クエストにリックとソフィアのチーム以外のメンバーは介入を、絶対にしないでほしいと頼んだという。


「あっ! それで……」


 合点がいったリックは後ろでうなだれているイーノフを見た。シーリカとクエストに行きたい、彼女の大ファンのイーノフが落ち込み、嫉妬したメリッサさんが怒って、気まずいゴーンライトがイーノフを慰めているのだった。


「シーリカ様が俺達を指定しに、わざわざここにきたんですか?」

「うん」

「どうしてそんなこと?」

「それは僕にもわからないよ」

「あっあの! 私…… 気になったんですけど? どうして瘴気の調査を防衛隊とか騎士団でしないんですか?」


 ソフィアが隊長に尋ねた。ソフィアの言うことはもっともである。街道が封鎖になる、瘴気の調査は冒険者よりも、まず騎士団や防衛隊に通報され対応がされるべきだ。


「実は調査の依頼は瘴気が発生してすぐに騎士団に救援要請はきたみたいなんだ。でも、いつの間にか冒険者ギルドに頼むことになった。あの様子だと、おそらくシーリカ様が手をまわして冒険者ギルドで調査させるようにさせたみたいだな」

「えっ!? シーリカ様がそんなことをできるんですか?」

「多分な。さすがに王国の聖女様から頼まれたら、承諾するしかないだろうしな」


 カルロスの言葉に考え込むリックだった。シーリカが冒険者になって、瘴気の調査のクエストを受け、他の冒険者との共闘を拒否する。さらにリック達を指名して防衛隊の介入まで牽制する。シーリカが何か意図をもって行動しているのは明らかだ。


「シーリカ様がリック達だけで調査に行くように手をまわしたってことかー! ふん! どうせいいんだ僕なんか……」

「うるさい! イーノフ! でも…… 隊長の話の通りならあからさまに他を排除してリック達を瘴気に向かわせようとしてるね」

「うん。メリッサの推測は当たってるよ。シーリカ様はお前さん達をどうしても瘴気の調査にかかわらせようしている」


 メリッサの推測に同意するカルロスだった。リックはシーリカが、なぜそのようなことをするのかわからず、少し信じられないという顔をした。


「それか…… シーリカ様にお前さんが狙われてるとみる方が良いのかな? 二人きりになって既成事実を……」

「リック!」

「隊長、変なこと言わないでくださいよ」

「いやぁ。さすがにそんなことする方じゃないよな。なら、シーリカ様じゃなくて他の人間かもな……」


 カルロスはニヤリと、笑って深く椅子に腰かけた。何かに気付いたようだ。


「まっ確証はないが…… 調べてみるか。とりあえず、リック、ソフィア、ポロンの三人は明日からシーリカ様と瘴気の調査だ」

「はい!」

「メリッサ達は僕に少し付き合ってもらえるかな」

「わかったよ」


 この後ポロンが泣いてるイーノフを慰めに行って、さっき面白かったのだと、シーリカのスカートが脱げた話をした。なぜかリックがイーノフから殺気のこもった目で睨まれた。リックはポロンは余計なことは言わないように注意したのだった。

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