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第130話 奴隷商人をやっつけろ

 奴隷商人達の襲撃は深夜に行われる。奴らは戦力のほとんどない村を狙って襲い、村にいる人間を根こそぎ連れ去り奴隷にする。そして逆らう人間は容赦なく殺す。

 夜になり村から灯りが消え静まり返っている。教会に村の人達を避難させていた、イーノフとゴーンライトが宿舎に戻ってきた。


「メリッサ。村のみんなを教会の地下に避難させたよ」

「ありがとう。しかしさっき仲間を捕えたから恐れをなしてこないかもね」

「いや…… あいつの口から自分達の正体がバレるのが怖いだろうから、この村を襲う可能性の方が高いよ」

「ならいい。集合しな!」


 ニヤリと少し嬉しそうに笑った、メリッサは立ち上がり全員を集める。メリッサの前にリック達が一列に並ぶ。


「さっき捕まえたローザリア帝国人は奴隷商人で間違いないだろう。仲間もおそらく同じローザリア帝国のやつらだろう」

「ローザリア帝国はグラント王国とは友好関係にあるのに……」

「しょうがないさ。ソフィア…… 長年敵対してて友好関係になったのは最近だからね」


 残念そうにつぶやくソフィアに、イーノフが答える。メリッサは二人に視線を向け話を続ける。


「いくら友好関係であってもあたし達の国でこんなことして無事に帰す必要はないさ。みんな…… やつらが奴隷商人になったことを後悔させてやりな!」

「「「「「おー!」」」」」


 全員で片手をあげ、返事をするとメリッサは満足そうにうなずく。続いてメリッサは全員の持ち場の確認と作戦指示をしはじめる。

 

「私が敵を追い込んで教会前の広場に誘導する」

「はい!」

「広場の配置は教会の中にイーノフとソフィア。二階から教会に近づく人間を排除すること。後、イーノフは村に敵が侵入したらビーエルナイツに合図をだす」

「わかったよ。メリッサ! ソフィア、頑張ろう」

「はい!」


 教会に配置されるのはイーノフとソフィアで、二人は声を掛け合って互いの健闘を祈る。配置を聞いたリックは漠然と自分はポロンと組むのかと思っていた。


「教会の入口はゴーンライトとリックだよ。あんたらはイーノフ達と協力して広場に追い込んだ敵を倒す。わかったね!?」

「えっ!? わかりました。リックさん、よろしくお願いします」

「いえ!? こちらこそ、よろしくお願いします」


 リックは驚いてゴーンライトを見た。ゴーンライトもリックを見て、目を大きく開いて驚いているようだ。攻撃の苦手な二人が組むのは予想外だった。ただ、今回は教会にイーノフとソフィアが居て、いつでも二人のフォローに回れるからこの配置になったようだが……

 ポロンがメリッサの足元にきてズボンを引っ張った。下を向いて気付いたメリッサが膝を曲げ彼女に目線を合わせる。


「わたしは何するのだ?」

「あんたはあたしと一緒だよ。村の中に侵入してくる奴隷商人達をリック達の場所まで追い込むんだよ。いいね?」

「わかったのだ! メリッサとがんばるのだ」

「よし!」


 メリッサが大きな手を広げ、わしゃわしゃとポロンの頭を撫でて、ポロンは嬉しそうに目を閉じている。長い先の丸いフサフサの尻尾が揺れていた。作戦を聞いていたリックはメリッサにしては消極的な作戦だと首をかしげた。いつもなら敵が近付いたら、メリッサが突っ込んで全員を倒そうとするはずだった。リックはイーノフに顔を近づけ小声で尋ねる。


「なんか珍しいですね。メリッサさんが敵にすぐに突っ込まないなんて?」

「あぁ。さっき僕が敵に突っ込んでばっかりだと、いつかポロンが真似をするよって言ったから考えたんじゃないかな?」

「さすがイーノフさんだ。猛獣使いですね」

「まったく…… 猛獣とは失礼だな! メリッサより猛獣の方が賢いに決まってるだろ?」

「イーノフ! あんた! 聞こえてるよ!?」


 メリッサさ鋭い視線がイーノフを貫く。小声で話していはずなのにと二人は、メリッサの地獄耳に驚くのだった。メリッサが後ろにまわりこみイーノフの首を掴んで持ち上げる。イーノフさんは足をバタバタさせて苦しそうにしている。


「メリッサ! 違う…… 最初はリックが……」


 必死にイーノフはなんとかリックにメリッサの怒りをなすりつけようとする。リックは心の中でごめんなさいと言って、そっと二人から目をそらすのだった。

 

「ポロンさん。気をつけて! メリッサさんから離れないようにするんですよ」

「ありがとうなのだ! ゴーンライポさんも気を付けるのだ」

「だから…… 僕はゴーンライトだって!」


 準備を整えたリック達は村の教会に向かう。月が出ており、月明かりが雪に反射しているせいか、夜だけど明るい。教会は大きな入り口がある、石造りの三階建ての建物である。村のちょうど中心にあり、教会の前は広場のようになっていてる。

 背面は墓地で両側面は、家が密集しており、背面と側面には人が通れる入口も窓もないから、側面と背面から侵入される可能性は低い。村人が避難している地下室の入口は、礼拝堂の祭壇の前で絨毯の下に隠れている。この地下室は、昔この村が魔物に襲われたときに神父が村人避難用に作ったものだ。リックたちは地下室の入り口にリーナを連れてきた。リーナを戦闘に参加させるわけにはいかないので村人と一緒に避難してもらう。


「じゃあリーナさんは教会で村の人達と一緒に居てくださいね」

「はい。わかりました。皆さんも気を付けてください」


 リーナはさっき摘みに行った雪見花(ゆきみはな)を持っている。避難している人達が、綺麗な花を見て少しでも落ち着けるようにと、彼女なりの配慮らしい。リックの方を見て目を潤ませた。


「リーナさん、大人しくしてるのだぞ!」

「こら! ポロン。もう…… リーナさんは静かだよ、エルザさんじゃないんだから……」

「ふふふ」

 

 ポロンとリックの会話にリーナは微笑む。ポロンはリーナに声をかけると背中を向け歩き出した。


「あっ! ポロンちゃん。待って」

「どうしたのだ?」


 ポロンを呼びとめて、膝をついてほほ笑んだリーナが両手で、静かにポロンの頭に雪見花(ゆきみはな)をつけた。


「うん!? 何なのだ?」


 何が起きたかわからないポロンに、ソフィアがほほ笑んで手を引き、ポロンを教会の窓の前に連れて行く。窓に映る自分の頭に、綺麗な青い雪見花(ゆきみはな)がついてるのを見つけてポロンは笑顔になった。

 嬉しそうに走ってポロンはリーナの元へと戻ってきた。


「お花なのだ! リーナさんがお花くれたのだ。うれしいのだ」

「さっき一緒に見れなかったら、これポロンちゃんにあげるね」

「ありがとうなのだ。帰ったらまたお花を見に行くのだ」

「うん。帰ったらまたお花を見に行きましょうね」


 優しくポロンに手を振り、リーナは地下室に向かう。メリッサに連れられポロンは教会の外へ向かう。イーノフとゴーンライトは既に持ち場についてる。リックとソフィアはリーナが地下に下りたのを確認し、地下室の扉を閉め絨毯を引きなおした。

 作業が終わったリックの横にソフィアがやって来て立って彼の顔を覗き込んだ。


「ポロンとリーナさんにお花をまた見せてあげましょう」

「うん」

「リック…… 気を付けるですよ」

「ソフィアもね!」


 目をつむって唇を向けてくるソフィア。リックはそっと彼女を受け入れる。最近はポロンがやってきて、ずっと近くにいたので、二人にとって久しぶりの口づけだった。


「元気でました!」

「僕は中にいるんだけどね……」

「「えっ!?」」


 慌てて振り向くリックとソフィア、礼拝堂の二階のテラス部分から、リック達を見ながらニヤニヤしているイーノフがいた。すぐにリックはソフィアから離れた。リックとソフィアはイーノフに見守られ、恥ずかしそうに持ち場に向かうのだった。

 教会の入口から広場にでると、ゴーンライトとメリッサとポロンが、村の入口の方をじっと見つめていた。


「メリッサさん、ポロンさん。敵…… 来ましたよね?」

「うん。人の気配がするのだ」

「だね。ちょっと見に行くよポロン!」

「いくのだ」


 奴隷商人達はもう村に入ってきたようだ。ポロンとメリッサは二人で村の入口に様子を見に向かった。すぐに二人が走って戻ってきて、教会の二階の窓から、広場の様子を見ていたイーノフに手を振っている。


「やつらが来たよ! イーノフ! ビーエルナイツに合図を!」

「了解!」


 教会の窓からイーノフが上空に向かって魔法を放っている。綺麗な炎の玉が、教会の上空で爆発し、赤い光が地面に反射している。それを見たメリッサとポロンはは再び村の入り口に向かっていった。

 しばらくして、どっかーんという大きな音と、熊のような雄たけびが響き、ギャーという悲鳴がいたるところから聞こえだした。


「クソ! もう半分以上やられたぞ! 何なんだ? あのでかいのとちっさいのは!?」

「おっおい! あそこにもグラントの兵士がいるぞ!」

「そうだ! あいつらを人質にとれば……」

「おぅ! やっちまえ!」


 慌てた様子で教会の広場に、鎧を着けた数十人の集団が入って来た。彼らは奴隷商人だ。正確には奴隷商人ではなく、雇われた傭兵だが。傭兵は黒い服の上に赤い鎧を装備していた。はばの広いクレイモアを持った男が先頭にいる。クレイモアを持った男が、リーダーなのか、教会を指して他の人間に命令をしているようだ。


「見たことない赤い鎧ですね。やっぱりローザリア帝国の人達ですかね?」

「そうですね。僕も見たことないですね。あっ! 来ますよ! リックさん!」

「よし! じゃあ行きますよ!」

「いえ…… ここは僕に任せてください」


 左腕をリックの前に出してここは任せろと前にでるゴーンライト。リックはゴーンライトの行動に驚くのだった。彼は両手に盾を装備するスタイルで攻撃はリック以上に不得手なのだ。

 ゴーンライトは背中に背負った二つの盾を自分の両手で一つずつ持つ。走ってリック達にむかってくる傭兵は、広場の半分くらいまで迫っていた。


「必殺! 闇土障害物シャドウダートオブストラクション!」


 ゴーンライトは叫びながら、両手に持った盾を前に向けて、並べるとそのまま地面に叩きつけた。地面についた二枚の盾が怪しく紫色に光る。


「えっ!?」


 地面の土が盛り上がって、教会前で走っている傭兵達の前に、胸くらいの高さの壁が現れた。


「なんだ? これ? ははっ! おい、みんな! みんな越えてすすめ!」


 傭兵達は現れた壁を見て笑い、手をかけて簡単にその壁を越えようとしていた。


「今だ! よし! ソフィアさん、イーノフさんお願いします!」


 ゴーンライトが奴隷商人達をさすと、イーノフとソフィアが頷いて攻撃を開始した。壁を一所懸命に乗り越えようとする傭兵達に容赦なく、ソフィアの矢とイーノフの魔法が降り注ぐ。

 頭を出してるとソフィアの矢が頭を貫き、壁を乗り越えようとする人間には、容赦なく炎の玉が上空から襲い掛かり焼き尽くしていく。ゴーンライトは敵の前に障害物を出して足止めをして、イーノフ達から狙い撃ちをしやすくしたのだ。


「チッ! おい! ひとまずこの壁に身を隠せ!」


 リーダーが号令をかけて、傭兵達はゴーンライトが作った壁に身をひそめる。


「よく気付きましたね! でも…… もう終わりですよ」


 地面に着いていた盾をゴーンライトが外すと壁がフッと消えた。しゃがんで無防備な状態の傭兵達がさらけだされる。彼らはまた再びイーノフとソフィアの攻撃にさらされる。

 バタバタと傭兵達は倒れていき、あっという間にリーダーらしき男一人だけになった。リーダーは目の前の光景が信じられないのか、呆然とクレイモアを両手で持ってたたずんでいた。


「なっなんだ!? こいつら? クソが! なめやがって!」


 自分の懐に手を入れた男は中から、光の玉を取り出し、口に入れると思いっきりかみついた。ガラスの割れるような音がし、男の体を緑の光を放つ煙が包む。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


 煙に包まれた男は叫びながら、目を開きヨダレを垂らして顔を上に向けていた。


「うそだろ……」


 リックが呆然とつぶやく。煙に包まれた男の体が膨れ上がって膨張していく。膨張した男の体は鎧を弾き飛ばし服を破く、下半身が膨れズボンが足の部分が破れ、上半身も腕が太くなり、服が破れ前にかけて、鎧はかろうじて鉄製の胸当てだけが残っていた。

 兜は邪魔なのか自ら外し、さっきまで両手で持っていた、短くなったクレイモアを軽々と片手で持ち上げる。


「もう奴隷なんざどうでもいい! 皆殺しにしてやるよ!」


 男がリックと目が合う。ニヤリと笑い男は走ってこちらに向かってきた。体が大きくなって動作も速く力強くなっていた。


「もう一度! 闇土障害物シャドウダートオブストラクション!」


 ゴーンライトが盾を地面につけた。向かってくる男の前に、再び土が盛り上がって壁が出現した。だが、片手を壁の上にかけると簡単に飛び越えてむかってくる。


「えい!」


 ソフィアがはなった矢を、男はかわす。続いたイーノフの魔法もクレイモアで簡単に切り裂いた。


「なんてパワーだ…… ただの人間じゃない! リック! 頼んだよ」


 教会の二階からイーノフがリックに叫ぶ。リックはイーノフに向けて了解と左手を上げて答える。


「下がってください」


 リックはゴーンライトと、入れ替わるように、前にでて男と対峙した。剣を抜きいつものようにリックは、剣先を下に向けて構えた。


「どけーー!」

「いやだよ。どかないよ。俺には守るものがあるからな」

 

 首を横に振ったリック、彼はどくわけにはいかない、後ろにある教会には大事なグラント王国民とソフィアがいる。


「舐めるな!」


 男は右手に持った、クレイモアをリックに向けて振り下ろした。鋭く振られたクレイモアは、冷たい空気を切り裂いていく。


「遅い……」


 斜めに振り下ろされたクレイモアを、リックは下がりながら右足を引いてかわす。リックの目の前をクレイモアが通過していく。振り切ったクレイモアを男はすぐに引き腕を曲げ、男の左側へと持っていき右腕を広げるようにして、リックの右横から斬りつけて来た。


「よっと!」


 リックはしゃがんで男の剣をかわした。彼の髪をかすめて、クレイモアが頭の上を通過してく。腕を伸ばした姿勢になった男。体を起こしたリックは左腕を伸ばして男の右手を押さえた。


「なっ!」


 男はつかまれて自分の右手首に視線を送った。リックは男の視線の動きを見て、笑い右腕を曲げ肘を脇にくっつけるようにして剣を水平にし剣先を男の向けた。左手で男の体を引き寄せたリック、右手に持った剣を男の胸に突き刺した。


「グハッ、なっなぜだ! こいつ……」


 リックの新しい剣はいとも簡単に胸当てを貫き相手の動きは止まった。膨張していた体がしぼんでいく。リックは男の手首から左手をはなし、肩にもっていき男を押し右腕を引いて剣を抜く。リックが剣を抜いて左手を離すと、男は地面に崩れ落ちるように倒れた。リックはあおむけに倒れて男を見ながら剣を軽く振って血を拭うのだった。


「あっ! もしかしてそれで最後かい?」

「えっ!? メリッサさん? はい。ここに来たのはこいつで最後です」

「あちゃー! まずいね」


 教会の前の広場にメリッサとポロンが駆け込んできた。メリッサが少し慌てている。


「どうしたんですか?」

「わたしとメリッサが頑張って全員やっつけたのだ!」

「あっ! ポロン…… あのね。その……  エルザさんから一人を生け捕りにしろって、言われてたのを忘れててね……」


 気まずそうに頭をかく仕草をするメリッサ。勢い余って傭兵達を全て片付けてしまったようだ。イーノフが教会の二階から声をかけて来る。


「大丈夫だよ。メリッサ、昼間に捕まえたのがいるだろ?」

「あっ! そうだった! だったら手加減してやる必要なかったね? ポロン!」

「なのだ!」


 ポロンとメリッサは二人とも笑っていた。手加減したなら、全滅させないでくれよと、二人を見ながら思うリックだった。


「なっなんですか? もう終わったんですの?」

「あっ! エルザさんなのだ。終わってるのだ」

「はぁ、私達が来る前に六人で終わらせたの!? ほんとになんて人達なの……」


 ビーエルナイツを引き連れて、エルザがスジー村にやってきた。彼女は奴隷商人達が、全員倒されてるのを見て少し呆れていた。


「それで、ちゃんと一人は生け捕りにしてくれましたわよね?!」

「うっうん…… もちろんだよ」


 ひきつった顔して慌ててるメリッサを見てポロンが笑っていた。エルザを奴隷商人を拘束した牢屋へと案内した。牢屋に入ってひっ捕らえた奴隷商人の顔を掴んで確認していた。すぐにエルザは牢屋からでると、リック達の前で少し残念そうな表情をしてため息をつく。


「はぁ…… ローザリア帝国人ね……」

「どうしたんですか!? エルザさん」

「あっ!? リック…… ごめん、なんでもないのよ」

「でも……」


 普段元気なエルザが珍しく静かにしてる。


「えっ!? ロバートさん……」


 肩に手を置かれ振り返ったリック、そこにはロバートが暗い顔をして立っていた。


「ちょっと、エルザはそっとしておいてやってほしい」

「わかりました、でも、どうして? ローザリア帝国になにか? わっ!? ちょっと…… ロバートさん?」


 リックはロバートに引っ張られエルザから、少し離れた場所に連れて行かれた。ロバートはエルザの様子をうかがいながらがゆっくりと口を開く。


「継母である。レティーナ王妃はローザリア帝国の貴族だったんだよ……」

「えっ!?」

「まぁこの件に関係してるかはわからんが……」


 王妃レティーナは現在の王妃で、勇者カズユキを召喚し、アナスタシアと無理矢理結婚させようとした。王との間に子供がいて、その子供より王位継承権が上である、アナスタシアのことを邪魔にし亡き者しようと企んでいる。

 エルザがリック達のところに、歩いてきてロバートさんの方を向く。その表情はさっきより明るい。


「まぁいいわ。ロバート! あいつをいつものように尋問をしなさい。きっちり他の村でさらった人の場所を吐かせなさいよ」

「はっ! ぐふふ! 今日は何をしてやろうかな!」

「相変わらず尋問って聞くと普段まじめな癖に下衆な顔するのね。はあぁぁぁぁ。その顔をイーノフさんとかに向けたらさらにたぎるのに!」


 いつもの変な明るいエルザに戻った、姿を見て少し複雑だがホッとするリックだった。エルザの姿に、イーノフが逃げ出して、ゴーンライトが目をそらした。エルザはゴーンライトを見て顔を覗き込む。ポロンも一緒にゴーンライトの顔を覗き込もうとしてソフィアが止めていた。


「よーし。連れて行け」


 生き生きとしながらロバートは、騎士に奴隷商人を連れて行くように命令していた。


「(でも、ロバートさんって尋問すきなんだね。エルザさんから尋問を指示されたた目がキラキラしてる。まさか!? 普段のストレス発散をとか!?そんな訳ないか…… 苦労してるみたいだけど、エルザさんと一緒に居るロバートさんは楽しそうだしね……)」


 リックは普段と違うロバートの姿を、まじまじと見つめるのだった。

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