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第126話 頼れる後輩ポロン

 リックは詰め所から裏の通りにでて、すぐにある薬屋の三件隣の鍛冶屋に向かう。石造りの鍛冶屋が見えたきた。鍛冶屋は防衛隊の武器や防具のメンテナンスや作成をしてくれてとてもお世話になっているのだ。鍛冶屋の扉を開ける。店内の棚には武器や防具が飾られていた。


「あっ! すいません。あのエドガーをお願います」


 リックが鍛冶屋に入るとカウンターには、白い立派な髭を生やした、お爺さんが眠そうに座っていた。リックはおじいさんに声をかけ、エドガーを呼んできてもらう。静かにうなずいたお爺さんは、ゆっくりと奥の鍛冶場にきえていく。いつもいるお爺さんは鍛冶屋のエプロンを着けた優しそうな黒い瞳のお爺さんである。ただその瞳の奥の眼光はまだまだ力強い。いつもカウンターにいてのんびりしている、このお爺さんは実は……


「リックおにーちゃん、いらっしゃい」

「エドガー! こんにちは。俺の頼んでいた物ができたって隊長から聞いてきたんだ」

「うん。出来てるよ。ちょっと待ってね」


 エドガーが奥の鍛冶場から姿を現した。リックの頼んだ物を、カウンターの下に頭を下げて探し始めた。


「はい。リックおにーちゃんお待たせ」

「おっ! ありがとうエドガー」


 カウンターの下からエドガーが二本の剣を出してきた。もちろんこれはリックが使う、いつもの片刃の細い剣だが今回は少し違う。勇者襲撃事件で手に入れた、ブレイブキラーを材料に使用して剣を作ってもらった。

 なぜリックがブレイブキラーを材料に剣を作ってもらったかと言うと。リックは大量の黒精霊石製のブレイブキラーを、証拠品として持ち帰ったが、カルロスに一本だけで良かったと言われてしまった。処理に困っていたら、カルロスが貴重な鉱石なので、エドガーに加工してもらえばいいと言われ持ち込んだのだ。なお、リックがブレイブキラーを持ち込んだ時、武具大好きなエドガーは目をキラキラと輝かせた。


「ねぇねぇ。早く抜いてみて! それすごいんだよ!」

「うん。ちょっと待ってな」


 リックは剣をつかんでゆっくりと剣を抜いた。

 

「おぉ! 軽い! ほとんど重さを感じずにスッと剣が抜けたぞ」


 驚きの声をあげるリック、エドガーはカウンターの向こうで嬉しそうに笑っている。新しいリックの剣は、黒い刀身が光輝いていた。刀身をまじまじとみるリック。グリップの部分は、以前とあまり変わらないけが、黒く輝く刀身はかっこよく顔がほころぶ。輝きを放つ黒い刀身に反射してリック顔が写り、綺麗な曲線を描いた刃は鋭くすべてを切り裂いてしまうような雰囲気があった。

 カウンターからリックが少し離れ、構えて軽く振ってみると、以前より速く鋭く振れて刀身にはしなやかさがあった。


「どう?」

「すごい。相変わらず良い腕をしてるな」

「えへへ、やった!」

「でも、エドガーまだ頼んでから三日くらいした経ってないの…… よくできな」

「うん? だって僕も楽しくてしょうがないから最優先で作ったんだ。昨日なんか寝ないで作業したよ!」


 自慢げに笑顔でエドガーは、鼻に指を置いてすすっている。鍛冶屋を経営しているとはいえ、彼は子供っぽい行動をする少年だった。鼻の下に黒いすすがついたのは、面白いから黙っておくリックだった。


「ありがとう。でも、あまり無理するなよな」

「ははっ。大丈夫だよ。そうそう。その剣の名前はシャドウフェザーって名前にしたんだ。黒く軽い羽みたいでしょ」

「そうか…… よろしくな。シャドウフェザー」


 剣を眺めながら、嬉しそうにうなずくリックだった。


「それと黒精霊石の剣なら前のと違って、壊れることもないと思うから予備もこの一本で平気だよ。まっ万が一壊れても後ニ十本以上は作れるくらい材料はあるから安心して!」

「わかった。ありがとう」


 礼を言うとエドガーは、ちょっと気まずそうにリックの剣を、指さして話を続ける。


「それで…… 料金なんだけどね。黒精霊石の加工は特殊な技術が必要でかなり……」

「あぁ、そういうのは第四防衛隊に全額請求してくれてかまわないよ」

「えっ!? いいの?」

「いいよ」


 すんなりとリックが答えると、エドガーはすごい驚いた顔をしまた申し訳なさそうにする。


「(そんなに高いのか…… まぁいいや。剣に加工して使えって言ったのは隊長だからな)」


 エドガーに礼を言って、二本の新しい剣を受け取ったリックは、詰め所に戻るために店の外にでた。


「あっ! ポロン。リックがいましたよ」

「おぉ! いたのだ!」

「あれ!? ソフィアとポロンどうしたの?」


 外へと出たとたんにリックは、声をかけられた。声の方をみるとソフィアとポロンが、手をつないで歩いてきていた。仲良さそうに、手をつなぐ二人は姉妹のように見えた。ただ、ポロンはまたリュックを背負っていた。


「リック! 今から任務ですよ!」

「任務? 随分急だな」

「さっき兵士が詰め所に来たのだ。東の平原というところで、プレデターエイプが集団で現れて冒険者が襲われてるのだ」

「わかった。じゃあ、すぐに向かおう」


 プレデターエイプ、平原に時折出没する、青色をした人間より少し大きい猿型の魔物だ。数匹から数十匹の群れで行動し、棒や石などの簡単な道具を使う知能がある。平原を行き交う商人や、小さな村を襲い、ありとあらゆるものを略奪する。

 特に繁殖意欲が強く、人間の女性をさらい、苗床にしたりその場で凌辱する。


「メリッサさん達は先に行ってます」

「じゃあすぐに東門に行こう。ポロンもテレポートボールもらったよね?」

「あるのだ!」


 ポロンが笑顔でポケットから、取り出した青い球を、小さい手のひらにのせて見せてくる。


「サーダさん用に用意していたのがあってよかったです」


 小さくうなずいて微笑むリック。彼の時はテレポートボールのことを、ソフィアが伝え忘れてて必死で制服をさがた。しかも、出てきたのは前任者の血がべっとりついていた。

 リック達はテレポートボールで東門に行き、すぐに城門を出て王都の東に広がる草原へとでた。草原をしばらく行くと大きな集団が入り混じっているのが見える。メリッサ達がプレデターエイプと戦っていた。戦ってる敵の数は五頭で、周りにはもう十数体のプレデターエイプの死体が転がっていた。

 プレデターエイプは青い毛をした大きな猿のような容姿をし、腰には獣の革を着けて手には、木の棒を持ってたり素手だったり様々であった。


「はっ!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」


 掛け声とともに鋭く突き出された槍が、プレデターエイプの胸を貫くのが見えた。メリッサが簡単にプレデターエイプを仕留めた。戦っているメリッサの元へとリックが駆け寄る。


「メリッサさん! 手伝います!」

「おっ!? リックかい! 遅かったじゃない。ここはあたしらが処理する。平原の奥に逃げ遅れた冒険者いるから、あんた達はそっちに行ってくれるかい?」

「わかりました! 二人とも行くよ!」

「そっちにもプレデターエイプがたくさんいるから気を付けるんだよ」


 リックは駆けながら右手を上げメリッサ答えのだった。逃げ遅れた冒険者がいるという情報を聞き、リック達の走る速度は自然に上がっていく。


「こら! ゴーンライト! しっかりしな!」

「そうだよ! ほら僕が詠唱する時間をちゃんと稼いで!」

「遅い! そんなトロいとすぐに魔物の餌になっちまうよ!」

「ひぇ! はっはい!」


 走るリック達の後ろから、悲鳴のようなゴーンライトの声がした。メリッサとイーノフは二人とも厳しくゴーンライトに接している。


「(厳しいな…… あの二人にあんだけ鍛えられるのは大変だから同情するよ。でも…… ゴーンライトさんがついていけないとサーダのように……)」


 サーダのことを思い出し暗い表情をした。ポロンは彼の表情の変化に気付き声をかける。


「どうしたのだ?」

「ううん。何でもない。とりあえずポロンは俺から離れたらダメだよ!」

「わかったのだ!」


 斜め下を向いて微笑むリック。元気に返事をしたポロンだった。ポロンから目を背けるように、すぐに前を向き真顔になって、冒険者を探すリックだった。

 リックは草原の少し丘のような場所を見つけ周りを見渡す。少し離れたところに大きな青い毛のプレデターエイプが激しく動いていた。


「いたのだ!」

「うん、行くよ。みんな」

「はい。行きますよ。ポロンさん」

「わかったのだ」


 リックは剣を抜いてプレデターエイプに向けて駆けだした。逃げ遅れた冒険者はみえなずにリックに不安がよぎる。


「キャー! やめて!」


 女性の叫び声がした。走っているリックに、プレデターエイプの下で、誰かがもがいているのが見える。逃げ遅れた冒険者だ。直後にビリビリという布の裂ける音が草原に響いた。

 プレデターエイプが、冒険者の女性の上に馬乗りのなり、上半身の衣服をはぎ取るのが見えた。プレデターエイプは冒険者を凌辱するつもりのようだ。リックは後ろを走るソフィアに指示をだす。


「ソフィア! 矢で奴を! 俺達は行くよ! ポロン!」

「はい」

「わかったのだ!」


 ソフィアが立ち止まって弓を構えた。リックとポロンはプレデターエイプに向かって走っていく。


「やだ! やだ」


 舌を出してベロって唇をなめ、女性の胸に向かって頭を降ろしてくプレデターエイプだった。フガフガとプレデターエイプの頭が動き、手が下半身に伸びていく。抵抗しようにも女性はがっしりと手を押さえつけられ、何もできす空を見ながら涙を流すしかできなかった。しかし、直後にソフィアの放った矢がプレデターエイプの肩に当たった。


「ぐぎゃ!?」


 叫び声をあげてプレデターエイプは顔をあげた。楽しみを邪魔された、プレデターエイプは頭を上げ、怒っているのか、目を鋭くして矢が飛んだ方に顔をむける。


「よお!」


 走っていたリックと目が合った。リックは笑いながら左手を上げて声をかける。


「がうああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 顔をあげと雄たけびを上げ、プレデターエイプは威嚇してくる。立ち上がって冒険者を放り出し、リックに向かって駆け出してきた。


「うがああああああああああああああああ!!!」


 叫んながら駆け寄るリックにむかって、プレデターエイプの拳が振り下ろされる。


「フン! 遅い!」


 正面からむかってくる拳を、リックはギリギリまで引き付け、右足を引いて半身になってかわす。ビュッという音がして拳が、リックの目の前を通り過ぎていく。リックは拳をかわしたままの姿勢から、新しい黒い細身の片刃の剣をプレデターエイプの腕に向かって振り上げた。

 目にも止まらぬ速さで上に鋭く伸びて行ったリックの剣。次の瞬間には、大きなプレデターエイプの前腕部が、空中に舞い上がっていた。プレデターエイプの顔が苦痛にゆがむ。


「そのきたねえのしまえよ!」


 リックは真顔ですぐに剣を返しすと、プレデターエイプの体を横に斬りつけた。まだ興奮状態の、プレデターエイプのシンボルごと、新しい剣は下半身を切り裂いていった。


「がぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 激しく耳をつんざくような、プレデターエイプの悲痛な叫び声が平原に響く。ゆっくりとプレデターエイプは、腰の部分から上がずり落ちて二つに分かれた状態で倒れる。


「ふぅ……」


 小さく息を吐いたリックは左腕を曲げ、剣を肘の上に持っていき袖で血を拭う。新しい剣の切れ味はすごく満足そうに笑った。ただ、使用して最初に切ったのがあれなのが少しだけ嫌だった。


「すごーなのだ!」


 リックの方を見てポロンが唖然とした顔をしている。


「リックさんはすごく強いのだ!」

「大したことないよ」

「そんなことないのだ」

「ありがとう。でも、今は先に冒険者を助けないとね」

「わかったのだ」


 元気よく笑顔で返事しポロン、リック達はプレデターエイプに、襲われ倒れていた冒険者に駆け寄る。冒険者は上半身の服が破かれ乳房がさらけ出され、下半身の服も強引に破かれ腰回りだけ、布が残るだけで下着が丸見えだった。

 リックは彼女の横に、しゃがむと胸当てを外し、制服の上着を脱いだ。倒れている彼女に制服をかけたリックが顔を覗き込む。目をあけたあまま何も反応がない冒険者だった。リックは彼女の肩を持って、少しゆすって耳元で声をかける。


「大丈夫ですか?」


 仰向けに倒れて放心状態だったが、リックが声をかけるとピクッと体が反応し、目を大きく開き返事が返ってくる。


「はっ!? あれ!? あなたは…… この間の兵士さん?」

「おぉ! 君は確か下水道にいた…… どうしたのまた?」


 倒れていたのは赤いツインテールの髪をした女性だった。実は彼女は、勇者襲撃事件で下水道で、襲われた勇者パーティで唯一生き残った商人だった。偶然とはいえ二回も会うなんて彼女とリックは縁があるようだ。


「わかりません。急にあいつら襲ってきて…… いた!」


 立ち上がろうとして女性が腕を押さえた。力任せに押し倒されたのであろう体中傷だらけだ。リックはすぐに振り向いてソフィアに向かって手を上げた。


「ソフィア! この子の治療をお願い」

「わかりました」


 リックはソフィアを呼んで彼女の治療をお願いする。彼女を座らせてソフィアが治療を開始した。ポロンが興味ありげにソフィアの治療を覗き込んでいる。

 回復魔法をかけながらソフィアが鋭い目を横にむけた。リックも彼女と同じ方を向いて右手に持った剣を握りしめた。


「リック。プレデターエイプさんがまだ来ますよ」

「うん。わかってる」


 ソフィアの声にリックが体を右に向けた。


「「「がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!1」」」


 雄たけびを上げて三匹のプレデターエイプが現れた。お互いに少し距離を取り、少しずつリック達に近づいてくる。リックは右手に持った剣を見て小さくうなずく。プレデターエイプが何匹来ようが彼には丈夫で頑丈な新しい剣があるのだ。リックは横に立っているポロンの前に左手を出した。


「ポロン! 俺の後ろに隠れて!」

「やーなのだ!」


 隠れるように指示したポロンが首を横に大きく振って叫ぶ。


「わたしも戦うのだ!」

「えっ? でも、ほら? ポロンは無理しないで……」

「リックさん! わたしも兵士なのだ! 仲間なのだ!」

「えっ!?」


 そういうとポロンは、大きなリュックを地面に下した。紐で口を結んだリュックを開けると、中から大きな卵型の物体をだした。卵型の物体は灰色のどんぐりの形をした金属だった。


「ポロン? それは…… 金属のどんぐり?」

「ちょっと待つのだ!」


 さらにリュックから長い棒を出したポロンは、そのどんぐりの真ん中にさした。ポロンは棒を持って頭の上で、ドングリを軽々とブンブンと回し始めた。金属のどんぐりも棒もポロンよりも大きかった。リックはその巨大な物が、よくリュックに入ったのものだと感心するのだった。


「ウッドランド村の鍛冶屋特製の森鋼鉄(もりはがね)のドングリハンマーなのだ! さぁ魔物さんを倒しにいくのだ」

「あっ!? ポロン待て」


 ニコッと笑ってリックにほほ笑みかけると、ポロンは両手でドングリハンマーを持って、プレデターエイプに向かっていく。重そうなハンマーを持っても、ポロンは素早く移動して身軽に飛び上がった。


「どっかーんなのだ!」


 飛び上がったポロンが鋭く横にハンマーを振った。果物が潰れるような音がして、ポロンのハンマーが、プレデターエイプの顔をグシャとつぶし首ごとえぐりとっていった。どんぐりハンマーが通った後は、ピューと血を噴き出しながら、首がないプレデターエイプが青い体を赤い血で染めながらたっていた。直後にこと切れた人形のようにプレデターエイプが地面に倒れた。

 目の前小さい人間がはなった、大きい一撃に他のプレデターエイプはたじろいでいる。


「さぁ! もっと行くのだ! 地面にどっかーんなのだ!」


 地面をハンマーでポロンが叩く。大きな音と土煙があがり、ポロンやプレデターエイプの姿が見えにくくなる。ポロンが叩いた地面の土が吹き飛ばされてプレデターエイプに向かって行く。

 激しく飛んでくる土に耐え切れない、プレデターエイプが手を前にして土を防ぐ。


「すきありなのだ。どっかーんなのだ!」


 プレデターエイプとの、距離を一気に詰めて飛び上がり、ポロンは今度は縦にプレデターエイプの頭上からハンマーを叩いた。勢いよく振り下ろされたハンマーは簡単にプレデターエイプを押しつぶした。


「逃がさないのだ! どっかーんなのだ」


 気付いて逃げようとする最後の一匹に向かって、ポロンはすばやく距離を詰めて飛び上がると、同じように縦に一撃をくらわして同じくハンマーを叩きつけてつぶした。ポロンは軽々と肩にどんぐりハンマーを担いで胸を張った。


「ふぅ…… 終わったのだ!」

「すごい……」

「ふぇぇぇ! 強いですポロン」


 左手を腰に当てリック達に振り返って得意げなポロンだった。嬉しそうに彼女に駆け寄る、ソフィアとは対照的にリックは、複雑な表情でポロンを見つめていた。リックはポロンの元に行くと目つきをきつくして彼女に注意をする。


「ポロン、勝手に敵に向かっていったらダメじゃないか!」

「大丈夫なのだ、リックさんのそばからは離れていないのだ。それにわたしはリックさんの仲間のなのだ! 戦えるのだ!」

「リック。ポロンの言う通りですよ。心配するのは良いですけどポロンは兵士で仲間ですよ」


 リックをポロンがジッと見つめる。目に涙をためているポロンの頭をソフィアは優しくなでていた。リックはポロンが勝手に飛び出して、サーダのようになるのが怖かった。だから彼女を止めたし注意もした。でも、それは間違っていたポロンはもう第四防衛隊に所属する仲間なのだ。リックはポロンに頭を下げた。


「ごめんね。ポロン!」

「大丈夫なのだ、気にしないのだ!」


 そういうとポロンは頭を下げたリックの頭を撫でた。どうやらソフィアの真似をし、リックのことを慰めているようだった。ポロンに撫でられるリックをソフィアが悔しそうな顔で見ていた。


「ははっ! ありがとう、でもくすぐったいよ」

「私もやるです」

「うわ!? 駄目だよ…… もう……」


 ポロンに対抗しようとしたソフィアをリックは止めるのだった。冒険者を歩けるまで回復させた、リック達はメリッサさん達と合流する。三人ともけがもなく無事みたいだけど、ゴーンライトがすごい疲れた顔をしていた。

 王都に戻り怪我人を治療所まで運んで詰め所に帰った。詰め所についたリック達にカルロスが声をかけてきた。


「よく戻ったね。どうだった?」

「ポロンはすごいですよ! プレデターエイプを一撃で吹き飛ばしました」

「ほう。よかった。プッコマが推薦するだけのことはあるな」

「そうなんだ!? あんた、すごいねぇ! 初日でゴーンライトを越えたね」


 メリッサがほめながらポロンの頭を撫でている。ポロンは少し恥ずかしそうになでられていた。


「本当だね、メリッサ。これなら新人は一人で良いね」

「メリッサさん! イーノフさん! ひどいです」

「大丈夫なのだ。ゴーンライソさんもこれから頑張ればいいのだ。ポロンも一緒に頑張ってあげるのだ」

「ポロンさん…… 僕はゴーンライトだよ!」


 ゴーンライトが悲しくうつむいて、ポロンが机の上に乗り、ゴーンライトの頭を撫でてた。でも、すぐにソフィアに机に乗るなって怒られる。その様子を見ていたメリッサはしみじみとつぶやく。


「はぁ…… リックが来たともそうだけど、ポロンが来てうちの部隊もよりにぎやかなになったな」

「そうだね。さらにうるさいのが増えたね」

「わたしはうるさくないのだ!」


 プーっと顔を膨らまし、メリッサに向かって顔を出してるポロン。カルロスとの話の邪魔になったのか、メリッサはやれやれといった顔で、ポロンのおでこに手を当てて押し返してる。


「わっ! こら! やめるのだ!」

「はいはい、それでこの子とゴーンライトがやっぱりコンビになるのかい?」

「いや。ゴーンライトには誰かのサポートがいるし、ポロンも若いからもう少し経験が必要だろう」

「じゃあどうするのさ? いつも全員で行動という訳にはいかないよ!? それともコンビを入れ替えるのかい?」

「わかってるよ。だからメリッサとイーノフはゴーンライトと、ソフィアとリックはポロンとそれぞれ一緒に行動するように」

「はぁ? これからは三人で任務を遂行するってのかい?」

「うん」


 今までの部隊の編成を覆して、あっさりと頷くカルロスに、メリッサはちょっと呆れた表情をしてる。


「リックとソフィアにポロンを任せるのか…… なんか不安だね」

「じゃあゴーンライトとリックを組ませるのか? そんなことになったら、ソフィアだけじゃフォローできないよ!?」


 カルロスの言葉にメリッサは困った顔する。リックは剣によるカウンターの攻撃狙いで、ゴーンライトは両手盾使いで防御のみだ。ほとんど攻撃をしない二人が前にいたら、ソフィアが二人のフォローをしなくちゃいけなくなる。


「あっ! うん、でも……」

「そっかぁ。ならイーノフとソフィアを入れ替えるか? それともメリッサとリックか? どっちにしろメリッサとイーノフには別れてもらってそれぞれ……」

「えっ!? うそ!? それなら、もういいよ! さっきの分け方で!」


 メリッサが顔を赤くして不機嫌にカルロスに叫んでいる。ソフィアと隊長はニヤニヤしながら、イーノフとメリッサの二人を見ている。視線に気づいたイーノフも少し気まずそうにしている。メリッサはイーノフとのコンビを解消したくないのだ。


「じゃあお前さん達みんなわかったね。これからそれぞれ三人が一つのチームだから。まっチームが絶対って訳じゃなく。今までみたいに不測の事態の場合はいろいろな組み合わせで対応してもらうことになるけどね」

「「「「「「はい!」」」」」」

「なのだ!」


 リック達が返事をした。これからはソフィアとポロンと三人で一チームだ、リックは二人に負けないように頑張ろうと誓うのだった。ポロンがリックとソフィアのところにきて頭を下げてきた。


「リックさん、ソフィアさん、よろしくなのだ」

「よろしくです」

「よろしくポロン! 俺のことはリックでいいよ」

「私もソフィアでいいです」

「そうなのか? じゃあ、リック、ソフィアよろしくなのだ!」


 ニコッと笑ったポロンが嬉しそうで頭を下げた。ソフィアとリックは互いに顔を見ながら、ほほ笑んで新たに一緒になった仲間を歓迎するのだった。

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