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第111話 血に染まる試合会場

「まずいぞ…… ムスタフが解き放たれたらブリジットさんやミャンミャン達が……」


 周囲の観客は何が起きているのか、わからず困惑していた。近くで警備をしていた、ローズガーデンの兵士がリックに近づいてくる。ズワロフの仲間かもしれないと近づく兵士にリックは身構えた。


「あの!?」


 リックはとっさに剣を抜いて兵士に向ける。


「わわっ! すいません。僕たちは何もしません」


 両手を上にあげ首を大きく横に振って、リックに無抵抗をアピールする兵士。しかし、会場にいる兵士達は、ズワロフの命令を聞いており、彼の言うことを信じられないリックは兵士に問いかける。


「ほんとうか? あそこに居るのは仲間では?」

「はい。仲間です。あそこにいるのは今日の地下牢の警備を担当していた兵士です」

「やっぱり…… ここの防衛隊の兵士はブリジットさんを憎んでるだろ? だからお前たちもズワロフの命令で……」

「そっそんな事はありません。僕たちは逆です! ズワロフ隊長の方を信用してませんでした。ブリジットさんが来てから囚人も大人しくなっていて、むしろ僕たちは感謝をしてたくらいなんです」

「じゃあ、なんであそこの人たちはズワロフの味方をしてるんだ!?」

「わかりません。僕達もみんながなんで? あんなことしてるか……」


 兵士は悩んでうつむいてしまった。ブリジットは兵士達からは慕われているみたいだ。


「おい!? あれ?」


 観客がさらにどよめいて行く。ズワロフがムスタフの手の鎖を外し終わり。今にも囚人に襲い掛かろうとしているのを、首輪に着けた鎖で数人がかりで押さえつけていた。

 観客は悲鳴にみたいな声を上げている。その様子を満面の笑みでみていたズワロフは、囚人の前に歩いていき大きく手を広げて話を始めた。


「さて、囚人諸君! 私は今いいことを思いついた! 君達が簡単に殺されたらここに武闘大会を見に来てるお客様はつまらんだろう? 諸君らもただ殺されるだけじゃつまらんだろう?」


 ズワロフが囚人に、槍を突き付けていいた兵士達に、手で下がるように指示をした。兵士達はゆっくりと後ろに下がっていく。


「武器は没収しとらんからな。ムスタフに抵抗しても構わんぞ? いや…… ムスタフと闘うんだ! そして観客と私を楽しませろ! さぁ! ムスタフと殺し合うがいい!」


 笑ってズワロフは囚人たちにムスタフと戦えという。囚人たちはズワロフを睨みつけていた。


「うがああああああああああああああああ!!!!」

「うわああ!」

「ひぃ!」


 興奮したムスタフが兵士を吹き飛ばして、瞬時に斧を取ると囚人に一直線に向かっていく。慌ててズワロフは逃げ出した、ムスタフはズワロフには目もくれず一直線に囚人へと駆けていく。


「うがああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「うぎゃああ!!!」


 ムスタフは斧で一人の囚人を切りつけた。斧は男の囚人の首に命中した。斧が振り抜かれて血が吹き出してゴロっと首が落ちた。血を噴き出しながら首のないからだがゆっくりと倒れる。斧に着いた血をムスタフは顔を斜めにして、じっくりと眺めながら舌をだしてる。


「「「「うおああああああああああああああ」」」」」

「「「「きゃあああああああああああああああああ!!!」」」」


 会場の光景を見た観客達からは、歓声と悲鳴が同時に上がる。事態の異常を察知して、席を立って駆け足で、逃げようとする客も出始めていた。リックは会場の光景を見て、ミャンミャンを助けに行こうと、兵士に別に入り口がないか尋ねる。


「会場に他に出入り口はないか?」

「囚人用の地下通路があります」

「そうか! わかった。行くよ。ソフィア!」

「はい」


 リックとソフィアは二人で駆けだす。すぐにリックは何かを思い出して振り返る。


「あっ! 観客の避難をお願いします。後、王都へ連絡も」

「はい。わかりました。お願いします! 町長を…… ブリジッドさんを助けてください」


 親指を立ててリックは、兵士に答えると前を向いて、地下へと向かって駆け出していくのであった。観客はまだ試合会場で起きていることが信じられないといった感じではあったが、一部の人間が席を立ったのでみんな入り口に駆けだし始めた。

 会場を警備していた兵士達が落ち着くようになだめている。


「通してください! 兵士です」

「開けてください!」


 リック達は持ち場から、試合会場の近くの通路に向かう。人混みの中をなんとか階段を下に下りて行く。試合会場は楕円形をしており、周囲は堀みたいな深い穴が掘られている。町から地下に通路を通して試合会場につながっており、一番したの客席の脇に階段があり、地下通路につながっている。


「こら! わらわが頭にのっとるんじゃぞ。優しく歩かんか!」

「わっわっ! ちょっと大人しくしてよ」


 頭の上に乗っているハクハクが暴れ、リックは片手でハクハクを押させながら、一番下の客席へとやってきた。試合会場から囚人たちの声が聞こえてくる。


「クソ! こんなやつに! みんなー! 相手は一人だ! やっちまえ!」

「おおー!」


 一斉に囚人たちも武器を構えてムスタフにかかっていく。だが、力も速さもムスタフの方が上のようで、彼が斧を振り回して周囲の人間を次々に切り裂いていく。

 真ん中から縦に真っ二つに切り裂かれたり、手や足を切り払われた死体が、ムスタフの足元に転がっていく。


「ひぇぇ! こいつは化け物だ! 逃げろ!」


 威勢よくムスタフに向かっていった囚人達は返り討ちにあい、蜘蛛の子をちらすように試合会場を逃げ惑っている。逃げ惑う囚人を追いかけて背中から容赦なく斧で切りつけるムスタフ。


「ひどいです…… リック……」

「うん。ソフィア! 急ぐよ! ミャンミャンを助けないと」

「はい」


 会場の光景から目をはなし真顔で、リックは地下へ階段を目指して走っていく。ソフィアは彼に続くのだった。


「キャー」


 ムスタフが若く褐色肌の、女性の囚人の手を掴んで、引きずっていく。


「いや…… やめて」

「うがぁーー!」


 斧を地面において女性の両手を右手で掴んで抵抗できなくした、ムスタフは舌で女性の顔をなめて、もうの左手で女性の服を切り裂いた。囚人の褐色した、乳房がさらけ出されると、ムスタフは興奮したように腰を前後に動こしはじめる。


「おい! ムスタフ! やるのは後にして先に男を全員片付けろ」


 ムスタフはズワロフの方に一瞥をくれると、彼は自分がつながれていた鎖に、女性の囚人を拘束すると次の囚人に向かっていく。


「はっはっは! そうだ、ちゃんと捕まえておけ、女は後で楽しむんだからな! どうだ? 町長さんあなたもご一緒に楽しむというのは?」

「汚らわしい手で触らないで!」


 嫌らしい顔でブリジットの胸をもむズワロフ、ブリジットは顔をめがけて彼女は唾を吐いた。


「クッ! 貴様! 自分の立場をわかってるのか!」


 バシーンという音がしてブリジットの顔をズワロフが引っぱたいた。ズワロフはブリジッドの胸元に手をかけて制服を引きちぎる。制服が破かれてブリジットの下着があらわになる。


「ほほぅ。良い体してるじゃないか。後でガキをもう一人、俺が仕込んでやるから待ってろよ」

「クッ……」


 笑いながらズワロフはブリジットの体をべたべたと触り続ける。最後に胸を力強くつまむ、ブリジットは顔を歪ませるのだった。


「リックゥ! ソフィアゥ! 何が起きてるんだい?」


 リックとソフィアが地下通路へ到達し、階段を駆け下りようとすると、後ろからリック達を呼ぶ声がする。振り返ると混雑した通路を避けて、観客席をヒョイヒョイ飛び越えてきたココが、リック達の前へとやってきた。


「ココ! ごめん。俺達にもわからないんだ。でも、あいつをとめないと」

「わかったー。あたいも協力するよ」


 ココと合流したリック達は、三人で地下通路に下りて、入場口に向かう。薄い黄色い石造りの壁で薄暗く、少し湿った空気がリック達の頬を撫でる。


「あれは?」


 会場の扉の前に光るピンク色の魔法障壁が見えた。


「地下まで魔法障壁がありますね」

「ソフィア! この魔法障壁は壊せそう?」

「わからないです。でも、やってみます!」


 ソフィアが魔法障壁に手を向けて目をつむる。彼女の口がかすかに動き何かの呪文を唱える。白い光がソフィアの手に、集約されていき、魔法障壁に向かって放たれた。

 丸い小さな白い光が、ピンク色の魔法障壁に当たり、バシュッという音がする。ソフィアの放った光は斜め上に弾かれて、天井に向かっていき消えていった。


「ダメですね。私の魔力じゃこわせません。多分、イーノフさんなら壊せるかもしれませんけど」

「でも、ムスタフが暴れてるのにイーノフさんが来るまで待てないよ」

「うーん。どこかに抜け道でもあればあたいが中にはるんだけどねぇ」


 ココが魔法障壁を見ながら悔しそうにつぶやく。試合会場に入る手段がないリックは必死に悩むのだった。


「あゎゎゎ。リック様ー!」

「ココお姉ちゃーん!」


 タンタンの手を引いて、シーリカがリック達の元へとやってきた。


「あゎゎゎ。ココ! ひどいですよ。私達を置いて先にいってしまうなんて」

「ごめんねぇ、混んでたし二人を危険に巻き込むわけには」

「僕はココお姉ちゃんと一緒が良い」

「わっ! タンタン!? 急にやめてよぅ!」


 タンタンがココに抱き着く。リックはタンタン達のことを気にかけもせず、悔しそうに魔法障壁を見つめている。リックの横にシーリカがやってきた。

 

「リック様? 何かお困りですか?」

「うん。この魔法障壁がソフィアでも破壊できなくてこまっていたんです」

「あゎゎゎ。ソフィアさんが!? お任せください。ここは私が!」

「シーリカ様? 何をするつもりですか?」

「あゎゎ。あんな魔法障壁くらい! 私の祈りの力で吹き飛ばしてやりますわ!」


 自信満々のシーリカが、障壁の前に膝まずいて、祈りを捧げ始めた。


「おぉ!」


 リックが驚きの声をあげた、シーリカが祈り始めてすぐに薄い、ピンク色の壁がドンドン濃い色になっていったのだ。しかし…… リックの横に立っていた、ソフィアが青い顔をして慌ててシーリカの肩をつかんだ。


「シーリカ様やめてください。障壁の色が濃くなってどんどんと強固な魔法障壁になってますよ」

「あゎゎゎ?! どうして?」

「もう…… シーリカやめなよぅ」

「あゎゎ……」


 ココにも止められて、残念そうな顔をするシーリカだった。

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