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放課後×パーティー ~ サークル活動から始める異世界生活 ~  作者: 油布 浩明
第2話 お酒はハタチになってから
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英雄の銅像

    ※  ※  ※


「御子神くん、行くよ」

 僕の手をぱっとはなして。山神先輩は、まるで何事もなかったように歩き始めた。


 そこは薄暗くて目立たない路地だった。通行人の姿はない。役目を終えると、魔法陣は折り畳まれて新海先輩のバッグの中にしまわれた。


 路地を抜けると、そこは何千人も集まれそうな大きな広場だった。敷きつめられた石畳の雰囲気は昨日、初めて行った異世界の町に似ている。

 広場は行き交う人でにぎわっていた。黒髪の人間が多いけれど、金髪や赤い髪の人もいる。会長が言うようにここは国際的な町なんだろう。


「ルフロニア王国の首都ボルロイや。世界最大の都市っちゅうことになっとるけど、人口は三十万人もあらへん。この世界の九割はモンスターと魔物のすみかやからな。世界中の人間を全部たしても、せいぜい一億人いるかどうかや」

 会長が解説してくれた。


「さてと。歓迎会をやるお店が開くんは、日が落ちてからや。それまでは一度、解散して自由行動にするで。まあこの町の位置やと、日没まではだいたい一時間ちょっとやな。御子神くんはまだ慣れんやろうから、うちがつきそうたるよ」


「山神先輩は……」

 僕は思わず山神先輩を見た。なんとなく、今回も一緒にいてくれるような気がしていた。


「ゴメンね、御子神くん。私は一人でちょっと買いたいものがあるんだ。翔子といれば大丈夫だから。また、歓迎会でね」


「任せとき。うちが責任もって面倒みたる」

 会長は自分の胸をポンとたたいた。

 うわっ、すごい。胸がぷるんと揺れてる。


 僕はあわてて山神先輩の方を見た。別の方向にもう歩き始めてる。助かった。気づいていない。会長の胸に見とれていたのは、永遠の秘密にしよう。


「さあ、そうと決まったらどこへでも案内するで。でも、これから宴会やっちゅうのに食べ物の店はあかんな。武器とか装備品を買う店は、別の日にゆっくり案内する予定やし……」


「あれは、何なんです」

 会長の胸元から、視線をやっと他にそらしたとき。僕は広場の中央近くに立っている大きな銅像に気づいた。


「まずは観光案内っちゅうわけやな。ええやろ。とりあえずもう少し、近づくで」


 観光名所になっているらしく、その像のまわりには見物人がいっぱいいた。立ち止まってじっと見つめている人も多い。

 高さが二メートルはある大きな石の台座があって、ブロンズ製の戦士の像はその上に載っていた。馬に乗り、剣を高くかかげた凛々りりしい男性の像は、ざっと四メートルはある。


 見物人の一人ははその像を指差し、歓声を上げていた。別の者は手を合わせ、静かに祈っている。台座にすがりつき、涙を流している老夫婦までいた。


「あれ?」

 僕はなぜか違和感を覚えた。


 初めて見るはずだ。ここに来たのも初めてだから、当たり前だ。でも、なんとなく見覚えがあるような気がする。


「見たような顔やろ。御子神くんも昨日、会ったはずやで」


「あれっ、先生だ……」


「世界を三回も救えば、銅像くらいにはなるわな。この世界じゃあ、先生はもう神様みたいなもんや。夏の終わりには、先生の銅像や木の人形にトマトを投げつける祭まであるんやで」


「なんでトマトなんですか」

 僕は思わず突っこんだ。


「先生が魔王との戦いで瀕死の重傷を負ったときの話や。魔族の下っ端から、生卵やら腐ったトマトなんかを投げつけられたことがあったんや。

 そのとき先生は自分の体についたトマトの汁を見て、こんなんは俺の血やない。まだ戦えると思ったらしいんやな。本物の血も混ざってたんやけど、先生はそう思いこんで立ち上がり、魔族をたたきのめしたそうや。どうや、すごいやろう」


 すごい。確かにすごいけど、ちょっとバカみたいだ。


「それ、本当の話なんですか」


「ほんまらしいよ。先生とか魔王のレベルだと、もう意志の力の勝負や。お互いに魔法で回復でも何でもできるんやからな。心が折れた方が負けっちゅうことや。ちなみに先生は、今ではトマトが大嫌いや……」


 それはわかる。毎年、祭のたびに自分に向かって無数のトマトが投げつけられたら、誰だってトラウマになる。


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