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放課後×パーティー ~ サークル活動から始める異世界生活 ~  作者: 油布 浩明
第6話 御子神くんの勇気
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ユメルの願い

 ユメルと合流したのは最初に出会った場所。あの、勇者ラフロイの銅像の前だった。

 迎えに行ったのは僕と会長、山神先輩の三人。ゴーレムくんと新海先輩は魔法陣で到着した目立たない路地に残っている。


 ユメルは先週、オークを倒したお金で買った戦闘用のスーツと、大きなナイフを身に付けていた。会長のように全身ぴったりとしたレオタードみたいなスーツ。金髪碧眼の美少女だから、すごく目立つ。


「御子神さん、山神さん、会長さん……」

 この順番で呼んでくれるのはユメルだけだ。朝から山神先輩のオマケみたいな扱いだったから、なんだか嬉しい。


 ユメルの側には二十を少し越えたくらいの女性が立っていた。見覚えがある。ユメルの面倒を見てくれている人だ。


「あの、こんにちは。覚えてますか。私、レオナといいます」


「もちろんや。それより、なんかあったんちゃう? 顔が青いで」

 会長は、ユメルとレオナさんの顔を交互に見た。確かに二人とも変だ。特にレオナさんは死んだ人みたいに血の気がない。


「お願いしても、いいですか」

 ユメルが思いきったように口を開いた。


「何でも言うてええよ。とりあえず聞くだけは聞いたる」


「ついさっき、連絡があったんです。レオナ姉さんのお母さんから。姉さんの娘が、ゴブリンにさらわれたって……。私、レオナ姉さんのために助けに行きたい。魔法陣なら、すぐに行けるんですよね」


「まあ、待つんや。順に説明してもらわんとわからん。まずは状況からや。レオナさんの村っちゅうのはどこなんや」

 会長はレオナさんの方を向いた。


「ここから馬で三日くらい離れたゴドルっていう小さな村です。私はそこで生まれました。大きな町に憧れて、一人で勝手に家を出て……。それで、どうにかなるわけもないのに。今、考えれば本当に世間知らずだったと思います」


 レオナさんは自嘲気味に言葉を継いだ。

「すぐに悪い男にだまされて、その男の子どもを妊娠して……。いつの間にか借金を背負わされて。気がついたときには娼婦になっていました。その時の子どもはお母さんに預けて、育ててもらってます。お金を貯めて、いつかは村に帰るつもりでした」


「しんどかったな」

 会長は優しくレオナさんの腕をたたいた。こういう時の会長を見ていると、レオナさんよりずっと年下だってことを忘れてしまう。


「最近、ゴブリンの群れが近くの森に住みつくようになったって。危ないとは聞いていたんです。貧しい村だから結界に使う魔法石も不足気味で、夜しか十分に守れてなかったし。でも、モンスターが柵を乗りこえてくるなんて思ってもみませんでした」


「それは甘いわ。ゴブリンちゅうのは、カラスみたいな生き物やからな。すぐに学習されるで。こっちが弱いとみれば、いくらでも大胆になるんや」


「さっき、お母さんが想い石で教えてくれたんです。ゴブリンの大群が村に侵入してきて、たくさん家畜が奪われたって。それと子どもが六人もいなくなって、その中にキャミルがいるって……」


「それだけやられて、村の人は黙って見てたんですか」

 僕にはちょっと納得がいかなかった。レオナさんは首を横に振った。


「男の人が戦って三匹は倒したらしいわ。でも、その代わりに七人も殺されたそうよ。爪でやられて、死にかけている人もまだいるって言ってたわ」


「それなら、何より時間が貴重やな。話の続きは後や。これから一緒にその村に行くで。その石がレオナさんのお母さんとつながっていれば、そこをたどって転送魔法が使える。まずは救える命を救うことや」


「でも私は、お店が外出許可なんてくれないから……」


「後でうちが話をつけたる。なあに、あそこのオーナーならうちのファンやから。うちが頼めばイチコロや。任せとけばええ」


 たぶんファンじゃなくて、嫌われてると思いますけど。二度と顔を見たくないとか言ってましたけど。どこからそういう発想が出てくるんでしょうか。


 僕らは新海先輩とゴーレムくんの待つ路地に急いだ。

 やせっぽちの人形だったゴーレムくんは魔力で膨らみ、岩石でできたマッチョな大男になっていた。身長は二メートルくらい。腕も先輩たちのウエストくらいある。 

 路地で待っていたゴーレムくんに二人とも怯えていたけど。優しい目を見たら安心したようだった。


「由美、行き先変更や。レオナさんの想い石をたぐって転送するんや。人の命がかかっとる。説明は後でもええやろ」


 新海先輩は大きくうなずいた。

 レオナさんが母親との連絡に使っていた想い石を受けとると、すぐに呪文の詠唱を始める。


「狭いけど、我慢するんやで。なんならゴーレムくんに抱きついて、ぶら下がってもええ。魔方陣からあふれたら置いてきぼりやからな」


「はい」


 ユメルとレオナさんは必死にゴーレムくんにしがみついた。僕の体にも、あちこちと微妙な部分が当たる。

 綺麗な女の人ばっかりだ。不謹慎かもしれないけど。こういうのって、ハーレムっていうんだろうか……。



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