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放課後×パーティー ~ サークル活動から始める異世界生活 ~  作者: 油布 浩明
第5話 週末のパーティー
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乙女の想い

 日が暮れて星が出る頃。僕と山神先輩はガラスの壁に近づいて、部屋の中から夜景を眺めた。世界は宝石みたいな小さい光であふれていた。そのひとつひとつに意味があり、生活がある。


 僕は山神先輩の手を握った。先輩からじゃなく、僕の方から。小さいことだけど、それが僕の進歩だ。そしていつか、先輩のすべてを受けとめられるような男になりたい。


「御子神くん、綺麗だね」


「先輩ほどじゃ、ないですけど……」


 山神先輩は僕の方を向いて微笑んだ。本当に夜景なんかより、ずっといい。

「ありがとう。嬉しいわ。私はそういうベタなセリフも嫌いじゃないけど、他の女の子に言ったらダメだよ」


「はい」


「また、デートしようね」


「はい……」

 僕は幸せだった。

 最初のプランでは大きなビルの展望デッキで夜景を眺めるつもりだったけど、それよりもずっといい。世界を独り占めにしているみたいで、すごく贅沢だ。


「もうなんやねん、見境ないんやから。恥ずかしゅうないの」


 突然、会長が怒鳴り始めたから。僕たちはあわててみんなのいる方に戻った。


「まあ、男の人がエッチなのは知ってますから。お尻くらいなら、別に私は気にしません」


 どうやら先生が、ユメルのお尻を触ったらしい。ユメルは親に捨てられて、それからは娼婦たちに育てられたようなものだったから。セクハラには、わりと寛容みたいだった。


 先生は必死に言い訳しようとしていた。

「いや、そうじゃないんだ。この子の魔力の流れがどうかなって。ほら、新しい仲間の実力を知りたいじゃないか」


「お尻に魔力は流れてへん」


「いや、だから体術の基本なんだよ。どれだけ鍛えてるのか。お尻のところの筋肉を見ればわかるんだ」


「触る必要はあらへん」

 冷たく言い放たれ、先生は追いつめられた。


「わかった、悪かった。酔ってました。ごめんなさい」


 あっさり認めちゃうんだ。まあ、会長をごまかせるわけないけど。


「伝説の勇者が何しとんのや。恥ずかしいわ。うちには会長として、パーティーのみんなを守る義務があるんや。お触りは絶対にあかん。ただ、どうしてもっちゅうなら……」


 会長は、急に女の子の顔になった。途中から声が少し小さくなる。

「どうしても我慢できへんのやったら、うちが犠牲になったるわ。胸は弱いからダメやけど、お尻くらいなら触ってもええよ」


「そう言われてもなあ。ああそうだ、御子神くんならわかるだろう」


 僕は身構えた。先生が僕に同意を求めるときは、だいたいろくなことじゃない。


「自分からお尻を触ってくれって言われても、えないよな。それに翔子くんじゃ、あまり新鮮な気がしないし……」


 いっちゃった。

 いつもながら最低だ。

 今までのいい話がぜんぶ台無しだ。もうどうなっても知らない。


「パス……」


 新海先輩が、会長に何か投げた。僕がサラダに使った残りのトマトだ。熟れ過ぎてたから、後でスープにでもしようと思ってたんだ。


 会長がトマトをつかんで、顔の前で先生に見せつけた。恐怖に歪んだ先生の顔に、会長はそのままトマトをグチャリと押しつけた。

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