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放課後×パーティー ~ サークル活動から始める異世界生活 ~  作者: 油布 浩明
第3話 生涯の戦友になれる剣
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気に入った剣

     ※  ※  ※


「まずは、剣を売っている店でええかな。御子神くんはそっちに興味があるんやろう。最初に言っとくけど、正札で買おうとしたらあかんで。物にもよるけど。うちが半額近くには値切ったるからな」


「よろしくお願いします」

 僕は素直にいった。


 会長は、人をおちょくって面白がるようなところもあるけど。それ以外では、本当にお世話になっている。クラスメートの斉藤じゃないけれど、ファンが多いっていうのも納得だ。


 僕らは剣を模様にしたような、イラスト入りの大きな看板がかかった店に入った。入り口はわざと狭くなっていて、店員からボディーチェックを受けるようになっている。

 店の外に商品を持ち出されないための対策らしい。


 僕は自分の剣を預けて、預り証をもらった。赤いスタンプみたいなものが押してある。看板のイラストと同じだ。この店の商標みたいなものなのかもしれない。


 店の中はかなりの広さだった。三段に別れた棚みたいなものが何列もあって、そこに種類や値段別に無数の剣が並べられている。

 棚の列の前には、それぞれ一つずつ。木でできた人形が置かれていた。僕らの世界でいうマネキンだ。鎧なんかの装備が着せてあり、それぞれが剣を身につけている。


「まず、剣の種類やな。うちらが相手をするのはモンスターや。小さいのもいれば大きいのもおる。斬り払うのも大事やが、いざというときに突いて使えるもんがええ。切っ先の鋭い両刃の剣が、うちのおすすめや」


「そうですね」

 僕はうなずいた。


 だいたい、僕が考えていたことと同じだった。斬り払うより突く方が何倍も威力がある。特に堅い鱗みたいなものを持っているモンスターには、突くしか手段がない。もっともこのあたりは、ゲームからの想像だ。僕はまだ、スライムしか倒したことがない。


「そうすると、この辺あたりが候補やな。御子神くん、よう見とき。剣は相性が大事や。理屈より、心にグッとくるのがええ。うちは向こうに行っとるから、いいのがあったら考えといてな」

 会長はそれだけいうと、少し離れた。


 僕にじっくり考えて欲しいと思ったんだろう。山神先輩も新海先輩も、そっとしておいてくれた。僕は刀剣に囲まれて、不思議なくらい静かな気持ちになっていた。


 切れ味が素晴らしい。頑丈だ、これなら折れない。思ったより軽い。僕の間合いにちょうどいい。

 いろいろ考えると、なかなか決まらなかった。いいと思う剣の値段は千ゴルダくらいが多い。会長は半値くらいには値切ってくれるといってたけど。それが本当に高いのか安いのか、僕にはまるでわからなかった。


 決めかねて先輩たちの意見を聞こうと思ったとき。僕は心に電流が走ったような気がした。


 恋みたいな気持ち。いや、これは間違いなく恋だ。


 すらりとした刀身は百センチくらい。両刃の剣なのに、日本刀みたいな波紋がある。それが僕にはゾクッとするほど美しく感じられた。しっかりとした重さもあったが、優雅な印象は壊れていない。なにより僕を待っていたような、不思議な魅力を感じる。


 僕は剣を手に取った。その重さを、僕はなぜだかちょうどいいと思った。軽く振ってみると、風を切るようなヒュンという音がした。鋼の剣をこんなに簡単に振ることができるのは魔力のせいだと思うけど。なんだか剣そのものが助けてくれているような気がしていた。


「ほう、決まったようやな」

 会長は、僕の様子に気づいたようだった。


「流石はうちの後輩や。これは相当な業物やで。魔力をこめてしっかりと鍛えとる」


「でも、予算オーバーですよ。防具も買わないといけないのに……」

 値札には三千ゴルダと書いてある。僕の所持金は二千ゴルダだ。あと、千ゴルダも足りない。


「まあ、うちに任せとき。必ず予算以内で買うてきたる。隣で物欲しそうにしとると足元を見られるから、他の剣でも眺めとるとええ。ここは買取りもしてるから、そっちの見学をしとくのもええかもな」


「御子神くん、行きましょう」

 山神先輩が僕を誘ってくれた。新海先輩はさっきから別の剣を見つめたまま動かないから、置いていくことにした。あの人にはあんまり時間の感覚がないみたいだ。

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