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放課後×パーティー ~ サークル活動から始める異世界生活 ~  作者: 油布 浩明
第3話 生涯の戦友になれる剣
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ラブレター

「御子神、RPG同好会に入ったんだって」

 始業前。まだ眠い目をこすって教室に入ると、すぐにクラスメートの斉藤が話しかけてきた。


「ああ、まあな。うん」

 斉藤は中学からの腐れ縁だった。休日は一緒に遊びに行くこともある。まあ、悪い奴じゃない。


「すげえなあ。俺も気になって、部室に行ってみたんだけど。鍵がかかっててさ。誰かがいるような気配もなかったぜ」


 そりゃあそうだ。その頃、僕らは異世界にいた。


「まあ、いいや。それはそうと。RPG同好会っていえば、あの酒井先輩と一緒なんだろう。俺、ファンなんだ。いいよなあ、あの先輩。あのスタイル。グラビアにだって、あんな人いないぜ」


「ああ」

 まったく同感だった。他に好きな人がいる僕でも、先輩と会うたびにドキリとする。

 酒井先輩は僕の同好会の会長だった。

 女性としてはかなり背が高く、なぜかちょっと違和感のある大阪弁をしゃべる。芸能人じゃないのが不思議なくらいの美少女だ。


「それに、知ってるか。酒井先輩ってすごく強いんだ。集団でいじめられていたクラスメートを助けたり、からんできた不良を撃退したり。二年生の間じゃ、スーパーヒロインみたいでさ。特に女子の間じゃ、すごい人気があるんだってよ」


「そうなんだ」

 わざと関心なさそうに返事をしたが、心の中では興味津々だった。僕はまだ、先輩たちの日常をあまり知らない。


 面倒見のいい人だから、困っている人を見過ごしたりはできないんだろう。ほめられているのは先輩なのに、なんとなく自分のことのように誇らしく感じる。


「おまえは俺の親友だよな」


「まあな」


「よし。そこで相談だ。一年生でただひとり選ばれた、幸運な男子である御子神謙次様に頼むよ。一生のお願いだ。酒井先輩にこれ。渡してくれないか。もちろんタダとはいわない。渡してくれたら恩に着る。ハンバーガーでもお好み焼きでも何でもおごるぜ。学校の中じゃ、先輩のファンががっちりガードしてて近づけないんだ。お前だけが頼りなんだよ」


 斉藤は僕に白い封筒を押しつけた。ハートの形をしたシールがはってある。


「なんだ、ラブレターかよ」


「ファンレターみたいなもんだよ。俺だってまともにつきあえるなんて思ってないさ。ただ、自分の気持ちを伝えたいだけなんだ。いいじゃないか。嫌なら、捨ててくれてもいいんだ」


 結局、僕は斉藤に手紙を押しつけられてしまった。不思議なことに、サークルの中で酒井先輩がどうしているかとか。僕がどうして入会できたのかなんて質問は一切されなかった。


 RPG同好会の本当の活動内容は、僕たち会員しか知らない。みんなはただ、漠然と名前どおりに部室にこもってゲームでもしているんだろうと思っている。

 ただ、それって変な話だ。


 美少女と一緒にそんなことで時間を過ごせるサークルがあったら、誰だって入りたいはずだ。僕だけがなぜ入会できたのか。普通なら絶対に疑問に思う。


 何かの魔法がかかっているんだ。本当に自然に。サークルの活動の中身は、なんとなく話題にならないようになっている。


 始業のチャイムが鳴り、僕は授業に集中しなければならなくなった。サークル活動を続けるためにも、授業はちゃんと受けよう。順番はちょっと変だけど。僕は真剣にそう思っていた。

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