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ダンジョンメンタルクリニック

ドキッ! ニューハーフだらけの船上お花見バトル!! ~ポロリは自粛~

作者: 悠木 凛

「えー、本日は、他意田肉丸にご乗船いただき、ありがとうございます。皆様には、これから約一時間半の船旅を、河岸の桜とおいしいお酒でたっぷりお楽しみいただきたいと思います。わたくし、案内係のケビン・コスナーでございます。どうぞよろしくお願いいたします」


 うららかな春の日曜日。私たちは、花見の名所である川を屋形船で遊覧する、お花見クルーズの船上にいた。


「やだー! ケビン、ちょっとイイ男じゃない」


 さっそくタマエさんが茶々を入れると、メルママが「そう? どっちかっていうと、ニコラス・ケイジじゃない? 頭髪的な意味で」と、まぜっかえした。


 ケビンは、そんないじりは慣れっこのようで「はい、それでは出航前に、大切なお知らせがございます」と、アナウンスを続けた。


「安全第一の運航を心がけておりますが、万一の巨大サメの襲撃や氷山との衝突に備え、当船には救命胴衣の用意がございます。有事の際には、迅速にこちらの救命胴衣を装着し」


 ケビンはそう言うと、実際に救命胴衣を着て見せた。


「決してあきらめないと約束の上、次回の旅行の際には飛行機を使うと誓ってください」


 船上の客からは微妙な笑いが起き、タマエさんは「いやー! ケビンとの熱い恋に溺れて救命胴衣が必要になっちゃう!」と叫んだ。


「あのさあ、エリカちゃん」


先輩ニューハーフのリエさんが、おっぱいを揺すりながら言った。


「シリコンバッグって、水に浮くかなぁ」


 私は「どうでしょうねぇ」とあいまいな返事をし、「救命胴衣はつけましょうね」と言った。


   ※※※


「ねぇねぇマーサ、舳先でアレやってよ、私が腕広げて立つから」


 飲み放題のビールで気持ちよくなったらしいナナさんが、ボクっ子ニューハーフのマーサさんの手を取って言った。


「えー、もうやだよ〜」


 マーサさんは、乗船直後から先輩ニューハーフのお姉さんたちにディカプリオ役を強要されていた。


「だって〜 マーサちゃんが、一番絵になるんだもん〜」


 普段は大人の余裕を見せているナナさんが、珍しく後輩にからんでいた。


「しょうがないなぁ……」


 マーサさんは根負けして「これで最後だからね」と言い、舳先で両手を広げて立つナナさんを、後ろから抱きしめた。


 私はといえば、ナナさんから渡されたスマホで二人を撮影するカメラマンとなり、細かすぎる演出に辟易していた。


   ※※※


「いや〜、やっぱり桜はいいわねぇ」


 お花見クルーズを終え、屋形船から降りたリエさんが晴ればれした顔で言う。


「えー、一体いつの間にお花見したんですか?」


 私の記憶には、タイタニックごっことビールを飲んだことしか残っていない。あと、ケビンと。


「フッフッフ、エリカちゃん、まだまだね」


 リエさんが人差し指を左右に振りながら「お花見はね、心の目でするのよ。桜は日本人の心なのよ。わかる?」と言った。


 私は、「ええ、リエさんが酔っ払ってることがよくわかりました」と答えた。






拙著『医学部に受かったけど、親にニューハーフバレして勘当されたので、ショーパブで働いて学費稼ぐ。』の中では語られなかったエピソードです。

興味を持って頂けましたら、ぜひそちらもご覧下さい。

どうぞよろしくお願いいたします。


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