episode01~そして、転生へ~
『Oh~yeah!!
そうなんだよ、ケロちゃんを倒した【女勇者】ちゃんは…あの後、他の勇者と共に別の【星獣】も討伐、撃破して【向こうの世界】に人族の平和もたらしたんだお。
そんで向こうに就いて……いや、元々いた【双子の女神】に【地球】に帰られるようにお願いしたみたいなのよ。
んまぁ、あの双子が そんな要求を飲むはずもないのは、ケロちゃんもしているしょっ。
女勇者達は傀儡になって…… まぁ、見ていられなくて マキナちゃんは ちょこっと本気でヤっちまっただぉ。
星はバラバラに砕けちゃったけど、運良く勇者達の星【地球】にやって来れたんだぉ。
ついでに勇者達の元に戻して、アレコレしたんだぉ。
でも、残念だけど【勇者】としての力は失っているんだお』
アイドル女神(笑)のマキナは小さな小瓶(目薬)を両手に握りしめ、オヨヨ…といった素振りで泣き崩れる(ただし、実際は泣いているフリ)。
『創造主の言ってる事は本当よ。
本当は生者に対して、失礼なのだけれども――
私も彼女の魂の記憶を見ましたわ。
彼女は勇者の力を失っている。
まぁ…こちらでは無用の長物ですし、邪魔なたげですわ』
06号もマキナに同意するようにケルベロスに告げる。
ケルベロスに『絶望』の二文字が鈍痛となり、そしてフツフツと怒りを滾たぎらせた。
“……2柱が、そう言うのならば…それは仕方ないと割り切りたいが……実に惜しいッ!!
何故、力を棄てた? 勇者よ、実に愚かだ!”
魂が火の玉のように熱く輝かせ、ケルベロスは吠えた。
『それは仕方ないんだお?
【こちらの世界】は【向こうの世界】に比べて争いの少ない平和な世界なんだお。
それだけに勇者の力は重荷になるんだお?』
“なんと……争いの少ない平和な世界だとッ!!
それでは、まるで【理想郷】ではないか、ぐぬぬ…”
余りの内容に怒りは失せ、心の震えと連動し魂を弱々しく酩酊させるケルベロス
『……でも、どうしても闘いというのなら。
ケロやんに闘いの場を用意してあげようだお!』
『創造主、何やら下らない事をお考えで?
今は各国家に対して協力体制で進めている【G.C.O計画】に彼も参加させるつもりですか!』
マキナの説明に何故か、その愛くるしい顔に驚愕を浮かべた06号がマキナに詰め寄った。
『チッチッチッ……マキナちゃん、甘いのだお。
ケロやんには、ただ人間に転生してもらうだけ…
【G.C.O計画】は私や【あの子】達の魂を……それに各国家の技術者達で進めなきゃイケないんだお。
………という訳で、ケロやん《人間》に転生しないかな?
新たな生を楽しんでみないかだぉ、もちろん【勇者ちゃん】とも、闘えるように協力はするよ』
ケルベロス自身、人間への転生に若干の不安が残るものの…やはり、【勇者】とまた闘える事への期待に魂が強く輝くのだった。
“もし、その望みが叶うというのならば……喜んで転生させてもらおう!”
『Ok! Nice answerだよ、ケロやん。
これで【G.C.O計画】も捗どぅーる』
『……本当に宜よろしいのですか?』
06号の問いに肯定の意味で魂を光らせるケルベロス
‘再び、彼女と闘える…次は負けやしない!’と
気合いを入れる。
『さぁ~~て、ケロやんのために‘ちょちょい’と転生先に細工でもしますか。
あっケロやん、色々聞きたいことあるんだお?』
天照の格好が異国の装束から白衣の女医さん衣装に変わっていたが、残念
ケルベロスは獣である故にフェチが解らないのであった。
ケルベロスはマキナの質問に ただ淡々と応えていった。
『全く……つくづく余計な事しかしないわね。
でも、残念だったわね創造主ぅ(笑)』
『ムムム……』
マキナがスルーされた事にニヤニヤ笑顔の06号が微笑む。
“ふむ…我は覚悟が出来た、マキナよ!
是非とも、転生を…よろしく頼む”
ようやく転生できるとあって、喜び全開のケルベロス
『とほほのほぉ~~だお(;´д`)
おっ、Ok…… ケロちゃん!
ではでは、一名様、転生ご案内ぃ~~~』
マキナは右手に【ケルベロス】の魂を掬うと閻魔の前から消え去った。
『あっ、えっ、あの……
…………ふぅ、いきなり居なくなるなんて、せめて別れの言葉くらい言わせ――
(…フルフル…)いえ、仕方ないですわね、創造主ですもの。
たがら祈りましょう、あの【小さな獣】に幸あらん事を』
06号は去って行った【魂】に短く祈ると、【方舟】の一員としての責務を行うため部屋を出るのだった。