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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第2章 激動
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73話 第7駐屯地





「ミカド! さっき投げたふ、ふらっしゅばん?ってコレだよね?」

「あぁ、そうだ。ちゃんと5つあるか?」

「うん! 大丈夫だよ!」

「よし、移動するぞ!」


俺はこの場所を離れる前に、フラッシュバンの残骸を回収した。

元居た世界では、これらの投擲武器は使い捨てが主だったが、この世界は俺が居た世界よりも文明が遅れている。 俺が居た世界から見ると、ざっと数百年は文明が遅れている様だ。


だからいくら使い捨てのフラッシュバンとは言え、この世界からしたら未知のテクノロジーたる道具の残骸は残したくなかった。


「い、行くと言っても何処へ?」

「こんな時、頼りになる知り合いが居る!そこへ行く!」

「成る程、あそこか!」

「わかった...... 」

「?それって...... 」

「ラルキア王国軍第7駐屯地だ!」


木箱を持ち、俺達は先日知り合った強面3人組の顔を思い浮かべながら、ペンドラゴの西地区へ向かい走り出した。



▼▼▼▼▼▼▼



「つまり、さっきのふらっしゅばん...... って道具は、大きな音と光で相手を混乱させる道具......なんだよね?」

「その通りだ。まぁ...... 混乱させると言っても、その効果は長くは続かないけどな」

「そんな魔法具聞いた事ありません...... 」

「俺が住んでいた土地独自の魔法具なんだよ」

「ふぅん...... 変な魔法具があるんだな」


俺は先程使用した閃光手榴弾の事を大雑把に説明しながら、ペンドラゴの大通りを慎重に駆け抜けていた。


もっとも、まだ俺の事情を知らないマリア達が居るから、ちょっと嘘を交えてだけど......


「ちっ..... それにしても、やっぱりラルキア王国軍の連中がウヨウヨしてやがるな......」

「そうだな......ざっと見た感じでも、この大通りだけで100人は居るぜ...... 」


スニーキングミッションさながら、俺達は辺りを警戒しつつ、西地区にある【ラルキア王国軍第7駐屯地】へ向かっていた。


この第7駐屯地とは、以前俺が貧民街で調査をしていた際、奴隷商人と勘違いしてしまった男達...... スキンヘッドが特徴的なシュターク・バイルや、その仲間の刺青男クリーガと、ピアス男のアルと言う強面軍人3人組が所属している部隊の本部が在る場所だ。


確か第7駐屯地は貧民街の近く...... 俺達が今居る東門周辺のとは正反対の西側に在るのだが、今頼りになりそうなのは彼等しかいない......


ゼルベル陛下や、ユリアナにローズ、ラミラ。それに魔術研究機関のティナやダルタス局長、ベルガス丞相の事も心配だが、彼等の周囲は厳重に警備されている筈。


だから彼等に会いに行ったとしても、さっきの一団みたいに攻撃されるのがオチだろう。


なら...... 危険は有るとは言え、俺達の事情を知っているシュターク達に会い、彼等に部隊の仲間を説得してもらえれば、少なくとも彼等の部隊は味方になってくれると思った。


だが想像以上にラルキア王国軍の兵士が多く、思った様に移動が出来ない。


裏路地や抜け道を知っているならまだしも、前に言った様に俺達にはペンドラゴの土地勘はほぼ無い。

だから、出来るだけ通った事のある大通りから離れない様に...... 物陰に隠れながら移動するしかなかった。


「よし、あの部隊が見えなくなったら、彼処の大きな建物まで移動するぞ......」

「わかった...... 」

「はい」

「了解です」

「ん...... 」

「よし、今だっ!」


30人程の小部隊が見えなくなったタイミングを見計らい、隠れていた物陰から飛び出そうとした瞬間......


「おい!」

「っ!?」


背後から野太い声に呼び止められた。


( クソッ! 見つかったか!? )


そう思いながら、腰からぶら下げた太刀を抜き放ち後ろを振り返る。


「わぁ!? 待て待て! 俺だ俺!」

「お前...... クリーガ!? それにアル!? 何でここに!?」


振り向きざまに背後に居る奴に太刀の切っ先を向けると、そこには腕にトライバル柄の刺青をした男と、大量のピアスを付けた強面の男2人が立っていた。


「それは俺達のセリフだ! とりあえず刃を降ろせって!」

「あ...... 悪い...... 」

「相変わらず、危ねぇなミカドの兄ちゃん」

「返す言葉も無い...... それより、良かった! 実はクリーガ達を探してたんだ!」

「なに?」


こんな所で、会いたかった人達に会えるとは思っていなかった俺は、少し興奮気味に先程あった事を説明した。


「ちっ、やっぱ怪しい奴は見つけ次第殺せって命令が出ている事は間違いねぇみたいだな...... 」

「やっぱり......そうなのか...... 」

「あぁ、軍の連中が民間人の外出を控える様命令している場面に何回か遭遇した。

付け加えるなら、不用意に外へ出ると命の保証は無い...... とも言っていた...... 」


やはり...... 今のペンドラゴには国家防衛戦闘態勢発令時よりも厳しい命令が市民達に通達されているみたいだ。

国家防衛戦闘態勢は市民に極力外出を控えてもらうという緩い命令だったが、今では外出さえも許されないとは......


だが、このペンドラゴの現状を見るとそれも仕方ないのかも知れない。


「なぜそんな命令を...... って言うか、さっきも言ったけどなんでクリーガ達はこんな所に?」

「あぁ〜...... 実は今日、俺達ぁ非番だからさっきまで夜通しアルと飲んでたんだ」

「でこの騒ぎだろ? だから第7駐屯地に向かおうって時に兄ちゃん達を見かけてな」


そう言われてみれば、確かにクリーガとアルからは、仄かに酒の匂いが漂ってきている......


頼る人を間違えたか......?


「そうだったのか。えっと...... だ、大丈夫なのか?」

「おうよ! さっきまでほろ酔いだったが、爆発音を聞いて酔いが吹っ飛んだからな...... 」

「それより、エルフのお嬢ちゃんと獣人のお嬢ちゃん......確かマリアとレーヴェって言ったか? でも、そこの金髪のお嬢ちゃんと龍人のお嬢ちゃんは初対面だな......

俺はこのペンドラゴの平和を守るクリーガってんだ。よろしくな、綺麗なお嬢ちゃん方」

「てめぇ! クリーガ! 抜け駆けすんじゃねぇよ! 俺はアル。以後お見知り置きを、可愛いお嬢ちゃん達!」


うん...... クリーガとアルはまだ酔いが抜けてないみたいだ。

前に会った時は、強面だが硬派な雰囲気を漂わせる気持ちの良い人達だったのに、今は悪酔いしたチャラ男みたいだ。


あれか? 殴って完全に酔いを覚ましてやるべきか?


クリーガとアルはチラチラと、だがセシルとドラルを舐めまわす様な目線を向けている......あそこまで露骨だと俺でもわかるぞ......


やっぱり殴るか。全力で。


「は、はぃ...... えっと、せ...... セシル・イェーガー...... です...... 」

「ドラル・グリュックと申します...... 」

「うわ...... 」

「 ...... 」


ほら見ろ!セシルは怯えてるし、ドラルも苦笑いじゃねぇか!

レーヴェとマリアもドン引きしてるぞ!


「はいはい!自己紹介も終わった事だし...... クリーガ、アル、改めて頼みがある。俺達を第7駐屯地まで連れて行って欲しい」


このままでは2人共本格的にナンパを始めかねない。

そうなると手が付けられなくなる...... それに今は一刻を争う。こんな所で駄弁っている時間はない。


「っと、そうだな...... 冗談はさておき、ミカドの兄ちゃんの話を聞く限りだと他の部隊の所に行っても、不審者として攻撃されるだろうな...... 」

「で俺達の部隊なら、俺達が説得すれば少なくとも攻撃を受ける事はないと......考えたな。よし任せろ! 俺達が第7駐屯地に連れてってやる!」

「そうか! 本当に助かるよ!」

「あ、ありがとうございますクリーガさん.....アルさん...... 」

「助かります」

「よろしく頼むぜ!」

「よろしく...... 」

「おう! 任せてくれ。となると...... 大通りは軍の連中が巡回しているから、俺達が知ってる裏道を使うぞ!」

「それが良いだろうな。ついでに街の奴等から情報収集して行こう」


へぇ..... クリーガ達はさっきまでの軟派な雰囲気から一転し、以前の様な雰囲気に戻った。


そうだ、彼等も軍務に就く人達なのだ。


やるべき時はしっかりやる...... 一瞬ナンパしだしたクリーガ達を軽蔑したが、訂正しなければ......


「この件にカタをつけたら、一緒に食事に行ってくれよ? お嬢ちゃん方」

「ペンドラゴには美味い飯屋が沢山あるんだ。案内するぜ!」


前言撤回だ馬鹿野郎!



▼▼▼▼▼▼▼▼



それから俺達は、クリーガとアルに案内され狭く、入り組んだ裏路地を縫う様に移動を続けた。

流石ペンドラゴに住み、ペンドラゴで任務に就いている2人なだけあって、迷路の様に入り組んだ裏路地を迷う事なく進んでいる。


時折、知り合いと思しき人達の家に立ち寄り情報を集めつつも、しっかり俺達を第7駐屯地まで案内してくれた。


そして移動する事1時間後......


「見えたぜ! 第7駐屯地だ!」

「此処が...... 第7駐屯地...... 」

「ま、此処は300人の隊員しかいねぇ小さな駐屯地だけどな」


クリーガの言葉に前方を良く見ると、レンガの城壁に囲まれた小さな砦が見えた。

あれがクリーガやアル、そしてシュタークが所属している部隊の本部がある第7駐屯地だった。


「おぉ、クリーガにアル! 無事だったか!」

「今日は非番だって言ってたから心配したぜ!」

「おう、おかげで気持ち良く飲んでたのに酔いが覚めちまったよ」

「しかし、何かやばい事になってるらしいな...... 」


第7駐屯地の入り口の前に行くと、鎧を着た仲間と思しき門番のラルキア王国軍人達が立っていた。

その門番達は、クリーガやアルを見ると安心した様に歩み寄ってくる。


と言うか、この門番達も皆強面だ......

第7駐屯地って所は強面が集まる部隊なのか?


「ん? なぁ..... あの5人は何者だ?」

「見た事ねぇ面だな...... それにあの男...... 黒い髪に黒い瞳じゃねぇか......初めて見たぜ...... 」

「ん? 黒い髪に黒い瞳...... もしかして!?」

「あぁ、此奴等は俺達の知り合いでな。何でも、ラルキア王国で起こっている爆破事件の調査をしているギルドのミカドって兄ちゃんと、その仲間のお嬢ちゃん方さ」

「今朝、その事件の関係でペンドラゴに来たみたいなんだが...... この騒ぎた。別の部隊の奴等に不審者と勘違いされたらしくてな..... だから、一旦ここへ案内して来た訳だ」


俺達5人を見つけた門番達は、訝しげに此方を見るが、事前に頼んでいた様にクリーガとアルが事情を説明してくれた。


「ミカド......って! ユリアナ殿下を助けたって噂の奴か!」

「噂通りの見た目だ...... 」

「まさか本当に!?」

「あぁ! その通りさ! このミカドの兄ちゃんが、ユリアナ殿下が襲われた時、颯爽と駆けつけ助け出したって噂のギルド組員さ!!」

「「「「「「おぉぉお!」」」」」

「やるな兄ちゃん!」

「あの戦乙女の異名を持つユリアナ殿下を助けるなんて、並みの奴には出来ねぇぜ!」

「俺ぁそもそも、ユリアナ殿下が助けを必要としている場面さえ思い浮かばねぇけどな!」

「にしても、若いのに中々のやり手なんだな! どうよ?ウチの部隊に入隊しねぇか?」

「い、いや...... そんな...... 」


このアルの言葉で、俺達への不信感は消し飛んだらしい。門番達は友好的な笑みを浮かべながら俺達を取り囲む。

うん、以前シュタークやクリーガ、アルの強面3人に囲まれた事もあるけど、強面に囲まれるのは暑苦しいし、怖いしで慣れないな.....


と、言うか......ここでもさり気なくセシル達にナンパしている奴が居た。

セシルが泣きそうだし、やはり鉄拳制裁するべきか?


それと初めは5人位だった人数がいつの間にか20人位に膨れ上がっていた。

どこから湧いて出て来たんだこいつ等は。


「おいおい! そろそろ解放してやれ! 俺達はこの5人を総隊長の所へ案内してくるから!」

「テメェ等もナンパしてねぇで仕事しろぉ!」


どの口で言うか...... と思いつつ、クリーガとアルの言葉を聞いた門番や、集まった面々は「仕方ねぇな〜 」等々言いながらも渋々仕事に戻っていった。


「ウチの部隊の奴等が失礼したな。彼奴等は顔は強面だけど、根は良い奴らなんだ」

「お前も強面だけどな......」

「うっせぇぞアル!...... よし、それじゃウチの部隊の総隊長の所へ案内する。

そこで改めてミカドの兄ちゃん達は、何故ペンドラゴへ来たのか再度説明してもらう事になるぞ?」

「あぁ。当然だな......それより、ありがとうクリーガ。アル。本当に助かったよ」

「なに気にするな。こんな時に市民を守るのが俺達の仕事だからな」

「じゃ、総隊長の部屋はこっちだ。案内するぜ」


辺りから第7駐屯地の隊員が居なくなるのを確認したクリーガとアルは、俺達を第7駐屯地のトップらしい総隊長の所へ案内すべく歩き出した。


「総隊長。クリーガ・ベルナード中官です」

「同じく、中官のアル・ガナリムです総隊長」

「どうぞ〜」


砦に入り暫く歩くと、城壁と同じレンガで造られた2階建ての建物に付いた。

そして、その2階の1番奥の部屋の前に俺達は立っている。

ドアの上には、【第7駐屯地 総隊長室】と書かれていた。


クリーガがドアをノックすると部屋の中から、柔らかく透き通る様な......とても綺麗な声が聞こえた。


声色からして女性だろうか?


あと、どうでも良いけどクリーガとアルのフルネームを今更ながら知った。

以前会った時は下の名前しか言ってなかったからな......


「失礼します」


クリーガがそう言い、ドアを開けて部屋に入っていく。

俺達も一緒に部屋に入ると、事務に必要な机や椅子しかない簡素な部屋に、綺麗な女性が居た。


スラッとした身長に、背中まで伸びた赤い髪...... そして意思と力強さを感じる瞳......

鎧こそ着ていないが、軍服をピシッと着こなしている。


あれ...... 何処かで見た事がある気が......


「み......ミラ?」


部屋の中に居た人は、俺達がノースラント村のギルド支部でお世話になっている、ノースラント村ギルド支部長代理のミラ・アレティスそっくりだった。



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