63話 確信へと
いや...... でも待て。
俺はギルドの支部長達が爆破に巻き込まれ命を落とした事や、ギルド・軍の施設が爆破された事でテロリズムを連想したが、その直後、妙に感じた。
これが仮にギルド支部長達や他のギルド支部を狙ったテロ行為だとしたら、何故無関係なラルキア王国軍の駐屯地等も爆発の対象になったんだ?
今回の件に爆破を指示した黒幕が居たとしても、其奴等の立場からすれば敵が増えるだけで、何の得にもならない筈だ......
そう、感じた妙な違和感はこれだ。
もし仮に、今回の事件には裏から爆破を指示していた黒幕が居て、俺が考えた仮説通り、奴隷商人達を使い魔術師の素質がある人達を攫い、爆発する魔法具を使い攫った人達に爆破を強要させたとしよう。
しかし、この黒幕が何故ラルキア王国のギルド支部や軍の駐屯地等を爆破したのか、根本的な動機が理解出来ない。
俺はさっきまで、この事件はラルキア王国の敵対勢力がラルキア王国国内で撹乱作戦を実行したのでは? と考えていた。
10を超すギルド・軍の施設が爆破された事を見る限り、今回の事件は計画的に行われている。
これは、明確な目的とラルキア王国に対する敵意を持った者達が組織的に動いている事に他ならないからだ。
しかし、冷静になって考えれば違和感しか感じない。
1度頭の中を整理しよう。
ギルドやギルド支部長達に恨みがあるだけで、今回の爆破事件を起こしたのだとしたら、わざわざ関係のない軍の施設を爆破し、敵を増やす様な真似はしないだろう......
逆も然りで、ラルキア王国軍に恨みがあり、軍の関連施設を爆破したならギルド支部を爆破する必要は全く無い。
仮にラルキア王国の敵対勢力が今回の事件の黒幕だとしたら、軍の関連施設が爆破の対象になるのは理解出来るが、ギルド支部まで爆破の対象になるのは不自然だ。
これがただの愉快犯の犯行で、考えも無しに無差別に爆破を引き起こしたのだとしても、被害がギルド支部と軍関連施設に限定されている事と、被害にあった場所の多さから見るに突発的な行動とは思えない......
少なくとも、何か明確な思惑がある筈だ。
「ちなみに、ローデンラントに集まった各ギルド支部長達は何人居たんだ?」
「ノースラント村ギルド支部長を筆頭に30人以上居たらしいよ...... 」
「これはラルキア王国内のほぼ全てのギルド支部長が集まって居た事になります。その殆どが、爆破の被害に遭われて...... 」
セシルとドラルは呟く様にそれだけ言い、静かに首を横に振った。
これだけで俺はセシル達が言わんとした意味を察した......
「となると、今頃各支部は蜂の巣をつついた様な大騒ぎになってるだろうな...... わかった...... それじゃ、軍関連での報告って何だ?」
俺はノースラント村ギルド支部で、支部長代理として奮闘しているだろうミラや、そのサポートをしているアンナ達の事を頭の片隅で考えながら、ドラルに顔を向けた。
「はい、軍関連と言うよりは、治安維持を任務にしている部隊から教えて頂いたのですが......
どうやらアンナさんも言っていた様に、この爆破事件が起こる少し前まで、ラルキア王国全土で誘拐事件が多発していたみたいなんです」
「誘拐事件...... 」
「ミカドもしかして...... 」
「あぁ...... 詳しく教えてくれないか?」
マリア、レーヴェも俺と同じ事を考えたのだろう。
顔を見合わせる2人に小さく頷き、再度ドラルに顔を向ける......
「はい...... 先程も言った様に、ラルキア王国では、各ギルド支部や軍関連施設が爆破される半年から1ヶ月程前まで、各地で子供を標的にした誘拐事件が多数起こっていたみたいなんです。
例を挙げれば、私達の様に孤児院へ移動中だった子や、学習院の登下校中...... ギルドの依頼の最中など......
中には明かりの家の様に、孤児院自体が襲撃され、子供達が攫われた事案も数件あるみたいで...... 」
「酷い...... 」
「クソが...... 人のやる事じゃねぇ...... !」
「......その誘拐事件の具体的な件数と、誘拐された可能性がある人数はわかるか?」
俺は何とか怒りを出さない様、冷静に状況を判断する事に集中した。
少し前なら、俺もマリアやレーヴェの様に怒りを露わにしていただろう......
だが、今の俺はセシル達の事を纏める調査隊の隊長だ。
たった5人の調査隊の隊長とは言え、感情的な言動は極力慎んで、冷静に物事を判断する様にしなければ......
「現時点までで、誘拐されたと思しき事件は分かっているだけで優に30件を超え、行方不明者も200人を超えているみたいです......
しかも、明かりの家の様に孤児院自体が襲われ生存者が居らず、未だ治安維持部隊に情報が伝わっていない件もある可能性も考慮すれば、行方不明者は更に増える可能性も...... 」
俺の中で徐々にパズルのピースがハマっていく感じがした。
ドラルの話を聞きいて、ノースラント村ギルド支部が爆破される直前まで受付嬢のアンナが話していた事を思い返せば、アンナも、ラルキア王国全土で誘拐事件が多発していると言っていた。
もしこの誘拐事件が、魔術師の素質がある人達を見つける事が目的で行われていたとすれば......
「そっちの調査結果はわかった...... 次は俺達が貧民街を調査してわかった事なんだが......」
確信...... とまでは行かないが、俺はそれに近しいモノを感じながら、セシルとドラルに貧民街で調査し、分かった事と俺が考えている仮説を事細かに伝えた......
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「以上の事と、セシル達の話から今回の事件は大きな組織...... 少なくとも明確な意思を持った集団が、ラルキア王国のギルド支部や軍の関連施設を意図的に爆破した可能性が高いと思う」
「でも、犯人達はなんでこんな事をしたんだ?」
「そこはまだ正直分からない...... でも、ラルキア王国の全土に及ぶくらい、今回の爆破事件は大規模だ。
きっと綿密な計画と思惑があるに違いない」
俺は貧民街で得た情報をセシル達にも伝え、その上で今までの情報をまとめて最も合理的、かつ辻褄が合う仮説を説明した。
まず、ラルキア王国全土で頻発した誘拐事件だが、これは貧民街でシュターク達に聞いた話を元に推測する。
簡単に説明すれば、【金払いの良いお得意さん】という謎の人物が、奴隷商人達に金を積み、魔術師の素質があると思しき人や魔術師を攫う様に依頼した。
依頼された奴隷商人達は律儀にもその依頼をこなし、ラルキア王国の至る所で人を攫った......
誘拐事件が頻発しだした丁度この頃にマリア、レーヴェ、ドラルが奴隷商人に捕まった事や、マリア達を攫った奴隷商人の特徴が、シュタークに誘拐の片棒を担がせようとした人物と一致している点から、マリア達を攫った焦げ茶フードの男は、金払いの良いお得意さんとやらに雇われた奴隷商人の1人と見てまず間違いないだろう。
次に攫われた人達だが…… (これは先日ノースラント村ギルド支部にも届いた明かりの家が襲撃されたと思しき報告も含め) 十中八九奴隷商人に攫われたと見て良いだろう。
そして、攫われた子達の中で魔術師の素質があった子は、黒幕か奴隷商人から爆破を強要された...... と俺は睨んだ。
実際にノースラント村のギルド支部を爆破したアルトンも、魔術師の素質を持ち合わせていたらしいし、歳も6歳〜10歳位と、奴隷商人達が誘拐していた人達の年齢層に当て嵌まっている......
奴隷商人達からすれば、大人の魔術師を攫うより子供相手の方が簡単に誘拐出来るだろうから、子供を中心に誘拐したと説明がつく。
しかも爆破された場所の多さから、人攫いをしていたのはドラル達を捉えた奴隷商人のグループのみとは考え難い。
恐らく複数の奴隷商人が【金払いの良いお得意さん】に雇われ、各地で魔術師の才能がある子を攫っていたのだろう。
で、その中でも過激なグループが、明かりの家を襲った後、証拠隠滅を図り火を付けたのではないか?と、俺は憶測した。
と...... 以上が、俺が皆に説明した仮説になる。
少なくとも、今わかっているだけの情報を全て当てはめれば、これ以上無いくらい理に適った仮説になっている。
だが、いくら情報が当てはまっても、これは今ティナが調べてくれている爆弾と思しき不審物が、魔力を原動力として爆破すると分かった時に初めて憶測では無く、ちゃんとした根拠がある仮説となる。
となれば、後はティナが回収された不審物の解析結果を出すまで、この仮説の裏付けが出来る情報を集めるべきか......
コンコンコン
「ん? どうぞ」
「失礼しますミカド様。魔術研究機関のティナ・グローリエ様がミカド様にご用があるとフロントにいらっしゃいますが、お部屋にお通ししましょうか?」
セシル達に俺の仮説を教えて、今後どういった行動取るべきかと思考にふけっていると、小さくドアをノックする音が部屋に響いた。
ドアをノックした人物に返事をすれば、音も無くドアが開かれ、そこにはここパセテの制服を着た女性従業員が立っていた。
この女性従業員は、パセテにティナが来た事を伝えに来てくれたみたいだ。
「流石ティナ...... もう調査結果が出たのか...... ? あぁ、頼む。ここに呼んでくれ」
「かしこまりました」
ここにティナが来たと言う事は、既に回収した不審物の解析を終えたと言う事に違いない。
流石は才女と呼ばれるだけあるな......
「ミカド! 回収された不審物の正体がわかったわ!」
女性従業員が部屋を出てから数分後、同じ従業員に案内されたティナが、鼻息を荒くしながら部屋に乗り込んできた。
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