52話 温かさ
ギルド支部を後にした俺達は、その後ノースラント村を適当にブラつきつつ、ノースラント村に来たもう1つの目的...... 今後必要になってくるだろうマリア達の着替えや下着等の生活必需品、それと食材の備蓄が無くなってきたので食材を買うためにノースラント村の中心部に歩みを進めたていた。
ここ、ノースラント村は人口2、3000の人が居る大きな村だ。
俺がこの村の皆と会ってからまだ日は浅いが、この村の人達は皆良い人達だ。
そりゃ、俺がここに来た当初は色眼鏡で見られて嫌な思いもしたが、今では色んな人達ともすっかり顔馴染みになって俺を珍獣の様な目で見る人は居なくなったが......
この村に来た当初の事を思い出した俺は、そこである事に気が付いた。
この村で人間以外の種族を見た事が無かった事を。
今日、ノースラント村に着いた時は明朝だったお陰で余り村の人とはすれ違わなかったから気にしていなかったが、今は辺りに人が溢れている。
当然すれ違う何人かの村人は自分達とは姿の違う、龍の羽根や尻尾を持ったドラル、ピコピコと尻尾と獣耳を動かすレーヴェ、ピンッと真上を向く尖った耳のマリアを横目で見ている......
以前俺も、同じ様な視線にさらされた事があるから分かるけど、ジロジロ見られるのは精神衛生上よろしくない。マリア達への配慮が足りなかったな......
当の本人達は余り気にしていない様だが......
3人への配慮が足りなかったと反省し、後日日を改めて買い物に出掛けようとマリア達に提案しようとした時......
「あら、セシルにミカドちゃんじゃない。皆でお買い物かしら?」
声のする方に振り向けば、そこには大量の食材が入った籠を持った大衆食堂【満腹食堂】の女将さんと鉢合わせした。
満腹食堂とは、ノースラント村の名物女将が居る大衆食堂で安い、美味い、多いの三拍子揃った人気の飯屋だ。
この女将さんとは、以前セシルに満腹食堂に案内されて以降、料理の質と量に魅力され常連になっていたお陰で、今では
「セシルが私達の娘の様な存在なら、ミカドちゃんは私達の息子の様な存在さね!」
と言ってもらえる位には仲良くなってた。
女将さんは面倒見が良く、この世界では珍しい黒髪黒目の俺にも分け隔てなく接してくれた。
今は亡きダンさんがこの世界での父親的存在なら、女将さんはこの世界での母親的存在だ。
「あ、おばちゃん!うん。そうだよ〜」
「相変わらず仲が良くて羨ましいわね〜。
で、ミカドちゃんの後ろにいる可愛い子達が、噂の子達だね?」
「あはは...... えぇ。エルフ族のマリアに、獅子の獣人レーヴェ、そして黒龍人族のドラルです」
「マリアちゃんにレーヴェちゃんにドラルちゃんね。私はここで大衆食堂【満腹食堂】を営んでる女将さ。よろしくね」
「「「よ、よろしくお願いします」」」
いつもと変わらない女将さんの言葉に苦笑いを浮かべながら、俺はマリア達に代わり女将さんに3人の自己紹介をする、自己紹介をされたマリア達は順番に女将さんに向かって、ぺこりと頭を下げた。
「それより噂って......?」
「あら、知らないのかい?ミカドちゃんが今度は捕らわれた女の子達を助け出したって噂になってるわよ?
前から色々とやってたみたいたがら、噂になりやすいのかもねぇ」
「そうなの...... ?」
マリア達が女将さんに挨拶をするのを確認した俺は、女将さんが言った噂という部分に反応した。
そして女将さんの言葉を聞いて、マリアが可愛らしく小首を傾げる。
「そうさね!まずは1人でナイト級の依頼に指定されたヴァイスヴォルフの討伐から始まって、次はなんとユリアナ王女を救ったんだよ!
そしてお次はお前さん達の救出さ!
まだ子供に毛が生えた程度の歳なのに勇敢な子だって、この村では有名なんだよ!
村の若い子達なんさ、ミカドちゃんの事を黒い王子様〜って呼んでるらしいよ」
「黒い王子様って...... 」
黒い王子様ね...... 言われて悪い気はしないが、そのネーミングセンスはどうかと思うぞ...... 村の若い子達よ。
「ミカド...... お前実はスゲェ奴だったんだな...... 」
「それより、お前さん達大丈夫だったかい?噂だけど、奴隷商人に捕まってたんだろう?酷い事されなかったかい?
皆口には出さないけど、お前さん達の事心配してるんだよ?」
女将さんの言葉を聞いて俺は辺りを見回した。
いつの間にか、俺達や女将さんを中心に村人達の円が出来ていた。
そして集まった皆の目からは、3人への同情や境遇への悲しみ、そして奴隷商人達への怒りの感情が感じ取る事が出来た。
「大変だったねぇ...... 」
「っ...... 」
女将さんがマリアの前に歩み寄り、悲しそうな表情をうかべながら ぽふっ...... とマリアの頭に手を置いた。
マリアは一瞬驚き、目を見開いたが直ぐに俯いてしまった。
マリアの肩が小さく震えていた......
すると、その様子を見ていた5歳くらいの村の子供がトテトテと、ドラルの元に歩み寄り.....
「大丈夫だった......?龍のお姉ちゃん」
そう言ったのだ。
「っ......大丈夫よ...... ありがとう...... 」
ドラルは目に薄っすらと涙を浮かべながら、目の前に立つ子供に優しく微笑みかけ、その頭を慈しむ様にゆっくりと撫でた。
そしてその子を皮切りに、周りにいた村人達が次々にマリア達の元に近づいて行く。
「大変だったんだな..... 」
「私達は貴女の味方よ.... 」
マリア、ドラル、レーヴェの元に歩み寄った村人はそれぞれ、3人を気遣った言葉をかける。
そっか...... 村の皆がマリア達をチラチラ見ていたのは違う種族だからと言う点もあるのだろうが、それ以上に俺に助け出されたと噂になっていた3人の事を、皆が案じてくれていたからか......
暫し買い物の事を忘れた俺は、マリア達の周りを囲む村人皆を見て、改めてノースラント村の皆の温かさを感じ目頭が熱くなるのを感じた。
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