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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第2章 激動
52/199

45話 奴隷



ダダダダダダダダ!!!


ガァァアウ!?


風の音しか聞こえない嘆きの渓谷最深部。

不気味な程静まり返るこの場所に、煉獄の炎を連想させる発火炎(マズルフラッシュ)と、地獄の底の魔物が吠えているかの様な発砲音が響き渡った。


連射(フルオート)で放たれた5.56mm×45NATO弾が真っ直ぐ、60mほど離れた岩熊(フェルスベア)に向かい飛翔する。


HK416Dから排出された薬莢は、銃本体に取り付けている薬莢受けに『キンキンキン!』と金属音を立てながら入っていく。


そのため、マンガや映画のような派手さは無く少々地味だが、第三者に排出された薬莢を拾われる危険が無いだけ良しとしよう。

今にして思えば、ユリアナを助けた時にベレッタをぶっ放したが、ベレッタ用に薬莢受けを召喚しておけば良かったかな......


ちょっと考えが足りなかったか......

まぁハンドガン用の薬莢受けなんて俺が元居た世界でも無かったし、思いつかなくても仕方ないか......


ギャォォォオオオ!!!


俺が持つHK416Dから放たれた無数の弾丸は、岩熊に吸い込まれる様に全て命中する。

岩熊は名前の代名詞にもなっている岩の様な皮膚の断片と、赤黒い血を撒き散らして悲鳴を上げた。


岩熊(フェルスベア)は名前に【岩】が付くだけあって防御力が高そうな見た目をしていたが、HK416Dの5.56mm×45弾でも十分通用するようだ。


「セシル! イケるぞ! 射撃用意!」

「わ、わかった!」


想像よりも容易に勝てると確信した俺は、左後ろにいるセシルに攻撃するように指示する。


俺はセシルに指示すると同時に、右斜め前に走った。


こうして右斜め前に走り、改めて位置取りをしたので、岩熊に対して俺が立つ位置と、セシルが立つ位置の2方向から放たれる弾丸が交差する【十字砲火】という効率的な戦術攻撃を行えるようになった。


グオオオオオオ!!!


「ちっ...... くそ!」


セシルとの立ち位置の最終確認をし終えると、不意に、岩熊(フェルスベア)が俺の方向に向けて突っ込んできた。


ちょっと、マズイな。

距離が近いか......!?


突っ込んでくるフェルスベアに悪態を付きながら、HK416Dを向ける......


すると....


『ヴァウウウ!!』

ガゥ!?


シュっと、白い稲妻が俺の脇をすり抜け、雄叫びをあげながら岩熊(フェルスベア)に突っ込んでいった。


「ロルフ!?」


セシルが驚きの声を上げた。

岩熊に突っ込んだ白い稲妻はロルフだった。

瞬きをする程度の僅かな間に、岩熊に接近したロルフは前足を振り上げ、前足に生える鋭利な爪で岩熊の顔を切り裂く。


ロルフの不意打ちを受けた岩熊はバランスを崩し、仰向けにゆっくり倒れこんだ。


『ワゥ!!』


岩熊(フェルスベア)を攻撃したロルフはバックステップをして、岩熊から距離を取り俺の隣に戻ってくる。

そしてクルリと顔を俺の方に向けると、1回吠えた。ロルフが『今がチャンスだ。攻撃しろ』と言っている様な気がした。


勿論俺もこのチャンスを逃すつもりは毛頭無い。

絶好のチャンスだ。


「今だ! セシル! 撃てぇえ!!」

「了解!!」


ダダダダダダダダダダダダ!!!


セシルに指示をした刹那。火薬の匂いを漂わせ、2丁のHK416Dから奏でられる死の2重奏(デュオ)が木霊した。


グォ...... ウゥ......


2方向から俺とセシルから攻撃され、硬い皮膚に覆われた体に数十発の弾丸を受けた岩熊フェルスベアは徐々に目の光を失い、そして最後は重力に従い、ゆっくり仰向けに倒れこんだ。


周囲は再び静寂に包まれる。


「やったなセシル! ロルフ、お前も良くやったぞ!」

「うん! でも、やっぱり凄いね...... これ」

『ヴァウ!!』


岩熊(フェルスベア)が絶命した事を確認し、HK416Dの安全装置を入れてセシルに歩み寄る。

セシルも俺と同じ様に銃の安全装置を入れたセシルはホッと一息つき、引きつった様な笑みを浮かべながらお互い顔を見合わせる。


セシルはこの銃を手にして数週間になるが、訓練用の的以外に撃ったのは初めてだったが、今その威力を改めて目の当たりにして驚愕している。


この依頼を受けるに当たり、岩熊は専用の武器を使わないと、その岩の様な強固な皮膚に弾かれ、ダメージを負わせられないとアンナが言っていたから、HK416Dが岩熊に通用するかどうか不安だったのだろう。


これで今日の目的の1つだった【この世界で危険度が高いとされている魔物に、現代兵器は通用するのか?】と言う検証は、銃火器を使えば、この世界で危険度が高いとされる魔獣相手でも問題なく狩る事も出来る...... と言う最高の結果になった。


ロルフの方も、ひと周りもふた周りも大きい岩熊(フェルスべア)に恐る事無く、悠然と立ち向かい攻撃を加えた。

これでロルフはレベル20程度の魔獣には恐れず立ち向かい、勇敢に戦えるという事も分かった。


今後、ルーク(ランク)の依頼にロルフを連れて行く事も視野に入れていいだろう。


「そうだな...... まぁ、扱いを間違えなければ頼もしい相棒になるし、コイツがあれば討伐系の依頼は問題なくこなせるだろ」

「ん...... そうだね! じゃフェルスベアの剥ぎ取りをしちゃおう?」

「あぁ」


笑顔を浮かべるセシルに同じく笑顔で答えると、お互い手際良くHK416Dに付いている薬莢受けから薬莢を取り出し、それぞれの腰に付いているユーティリティーポーチにその薬莢を仕舞いこんだ。

マガジンにはお互い、まだ10発前後の弾丸が入っているからマガジンは銃に付けたままだ。


薬莢の片付けが終わると、俺は腰に付けている剥ぎ取り用のナイフを抜き、岩熊の討伐が終わった証拠となる【岩熊(フェルスベア)の牙】の剥ぎ取りを始めた。


セシルとロルフは、俺が剥ぎ取りをしている間に魔獣に襲われない様に周囲を警戒してくれている。


こうした役割分担が出来るのも、依頼をこなす上でだいぶ助かる。


ちなみに俺が剥ぎ取り、セシルが周辺警戒という役割分担は、2人で依頼をする様になって自然とこの形に落ち着いた。


セシルは血は繋がってないとは言え狩人のダンさんに育てられたお陰か、俺より目が良いので警戒向きだから、必然的に俺が狩った獲物を剥ぎ取る役目になった訳だ。


最近はこれにロルフも加わり、頼もしさ倍増だ。


「よし、剥ぎ取り終わったぞ!」

「お疲れ様! あ、後この周りに他に魔獣とかは居ないみたいだよ」

「ん、了解。それじゃ依頼の岩熊(フェルスベア)1匹の討伐も終わったし、帰ろうか」

「うん! 思ったより早く依頼が終わったから今日はこの後ゆっくり出来るね~」

「そうだな。早く家に帰って紅茶でも飲みたいよ」

『クゥン~』

「ロルフはお腹が減ったの? 家に帰ったら何か食べさせてあげるから我慢してね?」


ロルフがセシルの足に甘える様な声を出しながら擦り寄る。

今では大型犬より、更にひと周りほど大きくなったロルフも、未だにセシルにはベッタリだ。

こうしてロルフがセシルに甘えるという事は、近くに危ない魔獣は居ないという目安にもなる。


ロルフとセシルが戯れている姿を見て顔を綻ばせながら、俺は剥ぎ取った岩熊の牙と、貴重な副収入となる岩熊の甲殻を大きめのユーティリティーポーチに仕舞う。


腕時計の時刻を確認すると時刻は14:40分。

想像よりも早く、指定クエストの【岩熊(フェルスベア)討伐依頼】を終らせる事が出来た。


身体能力強化を使えば、今居る嘆きの渓谷から家まで数十分の距離だ。普通に歩けば1時間半ほどで家に着く。

少なくとも辺りが明るい内に家に帰れそうだ。


「俺も小腹が空いたな......」

「ミカドも? それじゃ帰ったら、ちょっと早いけど晩御飯にする?」

「そうしてくれると超助かる。腹減りすぎて死にそう」

「そんな大袈裟な...... 」

『グ...... グルルルル......』

「ん? どうかしたのロルフ?」


そんな会話をしながら拠点に戻っている途中、ロルフが東側を向き、頬肉を上げて歯をむき出しにしながら唸り声を上げ始めた。


セシルは屈んでロルフの頭を撫でながら顔を覗き込んでいる。

俺は直感で近くに危険な者...... 敵が居るのではと思った。


「セシル..... 近くに何か居るぞ......」

「っ! わかった..... 」


俺とセシルはお互い肩からぶら下げているHK416Dに手をかけ、安全装置を解除して何時でも撃てる用意を整える。そして不測の事態に備え、念の為に弾丸が30発入っている新しいマガジンに換えた。


ロルフが見つめる方向に警戒しながら進んでみると、そこには大小さまざまな岩が転がる拓けた場所に出た。

それと同時に、この場所に見覚えのある2台の馬車がゆっくり入って来て、動きを止める。


そして動きを止めた馬車から3人づつ、計6人の男が出てきた。


6人の男は、それぞれ馬車を木の幹に縛り付けたり、岩に座って酒を飲み始めた。恐らく今はこの6人の休憩時間なのだろう。

馬車から出できた6人は皆、薄汚いこげ茶色のフードを被り顔の識別が出来ない様になっていて、それぞれ斧や鉈などの武器を腰から無造作にぶら下げている。


6人とも背が高く、腕が太く毛むくじゃらだから、この6人は皆男性だと分かった。


「あれは!」

「奴隷馬車......」


セシルがキュッと唇を噛み締めながら、フードを被った男達が乗っていた馬車を見る......

俺も手から血が出るのではないかと思うくらいHK416Dの持ち手グリップを握り締めた。


あの鉄格子がはめ込まれている特徴的な馬車は...... 以前王都ペンドラゴで見た、忘れたくても忘れられない、奴隷を運ぶ為だけに作られた奴隷馬車と呼ばれる物だった。


奴隷馬車と、そこから降りてきた男達の見た目から考えると、目の前にいる6人の男達は人を物の様に売り買いしている奴隷商人で間違いでは無いだろう。


良く耳を澄ますと薄汚い6人の男達の会話が聞こえてきた。


「はぁ、今回の仕事じゃ、1人も捕まえられなかったな」

「でもよ~ 帰りに高く売れそうな女が3人も捕まえられただけ良いじゃねぇか!」

「ま、そうだけどよ。それより...... へへっ。どうだ?

売り払っちまう前に、俺らでちょっと味見するってのは」

「お前は毎回同じ事を言うよな」

「まぁな。でも今までバレなかったんだから今回もバレねぇよ!」

「ひひっ...... それもそうだな! 仕事じゃ1人も捕まえられなくてイライラしてたし、ストレス発散だ!」

「んじゃ、まずはこの俺様がヒィヒィ言わせてやるぜ!」

「「「「ぎゃはははは!!!」」」」


俺の耳に男達の下衆い笑い声が響く。


もう無理だ。


聞くに堪えない。


聞く限りだと、この奴隷商人達はどこかで人を攫おうとしたが攫えず、その帰り途中で3人の女性を攫って来た。という事になる......

となれば、この後囚われた女性達に訪れる悲劇の想像は容易い。


此奴等は生きていてはいけない。

ほんの数分、此奴等の会話を聞いていたが、此奴等は人を攫う事に罪悪感を感じていない。

むしろ楽しんでいる様にすら捉えられる......


この屑共がこのままのうのうと生きていると、今後も不幸になる人が増えるだけだ。


殺そう。


一刻も早く。


俺の心をドス黒い何かが支配した。

その後の俺の行動は俺自身ハッキリと覚えていない。


気が付いたらHK416Dの銃口から煙が出ていて、足元には風穴を空けられ物言わぬ骸と化した6人の男が目を見開き倒れていた。

俺の足元は奴隷商人達の赤黒い血が混じりあい、血の海になっていた。


後日セシルから聞いた話だと、男達が笑ったと同時に俺が飛び出し、瞬く間に6人の奴隷商人をHK416Dで射殺したとの事だ。


人を殺したのは今回で2回目だが、今回は人を殺した事への罪悪感は無かった。こいつ等は死んで当然の屑だ。慈悲を与える価値すらない。


「・・・ど! ミカド!」

「セシル...... 」

「ミカド...... 大丈夫?」


物言わぬ骸となった奴隷商人の死体を見下ろすと、セシルに声をかけられているという事に気が付いた。ロルフも心配そうに尻尾を下げて俺を見ていた。


俺は知らず知らずの間に、この足元に転がっている屑共を殺す事に集中していたようだ......


「あ、あぁ...... 勝手な事をしてすまん......」

「ううん...... それより馬車の中に誰か居るかもしれないんだよね......? 早く助けないと!」


そうだ。此奴等は女性を攫ったと言っていた。という事はこの2台の馬車のどちらかに連れ去られてきた人が居る筈だ。


「そうだな...... 俺はこっちの馬車を調べるから、セシルは向こうの馬車を頼む」

「わかった!」


俺から見て手前の方に止まっている馬車をセシルに調べるように言って、俺は奥の方に止められている馬車に向かった。

この2台の馬車は外から中が見えないように内側から黒い布が張り巡らされていた。

外から見たら、物々しい鉄格子だけが見て取れる。


「鍵か...... ふんっ!」


奴隷馬車の荷台の部分には大きな鍵が付けられた扉があり、鍵を探すのを面倒に思った俺はHK416Dの銃床ストックを鍵に向け思いっきり振り下ろした。

『ガキィン!』と大きな金属音を発しながら鍵が足元にドサッと落ちる。


「大丈夫か!?」


鍵が落ちたのを確認して、俺は荷台の扉を開け放った。薄暗い荷台の片隅に何かが動いている気配がする。


目が慣れてない中で良く目を凝らしてみると、荷台の片隅で首輪を付けられた3人の女の子達がお互いを庇い合う様にギュッと抱きしめあっていた。


3人は満足な食事すら与えられていないのか、酷く痩せこけ顔色も悪い。

着ている服もボロボロで、それが彼女達の顔色と首輪が相まって痛々しく見える。


「お前...... 誰だよ...... 」


抱き締めあっている3人の内、黒髪と金髪が入り混じったショートカットの子が、警戒心と敵意をむき出しにして俺を見据える。


この子の声には迫力こそあるが、その目に力強さは感じなかった。

この睨みつけてくる子の顔は赤く腫れ上がり、殴られた様な跡があった。


「俺の名前は西園寺帝(さいおんじみかど)。もう君達を襲った奴らは居ない。出てきでも大丈夫だよ」

「助けて...... くれたんですか......?」

「...... そうだ。俺達は味方だ。安全してくれ」


ちょっとでも隙を見せたら襲い掛かって来そうなショートヘアの子を刺激しない様に、極力優しい口調で外は安全だ。俺達は敵じゃないと告げる。


すると、薄紫色の髪の毛を三つ編みにして編み込んだ子が、澱んだ目で俺を見上げた。


「ミカド!そっちには誰か居た!?」

「あぁ、子供が3人居たよ。そっちの馬車には誰か居たか?」

「こっちには誰も居なかったよ」

「そうか。良かった...... 」


成り行きで助けた事になるので言葉を濁しながら、暗がりに慣れてきた目でこの3人を改めて見つめる。

痩せすぎているという所以外、特に大きな外傷は無いみたいで安心していると、もう1台の馬車を調べ終わったセシルが俺の方に走ってきた。


セシルの声が聞こえると、3人の子達はビクッと肩を震わせ、更にお互いの体を強く抱きしめ合った。


「俺達は君達に危害を加えるつもりは無いよ。出ておいで?」

「神様...... 」


俺は怯える3人を安心させる様に優しく語り掛けながら、右手を差し出す。


すると、黒と金のツートンカラーの女の子と、紫色の髪を編み込んだ女の子の間に座る、薄い緑色の髪を頭のサイドで纏めた女の子がボソッと呟きながら俺の瞳を見つめ、差し出した俺の手を握ってくれた。


「私、マリア...... マリア・グリュック...... 助けてくれてありがと......」


静かな...... それでいて心が安らぐ様な優しい声を出しながら、薄緑サイドテールの女の子が小さな笑みを浮かべ、俺の手を握ってくれた。


「ん?」


手の平に感じる温かさを感じていた俺は、マリアと名乗ったその女の子の耳が、俺やセシルとは違っている事に気が付いた。


「え、エルフ......?」


マリアの耳はピンッと上向きに尖がっている。


この尖がった耳を見て、俺は彼女は俺達が居る中央大陸から見て東側にある大陸...... 別名妖精大陸に多く存在しているエルフ族の女の子だという事に気が付いた。



ここまでご覧頂きありがとうございます。

誤字脱字、ご意見ご感想なんでも大歓迎です。


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