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3話 大掃除と宝探し





久しぶりに会った爺ちゃんと婆ちゃんは前に会った時と変わらず元気だった。


今日蔵の整理に来たと爺ちゃんに言うと、嬉しそうに「よう来たなぁ」と笑いながら頭を撫でてくれた。


爺ちゃんは寝たきりの生活が続いているせいか多少顔色が悪くなっている気がしたが、しっかりとした手つきで、道すがらお土産として買っておいた栗羊羹を食べている。

その姿を見て、俺は安心した。


婆ちゃんの方は皺が深くなっていたが笑う顔は俺が小さかった頃と変わっていない。再来年で90後半になるのに元気一杯だ。

好きな爺ちゃん婆ちゃんと栗羊羹を摘みながら、俺は久方ぶりの雑談を心から楽しんだ。


時刻13:00


爺ちゃん達との雑談が一区切りすると、お手伝いさんがタイミングを見計らった様に昼ご飯を持って来てくれた。

綺麗に昼ご飯を完食した俺は軽く食休みをし、今日来た本来の目的を終わらせる為の準備を始めた。


家から持ってきたジャージに着替え、タオルをポッケに突っ込み、重い物が足に落ちても大丈夫なように安全靴に履き変え、防塵対策にマスクも装備して目的の建物の前に立つ。


「改めて見てもやっぱでけぇな」


俺の目の前には、この建物だけで90~100坪は使っているのでは? と思いたくなる程巨大で、古めかしく威厳漂う2階建ての蔵が建っていた。


この無駄に馬鹿デカイ蔵が、今日掃除をする蔵だ。


所々雨風等で荒れている箇所を見ると、いつか長期間の休みが取れたら外見の掃除もしなければ‥‥‥ と思わせるほど老朽化していた。


それも仕方ない。この蔵は100年近く全くと言っていいほど手入れをされていないのだ。


理由としては、この蔵には西園寺家以外の者が近付くとその人は必ず不幸になるという珍妙な噂がある所為で、事実何度か蔵の改修を依頼した業者さんが何人も不幸に遭っているとか。


この噂が元で、この蔵はほぼ100年以上補強もされず放置されていたのだが、親父は流石にそろそろ整理しないとと判断したらしい。


「っ!?」


ふと、蔵を眺めていた俺は妙な気配を感じた。

何故か圧倒されそうな気‥‥‥ と言うか身体にまとわりつく様な気配を感じたが、それは直ぐに消えてしまった。


「なんだ今の感覚‥‥‥」 


不振に思いながらも俺は今のは気のせいだと結論付け、目の前の蔵の扉を開け放った。



▼▼▼▼▼▼▼▼



蔵の中は一言で表せば地獄だった。


扉を開けた瞬間鼻に来る腐臭とカビの臭い。風化し、ボロボロになった着物。隙間から入ってきたのだろう虫や鼠の動く音と鳴き声。足の踏み場もない程散乱した木箱等々


元々蔵にしまわれていた物が行く手を阻む。そして歩けば足跡がはっきり残るくらい積もった埃。


「こりゃ骨が折れそうだ」


すっかり荒れ果てた蔵の内部を見て、俺はそう呟いた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



誰かがテレビで「掃除の基本は換気から」と言っていた。俺もそれに習い、まずは蔵にある全ての窓を開け放った。窓を全て開けると、窓から入ってきた木枯らしが埃を舞い上げる。


「よし! やるか!」


気合を入れると俺は効率よく蔵の整理、もとい掃除が出来るように【集中した】


集中した後の俺の動きは、我ながら惚れ惚れする位手際皮良かったと思う。

自分の部屋を掃除する時より、明らかに手際の良さが違った。


俺は集中した事により、掃除をする際の動きの効率化した。


まず、【1人で持てる物か】、【1人では持てない物か】、【必要そうな物か】【不要そうな物か】、【価値がありそうか】【価値がなさそうか】を瞬時に見極める判断力。

これらの能力が普通に生活してる時より数倍、上昇した気がする。


俺はただただ集中して体を動かし続けた。


はたきで木箱の上に積もっている埃を落とす。 不要そうで、かつ1人で持てる物を外へ運び出す。

埃や落ちているゴミ、風化した着物などをほうきで掃く。ここで死んだと思われる鼠や野良猫達の骨を丁寧に埋葬。


などなど、休憩する事無く動き続けたら気がついた時には辺りは暗くなり始めていた。


時刻17:10


ふと、腕に付けていた腕時計を見ると秒針は17:10分を指していた。 俺は蔵の中を見回す。

埃や動物の死骸は無くなり、本来の木の床が顔を見せ、無駄な物が外に出された事で内部はだいぶ広くなった。


そう、俺はこの数時間で90坪はあろう蔵の整理をほぼ終えたのだ。

無論1階だけではなく2階もである。


「ふぅ。思いの他早く終わったな」


蔵の外に出て手ごろな岩に座りタオルで汗やゴミを拭う。外に出されている不要と判断したゴミの山を見て俺は面白い事を思いついた。


それは 宝探し だ。


爺ちゃんの話では、この蔵は西園寺家が出来た戦国時代から残っている蔵らしい。ならば、戦国時代のお宝が眠っているかも!


掃除が終わった蔵の中には、俺が【1人では持てない物】と【必要そうな物】【価値がありそうな物】の3種類しか残っていない。

【不要そうな物】【価値がなさそうな物】と判断した物は、今蔵の外にまとめて置かれている。


俺に骨董品を目利き出来る才能が有るとは思ってないが、小さい頃からこの屋敷にある数々の骨董品を見て育ったのだ。

多少の自身はある。


「よっしゃ! 待ってろお宝!」


子供のような掛け声で気合を入れると、まずは1階部分の探索を始めた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼



結論から言うと1階からお宝は見つからなかった。


1階に有った物は昭和時代の頃の物から数年前まで使われていただろう生活品が殆どだった。

掃除をしている時に軽く確認してここにある物は生活品がほとんどだという事はわかっていたんだけど、もしかしたら......と思い賭けに出たが、世の中はそんなに甘くなかった。


ちなみに1階部分に有った価値がありそうな物と言ったら、蔵の片隅に無造作に放置されていた錆びだらけの太刀、小太刀だった。


見つけた太刀と小太刀は後で警察に届け出ないと......


「やっぱり宝なんてね無ぇのかな」


ここまで何も無いと流石に心が折れそうになる。俺は2階に有った物を思い出してみる。


えっと確か......


多少埃を被った観賞用らしき大皿。

装飾が施されていた棚。

年季が入った巻物のような物。その他色々。


少なくとも生活品しか無かった1階に比べればお宝がある可能性は高そうだ。


「諦めねぇぞ!」


何時しか俺は、お宝を探す作業に【集中】していた。



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