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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第5章 戦争
175/199

159話 選ばれし奴隷 2




時刻04:00丁度。場所はポイントD3(デルタ・スリー)E3(エコー・スリー)の境界線地点。


後1時間程で朝になるという時間、セシル率いる第2(ツヴァイ)分隊は暁闇の奇襲作戦に添い、左翼より攻撃を仕掛ける為に駆けていた。


そのセシルの後方には、セシル達に救われ、恩に報いらんと付いて来た元奴隷達が後を追っている。


「セシル副隊長、前方に敵です!」

「了解! 皆、攻撃準備!」

「「「「「イエス・サー!」」」」」


不意に、上空にて警戒行動をしていた第2(ツヴァイ)分隊の支援科隊員ファルネが叫ぶ。


500m程先にエルド帝国軍の部隊が見えたからだ。


敵を視認したセシルは、すぐさま第2(ツヴァイ)分隊に攻撃準備の指示を飛ばした。


「あ、あれは!」


彼我の距離が300mを切ると、その部隊が持つ旗がはっきりと見て取れた。


「止まれ! 貴公らは何処の部隊だ! 私は第24軍団軍団長のベリト・アンプトンだ! 貴公らの所属を述べよ!」

「副隊長、あれは煉獄男爵(フェーゲ・バロン)です!」

「そうみたいだね...... 」


セシル達の前に立ち塞がった敵部隊は、赤い王冠(ロート・クローネ)の旗を携えていた。


セシル達はこの旗を持つ部隊の事を、事前に行った状況説明(ブリーフィング)で知っていた。

それは同時に、この旗を持つ部隊はこの戦場で最も手強い部隊の1つである事を示している。


赤い王冠(ロート・クローネ)の旗を天高く掲げるこの部隊は、闘将サブナックと肩を並べる若き将軍...... ベリトの軍団だった。


「ど、どうしましょう副隊長」

「迷ってる暇はないよ。皆、このまま射撃開始!」

「「「「「イエス・サー!」」」」」


タタタタタッ!!


ベリトを視認したセシルは冷静だった。


セシルはベリトから所属部隊を尋ねられても無視し、銃火器の優位性を遺憾なく発揮する。


「がばっ!?」

「ごぎゃっ!」

「ぐっ...... 」


未だに大地は薄暗い。普通の視力なら敵の識別すら難しい状況だが、壱型暗視装置を付けたセシル達第2(ツヴァイ)分隊には、何処に敵が居るのか一目瞭然だった。


第2(ツヴァイ)分隊の放った各種銃弾が、赤い線を引き煉獄男爵(フェーゲ・バロン)ベリトの部隊に降り注ぐ。


火剣壁シュベアート・ウォール!」

「なっ!?」


無論この弾丸はベリトにも飛来した。


しかし弾丸が命中する瞬間、ベリトの持つ湾曲した刃...... フランベルジュの刀身が燃え上がった。


ベリトは業火を纏ったフランベルジュを横に薙ぎ払う。

すると燃え盛る火の壁が現れ、自身に襲い来る弾丸を受け止める。


業火に包まれた弾丸達は、ジュッと小さな音を発しながら跡形もなく溶け去った。


「ふ、副隊長! 射撃が防がれました!」

「慌てないで! このまま攻撃を続行するよ!」

「は、はい!」


( ベリト将軍は私達の一斉射撃をあの剣で防いだ。

詠唱なしで燃える剣...... と、いう事は、あの剣は使用者の魔力を注ぎ込んで使用する魔法具の機械が内蔵されている? 火が出た点から考えても、火龍石と似た構造なのかも...... でも、所詮剣!

銃火器の射程距離には勝てない!)


ベリトは驚異的な反射神経で音速で迫る銃弾を防いだ。

完璧に決まった不意打ちを防がれ、第2(ツヴァイ)分隊の歩兵科隊員ナターリスが驚きの声を上げる。

それでもセシルは冷静に状況を分析し、攻撃を続ける様に指示を飛ばす。


「ちっ。不意打ちとは卑怯な...... 今の行為は敵対行動と見なす! 第24軍団、接近する部隊は敵だ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「詠唱もなく飛来する魔法の様な攻撃...... 私の持つ業火乃剣(フランベルジュ)に似ている。しかし、今の攻撃...... 此奴等 龍騎兵隊や魔導兵を打ち負かした部隊か!」


その場に立ち止まり応戦するセシル達第2(ツヴァイ)分隊に、射撃を受け被害を出しつつもベリトの軍団が迫る。


同時にベリトは、応戦してくるこの部隊が龍騎兵隊や魔導兵達を、そしてサブナックを撃破した部隊だと察した。


「皆、手加減はしないで! 一気に打ち倒すよ!」

「「「「「イエッサー!」」」」」


迫り来るはエルド帝国でも名高い将軍。

そして精強な軍団。

そんな人物達を目の前にしても、セシルは冷静を保ち続けていた。


セシルは、本作戦【暁闇の奇襲作戦】成功の為、ここでベリトの部隊を撃破すると決めた。

セシルの力強い目線と、決意の篭った声を聞いた第2(ツヴァイ)分隊の面々もセシルの考えを察し、ギュッと銃火器のグリップを握り締める。


「......10名にも満たない部隊で我等に攻撃を迎え撃つつもりか。

勇気と蛮勇を履き違えている...... 」

「将軍、憂いている暇はありません。彼奴等の攻撃で味方は浮き足立っております。

敵は少数と侮ると痛い目を見ますぞ!」

「それに彼奴等の後方にいる者等...... あれは我が軍の奴隷達です。見た所1万以上は居りましょう」

「数刻前に操導士達の詰所が攻撃を受けたと報告も受けております!

状況から判断するに、奴隷達は催眠が解かれ、王国軍に寝返ったものかと!」

「貧弱な武具しか無いとは言え、数は我等と対等。狼狽えれば足元を掬われます」


如何に不思議な攻撃を使えるとは言え、無謀とも取れる応戦を敢行する第2(ツヴァイ)分隊を見て、ベリトの表情は変わり、奥歯を噛み締めた。


ベリトは言葉にこそしないが、帝国人としては珍しく奴隷と呼ばれる者達に同情的な心境を感じていた。


心優しいベリトは、数千倍にも匹敵する自軍に応戦してくる第2(ツヴァイ)分隊を見て、何故死に急ぐのか。何故命を無下に扱うのかと苛立ちに近い感情を抱く。


そんなベリトに、配下の将達が次々と声を掛ける。

この将達は兵卒から叩き上げで将の座を勝ち取った者達。彼等は、戦争は命のやり取りと考えを割り切っていた。


それ故に彼等は第2(ツヴァイ)分隊の行動に同情などせず、倒すべきだと促す。


「分かっている...... 24軍団の(つわもの)達よ! 帝国の為、目の前の敵を葬り去れ!」

「「「「「ウーラー!」」」」」


部下達の言葉を聞いたベリトは、やり切れない気持ちを心の奥底に仕舞い込み、彼等を率いる者として指示を出した。


「皆の者私に続け!」

「「「「「おぉお!!」」」」」

「来るよ皆!」

「「「「「い、イエッサー!」」」」」


ベリトは燃え盛るフランベルジュを振り上げ、稲妻となり爆進する。

それに往古する様に、彼の部下達も突撃を開始した。


エルド帝国陣地の右翼では縛れぬ者達(アンチェインズ)隊長のオスマンと帝が戦い、正面ではマリアとドラルが。


そして、帝国陣地の左翼ではセシル対ベリトの戦いの火蓋が切って落とされた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「あ、あの子勝った...... 東の大魔導士(オスト・マーギアー)に勝ったぞ!」

「エルフの子がアルスナに勝った!」


歓喜の雄叫びが薄っすらと明るくなりだした空に響き渡る。


ギルド部隊守護者(ヴィルヘルム)の...... いや、この国の危機に立ち上がった義勇兵部隊ヒメユリのマリア・グリュックが、強敵アルスナを打ち取ったからだ。


「勝った...... 」


マリアと相対したアルスナと呼ばれる高級魔術師は、その魔法の力と素質を買われ、エルド帝国内で縛れぬ者達(アンチェインズ)と呼ばれる部隊の副隊長に任命されていた。


しかし、アルスナの魔法はマリアには通用しなかった。


マリアは生まれ持った天性の身体能力をフルに発揮し、アルスナの攻撃魔法を避けたのだ。


「マリア、良くやったわ!」


ドサッ。と、マリアの斬撃を受けたアルスナが仰向けで倒れ込む。


ルリの刺突とアルスナの炎の波(ファイヤー・ヴェレ)を上空へ飛ぶ事で回避し、攻撃魔法でルリの足止めをしていたドラルは、強敵を倒したマリアを見て目を細める。


これでこの場に残る厄介な敵は、冷酷な龍士卿(フロワ・ドラグーン)のみとなった。


「アルスナぁぁあ! 貴様、よくもアルスナを! よくも私の仲間を!」

「っ!」

「殺す! 必ず殺す!」


だが、縛れぬ者達(アンチェインズ)最後の1人は投降する素振りすら見せない。


仲間の死を目の当たりにし、縛れぬ者達(アンチェインズ)のもう1人の副隊長、冷酷な龍士卿(フロワ・ドラグーン)ルリが鬼の形相でマリアに飛びかかる。


その顔には、数刻前に見せた妖艶とも取れる余裕の笑みは影すら無かった。


これが彼女の本性なのか。

口汚い言葉を撒き散らしながら、ルリは(ランス)を構え突貫した。


「も、もう諦めなさい! 貴女に勝ち目はありません!」

「煩い退け! そのエルフは私が殺す!」


そのルリの前に、少し動揺したドラルが立ち塞がった。

ドラルの持つPSG1の銃口が、素早くルリの胸部へと向けられる。


それでもルリは突進を辞めない。

彼女は怒りに支配されていた。


「くっ...... 」


ダァァアン!!


「がっ..... 」

「だから...... 言ったのに...... 」


銃声が木霊した。


冷酷な龍士卿(フロワ・ドラグーン)の2つ名を持つルリは、縛れぬ者達(アンチェインズ)の副隊長になる前は盗賊の頭目だった女。


西大陸で残虐の限りを尽くしたルリと言えど、PSG1が放つ7.62mm弾を防ぐ術は持ち合わせていなかった。


ドラルの放った弾丸は無慈悲にも仲間の死で怒り狂うという、ある種の人間味を見せた元盗賊頭の胸部を穿つ。


ジワっと赤黒い水がルリから流れ出した。ドラルはその光景を見て目を閉じた。


生前どんな悪事を働いても、どんな善行を積もうと、死んでしまったら関係ない。


以前ドラルは、囚われの身となっていたイーリスを助ける際、その場に居合わせた奴隷商人達を殺している。


あの時は私利私欲に走った奴隷商人達に怒りしか感じていなかったドラルだが、冷酷な龍士卿(フロワ・ドラグーン)と呼ばれる程の彼女が散り際に見せた『仲間の死に怒る』姿を見て、彼女の中である言葉が浮かぶ。


彼女は呟く。


「貴女は許されない事をしてきました。でも...... 今は静かに眠って下さい......。

願わくば、貴女が生まれ変わったその時には、奴隷も奴隷商人も...... そして争いも無い、平和な世界があります様に...... 」


両手を握り、横たわる彼女に祈りを捧げるドラルの姿は、まるで聖母の様に慈愛に満ち...... まるで天の使いと見紛う程に神秘的な空気を纏っていた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「た、隊長! この人、強いです!」

「一時撤退しましょう! 今の私達じゃ、この人には勝てません!」


セシルとベリトが火線を開いた丁度その頃、帝と第1(アインス)分隊は、エルド帝国軍特別迎撃隊繋がれぬ者達(アンチェインズ)の隊長、オスマンを見て冷や汗を滲ませていた。


銃火器という存在に絶対の自信を持っていたヒメユリ隊員達の動揺が特に酷く、その瞳には恐怖の色が浮かんでいる。


「ちっ...... 不味いな、皆が浮き足立った。此処で俺達が撤退したら、俺達は元より、王国軍全体が瓦解しちまうぞ」

「おいミカド! 策はねぇのかよ!」


そして隊員達程ではないが、帝とレーヴェも少なからず狼狽えていた。


( どうする。そろそろ後方に回らせたロルフ達が攻撃を仕掛ける頃だ。

正面と後方からの攻撃を仕掛け、敵を混乱させるのがこの作戦のミソ。

もし俺達がここで撤退でもしたら戦線に穴が開く...... そうなれば帝国軍は直ぐに立ち直って、数に物を言わせ王国軍を包囲しにかかって来る...... と、なれば...... )


「レーヴェ、1分...... いや、30秒で良い。皆であのオスマンを足止めしてくれ」

「あ、足止め? 何をする気だよ!」

「決まってんだろ! 5.56mm弾が効かねぇなら、もっとデケぇ弾をお見舞いしてやんだよ!」

「なるほど...... わかった! 第1(アインス)分隊! 僕達の隊長を護るぞ!」

「「「「「い、イエッサー!」」」」」

「無駄な足掻きを!」

「無駄かどうか...... これを食らってから言いやがれ!」


帝は何とかしてこの男を倒す他ないと結論付けた。


その為に帝は30秒間、この化け物を引き付ける様にとレーヴェ達に頼む。

その頼みを聞き、帝の考えを察したのだろうレーヴェはニヤッと口元を歪めて声を張り上げ、フロイラ達を率いオスマンに突撃した。


ドォォォン!


「ぐっ...... ! 小癪な!」

「チッ! 20mm弾も効かねぇのか!? 」


爆音が轟く。

レーヴェが銃斧(ガン・アックス)の20mm炸裂弾を放ったのだ。


しかし、至近距離でこの弾を受けたオスマンは苦しそうに顔を歪めるだけで致命傷に至った様子は無い。

苛立たしげにレーヴェを睨んだオスマンは、ギュッと眉間に皺を寄せる。


「皆、拡散して此奴を攻撃だ! 誤射フレンドリー・ファイアに気を付けろ!」


昼間に巨大な鎧...... 魔導兵を打ち砕いたレーヴェの20mm炸裂弾もオスマンには効かなかった。


あわよくば今の攻撃でオスマンを倒せれば...... と、期待したレーヴェだったが、攻撃が効かない事を悟ると直ぐに作戦を変える。


レーヴェは、フロイラ達にオスマンを囲わせ、多方向から攻撃する様に指示を出した。


「わかりました!」

「了解!」

「イェッサー!」


タタタタタッ!!

ドォォン!!


「ぐっ! ぬぅ!」


小さく乾いたい沢山の音と、時折大きな爆音が反響する。

今、帝を除いた第1(アインス)分隊はレーヴェの指揮の下、帝の前に立ち塞がりオスマンに鉛玉を送り続けている。


8人から同時に銃撃を受けると、流石のオスマンでも銃弾の勢いに押され防御に徹する他なく、呻き声を漏らしていた。


「HK416Dの5・56mm弾、それにレーヴェの20mm炸裂弾もオスマンに傷を負わせられなかった......。

と、なるともっと大きな弾が必要だ...... なら...... 」


そして帝は、レーヴェ達がオスマンを引き付けている間、ブツブツと呟き続けていた。


( 彼女達なら問題なくオスマンを引き付けてくれる。

なら俺は、確実にオスマンを倒す武器を召喚しないと! )


「5.56mm弾も20mm炸裂弾も効かねぇなら...... コイツはどうだ!」

「がぁぁあ! 小賢しい真似を!」

「っ! ミカド! 危ねぇ!!」


帝の頭の中である武器が思い浮かぶ。

そしてソレを召喚しようとすると同時に、痺れを切らし、火線を振り払ったオスマンが帝目掛けて突っ込んで来た。


レーヴェの悲鳴が木霊する。


しかし。


帝にやられる気は更々無かった。


「死ね小僧!」


オスマンがモーニングスターを振り上げる。

そんな状況下でも、帝は恐れる事なくオスマンを睨む。


アドレナリンが身体を駆け巡っている。

今の帝には恐怖心などと言う物は無く、闘争心に突き動かされていた。


「生憎だが、死ぬのはテメェだ。スキル発動!【剛力】! 続けて召喚! 8・8cm砲(アハト・アハト)!」


今は四の五の言っている場合では無い。


帝は、何も無い空間に自身が思い浮かべた物を召喚する加護を使い、ある武器を召喚した。


強烈な光が帝を包み込む。

そして光が消えると、帝の手には...... いや、正確に言えば帝の小脇には、普通の人間にはとても持てないだろう巨大な鉄塊があった。


その鉄塊の名は【8・8cmPaK43】。



通称アハト・アハトと呼ばれている対戦車砲だった。



この8・8cmPaK43は、元はナチス・ドイツ軍が爆撃機や戦闘機を撃ち落とす為に開発した対空砲【8・8cmFIaK】を対戦車用に手直しした物で、ティーガーII等の戦車の主砲としても使われた。


つまり、帝はHK416Dや20mm炸裂弾も効かないオスマンは戦車並みの頑丈さを待っていると判断し、確実に倒す為、対人用としての運用を想定していない対戦車砲、8・8cmPaK43を召喚したのだ。


「な、なんだこれは!? 何故何も無い空間からこんな物が!」

「これが俺の魔法だ。穿て8・8cm砲(アハト・アハト)!」


更に、帝は新たに使える様になったスキルも同時に使い、その巨大な武器を抱え上げ、召喚する際に側部に設けた引き金(トリガー)を引いた。



ドォォォォォォオン!!



HK416Dと比べ、数10倍もある巨大な銃口が狼狽えるオスマンに向いた。

刹那、先程レーヴェが20mm炸裂弾を放った際に轟いた爆音とは比べ物にならない轟音が大地に響き渡り、黒煙と炸薬の臭いが周囲を包み込む。


そして


巨大な火球が、オスマンの腹部に吸い込まれる様に飛翔した。


「ごはっ!?」

「へっ...... 流石のテメェでも88mm弾は効いたみてぇだな」


オスマンは僅か15m程の距離から8・8cm弾を喰らい、その巨躯は数10mも吹き飛んだ。


2m近い巨体ががまるで石ころの様に地面を転がっていく。

オスマンは、数秒経っても起き上がってくる様子もなく、そのまま大地に沈んだ。


生死までは分からないが、少なくとも戦線離脱と判断して良いだろう。


「だ、大丈夫かミカド!」

「お怪我は!?」

「あぁ、問題ねぇ」

「た、隊長! そ、その武器は? それに今の光は?」

「その事については後で説明する! それより今は作戦に集中するんだ!」

「「「「「い、イェッサー!」」」」」


オスマンを倒した帝の元にレーヴェ達が駆け寄ってくる。


案の定、フロイラは帝が見せた加護の追及をしたが、今の帝にはこの加護を1から説明している暇は無かった。


「スキル発動、【収納術】!」

「「「「「武器が消えた!?」」」」」

「行くぞ! 俺に続け!」

「ほら、ボサッとしてると置いてくぞ!」

「あ! ま、待ってください隊長! レーヴェさん!」


帝は手早く事前に内容を確認していたスキル、【収納術】を発動させる。

すると、召喚した時と同じ様に、眩い光が鉄塊を包み込んだ。

数秒後、その鉄塊は跡形も無く姿を消していた。


その光景を見て、また目を見開いたフロイラ達に檄を飛ばした帝は、追及を受ける前にポイントE5(エコー・ファイブ)に向け走り出した。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「す、すげぇ! 冷酷な龍士卿(フロワ・ドラグーン)まで倒したぞ!」

「「「「「おぉぉおお!!」」」」」


2人の戦いを遠巻きから見守っていた元奴隷達が更に雄叫びを上げた。

彼等の予想に反し、たった2人で強敵繋がれぬ者達(アンチェインズ)を全滅させた彼女達の働きは、元奴隷達の士気を更に高める結果となった。


「皆さん! 私達の前に立ち塞がった敵は排除しました! このまま敵を攻撃します!」

「皆、付いて来て...... 」

「おぉ! 君達が居れば百人力だ!」

「行くぞ!」

「「「「「おぉぉおお!!」」」」」


マリア、ドラルの戦いを見て士気を上げた元奴隷達は、我先にと募り積もった恨みを晴らそうと、エルド帝国正規軍陣地へ向け突っ込んで行く。


「ミカドさん...... 」

「ドラル、ミカドなら大丈夫...... 私達は私達に出来る事を...... 」

「マリアの言う通りだ。彼奴なら簡単にゃ死なねぇよ。彼奴は俺に勝った男だぜ?」


走り出した元奴隷達を横目に、ドラルは目線を東へ向ける。

彼女の目には、帝を心配する気持ちが溢れていた。

そんなドラルに、マリアと2人の戦いを見守っていたヴァルツァーが声をかける。


「...... そうですね。私達は私達に出来る事をしましょう!」


マリアとヴァルツァーの言葉を受け、小さく微笑んだドラルは目線を正面に戻す。


3人は信じていた。

私達の隊長は死なないと。

俺に勝った彼奴は死なないと。


3人は駆け出した。

今も懸命に戦っている仲間の為に。

この戦いに勝つ為に。





此処までご覧頂きありがとうございます。


約1ヶ月もの長い間更新出来ず申し訳ありませんでした。


これからも暫く更新が遅れがちになってしまいますが、よれけばお付き合いください。


ご意見ご感想頂けましたら幸いです。


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