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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第5章 戦争
169/199

153話 2人の少女 4




昔々ある所に、勇猛果敢で死を恐れぬ戦士達が住む小さな村がありました。


その村に住む勇敢な戦士達はどの種族よりも強靭な身体と、どの種族よりも永い寿命を持っていました。


戦士達はその産まれ持った素質を使い、凶暴な魔獣に怯える人々の盾となり、剣となって戦いました。


それが自分達の使命。

人々の為に戦う事こそ、7龍様が我等にこの肉体と寿命を与えたもうた理由なのだ。そう考えたからです。


ありがとう。ありがとう。


戦士達に助けられた人々は口々にそう言いい、感謝の念と尊敬の眼差しを向けました。


しかし、時は移ろいます。


数十年経っても変わらぬ姿。永年の営みで培われた武勇を持つ戦士達に向けられた感謝の念と尊敬の眼差しは、次第に変化していきました。


感謝の念は憎悪の念へ...... 尊敬の眼差しは恐怖の眼差しへ変わりました......


人々はいつしか自分達とは違う理に生きる戦士達を不気味がり、恐怖し、遠ざけ、関わりを絶ったのです。


そして更に永い月日が経つと、戦士達の心にも変化が訪れます。


何故我等は死ねない。

何故我等は生きている。

人々の為に戦ってきた我等が、その人々に拒絶された。

ならば我等はこれからの長い月日、何の為に生きれば良い。


永遠とも言える永い月日と、古に人々から拒絶されたという負の記憶が戦士達の心を蝕み、その心を壊していきます。


そして戦士達は、明日を生きる事を投げ出し、死を求める様になりました。


しかし、戦士達は自らの命を絶つ愚行を犯しません。

自ら命を絶った者は戦士ではなくなる。

自らの命を絶つ事は最も忌むべき行為であり、戦士でなくった者は天界へ行けない。

強大な敵に挑み、死ぬ事こそ我等の名誉...... という、固い掟と誇りがその村に有ったからです。


戦士達は考えました。

如何にすれば掟に背く事なく、戦士として死ねるのかを。


そして導き出した答えが、皮肉にも戦いでした。


戦士達は誇りを持って死ぬ為だけに戦いを求め、各地を放浪します。


1人、また1人と、戦士達は凶暴な魔獣や強き部族に戦いを挑み、微笑みながら命を落としていきました。

そして最後の1人となった戦士は、幼い姉妹に語りかけます。


許してくれ。永きに渡る間拒絶され続け、明日を生きる事を投げ出した私を。

許してくれ。年端もいかぬお前達を殺せぬ私を。

許してくれ。娘を残して死ぬ私を。


そう言って最後の戦士は、幼い姉妹に襲いかかった双角獣(ツヴァイホルン)の群れに単身突撃をし、掟を破る事なく、誇り高き戦士として、無事に天界...... 戦士達の宮殿(ヴァルハラ)へ旅立ちます。


残された姉妹は幼いながらも、自分達がどの様な境遇の中生きていたのか。自分達がどの様な種族なのかを理解していました。


自分達も戦士達の娘として立派に戦い、掟に背く事なく誇りを持って死のう...... そう考える様になるのに、それ程時間は要しませんでした。


そしてまた月日は流れます。


いつしか姉妹の前に敵は居なくなりました。

遥か昔、戦士達に打ち勝った部族の子孫は元より、凶暴な魔獣でさえも、姉妹の姿を見れば死を恐れて逃げる様になったからです。


もうこの大陸に自分達を殺せる者は居ない。


そう悟った姉妹は生まれ育った大陸を離れ、行き先の分からない旅に出ます。

掟に従い、勇敢に戦って死ぬ旅に。

誇りを持って、殺されても良いと思える相手に出会う旅に。


そして故郷を遠く離れた地で勃発した大戦争の最中、姉妹は運命の出会いを果たします。


姉妹は遂に、心から殺されても良いと思える運命の相手に巡り会えたのです......


「これが、不死者(アンデット)族の物語です...... 白髪の人」

「な、なんだよそれ...... 」


姉妹は語り終えると、絶句している俺へ、歓喜とも、悲哀とも取れる様々な感情が入り混じった瞳を向けた。


「これでお分かりになったでしょう。私達がどういう種族なのかを」

「これが私達。不死者(アンデット)族なんだよ。お兄さん」


姉妹は表情こそ笑ってはいるが、それは今にも泣き出しそうな笑顔だった。


詳しく聞き返すまでもない。

彼女達が言った姉妹とは自分達の事で、しかも目の前で親を亡くしていた......


彼女達の種族は死ぬ為だけに永い間...... 途方もなく永い間、戦いを...... 自分達が殺されても良いと思える相手を求め、旅を続けていたのだ。


たかだか数十年しか生きられない人間の俺には、到底考えられない様な体験を彼女達はしてきたのだ。


「それが...... お前達が此処に居る理由か」

「はい。私達がこの地を訪れた丁度その時、此度の戦争が勃発しました」

「戦争なら強い人達が沢山居る筈。だから、リリベル達は戦ったの」

「...... もしかしてお前達、死ぬ為にエルド帝国軍を攻撃したのか?」


ここで俺はある事を思い出した。


日の出と共に勃発した此度の戦争の初戦で、第1連隊駐屯地に奴隷達と共に攻撃を仕掛けてきた帝国軍の1部隊...... 帝国軍正規兵と思しき連中が何者かに斬殺されていた事を。


「あぁ...... 多種族の人達を率いて、貴方方の砦を攻撃していた帝国軍の部隊なら攻撃しましたね」

「あの時お兄さん達は砦の中に立て籠もってて攻撃出来なかったから、代わりにあの人達を攻撃したんだよ〜。でも、弱過ぎてガッカリしたな〜」

「そうね。大勢の部下を率いていた様だから、実力はあると思ったのだけど...... 期待外れだったわね」

「やっぱり...... 」


俺は斬殺されていた帝国軍を見て、帝国軍と王国軍以外の第3の勢力が居ると考えたが、その第3の勢力の正体は彼女達だったのか......


「で...... 俺達が2人の御眼鏡にかなった訳だな」


彼女達が死を望んでいると痛い程分かった俺は本題に入った。


「えぇ。先程も言いましたが、貴方方は僅かな手勢で数万の帝国軍陣地に侵入した。しかも、闇雲に侵入した訳ではなく、恐らくあの鎧達を撃破する為の策を立てて......

私は国境を越える貴方方を見つけ様々な憶測を立てましたが、その憶測全てには必須の条件がありました」

「必須の条件...... 」

「それは、お兄さん達が凄く強いって事だよ。

お兄さん達が帝国軍の陣地に侵入したのには必ず理由がある。ってリズベルは言ったんだけど、その理由が敵の総大将の暗殺でも、物資の破壊でも何でも、兎に角凄く強くなきゃ、逆に帝国軍に殺されちゃう」

「リリベルの言う通りです。そして貴方は、敵の鎧達を見事破壊せしめた。

簡単にまとめるなら、貴方方は強く、頭もキレる。これが、貴方方になら殺されても良いと思った理由です」

「うんうん。あ、あとは一方的に邪龍(ブゥーゼドラッヘ)達を倒して、気高い白狼(ヴァイスヴォルフ)まで手懐けてたのも理由かな? 人の身でそんな事が出来るなんてあり得ないもん!」

「さて、無駄話はここまでにしておきましょう...... 」

「そうだね。ねぇ、お兄さん」

「ねぇ、白髪の人」

「「私達と戦って、私達を殺して下さい」」

「っ...... 」


一方的に話を打ち切った彼女達から、妖気と表現しても差し違いない禍々しい気が漏れる。

いや...... 実際、妖気なんてものは見やしないが、それ程までに不気味な何かが、彼女達を包み込んだ。


しかも彼女達は、傍に立て掛けていた巨大な鎌を手に取り、ユラリと1歩足を踏み出した。


「さぁ、白髪の人。誇りを持って戦いましょう?」

「そして死を。私達を死なせて?」

「「さぁ、戦いを。さぁ死を」」

「こんの...... 」

「「え」」


「馬鹿野郎!!」


「いっ!?」

「ったぁ!?」


クソが...... もう我慢の限界だ。


「え...... え?」

「な、何するのお兄さん!?」

「五月蝿い! そんな死にたがりの馬鹿野郎共の願い、俺がハイそうですかって叶える訳ねぇだろ!」


俺は彼女達の頭に拳骨を叩き込んだ。


彼女達の境遇は確かに辛い。


だからと言って、生きる事を投げ出そうとするその考えが許せなかった。


俺は明日を生きる為、愛する人の死を乗り越え生きようとしている人達を知っているから。

どんな理不尽な境遇にあっても、我武者羅に明日を生きようとしている奴等を知っているから。


そして何より、俺も明日を生きる為に必死だからだ。


「お前達が死にたくなる気持ちもよく分かる! 昔色んな人達に拒絶されて、これ以上孤独に耐えられないってのも理解出来る!

だからって...... 死にたいなんて悲しい事言うなよ...... 」

「お兄さん...... 」

「なら...... なら、私達はどうすれば良いのですか!

この先も他人に恐れられ、避けられ、妬まれながら生きろと言うのですか!」


リズベルが叫んだ。

気丈に振る舞っていた様にも見えた姉のリズベルだが、既にその心は限界を超えていた。


「お兄さん、私達の話聞いたでしょ? もうリリベル達は生きる事に疲れたの...... 」


そして妹のリリベルは消え入る様なか細い声で呟いた。

掟で自殺を禁じられ、戦いでしか死ぬ事を許されていない彼女もまた、限界だった。


「なら...... 俺が! お前達に生きる喜びを教えてやる!

お前達はいつ死んでも良いんだろう!

ならその命、俺に寄越せ!」

「「は...... ?」」


俺の言葉を聞き、彼女達はキョトンとした。


「俺達は明日を生きる為に、強大な敵と戦ってる。

だから、俺達が明日を生きる為に、お前達の命を寄越せ!

昔人々に拒絶された? なら俺がお前達を受け入れる!

2度と死にたいなんて口に出来ない位、生きる事の素晴らしさをお前達に叩き込んでやる! だから...... 俺と一緒に生きろ!」

「「ふ...... 」」

「「あはははは!」」

「...... え?」


まくしたてる様に吠えた俺を他所に、彼女達は大きな声で笑い出した。


「ふふ...... 白髪の人。貴方は私達に生きろと仰ったのですか? 貴方と共に生きろと」

「...... そうだ。俺の目の前で死にたいなんて2度と言わせねぇ。

お前達に、心の底から生きたいって言わせてやる」

「でもお兄さん。死にたがってる私達に、生きたいって言わせるのは難しいよ?」

「だろうな。でも関係ねぇ」

「クスッ...... ねぇ、リズベル」

「えぇ、リリベル。『生きろ』なんて、初めて言われたわね」

「うん。ならさ...... 」

「そうね...... 」

「な!? お、おい!」


僅かな言葉と共に目線を合わせた姉妹は、なんと手に持った鎌を自身の人差し指に沿わせた。


赤黒い血が彼女達の人差し指から滴る。


俺はその光景を見て、混乱した。

2人は何がしたいのだ。


「これは不死者(アンデット)族の風習です。古の戦士達は、戦士と認め合った者の血を混じり合わせ、血の契り...... 【ブルード・フェアトラーク】を立てました。

それは死してなお途切れぬ戦士の絆。それは互いに命を預け、戦う者達の血の誓約」

「お兄さんの覚悟が本当なら...... 分かるよね?」


つまり、この2人は不死者(アンデット)族に伝わる血の契り(ブルード・フェアトラーク)を結べと言っているのだ。


俺の気持ちが本当ならと。

俺の言葉が本心ならと。


「上等だ」


俺はリリベルが差し出した鎌を手に取った。

重い。レーヴェが使う銃斧(ガン・アックス)と遜色ない重さだ。


俺はその鎌の切っ先を人差し指に這わせる。


切れた指先から血が滲み、鋭く痛んだ。


「我、リズベル・ラ・ロード・シュテルプリッヒは誇り高き我が名の下に誓う。かの者と血の契りを交わし、我が命を預けん」

「我、リリベル・ル・ロード・シュテルプリッヒは誇り高き我が名の下に誓う。かの者に我が力を預け、死するその日まで戦士として戦う事を」

「...... 俺、西園寺 帝は我が名の下に誓う。この2人に、生きる事の素晴らしさを教える事を」


リズベルとリリベルは格式張った言葉を述べた。それを見て、俺も自分へ誓いを立てる。


孤独に潰れそうになっている彼女達に...... 古の拒絶に心を蝕まれ、明日を生きる事を投げ出しかけた彼女達に...... 永き時間をたった2人で生きてきたこの彼女達に、生きる事の素晴らしさを教えると。


リズベルとリリベルが血の滴る人差し指の先端を触れ合わせる。

俺もそれに習い、人差し指を触れ合わせた。


3人から流れた血が指先で交り、大きな血の雫を作る。


雫が、音も無く落ちた。


城壁に落ちたその雫は、赤い花が咲いた様に俺達の足元を染め上げる。


「...... 私達と貴方は血の契り(ブルード・フェアトラーク)を交わし、その決意を込めた血は母なる大地に刻まれました。

これで私とリリベルは、貴方と血で結ばれた戦士となります」

「つまり、私達の命はお兄さんの命。お兄さんの命は私達の命って事になるの。

もしお兄さんが、私達に生きたいって言わせられなかったその時は...... 」

「私達は契りに背いてでも貴方を殺します。 ですが、その時が来るまで私達の命は貴方の物」

「お兄さん、私達に生きたいって言わせてね?」

「あぁ...... 絶対に言わせてやる! 覚悟しておけ!」

「ふふ...... 楽しみにしております」

「それじゃ改めて...... 私リリベル! 」

「リズベルです。我等が命、ミカド様へ預けましょう」

「おう...... よろしくなリリベル。リズベル」


互いの血を交わした3人が目線を合わせる。


俺は改めて誓った。

この2人に、生きる事の素晴らしさを必ず伝えようと。


「やれやれ、相変わらず物好きな奴だ...... 」


このやり取りを聞いて、城壁の下に居た白き獣人が小さく笑みを零す。


彼は以前、条約の決まりを犯してでも奴隷商人に囚われた妹を救う。そう言ってくれた帝の姿を思い出していた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「話は済んだか?」

「ヴァルツァーじゃねぇか! 無事だったんだな! 」

「あぁ。あの程度で死ぬ程ヤワじゃねぇよ」

「そうか。って...... それより、もしかして話しかけるタイミングを見計らってたのか?」

「まぁ、そうだな。ミカド、お前は本当に物好きな奴だよ」


血の契りを交わしてからすぐ後、俺はリズベルとリリベルに少しでも休む様に伝え、間借りしている兵舎に向かわせた。

すると、彼女達と入れ違いになる様に、白い尻尾を揺らしたヴァルツァーが城壁の上に姿を見せた。


と、言うか...... さっきのやり取りを聞かれてたのか。

まぁ、別に聞かれて困る様な事じゃないから良いけど。


「ほっとけ」

「しかしお前、あの2人は不死者(アンデット)族なんだろ? 軽率に血の契り(ブルード・フェアトラーク)なんて結んで良かったのか?

彼奴等は、ボロボロになっても戦いを止めない狂戦士族(バーサーカー)って言われてるんだぞ」

「...... 狂戦士族(バーサーカー)だろうが何だろうが関係ねぇよ。

あの姉妹の事を見て見ぬフリをするのは俺の考えに反する。 例え約束が守れなくて殺される事になってもな」

「そうか...... なら、俺がとやかく言う訳にゃいかねぇな」


ヴァルツァーはそう言うと、小さく微笑んだ。


俺は自分の命が欲しくてリズベル達を仲間に誘った訳じゃない。


もし仮にあの場面でリズベル達を仲間に誘わなかったら、俺は戦いをけしかけられ、死んでいたかも知れない。


いや、ほぼ間違いなく。確実に殺されていただろう。

彼女達は巨大な鉄の鎧...... 魔導兵を一太刀で斬り伏せる実力の持ち主。

そんな彼女が相手では、如何に銃火器で武装してるといっても勝てると断言は出来ない。


だがこれだけは確かだ。


あの姉妹に、生きる事の素晴らしさを教えたいという気持ちは。


あの時は死への恐怖よりもこの感情の方が優った。あの時の言葉は、この感情が自然と口から出た。それだけだった。


「それよりも、情報収集は上手くいったのか?」


妙な気まずさと気恥ずかしさを感じた俺は、頬を掻いて話題を変えた。


「おう。お前達と閣下達がバカみたいに騒いでくれたからな。 誰にも悟られず情報収集出来た」

「そりゃ騒いだ甲斐がある。で、どうだった?」


ヴァルツァーには俺達が魔導兵破壊作戦を実行している間、帝国軍に加わっている獣人達が魔法具で操られているか否かを探らせていた。


ヴァルツァーの表情を見た限りでは、何か収穫があったと見て良いだろう。


「まぁ、落ち着け。完結に言えば、同族達は勿論、エルフや龍人達は...... 睨んだ通り魔法具で操られていた」

「っ! やっぱりか!」

「あぁ。しかも、同族達はかなり組織的に操られているらしい」

「組織的に? どういう事だ」

「つまりだ...... 」


一難去ってまた一難。

リズベル・リリベル姉妹の件に一応片を付けた俺は、次なる問題にぶち当たった。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「って事は...... 奴隷達は300から500人単位で【操師(そうし)】とか言う奴等に操られてて、更にその操師達を【操導師(そうどうし)】って奴が纏めてるのか」

「そうだ。帝国軍の1000人将って将官に聞いたから間違いねぇだろう」


ヴァルツァーの報告を聞く事5分。

一通りの報告を聞いた俺は、内容を脳内で反芻する。


ヴァルツァーの話では、帝国軍は他大陸から連れて来た獣人や龍人、エルフやドワーフと言った種族を、其々を種族別に数百人単位で振り分けているそうだ。


そして振り分けられた人達は、ベルガスの催眠魔法をモデルに開発された催眠魔法具を使う、【操師】【操導師】という奴等に操られているらしい。


ヴァルツァーはこの事を、敵の兵士から聞き出していた。


どう聞き出したかなんて野暮な事は聞かない。

そもそも怖くて聞けなかった。


「その操師達が使ってる魔法具ってのは、ハールマンが持ってた催眠魔法具を改良した物なのか?」

「そこまでは分からなかった。俺が尋問した1000人将も、そこまでは知らなかったからな」

「なるほどな...... いや、待てよ...... 」

「ん? どうかした。なんか心当たりでもあるのか? 」

「あぁ! 実はあの鎧達を破壊した後、狂気の教授(ヴァーンズィン・プロフェッサー)って奴を生け捕りにしたんだよ! 」

狂気の教授(ヴァーンズィン・プロフェッサー)...... って、おいおいマジか!? 狂気の教授(ヴァーンズィン・プロフェッサー)って言えば、覇龍7将軍の1人で、帝国軍の兵站部隊や武器開発部門のトップらしいぜ? 何処で捕らえたんだ」

「やっぱりな。たまたま鎧達の近くに居たから捕まえたんだよ。

彼奴、覇龍7将軍の1人だったんだな...... 」

「なんだ、お前知らないで捕らえたのか?」

「あの時はバタバタしててな。そう言えば、俺は覇龍7将軍の1人だとか叫んでたかも......

兎に角。其奴は鎧達...... 狂気の教授(ヴァーンズィン・プロフェッサー)は魔導兵って呼んでたんだが、この魔導兵の詳細を聞き出せるかもって思って捕らえたんだよ」

「って事はだ...... 」

「あぁ...... 」

「「武器開発部門トップの狂気の教授(ヴァーンズィン・プロフェッサー)なら、この催眠魔法具の事を知ってるかも!」」

「こうしちゃ居られねぇ! 早いとこ閣下達に知らせに行こうぜミカド!」

「おう! 」

「はは、やっぱお前凄ぇよ! 」

「よせよせ。照れるだろ」


どうやら、俺達は幸運の女神様に気に入られているらしい。


俺とヴァルツァーは軽口を叩き合いながら城壁を駆け下りる。


魔導兵を無事撃破したとは言え、目の前にはまだ数万の軍勢が不気味に佇んでいる。


だが俺の脳裏には、次々と新たな作戦が浮かび上がっていた。


初日はなんとか乗り越えたが、これで戦いが終わった訳じゃない。

敵は明日にでも総攻撃を仕掛けてくるだろう。


負けられない。奴隷を平然と酷使する国に負けたら、どんな目に合うか分かった物ではない。


勝つんだ。

勝って皆と明日を生きる。


その為には休んでなんかいられない。


もっと打撃を。


もっと戦果を。


俺は走りながら、どうすれば帝国軍に勝てるか。それだけに集中し、頭を回転させた。







此処までご覧いただきありがとうございます。


まだゆっくり執筆出来る時間が確保出来ず、不定期更新になってしまいます。


申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。


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