151話 2人の少女 2
「お兄さん〜。そのおじ様は殺さないの?」
「そうです。その人は貴方方を殺そうとした相手ですよ?」
拳を鳩尾深く打ち込まれたグラシャは、プツリと糸が切れた様に倒れ込む。
何故この男を殺さなかったのか。俺はこの男に2、3聞きたい事が出来たからだ。だから俺はこの男を捕虜として、第1連隊駐屯地へ連れて帰る事にした。
このグラシャという将軍は、言動から判断するに魔導兵を作ったか、製作に携わった人物と見てまず間違いないだろう。
しかも此奴は、自らエルド帝国軍に僅か7人しか居ない覇龍7将軍の1人だと名乗った。
となれば、この男を捕虜に出来たなら交渉材料にもなるし、それなりの地位も持っている様だから、帝国軍内部の情報を聞き出せるかも知れない。
後は魔導兵達の膝に仕掛けたC4を起爆させ、第1連隊駐屯地へ逃げるだけ。
気絶させたグラシャを抱えても、何とか逃げ切れる筈だ。
そう判断した俺は、崩れ落ちたグラシャを肩に担ぐ。
すると、その様子を見守っていた少女達が声をかけてきた。
少女達の目は、怪しく爛々と光っている。
「あぁ、殺さない。この男には聞きたい事が出来たからな。
それより、2人も逃げろ。ウチの隊員の話じゃ、此処に敵の増援が向かってるらしい。
2人は並外れて強いみたいだけど、流石に大人数が相手だと辛いだろ」
「おぉ〜 また私達の事心配してくれるんだ? お兄さん本当やっさしぃ〜 」
「ふふ...... ご心配して頂き嬉しいです。ですが逃げる前に、私達の質問に答えて下さらないかしら?」
「あ、そーそー!私達もお兄さんの事で色々聞きたい事があるんだ〜」
「は?な、何言って...... 」
「お願いします、白髪の人」
ここは戦場。しかも敵地のど真ん中。
なのに2人の少女は陽気に、スキップでもするかの様に軽やかな足取りで俺の前へ立つ。
この少女達は帝国軍人のグラシャや、その配下の魔導兵を攻撃した。少なくとも敵では無い筈。口調も友好的だが......
俺はこの少女達が味方だとも思えなかった。
「......なら手短に頼むぞ。俺は仲間と合流しなくちゃならねぇからな」
「分かっています。お時間は取らせませんわ」
絡みつく様な目線を受け、心臓の鼓動が速まる。俺は僅かに感じた恐怖に似た感情を顔に出さない様、意識して声を出した。
すると2人の少女は良い所のお嬢様みたいに、優雅な仕草で頭を下げる。
そんな2人を見て、俺は何故かユリアナやローズを連想した。
「私の名前はリズベル・ラ・ロード・シュテルプリッヒ。そしてこの子は私の妹の...... 」
「リリベル・ル・ロード・シュテルプリッヒで〜す!よろしくね。お兄さん!」
「ご覧の通り、私達は人間族では御座いません。私達は誇りある【不死者族】。以後お見知り置き下さいませ」
「お見知り置き下さい!」
俺の混乱を他所に、リズベルと名乗った少女は口元だけを緩めた不気味な笑みを浮かべ、リリベルと名乗った少女は姉とは真反対の無邪気な笑みを此方へ向ける。
其々の頭から生える湾曲した角が怪しく揺れ、少女達は流れる様に優雅な動きで頭を下げた。
真っ白な髪と純白の服が風に靡き、光沢を放つ黒い鎧と、少女達の体格とは不釣り合いな巨大な鎌がより一層不気味に光る。
この不死者族とかいう種族の姉妹は自己紹介をした。なら此方も自己紹介をしなければ礼儀に反する。
「俺は...... 帝だ」
「ミカド様...... 不思議な響...... 」
「そいつはどうも。で?お前達が聞きたい事って何なんだ?」
「そうですね、お時間も無いので単刀直入に...... 」
「ねぇ〜 お兄さんって、さっき帝国軍の人や邪龍達を倒した人達だよね?」
非常事態だが少し悩み、名前だけなら言っても大丈夫だろうと判断した俺は名前だけの簡単な自己紹介をする。
その自己紹介と俺の言葉を受けたリズベルとリリベルは、ペロッと舌舐めずりをした。
「...... そうだと言ったら?」
異様な雰囲気を崩さないリリベル達の言葉を聞き、背中に冷たい物が流れる。
彼女達から漏れる不気味な気配がそれに拍車をかけた。
「その言葉は肯定と受け取りますよ?」
「リズベル、肯定って?」
「自分達が邪龍を倒したと認めたって意味よ」
「おぉ!やっぱり!って事は、リズベルの言ってた予想の1つが当たったね!お兄さん達強いんだね〜。それにヴァイスヴォルフも手懐けちゃうなんてあり得ないよ〜。リズベル、やっぱりこのお兄さんなら...... 」
「えぇ。そうね」
「それが...... どうかしたのか」
「ふふ...... もしかしたら、貴方なら私達の願いを叶えてくれるかもと思いまして」
「願いを叶えてくれる...... だと?」
予想だにしなかった言葉に、俺は首を捻る。
願い?今この子は、俺なら願いを叶えてくれると言ったのか?
この子達は俺に何の願いがあると言うんだ?
彼女達は言葉を紡ぎ続ける。
「えぇ。バレない様にとは言え、僅か数十人で数万のエルド帝国軍陣地へ侵入したその勇気と行動力。
しかも、この行動の裏には緻密に計算された策があるとお見受けしました」
「それはつまり、お兄さん達は数万の軍を相手取っても何とか戦えるだけの力と、作戦を立てられる優れた頭脳を持っているって事」
「この人達なら、私達の願いを叶えてくれる。そう確信し、私達は貴方方の前にこの姿を見せました」
「何が言いたい...... お前達の望みって...... 何なんだ!」
「ねぇお兄さん」
「白髪の人」
「どうか私達を」
「「殺して下さい」」
少女達は、悲しそうに微笑んだ。
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「皆の者臆するな!馬車は小回りが利かぬ!回り込んで攻撃せよ!」
「後方の歩兵共は捨て置け!我等の敵は目の前に迫る馬車のみぞ!」
「「「「「ウーラー!」」」」」
「「「姐さん!」」」
「えぇ。敵の行動は予測通りよ〜!落ち着いて行動なさい!」
「「「「「応!」」」」」
「【龍角の陣】!」
俺と2人の少女達が言葉を交わしていた丁度その頃。
グロウさん率いる王国軍囮部隊とカリーナさん率いるチャリオット隊、そしてベリトが指揮する帝国軍追撃部隊も決着が着こうとしていた。
ベリトの判断を良しとせず、王国軍に攻撃を仕掛けた2人の1000人将は、チャリオットは機動力に劣る事を直ぐ様見抜き、側面に回り込もうとする。
その判断は正しい。
しかし、そうは問屋が卸さない。
「せ、1000将!敵の馬車隊が陣形を!」
「ば、馬車で龍角の陣だと!?」
カリーナさんの声が響き渡ると、それまで直列で驀進していたチャリオット隊50台の内、42台が土煙を巻き上げながら両脇に広がる。
そして瞬く間に、2台1組。計21個の組を組んだ42台のチャリオットが、【↑】字型の陣形を形成した。
【龍角の陣】とは、上空から見た時に、まるで龍の角の様に見えた事から名付けられたとカリーナさんが言っていた。
でも俺の知っているこの陣形の名前は違う。
これはあの戦国時代の大戦、関ヶ原の戦いの際に、島津義弘率いる薩摩隼人達約300人が、前方の徳川家康率いる約8万の軍へ突貫し、無事に敵中突破して逃げ延びた【島津の退き口】の際に使われた【蜂矢の陣形】だった。
この陣の名前の由来は、上から見た時に鏃の形をしているからだ。
自軍とは200倍以上の敵目掛け、後ろじゃなくて前に向かって撤退するなんて普通では考えられないが、薩摩隼人達はそれを成した。
他にも【捨て肝】や【座禅陣】と呼ばれる決死の足止めが有ったのも一因だろうが......
さてさて。つまり何が言いたいのかと言うと...... この蜂矢の陣もとい、龍角の陣は正面突破力に優れ、防御よりも攻撃を優先した際に最も適した陣形という事だ。
「姐さん!全チャリオット隊、陣形整えやした!」
「は〜い!それじゃ、【アレ】の出番よ!」
「っす!聞いたか野郎共!用意は良いか!」
「「「「「応!」」」」」
だが、俺がこの龍角の陣をカリーナさん達に伝えたのは敵目掛けて正面突破をさせる為では無い。
【↑】の最後尾にいるカリーナが声を上げる。
すると、其々の馬車が離れ始め、↑型の陣形が更に巨大に膨らむ。
今、チャリオット隊の横幅は500mを超え、まだ広がり続ける。
「えぇい!狼狽えるな!狼狽えるんじゃない!突撃!突撃だ!」
「敵の小細工に惑わされるな!」
「「「「「う、ウーラー!」」」」」
「ラルキア王国軍め!我等に小細工は通用せぬ所を見せてやる!」
2台の馬車が組を作り巨大な蜂矢の陣を形成した王国軍に対し、冷静さを欠いている1000人将は突撃と繰り返す。
そして遂に、馬足を速め、チャリオット隊の側面を突こうとした帝国軍と、王国軍がほぼ真正面から衝突した。
ここで帝国軍に訪れた不幸は、互いの会敵距離が近すぎてチャリオット隊の側面に回り込めなかった事だ。
「「「がぁぁぁあ!?」」」
「先方の部隊はどうなった!」
絶叫が木霊し、赤い血潮が宙を舞う。
遠目からその光景を見た1000人将が声を荒げた。
「せ、1000人将!先方の騎兵、ほぼ落馬した模様!!」
「敵の馬車隊は目立った損害無し!尚も驀進中!」
「「な、なにぃぃいい!?」」
彼等は訳が分からなかった。
如何に相手が盾や鉄板で覆われた馬車とは言え、巨躯と有数の練度を誇る騎馬隊が一方的に打ち負ける事はあり得ない。と、彼等は考えていた。
しかし、現実としてそのあり得ない事が起こっていた。
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「べ、ベリト将軍!あれを!」
「なっ!なんだと!?」
カリーナさん率いるチャリオット隊の蹂躙を受ける騎馬隊の後方、約300mをひた走っていたベリトに、部下の1000人将が叫ぶ。
1000人将は叫ぶと同時に前方に指を指した。
それを見たベリトは、驚愕の表情を浮かべる。
彼の目には、チャリオット隊とすれ違いざまに次々と落馬する味方の姿が映ったからだ。しかも、敵の馬車隊に目立った損害は無く、先走った2000の騎兵へ攻撃を敢行していた。
「あ、あれは!」
この時ベリトは気付いた。
敵の馬車隊は其々2台づつが横並びになっている事に。
そして、その馬車の間に何か光る物がピンと張っている事に。
「なんて事だ!ベリト将軍!アレは鎖です!味方の騎馬隊はあの鎖に足を取られたのです!」
配下の1000人将も、馬車の間に走る物の正体に気付いたらしい。
これこそ、帝が帝国軍の騎馬隊を撃破する為に取った秘策だった。
今、チャリオット隊の蜂矢の陣は横幅600mに達しようとしていた。しかも其々の馬車の間には約10mの鎖が張り巡らされている。極め付けに、このチャリオット隊は【↑】の先端...... 【∧】の部分に居る馬車を其々互い違い、ズラす様に配置されていた。
俺は、カリーナさんに帝国軍騎馬隊が攻撃の構えを見せたら、組を組ませた馬車にこの蜂矢の陣を組ませて、予め各馬車を繋げる様に搭載していた鎖をピンと張る様にと事前に指示していた。
ここで蜂矢の陣が活きる。
帝国軍騎馬隊は直列の陣形で王国軍を追撃しようとしていた。これに対し、チャリオット隊は【↑】の蜂矢の陣で対峙した。
如何に帝国軍がチャリオット隊の側面を攻撃しようにも、会敵距離が短く、目と鼻の距離まで接近している状況。
更に横幅600mも有るチャリオット隊の側面に回り込むのは、如何に機動力に優れた騎馬隊とは言え無理は話だった。
そこへチャリオット隊が襲いかかった。
結局側面に迂回出来なかった騎馬隊は、このチャリオット隊のほぼ真正面へ突っ込む形になってしまった。
ちなみに、龍角の陣の先頭には2台のチャリオットがひた走り、その少し後ろに4台のチャリオットが。またその後ろには6台のチャリオットが...... と、言った具合に計50台ものチャリオットが大地を驀進していた。
それは真上から見れば、先端は巨大な三角形になっている事がわかる。
この為帝国軍は突撃を図っても、彼等は正対する2つの辺に沿う様に突撃するしかない。
しかし、この陣形の間には、鎖帷子の元となる小さく細い鎖の束を幾つも編み込み、強度を増した太い鎖が2重3重に張り巡らされていた。
この鎖は第1連隊駐屯地の隊員が、新しく鎖帷子を作るのに使っていた物を流用した物だ。
例え帝国軍の騎馬兵が先頭のチャリオット組の鎖を避けても、後方にはまだ鎖を張り巡らせたチャリオットが何台も居る。
これでは余程馬術に優れていなければ避けれるものではない。
帝国軍の騎馬隊は、この鎖に足を取られ落馬した訳だ。
「王国軍よ!今だ!落馬した帝国軍に攻撃を浴びせよ!」
「「「「「おぉぉお!!」」」」」
「「「「ぎゃぁぁぁあ!!」」」」」
「マズい!このままでは2000人が全滅する!」
その時、左右に別れて逃げていたグロウさん率いる部隊も動いた。
彼等はチャリオット隊の動きに呼応する様にグルリと180度反転すると、走りながら落馬した帝国軍騎馬隊目掛け、矢や攻撃魔法を叩き込んだ。
鎖に足を取られ落馬した騎兵には最早、抗う手段は残されていなかった。
ヨロヨロと立ち上がろうとした次の瞬間には矢で身体を射抜かれるか、攻撃魔法で吹き飛ばされる。
チャリオット隊が騎馬隊の陣をかき乱し、落馬した騎兵のトドメは反転した王国軍が指す。
俺の考えた作戦が、予想通りに発動し予通りの成果を上げた。
撃破された帝国軍騎馬隊は総数1500に迫ろうとしていた。
「撤退!撤退だ!これ以上彼等を死なせられない!撤退のラッパを鳴らせ!」
「は、はっ!」
プォォォオ〜!
帝国軍の撤退を告げる、甲高くも何処か神々しい金管楽器の音色が響き渡る。
囮役のラルキア王国軍とエルド帝国軍の追撃戦は、ラルキア王国軍の勝利で幕を閉じた。
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「こ、殺してくれ?」
「はい、白髪の人。貴方なら私達を殺してくれる...... そう思ったのです」
「ねぇお兄さん。お願い。私達を殺して?」
「ふ...... 巫山戯んなッ!」
悲しそうに微笑み続ける少女達に俺は怒鳴り散らした。
「殺してくれだと!? 寝言は寝て言え!俺は女子供を殺す趣味はねぇぞ!」
「女子供...... 私達を見てそんな事がまだ言えますの?」
「そうだよお兄さん。普通の女の子や子供がアレを倒せる?」
そう言うと、妹のリリベルは自身の後ろに指を向ける。
其処には、光沢を放つ魔導兵の残骸が転がっていた。
「そ、それは...... 」
「白髪の人。私達は貴方が思っている様な生き物ではないのです」
「そうだよお兄さん。不死者族って聞いた事ないの?」
「...... いや、無い...... その不死者族がなんだってんだよ!」
「私達は...... と、時間切れの様ですね」
「は?時間切れ?」
「お〜!見て見て!追手だよ!」
ポツリとリズベルが呟き、リリベルが楽しそうに目線を南西へ向ける。
「見えたぞ!てめぇら其処を動くんじゃねぇえ!!」
「総員サブナック将軍に続けぇええ!」
目線の方向には、巨馬に跨り此方を指差す戦棍と盾の申し子ことサブナックと、2000程の歩兵。
そして更に少し後方には、ボロボロになりながらもサブナック達を追う500騎の騎兵が確認出来た。
「ちっ、レーヴェが言ってた追っ手か!おい!リズベル!リリベル!」
「なんでしょう」
「はーい」
「後で詳しい話を聞いてやるから、今はこの窮地を脱する!だから力を貸せ!」
俺は集中して状況を分析する。
サブナックに追走する歩兵達は、恐らくサブナック直属の部隊。そして後方の騎兵達は満身創痍な様子を見る限り、ロルフが引き付けていた追撃部隊の生き残りだろう。
サブナックの部隊は俺達を殺す為に、そして騎兵達はロルフを追いかけて此処へ来たと考えていいだろう。
という事は、俺は今からこの2000の歩兵と500の騎兵から逃げなくてはならない。
幾ら何でも、1対2500の戦力差で戦いを挑む程俺は馬鹿じゃない。だから俺は、未だに能天気な態度を崩さないこの姉妹に協力を仰いだ。
「え!お兄さん私達を殺してくれるの!?」
「違う!お前達が何で其処までして死にたいか詳しく話を聞くだけだ!だからその話を聞く為に、逃げる為に俺を援護しろ!」
「...... わかりました。私達も有象無象の帝国軍に殺されるつもりは毛頭ありません。協力しましょう」
「まぁ、リズベルがそう言うなら協力してあげる」
「よし、逃げるぞ!」
「えぇ」
「はーい」
怪しい姉妹に協力を取り付けた俺は、気絶させたグラシャを肩に抱えたまま北の方角へ走り出す。
「2人共、身体能力強化だ!一気に駆け抜けるぞ!」
「しかし、白髪の人。この方角は...... 」
「大丈夫だ!俺に策がある!」
「...... わかりました」
「ん〜...... あの程度の人数なら、私とリズベルなら逃げなくても良いんだけどね〜」
「リリベル」
「わかってますよ〜。それじゃ!」
「「「身体能力強化!」」」
「クソが!待ちやがれ!」
「誰が待つか馬鹿!」
走り出して直ぐ、後方からサブナックの苛立った罵声が聞こえた。
俺はその罵声に罵声を返しつつ、サブナック達が先程まで俺達が居た場所...... 魔導兵が鎮座している所まで到達するのを待つ。
そして......
「今だ!」
サブナックが率いていると思われる2000の歩兵と、500の騎兵の大部分が魔導兵達の居る丘に登り切ったのを確認した俺は、ポケットから手の平サイズの物体を取り出す。
カチッ!
俺はその物体に付いているスイッチを押した。
ドガァァァァアアアン!!!
「な、なに!?」
「攻撃魔法?いや、この威力は攻撃魔法よりも!」
直後、大地が揺れ爆音が天に轟き、俺の後方を走る姉妹が目を見開いて後ろへ顔を向けた。
俺が押したスイッチは、C4に取り付けた信管を爆破させるスイッチだった。
スイッチを押してから1秒の差もなく、50体の魔導兵の膝に設置された100個のC4が一斉に爆発し、2500の敵兵を巻き込み血と鉄を混ぜた巨大な土煙を上げたのだ。
「見たか!これが俺の!俺達の戦い方だ!」
金属が軋む音や、舞い上がった小石や魔導兵の破片が地面に落ちる音、そして帝国軍達の絶叫が響き渡った。
ツンと火薬の香りと血の香りが鼻をつく。そんな阿鼻叫喚の大地に、俺の会心の咆哮が木霊した。
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