129話 入隊と引越し 2
「よし!それじゃセシルとマリア、それと女将さん達にはまず屋敷の掃除を頼みたい!
この掃除班のリーダーはセシルに任せる。マリアはセシルのサポートをしてやってくれ」
「了解!お掃除なら任せて!」
「ん...... 私も掃除は得意...... ピカピカにする。セシルのサポートもしっかりやる...... 」
「ふふ、私に掃除を頼むなんて分かってるじゃないかミカドちゃん!私達に任せておきな!」
「すみません女将さん。女将さん達の好意に甘えさせてもらいます。
セシル。もし何か問題が起こったら俺に教えてくれ。俺は屋敷の中で作業をしてるからさ」
「うん!わかったよ!」
「頼んだぞ。次にレーヴェ、ドラル!それとヴィルヘルム各員!
皆は屋敷に放置されてるかも知れない美術品を撤去する班と、村の皆がくれた家具の搬入をする班に別れて作業をしてくれ!」
「お、力仕事か!僕の見せ場だな!」
「了解しました!」
「ん、良い返事だ!序でに撤去班と搬入班の編成も決めておこう。
そうだな...... 美術品の撤去班はドラルをリーダーにして、プラス他の隊員7名の計8人編成にしよう。
レーヴェもドラルと同じ様に家具の搬入班のリーダーを任せる。
搬入班も他隊員7名の計8人編成で作業に当たって貰いたい。人員の割り当ては2人に任せても大丈夫か?」
「僕が搬入班のリーダーで、ドラルが撤去班のリーダーだな?おう!任せてくれよ!」
「はい!では、この後早速割り当てを決めますね」
「ん、それじゃ力仕事だけど皆よろしく頼む。
家具は適当な部屋に運び込んで、美術品は屋敷の玄関周辺に集めておいてくれ」
「「「「「「了解!」」」」」
「最後にロルフ!ロルフは敷地を見回って、何処に何が有るのか、怪しい物は無いかを調べて来て欲しい。出来るか?」
『ヴァウ!』
「っし!それじゃ役割も決めた事だし、早速引越しに取り掛かろう!」
時刻は午前10:00丁度。
蒼穹と読んでも差し支えない程澄んだ青空には燦々と輝く太陽が登り、暖かな日を大地に降り注いでいた。
暦ではもう冬の筈だが木枯らしは無く、もし半袖だと少し肌寒いかな?と感じる程度の過ごしやすい気温だ。
長袖を着ていれば充分に暖かい。
そんな恵の光を全身に浴びながら俺達は、ノースラント村の皆が好意でプレゼントしてくれた家具等を、これまた村の人が好意で貸してくれた馬車に乗せ、和気藹々と雑談をしながら無事ハールマンの屋敷へと到着した。
さて...... 此処で嬉しい誤算だったのが、今回の引越しは俺の予想に反し、有志で手伝いを名乗り出てくれた女将さん達が加わってくれた事で、当初予定していた倍以上の人員の確保が出来ていた。
なので俺は引越し作業の効率化を図る為に、到着早々其々の役割を決める事にした。
まずセシルとマリア。そしてノースラント村の皆には、この大きな屋敷の掃除を頼んだ。
先日この屋敷の売却の承諾書を持って来てくれたカルトの弟さんから詳しく聞いた話だと、この屋敷が売りに出されてから今日で1週間以上が経過しており、その間此処は手付かずの状態だったらしい。
なら、そろそろ埃やゴミが溜まってくる頃だろうと考えた俺は、普段からこまめに家の掃除をしていたセシルを掃除班のリーダーに指名し、マリアにはそのサポートをお願いした。
更に極め付けに、女将さんを筆頭とした村の皆にも屋敷の掃除を頼んだ。女将さんは普段、飲食店で働いているから、どんな小さな汚れも見逃さないだろう。
いや〜 女将さん達の助っ人は本当にありがたいね。
そしてレーヴェとドラル、アウリやファルネにフロイラを始めとしたヴィルヘルムの隊員には、屋敷に放置されているかも知れない美術品の撤去と、村から持って来た家具の搬入を頼んだ。
以前俺達はハールマンに囚われていた犬獣人・イーリスを助け出した際にこの屋敷へ潜入したが、この時、屋敷の廊下には如何にも成金趣味な絵画や壺等...... 多数の美術品が所狭しと置かれてるのを確認している。
俺の考えとしては、こんな絵画や壺は場所も取って邪魔なだけだし、此処はギルド部隊ヴィルヘルムの本部となる場所...... となれば、直別依頼を頼みに此処に人が訪れる事も出てくるだろう......
そうなった時、人様に財力を見せ付ける様な美術品は無い方が訪れた人達の印象も良くなるに決まっている。
それにこの役割分担には、フロイラ達の訓練の意味合いも多少ある。
家具の搬入には力と体力を使うからだ。
ちょっとした筋力トレーニングとして役立つだろう。更に付け加えるとすれば、この引越しは彼女達がヴィルヘルムの隊員としてやる初めての団体作業だ。
俺は今回の引越しを通し、皆で協力して作業をする事の喜びを感じてくれたら...... と思い、フロイラ達には纏まってこれらの仕事をさせる様にした。
最後にロルフだが、ロルフにはこのアホみたいに広い屋敷周辺の地形の調査を頼んだ。
これまで此処へは合計で3回も足を運んだが、いかんせん敷地が広過ぎて未だに何処に何が有るのかさえ良く分からない。
この屋敷の敷地の広さはまさに、「この視界に入る全てが私の物」状態だった。
なので俺はロルフの持ち前の脚力と瞬発力を活かして貰い、この敷地の何処に何が有るのかを見て来て貰おうと考えた訳だ。
ちなみに、ロルフは今日も言葉を話さず、鳴き声で意思表示をしている。
これは数日前にヴィルヘルムの新隊員、フロイラ達の面接をするに当たり、魔獣のロルフが言葉を喋る事でフロイラ達を困惑させない様にとの配慮からなのだが、ロルフは今日もしっかりと守ってくれている。
そのロルフの後方では、ロルフが喋れる事を知っているノースラント村の皆が不思議そうに首を傾げていたけど......
そんなこんなで其々の役割を命じた俺は、ノースラント村を出る直前、ミラから聞かされたエルド帝国軍の動きに言い様の無い不安を感じつつも、それを顔に出さない様にと意識しながら声を張り上げ、引越しの開始を宣言した。
「「「「「おぉ〜!」」」」」
『ワォォオ〜ン!!』
セシルやマリア達ヴィルヘルムの隊員とノースラント村の皆が笑顔で拳を空へ突き上げ、ロルフが雄叫びを上げる。
皆のやる気は充分。
今日は60人位の人が居るから、幾ら大きな屋敷の掃除と美術品の撤去、家具の運搬と言っても3〜4時間もあれば終わるだろう。
さて...... それじゃ引越しの方はセシル達に任せて、俺は俺のやるべき事をやるとしますか。
笑顔で作業に取り掛かるセシルやマリア達の姿を見て小さく笑った俺は、屋敷の大きな玄関の扉を開け放った。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「って感じの魔法具が欲しいんだけど、作れそうか?」
「そうですね...... 正直な所、こんな魔法具は作った事が無いので断言は出来ませんが、ミカドさんの言う様な仕組みなら製造は可能かと思います」
「設備の方も多少時間はかかるが問題ねぇだろう。にしても凄えなミカド!
こんな魔法具や設備を思い付くなんてよ!」
「えぇ。自動で服を洗ってくれる魔法具や、ツマミを回せば火が出る魔法具なんて......
こんな水龍石や火龍石の利用方法、考えもしませんでしたよ!」
「はは、まぁな」
引越しが始まってから約2時間後。
俺は2人の村人を引き連れて屋敷の中をブラブラと見回り、今は入り口のエントランス部分に立っていた。
俺と一緒に居るこの村人達は誰なのか......
何故俺はセシル達に引越しの大部分を任せてこの村人達とブラブラしているのか......
だいたい察しは付くかも知れないが、この人達はノースラント村に住みつつ土木の仕事をする職人さんと、魔法具の製造・修理を請け負っている【魔法具職人】と呼ばれる技師さんだ。
そして何故俺がこの職人さん達と行動しているのかと言うと......
彼等職人さん達には此処で暮らす上で皆が快適に暮らせる様に、様々な魔法具や設備の開発等の相談をする為に。
それと同時に、これ等の設置場所を決める為だ。
具体的な例を挙げれば、今し方技師さんが言った様な自動で服を洗う魔法具や、ツマミを回せば火が出る魔法具の事だ。
これは言うまでもないとは思うが、洗濯機やコンロの事だ。
最も、俺の加護を使えばこれ等の家電をワザワザ1から作る必要は無い。
俺には咲耶姫から授けて貰った加護が有るからだ。
だが......
この加護を使えば最新式以上の家電を簡単に召喚出来るとは言え、この世界にはこれ等の家電の動力となる電気やガスが無い。
幾ら最新式の家電を召喚しても、動かなければそれはただの粗大ゴミだ。
なので俺はノースラント村の経済を回す意味合いも込めて、既存のアイデアを元に、この世界でも利用可能な家電を作る事を思い付いた。
( この場合は家電じゃなくて家具になるが...... )
閑話休題
俺が思い付いた洗濯機風魔法具と、コンロ風魔法具のアイデアを軽く説明すると......
洗濯機風魔法具は表に付けられたスイッチを押すと、内部に設置された小さな水槽から水滴が落ち、それが同じく内部に設置されている水龍石にかかる事で水が出て、内部に凹凸が施された円柱の筒に溜まる様になっている。
そして水が一定量溜まると、溜まった水の重みで水龍石が置かれた装置が水から浮かび上がり、水の出が止まる。
水が止まったのを確認した後は別のスイッチを押すと、水龍石とは別に設置された燃料変わりの魔龍石が動き、筒が回転して服を自動で洗ってくれると言う仕組みだ。
水が溜まる筒に施された凹凸は洗濯板を参考にしてみた。
服を洗う時には、この凹凸の筒の中に服をぶち込む事で、凹凸が汚れを揉み落としてくれる。俗に言うドラム式洗濯機と言うヤツだ。
この魔法具が無事に完成すれば、寒い日の洗濯から解放されだろう。最近は昼間でも寒くなったから、洗濯が本当に辛かったんだよな......
コンロ風魔法具の仕組みも洗濯機と似た様な作りになっており、まずツマミを右に回せば内部の火打ち石が擦れ合い、これまた内部に設置された火龍石に火花が掛かる事で点火すると言った具合だ。
この火を消す時は、火を付ける時と反対側...... 左にツマミを回す事で火龍石が置かれている鉄板が開き、下に水が溜められた浅い水槽に落ちて鎮火される様になっている。
ちなみに、火龍石から出る火の勢いは普通のコンロと違い、強火・中火・弱火と火力を変える事が出来ない。
だから俺は予め火力を強火・中火・弱火の3種になる様に調整してもらった火龍石を、このコンロ風魔法具に組み込む事を考えている。
つまり、3口コンロだ。
このコンロを使い終わった後、一々火龍石を元あった場所に戻す事になるのだが、火が必要になったその都度、カマドに薪をくべたりする手間を考えれば大分楽になるだろう。
この他にも、洗濯機の構造を流用した水洗トイレや風呂、排出した水を外へ捨てる為の水道管等、俺が発案した魔法具及びその関連設備は多岐に及んだ。
これ等の道具や設備は俺が生まれた時から慣れ親しんできた物だからそこまで意識した事は無かったが、まだ産業革命すらしていないこの世界では驚愕のアイデアだったらしい。
俺の説明を聞く職人さんと技師さんが目を白黒させていた点からも、それが伺えた。
「こんな発明を聞かされちゃ職人魂に火が付くってもんよ!費用は其れなりにかかっちまうとは思うが、その代わり良い仕事をするぜ?」
「えぇ。私も画期的な魔法具の開発に携われるなんて光栄です。
これ等の魔法具には原始的な仕組みも使われている様ですし、帰ったら早速試作に取り掛かってみます」
「ま、設備と魔法具は俺達に任せておけって!」
「2人共本当に頼もしいよ。必要な資金や材料が有ったら遠慮なく言ってくれ。
ギルドの依頼で集めてくるからさ。じゃ、改めてよろしく頼む!」
「おう!」
「はい!」
「あ!ミカドこんな所に居たんだ?
探したよ〜 」
「セシルか。どうかしたのか?」
職人さん達は目を見開きつつも、子供が新しい玩具を与えられた時の様な無邪気な笑みを浮かべる。
俺は多数の魔法具と設備の製造に快く応じてくれた職人さん達と握手を交わした。
すると背後に位置している扉が開き、その向こうからセシルのホンワカした声が聞こえた。
柔らかい口調から察するに、問題が起こった訳では無さそうだが...,
「探していた」と言う事は何か有ったのかな?
「えっとね、お屋敷のお掃除と美術品の撤去、あと皆がくれた家具の搬入とロルフの見回りが終わったから報告をしたかったんだ〜 」
「おぉ。本当か?随分と早く終わったじゃねぇか」
「えへ、皆頑張ってくれたからね〜皆入り口前に集まってるよ」
「了解。それじゃ待たせちゃ悪いから早いとこ合流しますかね。さ!行こう!」
「うん!」
トテトテと俺達の前に来たセシルの報告を聞き俺は微笑んだ。
まだ引越しが始まってから2時間程しか経っていないのに、セシル達は今日予定していた作業の殆どを終わらせてくれた様だ。
全く...... 皆には感謝してもし足りないぜ......
今、皆は引越しを始める前に集まった入り口前に待機している様だ。
ならこれ以上待たせるのも悪いと、俺はセシルと職人さん達を引き連れて早足で足を踏み出した。
▼▼▼▼▼▼▼▼
『ワウ!』
「お!遅ぇぞミカド〜!待ちくたびれたぜ」
「すまん、待たせたな」
入り口で俺達を出迎えてくれたのは言葉こそ刺々しいが、優しさの篭る眼差しを向けるレーヴェや、一仕事終えて雑談に花を咲かせていたノースラント村の村人にヴィルヘルムの隊員の皆、そして村人や隊員達に頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細めるロルフの笑顔だった。
皆表情こそ穏やかだったが、待たせてしまったのも事実。
俺は謝罪の言葉を口にしつつ、皆の元へ歩み寄った。
「いえいえ、私達が集まったのは数分前ですから全然待っていませんよ」
「ん...... ドラルの言う通り。レーヴェは短気だから仕方ないけど...... 」
「な、何をぉ!?マリア!お前さっきまで掃除頑張ったから、早くミカドに見て貰いたいとか、早く来ないかなとか言ってたじゃねぇか!」
「っ...... レーヴェ、それを今言うのはズルい...... 」
「ふふ...... あの時のマリアの笑顔、ミカドさんに見せたかったわね」
「ドラルまでそんな事言う...... もう良い...... 2人とも知らないもん...... 」
目の前で軽口を叩き会うマリア達を皆が温かい眼差しで見守る。数名程ニヤニヤした顔で俺を見ていたが、俺は無視を決め込んだ。
それにしても......
マリアは出会った当初に比べて、感情が豊かになった。それこそ初めてマリアを見た時は感情が殆ど無い様に思えたが、最近では喜怒哀楽がハッキリと見て取れる程に感情が豊かになっている。
何が言いたいかと言えば...... 微かに顔を赤らめて、拗ねた様に頬を膨らませるマリアは実に可愛らしいって事だ。
「あははは...... もう、仲良くしなきゃダメだよ?」
「セシルの言う通りだぞ。でもありがとな、マリア。後でゆっくり確認させてもらうよ」
「ん...... ふふ...... どういたしまして」
「ん。さて、それじゃ今の状況を報告して貰えるか?
まずはセシル。屋敷の掃除は終わったんだよな?」
うん。やっぱり可愛い。
小さく微笑むその可愛らしさに胸を打たれた俺は、マリアのサラサラとした髪を数回撫でてセシルの報告を聞く事にした。
「うん!皆が頑張ってくれたから直ぐ終わったよ〜」
「屋敷はピカピカ...... これで気持ち良く暮らせる」
よしよし、セシルやマリアがこれ程自信満々に言う位だ。きっと文字通り屋敷はピカピカになっている事だろう。
「ありがとう2人共。それに女将さん達もありがとうございました。本当に助かりました」
「なぁに、お互い様さね!気にしないでおくれよミカドちゃん!」
「そう言って貰えると助かります。レーヴェ、ドラル。そっちはどうだ?」
「家具の搬入は問題ないぜ。貰った家具は全部屋敷の中に運び終わったし!」
「ちなみに椅子や机等の小さめな家具は談話室と思しき場所へ、ソファや棚等の大きめの家具は、食堂に一旦置いておきましたよ!」
「美術品の撤去も問題なく終わりました。
私達の後ろに有る山が、撤去した美術品になります」
「これ等の撤去した美術品の内訳は絵画や壺を始め、宝石や鎧、魔獣の剥製を含めて合計で89点に登りますミカド隊長」
「なるほど。了解だ。ロルフの方は問題はなかったか?」
『アウ!』
「ん。問題なさそうだな。家具は後で必要な場所へ運ぶとして、美術品なぁ...... どうするか...... 」
簡単な報告をする家具の搬入班リーダー・レーヴェの横で、一緒に家具の搬入を手伝っていたのだろうフロイラが元気に補足をしてくれる。
今、搬入した家具は談話室や食堂に置いてある様だ。
美術品の撤去班リーダー・ドラルの簡単な状況報告の後に、アウリも補足の説明をしてくれた。
ロルフはロルフで、鳴き声と表情で問題が無い事を伝えてくれる...... んだけど、やっぱり鳴き声だけでの報告は理解出来ないから、後でタイミングを見計らって詳しい報告を聞くとしよう。
まぁそれは兎も角として、美術品の撤去と家具の搬入、敷地の見回りも問題なく終わった様だ。
後はこの美術品はどうするかだけど.....
捨てるのは簡単だが、中には値打ちのありそうな物も多々有る。なんか捨てるのは勿体無い気もするな......
あ、良い事を思いついたぞ!
「なぁ皆!もしこの美術品の中で欲しい物が有れば持って行って構わないぞ!」
「おぉ!本当かミカド!?」
「あぁ。こんなの俺達が持ってても宝の持ち腐れだからさ。なら、欲しがってる人に貰われた方が美術品達も喜ぶだろ?」
「で、でもよ。ミカド!この絵画なんか時価100万ミルはするぜ!?」
「この剣なんか名剣って呼ばれてる業物だ!
金に換算したら数百万ミルにはなる!本当に貰って良いのかよ?」
「おう。ぶっちゃけ邪魔だし、別に構わねぇって」
「「「「「す、すげぇ...... 」」」」」
「あ、あはは...... 」
「豪快ですミカドさん...... 」
「ははっ!やっぱミカドはすげぇぜ!」
「ん、同意...... 太っ腹...... 」
「 ? あ、そうだ。美術品は喧嘩にならない様に話し合った上で分け合ってくれよ?」
「「「「「あ、はい」」」」」
「「「「「隊長凄い...... 」」」」」
「んじゃ、これで今日の予定は終了だ!
お疲れさんでした!」
「「「「お、お疲れ様でした!」」」」
これ等の美術品を持ち帰って良いぞと提案したら、何故かセシル達や村の皆が少し引いた様な苦笑いを浮かべていた。
反応も何処か余所余所しい気がする。
ん〜...... 俺、何か可笑しな事言ったかな?
まぁ、これで邪魔な美術品の方も捨てる必要は無くなった訳だ。
でも数が数だから、多少は残るかも知れない。そうなれば商人あたりに売り払って、皆への臨時ボーナスとか、生活費に充てても良いかな。
俺は頭の中でそんな事を考えながら、何やら引き攣った笑みを浮かべ、ボソボソと何か呟いている皆の前で引越しの終了を宣言した。
その時、遠く離れた場所から多数の蹄の音が微かに聞こえたが、その蹄の音は皆の声に掻き消された。
此処までご覧頂きありがとうございます。
誤字脱字、ご意見ご感想なんでも大歓迎です。
次回投稿は、3/5日曜日。21:00頃になります。