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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第4章 乱世
138/199

125話 新たな仲間達





「さて、今のファルネって子で全員かな?」

「うん!ファルネちゃんが来たから皆揃った事になるね」


エルド帝国軍が国境に現れてから早くも1週間が経った12月の第2水龍日。

あと2週間で年が変わるのだが、悲しいかな俺達のやる事は変わらなかった。

今、俺やセシル他ヴィルヘルムの面々は漆黒の制服を身に纏い、紙の束を片手にノースラント村ギルド支部の前に立っている。


この1週間、ラルキア王国では様々な事が起こっていた。

例えば、先に起こったベルガスの反乱により空白になっていた丞相の位に、新たに【ヴァイスハイト】と言う人が就任したり、同じくベルガスの反乱に巻き込まれ亡くなったノースラント村ギルド支部の支部長に代わり、副支部長のミラが繰り上げ式で支部長に就任したり、ティナから依頼された魔法玉の実地試験、並びに魔獣達の群れを討伐した報酬を受け取ったり等だ。


他には、1週間前のエルド帝国軍の国境演習に肝を冷やしたラルキア王国軍が、国境に常時とは倍の兵を配置したりもしていた。


ちなみに、今日でエルド帝国軍が国境演習をしてから丁度1週間だが、今の所帝国軍が再度国に現れる気配は皆無らしい。

それでも国境の警備が万全になったと言うとそうではなく、多少マシになった程度だと噂で聞いた。


エルド帝国軍の真意が分からず、軍は勿論の事、ラルキア王国全土は不穏な空気に包まれていた......


一方の俺達も、そんな空気に言い様のない不安を感じつつ...... だが何か出来る訳では無いので、まずは俺達に今出来る事をやろうと、依頼で疲れた体を癒したり、銃火器の訓練に勤しんだ。


そして今日は......


「でもよ、面接なんてする必要あるのか?

ただ話を聞くだけだろ?」


そう、俺達ヴィルヘルムは今レーヴェが言った様に、今日はヴィルヘルムへ入隊を希望する人の面接を行う事にしていた。

手に持っている紙の束は、今日面接をする事になっている子達が以前書いてくれた手紙と昨日の内に作っておいた名簿表だ。


これは彼女達が此処へ来た際、本人が書いた手紙かを確認し、誰が来てるのかを分かりやすくする為に、到着した子の名前にチェックサインをするのに使った。


この面接の為に、地味に色々と苦労したな......


詳しく説明するなら、入隊を希望してくれた人達と何回か手紙のやり取りをし、皆が此処へ来れる日程を決めたり、その面接会場としてノースラント村ギルド支部を使わせて貰える様、支部長となったミラに頼んだりとか......


ちなみにこれは余談だが、ミラやアンナが俺達に興味本位で依頼を出した人達へ断りの手紙を出して以降、俺達に興味本位で依頼を出す人は激減した。

正直、折角出してくれた依頼を断った事に対する罪悪感は有るし、依頼を選り好みしていると言われれば確かにその通りだ。


でも...... これは今まで何回か言ったが、俺達は困っている人を助ける為の部隊だ。

本当に困っている人、本当に助けを求めている人に手を差し伸べたい。

ならば例え依頼を選り好みしてると言われても、俺は本当に困っている人の依頼しか受けない。


話が逸れた......


そんなこんなで、今日はヴィルヘルムへの入隊希望者計13人の面接の日という訳だ。

入隊希望者は皆女性だ。

彼女達はとても真面目で、面接開始予定時刻の12:00の30分前には殆どの人が此処へ集まっていた。


時刻は11:45分。

数分前に到着した猛禽類の様なフワフワの羽根を生やす、ファルネと言う獣人の女性が今日の面接を受ける最後の1人だった。

今頃ファルネは手伝ってくれているギルド支部の職員さんの案内で待合室に連れて行ってもらってるだろう。


「でも、ちゃんと話をしてその人の人となりを知らないと、私達としてもやり難いんじゃない?」

「ドラルの言う通り...... それに私達はP90とか銃火器を使う...... 信用出来ない人に、銃火器を見せるのは危険...... 」

「うんうん、それにレーヴェちゃんも誰か分からない人といきなり一緒に依頼をするとなると、コミュニケーションが取れなくて大変だと思うよ?

だから、面接でその人の事を少しでも知っておけば、コミュニケーションのキッカケになるでしょ?」

「お〜。なるほど!なら面接は必要だな!確かに、見ず知らずの奴に背中を預けるのは不安だし」

『うむ。それに我々を利用しようと考えておる者もおるやも知れぬ。

仮にその様な考えを持つ者が居れば、マリア殿の気を読む力で、事前に入隊を断る事も出来る』

「ん...... 任せて」


セシルやロルフ達の言葉を聞きながら、俺は心の中で頷く。

俺が入隊希望者にワザワザ面接をする理由はその通りだったからだ。


俺達は依頼の際に未来の武器、銃火器を使う事が有る。


その時、邪な考えを持つ者が部隊に居れば、その未来の武器を盗み、最悪の場合は悪用されるかも知れない。

俺達がこれまで銃火器を使用している所を、誰にも見られていないと言う確信は無い。

あの武器は邪な考えを持つ人には渡せない...... いや、渡してはいけない。


だから、実際に入隊を希望する子達の顔を見て、そんな考えを持っていそうな人は居ないかマリアの力を借りて見つけ出す事が今回面接を行う理由の1つだ。


そして面接と銘打って入隊希望者の皆の話を聞ければ、その人の人となりを知る事も出来、結果としてコミュニケーションが取れて円滑に部隊を纏められる......

俺はそう考えた。


最も、銃火器に限らず、ロルフが言った様に俺達を利用しようと考えてたりする人は理由を付けて入隊を断るつもりだ。

この点もマリアの力に頼る事になるが......


「そう言う事だ。俺達は銃を使う事が有る。

でも、銃は信用出来る人にしか見せられない。変な事を考えてる奴に銃を見せたら、盗まれて悪用されるかもしれないからな。

集まってくれた子達の中にそんな奴は居ないとは思うけど、それを事前に見つけるのがこの面接を行う理由の1つだ。

それに面接でその人の長所や短所を知っておけば、色々と役に立つ筈だ」

「さすがミカドだよね〜。そこまで考えて、面接しようって考えたんだね?」

「ま、一応隊長ですから。セシルも頼むぜ?何てったって、ヴィルヘルムの副隊長なんだからさ」

「ど、努力します...... 」

「ん、よろしい。ちなみにマリア。入隊希望者の中で嫌な気を発してる人は居たか?」

「ん、今の所そんな気は感じなかった。あの人達は信用しても大丈夫そう...... 」

「なら安心だ。じゃ、皆の待ってる部屋に行くぞ!」

「うん!」

「はい!」

「おう!」

「了解...... 」

『うむ!』

「す、すみませぇん〜!」

「ん?な、なんだ?」


いざ皆の待っている部屋に向かうぞ!

と、1歩踏み出そうとした丁度その時、俺達を可愛らしい声が呼び止めた。

訝しげに顔を後ろに向けると、俺達から数m後方で大きく手を振り、栗色の長髪を靡かせる女の子が駆け寄って来る所だった。


「あ、あの!ヴィルヘルムのセシル副隊長さんですよね!?」


長髪の女の子は俺達の目の前まで来ると、状況が読み込めていないセシルにグイッと詰め寄る。


「う、うん。そうだけど、貴女は?」

「私、フロイラと言います!

貴女がユリアナ様を2度も助けた英雄セシル・イェーガー副隊長......

こうしてお話出来るなんて、光栄の極みです! 帰ったら街の皆に自慢します!

あ、貴女はドラルさん!

うわぁ〜!まるで黒ダイヤの様な漆黒の翼に尻尾...... 近くで拝見してもやっぱりお綺麗ですね〜。ウットリしちゃいます!

それにレーヴェさんやマリアさんも!ペンドラゴでお2人のピコピコと動く獣耳やエルフ耳を見た時は可愛過ぎて、胸を撃ち抜かれましたよ!胸ズッキュンです!

あぁっ...... でも可愛い中に凛々しさも有るなんて...... その相対する2つの良さが調和していて...... 兎に角、素敵です!

しかもしかも、ロルフさんまでいらっしゃるなんて!あぁ、感激です!来て良かったぁ!」


うん、何か凄い子が来た。



フロイラと名乗った少女は、大きな目をあらん限り見開き、キラキラとした瞳をセシルやドラル達に向けてチョロチョロと周囲を走り回る。

フロイラは身長が小さく、目測でもマリアと同じくらい...... 身長150cmに届くか届かないかと言った所だ。


そんな小さい子がハイテンションで動き回るもんだから、まるで小動物...... 飼い主に遊んで貰っている犬を見ている気分になる。


フロイラは俺達の事を知っているらしく、鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる俺達を尻目に、ウットリとした表情を浮かべたり、歓喜に打ち震えたりとコロコロと表情を変えていた。

ペンドラゴと言う単語が聞こえたから、もしかしたら論功行賞式の時にでも俺達の事を見たのかな?


さて...... これは見ていて大変面白いが、いまいち状況が読み込めん。

面接の時間も迫って来ているし、話を進めよう。


「あ〜...... フロイラ?ちょっと落ち着こうか?」

「はっ!?これは失礼しました!貴方様がミカド隊長ですね!?

ミカド隊長!私、憧れのミカド隊長達とお話出来てテンションが大変な事になってるみたいです!」


ビシッと軍隊式の敬礼をしつつ、覇気のある眼を見開いたフロイラは、頬を紅潮させながら声を上げる。

やはりこの子は俺達の事を知っているらしい。しかし、このハイテンションはどうにかならない物か。

落ち着いて貰わなければ、彼女が何者で、何故此処に来たのかが聞き出せない。


「そ、そうか。まぁ気にすんな。所で...... 」

「いや〜!ペンドラゴの論功行賞式の時にミカド隊長達を見てカッコいいと感動しましたけど、近くで見ると更にカッコいいです!まるで皆さんに後光が差してる様です!

キラッキラと輝いて見えます!

いや!もうキラッキラどころじゃないです、ギラッギラですよ!」

「お、おう。ありが...... 」

「初めてミカド隊長達を見た時は、そりゃもう衝撃でしたよ!

黒髪に黒の瞳を持つ人間は見た事がありません!

そんなこの世で珍しい青年...... 眉目秀麗なミカド隊長が白狼ヴァイスヴォルフのロルフさんを引き連れて、ペンドラゴをパレードしてるんですもん!

しかもしかも!その後ろには容姿端麗なセシル副隊長達が優雅に馬を操ってたんですよ!?

あの時のミカド隊長達は、まるで1枚の絵画の様に神々しかったです!

あの時の衝撃は今でも忘れません!」


あはは...... 本当にハイテンションな子だな......

まるで機関銃の様に、次々と言葉がフロイラの口から放たれる。

これがマシンガントークってヤツか。

それにフロイラはやはり、ペンドラゴで行われた論功行賞式に参加していた俺達を見てくれたらしい。


何故フロイラが此処に来たのか、察しがついた。


だが...... いささかフロイラのハイテンション振りを喧しいと感じて来たぞ......


「あぁ〜 分かった!分かったから一旦落ち着け!」

「はうっ!ご、ごめんなさぃ...... 」

「ゴホン...... いや、俺の方こそ声を荒げたりして悪かった。で、フロイラは俺達に何か用事かな?」

「はい!あ、あの!急な申し出で大変恐縮なのですが、私もヴィルヘルムの入隊を希望してるんです!

風の噂でヴィルヘルムが入隊希望の人を集めて、ノースラント村でめんせつ?をするって聞いて...... それで...... 」

「やっぱりか」


俺達を目の前にしてのあのハイテンション振り...... もしやと思ったが、やはりフロイラは今日俺達が入隊希望者を集めて面接をすると言う情報を何処からか聞き付けて、ワザワザ此処まで足を運んでくれたらしい。


「どうするのミカド?フロイラちゃんも一緒に面接する?」


フロイラの言葉を聞き、隣に立つセシルが俺の顔を覗き込む。

本来、今日の面接は以前手紙を出してくれた人達を対象として行うつもりだったのだが......


「そうだな...... マリア」

「ん...... 」


俺の言わんとする事を察してくれたマリアがしっかりと頷く。

フロイラからも嫌な気は感じなかった様だ。

なら入隊希望者が1人増える程度、特に問題無いか。


「よし!フロイラ、君の想いは確かに受け取った。

今から適正検査...... まぁ、簡単な質疑応答をして君の人となりを知りたい。

俺達の部隊に相応しく無いと感じたら、入隊を断るかも知れないけど、それでもフロイラがヴィルヘルムに入隊したい気持ちが本物なら...... 一緒に行こう」

「は、はい!よろしくお願いします!」

『ふふ、また賑やかになりそうだな』

「だね〜。でも、静かな方より賑やかな方が楽しいよ!」

「ん、皆笑顔...... そっちの方が良い」

「ふふっ。そうね」

「はは。そうだな!」

「さ、行くぞヴィルヘルム!皆待ってるからな!」

「「「「「了解!」」」」」

「うぅ〜!!ワクワクして来ましたよぉ!

頑張るぞぉぉおお!!」


こうして少々予定外の事態になったが、ハイテンションガールことフロイラを一緒に引き連れた俺達ヴィルヘルムは、入隊希望者が待っている部屋に向かい歩き始めた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



「さて皆。今日は来てくれてありがとう。

既に知っているかも知れねぇけど、念の為俺達の自己紹介をさせて貰う。まず...... 」


時刻は12:00丁度。

ノースラント村ギルド支部内にあるシンと静まり返った巨大な会議室に俺の声が響き渡る。


此処は本日の面接会場としてミラが貸してくれた場所だ。

広さは約50畳と広く、フロイラを含めた14人の入隊希望者と、俺達ヴィルヘルムの5人、そしてロルフが入ってもまだ余裕のあるとても大きな会議室だった。


今回は体の大きなロルフも特別に此処への入室を許可して貰った。

その理由は2つ。

まず、ロルフにも入隊希望者の顔や考えを近くで見て貰い、入隊に相応しいかを見極めて貰う為。


そして彼女達がヴィルヘルムに入隊すれば、必然的にロルフと一緒に依頼を受ける可能性も有る。

その時ロルフに怯えている様では話にならない。だから、ロルフと言う魔獣に慣れて貰う為に今回同席させたのだ。


だが、俺の心配は無用だった。

ロルフを見て少し怖がった表情を浮かべた子は多数居たが、ヴィルヘルムに白狼(ヴァイスヴォルフ)在りと、事前のやり取り等で既に皆知っているので、皆は俺の予想以上に落ち着いていた。


そして俺と目が合ったレーヴェがニカッと爽やかに微笑み、用意された椅子に座る入隊希望の皆に顔を向けた。


「僕はヴィルヘルムの切り込み隊長レーヴェ・グリュックだ!よろしくな!」

「私はドラル・グリュックです。ヴィルヘルムでは主に後方からの支援攻撃を担当しています」

「マリア・グリュック...... 偵察任務を主に行う...... よろしく」

「私はヴィルヘルム副隊長のセシル・イェーガーです。皆、今日はよろしくね?」

「「「よ、よろしくお願いします!」」」


レーヴェは以前俺が任命したヴィルヘルムの【切り込み隊長】と言う役割の部分を強調しながら......

ドラルは礼儀正しく、丁寧な言葉遣いでヴィルヘルム内での自分の役割を淀みなく伝え、マリアはいつも通り淡々と簡単な自己紹介を......

そしてセシルは皆を優しく受け入れるかの様に、慈愛に満ちた表情を浮かべながら自己紹介をした。


ヴィルヘルムの面々の簡単な自己紹介が終わると、椅子に座るフロイラ達は元気な返事をしつつ頭を下げる。


「で、此奴はロフル。ロフルは魔獣ヴァイスヴォルフだけど、見ての通り大人しくていい奴だ。

皆がヴィルヘルムに入隊したら、仲良くしてやってくれ」

『ヴァウ』

「「「「「は、はい!」」」」」


皆の目線が俺の方に移った事を確認し、俺はロフルの自己紹介をした。


ロフルは特殊なテレパシーで、自身の言葉を相手に伝える事が出来るが、今回はそれは控えて貰っている。

ただでさえ、人に懐かないと言われているらしい白狼(ヴァイスヴォルフ)が皆の目と鼻の先に居るのだ。

此処でロルフが喋り出したら、皆が混乱する事は目に見えている。ロルフが喋れる事を伝えるのは皆が入隊して、ロルフに慣れてからにした方が良いだろう...... と俺は判断した。


「最後に...... 俺がヴィルヘルムの隊長、西園寺 帝だ。

それじゃ、早速だけど今から事前に伝えていた様に、皆には俺がする質問に答えて欲しい。

この質問をする理由は、皆が俺達の掲げる志に賛同してくれるか、理解しているかを知る為だ。俺達ギルド部隊ヴィルヘルムは弱き人、助けを求める人達の為の部隊だ。

この志に賛同出来ない様なら、ヴィルヘルムへの入隊は許さない。分かってくれたか?」

「「「「「っ!はい!」」」」」


俺の大袈裟な脅しにフロイラやファルネ達は背筋を伸ばし、真剣な表情で返事を返してくれる。

此処で脅しを掛けておけば、入隊後に気を緩める事なく依頼に励んでくれるだろう。


「よし。んじゃ面接開始だ!まずはアウリ・ウーバー。君からだ!

アウリがヴィルヘルムに入隊を希望した理由を教えてくれ!」

「は、はい!よろしくお願いします!

私がヴィルヘルムに入隊を希望した理由は...... 」



▼▼▼▼▼▼▼▼



「よ、よし...... もう良いぞフロイラ...... と言うか、頼むから辞めてくれ...... 」


ラルキア王国の東側の村に住む人間族、アウリ・ウーバーから始まった14名の集団面接は終わりに近付いていた。


アウリや、鷹の獣人族ファルネを始めとした面々は初めは緊張していたが、話していくうちに緊張も取れた様で、最後には朗らかに、とてもハキハキと会話が出来るまでになっていた。


それに彼女達が放つ言葉も、以前手紙で見た時同様に俺達の胸を撃った。

やはり実際にこうして話を聞けて良かった。

それ程までに、彼女達からヴィルヘルムに入隊したいと言う気持ちを感じたからだ。


それは今話しているフロイラも同じなのだが......


「えぇ!?そんなぁ!此処からが良い所なんですよぉ!?

それに、私の熱意はこんなもんじゃありません!」

「いや、分かった!分かったから!フロイラの熱意はこれでもかって位伝わったから!」


そう、なんとフロイラは彼此1人で少なくとも20分は喋り続けていたのだ。

何故『少なくとも』と、書いたのかと言うと...... フロイラが話し出して20分が過ぎた辺りから、俺は時間を数えるのを辞めたからだ。

このハイテンションなお嬢ちゃんは1人で、しかも終始変わらぬテンションで20分以上話し続けていた。


今、この会議室はフロイラの独壇場...... ワンマンライブ状態となっていた。


ちなみに、フロイラの面接を始める前にフロイラに簡単な自己紹介をして貰ったが、この時フロイラが人間では無く、北大陸に住む【グラッズ】と言う背丈の低い種族である事が分かった。


小人族(グラッズ)】と言えば、手先が器用な事で知られ、彼等の手掛ける装飾品は高い値段で売買されると聞いた事が有る。

他には繊細な作業が求められる魔法具の開発等にも重宝されており、ラルキア王国内でも魔法具を専門に作る人達...... 【魔法具職人】と呼ばれる人達の中には多くの小人族(グラッズ)が居るとか。


ラルキア王国で暮らす彼等小人族(グラッズ)も、元を辿れば北大陸から強制的に連れて来られた人達の子供だ。

だがフロイラが纏う空気は、そんな辛い過去を持つ人達の子供とは思えない。

フロイラのハイテンション...... あれは生まれ持った物なのか、それとも後天的な物なのか......


加えて言えば、フロイラは俺と同い年だった。

てっきりそのテンションと見た目から歳下と勘違いしていたが、それは間違いだった。

あれか、失礼な言い方だけど見た目と相まって精神年齢が10歳辺りで止まってるのか。


「むぅ...... わかりました...... 残念ですけどこの続きは次回に取っておきます」


そして何度目か分からない静止をフロイラがやっと聞き入れてくれた。


と言うか、まだ続きがあるのか......

内容の殆どは俺やセシル達を賛美した物だったが、それがとても恥ずかしい。

褒め殺し...... まさにこの言葉通りだった。


「その次回が来ない事を願おう..... 」

「何か言いましたかミカド隊長?」

「いや、何にも...... さて!これで今日の面接は終了だ。

セシル達、何か言いたい事はあるか?」

「う、ううん、私は何も無いよ!強いて言えば、皆ならヴィルヘルムに入って頑張ってくれるだろうな〜 って思ったよ!」

「私もセシルさんと同じです。私は是非皆さんと一緒に働きたいと思いました」

「僕も特に言う事はねぇな。鷹獣人のファルネや小人族(グラッズ)のフロイラが入隊してくれれば、更に任務の幅が広がると思うぜ」

「ん、この人達なら信用しても良いと思う...... 」

『ウァン』

「よし...... なら決まりだ」


あらゆる言葉で讃えられたセシルは頬を赤らめつつ、頑張って副隊長の威厳を保とうとしている。その隣に座るドラルやレーヴェ、そしてマリアは小さく微笑みながら、声を漏らした。

そして、何処か笑みを込めている様にも聞こえるロルフの小さな鳴き声。皆、フロイラやファルネ、アウリ達の入隊を認めている。


となれば、俺が反対する理由は無い。

まぁ...... 今日面接をした皆は、邪な考えを持ってたり、よっぽどの事をしない限り入隊を認めるつもりだったんだけど。


「き、決まりと言うと!?」

「わ、私達の入隊は!」


俺の意味深な呟きが聞こえたのか、前の方に座っていた鷹獣人のファルネと人間族のアウリが席から立ち上がり、期待と不安が入り混じった目を俺に向ける。


だから俺はこれ以上無い微笑みを彼女達に向けた。


「あぁ。皆、是非ヴィルヘルムに力を貸してくれ!

お前達は今からギルド部隊【守護者(ヴィルヘルム)】の隊員だ!」

「「「「「や、やったぁ〜!」」」」」

「ふふっ!皆、これからよろしくね!」

「「「「はい!セシル副隊長!」」」」

「やった!やったぁ!ヴィルヘルムに入隊出来たぁあ!!」

「此処で頑張れば、ラルキア王国に居る同族達に勇気を与えて上げられる...... 頑張らなきゃ!」

「うぅ...... 良かったぁ!良かったよぉ〜!」

「ん...... 皆笑顔...... とても良い」

「そうだね。えへへ、何だか私まで嬉しくなって来ちゃったよ」

「ふふっ、これで更に困ってる人達の力になれますね!」

「だな。これから忙しくなりそうだぜ!」


大きなノースラント村ギルド支部の会議室を、大きな歓声が満たす。

今この瞬間、俺達と志を同じくする14名の少女達が仲間に加わった。


相変わらず騒がしくハイテンションガール、フロイラや嬉しそうに柔らかそうな羽根を広げ決意を新たにするファルネ。

そして目に涙を浮かべつつ、喜びを爆発させ他の入隊者と抱き合うアウリ......

そんな皆の姿を微笑ましそうに眺めるマリアやセシルにドラルとレーヴェ......


これからもっと賑やかになりそうだ。


目の前の暖かい光景に俺は頬を綻ばせた。

この暖かい光景を前に、俺は1週間前にエルド帝国軍がラルキア王国の国境に姿を現した事が頭から抜け落ちていた。


そして明くる日、再びエルド帝国軍が国境前に姿を現した。






此処までご覧頂きありがとうございます。

誤字脱字、ご意見ご感想なんでも大歓迎です。

次回投稿は1/29日21時頃を予定してます。


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