121話 改善点
「「「「「おぉ!」」」」」
上風が吹き抜ける安らぎの草原に魔法玉から発せられる男性の声が響き渡ると、セシルやドラル達、そしてユリアナを始めとした戦乙女騎士団の面々が歓声をあげる。
そんなセシル達を他所に、ティナ達、魔術研究機関の面々は当然だと言う様に自信に満ちた表情を浮かべている。
「へぇ、予想以上にハッキリと声が聞こえるな」
俺も魔法玉の性能に感心し、ボソッと呟いた。声の主は200m先に居るはずなのに、まるで目の前で会話をして居るかの様に聞こえる。
俺が元居た世界で使っていた携帯電話と遜色ない性能だ。
「当然よ!なんたって私が作ったんだから!」
「「「「「ティナ技術官万歳!!」」」」」
「ティナちゃん凄いよ!大発明だね!」
「はい!さすが才女ティナ・グローリエさんです!」
『ここまで鮮明な声が聞こえるとは思わなんだ。凄い時代になったものだ』
「これが量産されれば、ラルキア王国は更に発展しますね。ティナさん、大義です!」
「すげぇ!すげぇよティナ!」
「ふふん!コレくらい楽勝よ!」
俺の呟きが聞こえたのか、ティナは胸を張り盛大にドヤ顔をする。
それを合図に、近くの魔術研究機関の職員達はティナに拍手を送る。
そこへセシルやドラル、レーヴェにロルフそしてユリアナの賛美が加ると、職員達は更に大きな拍手を送り、ティナはより一層踏ん反り返った。
うん、魔術研究機関の人達は名前から勝手にお堅い人達の集まりだと思っていたが、存外そうでもない様だな......皆ノリが良さそうだ。
「それじゃ、この調子で通話するわよ!
ごほん。こちらティナ。
受信用魔法玉実地試験隊、次は500m地点へ向かってね。
そっちの移動が完了したら、合図を頂戴。再度こちらから通話するわ」
「はっ!了解致しました!一旦通話を終了します!」
再度、ハッキリと響き渡る男性の声を合図に、魔法玉から発せられていた淡い光が消えて行く。
ふむ...... 見た限り、光が消えたら使用者からの魔力の供給が止まり、通話出来ない仕組みになっている様だ。
この原理は俺が持っている旭護袋と似ているな。
「なぁマリア。マリアから見て魔法玉はどうだ?何か思う事はあるか?」
俺はそんな事を感じながら、隣で静かに通話の様子を見守っていたマリアに話しかけた。
「ん...... 余り関係無いと思うけど、通話をする時、ティナの前の魔法玉から沢山の気が漏れるのを感じた。
多分その気は魔法玉から溢れた魔力だと思う...... 通話の様子を少ししか見てないから、ハッキリとは分からないけど...... 」
「なるほど...... 魔力が溢れ出たね...... マリアはその点に注意して、次の通話を見ていてくれ。また後で、感じた事を教えてくれ」
「了解...... 」
マリアは先のベルガス反乱の際に使用された、魔力式爆弾と言う非人道兵器の仕組みに気付く程、観察力に優れた子だ。
俺はもしやと思い、マリアに感じた事を聞いてみたが、マリアは俺の期待通り魔法玉の改善点に繋がりそうな部分に気付いた。
通話の時に魔法玉から大量の魔力が溢れ出たと言う事は、通話をする際、余分な魔力が溢れている可能性を示している。
つまり、この溢れ出る魔力を抑えれば、通話可能範囲の延長や魔力の消費を抑える事が出来るかも知れない。
俺は魔法具の素人だから、なんとも言えないが、この情報は少なくとも魔法玉の改良に繋がるはずだ。
「ティナ技術官!受信用魔法玉隊より合図です!予定地点に到着した模様!」
「了解。それじゃ通話を始めるわよ!」
「はっ!」
櫓の上の魔術研究機関の職員が旗を振ったのを確かめたティナは、再度魔法玉に手を添えた。
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「よし!1km先でも問題なく通話出来たわね。お疲れ様、それじゃ貴方達も一旦こっちへ戻って来てくれるかしら?」
「了解しました。戦乙女騎士団のラミラ様達と共にそちらへ向かいます。通話終了」
その後も通話は滞りなく続けられ、500m先、1km先の魔法玉との通話も無事終了した。
「うん、これは確かに実用化されればかなり便利だな...... さて、皆は魔法玉を見てどう感じた?」
「そうだね〜...... 大きさがネックだけど、ミカドの言う通り実用化されたら、凄く便利な道具だなって思うよ。ただ、これが悪い人の手に渡ったら大変だね...... 」
『我輩もこの道具には感心した。
が、やはり巨大故に一個人が運用するのには些か苦労するだろうな。
少なくとも、現状の大きさのまま運用するならば、専用の馬車が必要になるだろう。
それと、何故か通話が始まった時に頭痛を感じたな...... 』
「頭痛...... ?」
『うむ。通話が終われば頭痛も消えたが、この魔法玉と言う道具は魔獣には余り良い物ではないのやも知れぬ』
「ん、了解。この事もティナに伝えよう。
ドラル達も感じた事はあるか?」
「私もセシルさん達と大体同じですね。
あ...... でもこれを大量生産するなら、通話先の魔法玉と他の魔法玉が混線しない仕組みがあれば良いなとは思いましたね」
「なるほど。セシル達が言う様に性能は申し分ないけど、やっぱり大きさが問題だし、混線の可能性もあるか......って、レーヴェどうした?」
俺は実地試験を終え、近くに集まっていたセシル達に魔法玉について感じた事を聞いて見た。
セシルとロルフは魔法玉の性能に目を輝かせ、ドラルは冷静に実地試験の内容を振り返る。
セシルが危惧する事は最もだ。
だが、この問題の解決は意外と簡単だ。
何故なら、民間用やギルドが魔法玉を使う様になった場合、敢えて性能を少し落とした物を与えれば良いのだ。
実際、俺が元居た世界でも主に兵器関連でこれと同じ方法が取られている。
所謂モンキーモデルと言う奴だ。
こうする事で、悪人に魔法玉が渡っても性能差が生まれるから、害は少なくなる。
ドラルが言う通話の混線も重要だ。
仮に機密情報等を魔法玉経由で伝える場合、もし他の魔法玉と混線して情報が漏れたら大問題になる......
どうしたものか......
そんな事を考えながら顔を横見向けると、俺はレーヴェが珍しく難しい顔をしている事に気が付いた。
何か思う所があるのか?
「ん?あぁ、いや...... 大した事じゃねぇんだけどさ。
この魔法玉って、同時に1つの魔法玉にしか通話出来ないのかなって思ってさ」
「どう言う事?」
「つまり、1つの魔法玉を使って2つ以上の魔法玉と通話は出来ないのかなって事。
今回は1つの魔法玉に通話したから、1km先の魔法玉と通話が出来たけど、これが複数個の魔法玉への同時通話だったら、使う魔力が増えて、通話可能範囲が狭くなるんじゃないのかな?って思ったんだよ」
「おぉ...... レーヴェが珍しく頭の良さそうな意見を言った...... 」
「珍しくは余計だっての!まぁ、僕が感じたのはこんな所かな。
性能自体は良いみたいだし、仕組みまでは分かんねぇから、詳しくは分かんねぇけど」
レーヴェのこの意見も実に貴重だ。
仮にこの魔法玉が実用化され、量産されれば複数の魔法玉と通話する場面もきっと出てくるだろう。
その時、送信側は同時に複数の魔法玉に通話をするから、必然的に1つの魔法玉へ通話する時よりも使う魔力が増える。
そうなれば、魔法玉の通話可能範囲が狭まるかもしれないと......
これもティナに伝えないとな。
「なるほど。レーヴェ良くそこに気付いたな!凄いぞ!」
「お?そうか?へへっ、照れるぜ〜」
「マリアはどうだ?さっき頼んだ事以外に、何か感じた事はあるか?」
「特にない...... それと、やっぱり通話の時に感じた魔力......
見た感じだと、通話距離が伸びる度に溢れる魔力も増えてるみたいだった......
でも、コレがどう言う理由で溢れ出た魔力なのか分からない...... 」
マリアもマリアで、俺が先程指示した事をしっかり行ってくれていた。
だが、如何に観察力や洞察力が優れていても、俺と同じくマリア達は魔法関連に関しては所詮ど素人。
其々感じた事や気付いた事は有れど、言葉にし難いみたいだ。
一先ずこれまで出た意見、並びに改善点を纏めると......
その①、民間、ギルドに魔法玉を売却する際の意図的な性能低下。
その②、専用の馬車などを用いらなくても運用出来るまでの小型化。
その③、複数個の魔法玉がある場合、任意の魔法玉へ通話する際、他の魔法玉への混線の可能性。
その④、複数個の魔法玉への通話は可能か?並びに、その際の魔力の消費量はどれくらいになるのか。
その⑤通話の際に魔法玉から魔力が溢れている。これが魔力の余分な消費に繋がっている可能性がある。
こんな所か......
それなりにティナの力になれそうな意見が揃ったな。後の改良はティナに任せ......
ん?待てよ......
もしかしたら、俺が元居た世界の【アレ】を参考にすれば、これらの問題を一気に解決出来るかも知れない!
「よし!了解した。なら、ラミラ達が戻って来たら、この事をティナに伝えよう」
「「「「了解!」」」」
『承知!』
元居た世界のある物を思い出した俺は、先に上がった改善点、改良点を一気に解決する仕組みを思いつき、離れた場所で魔法玉や櫓の撤去作業をしているティナ達の元へ駆け寄った。
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「げっ!ミカド!」
「いきなり失礼な奴だな、おい。俺達が今日来るって聞いてなかったのか?」
「聞いてない!ユリアナ様、何故ミカド達が此処に!?」
実地試験が終了してから凡そ10分後、俺達は1km先に居るラミラ達が帰って来たら先程の意見をティナに伝えようと言う事になり、一先ず櫓などの撤去作業の手伝いをしていた。
そして、撤去作業を手伝い始めてから数分後、北の方角から今回の実地試験で受信用の役割をしていた魔法玉と、魔術研究機関の職員、そして彼等の護衛をしていた戦乙女騎士団の団長、ラミラ達が戻って来た。
そして戻って来たラミラは、俺を見ると半ばパターン化した様に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、声を荒げた。
「あら、今日ミカドさん達も来ますよと伝えてませんでしたっけ?」
「初耳です!」
「それはうっかりしてました。ふふっ、ごめんなさいねラミラ」
「ユリアナ様...... もしかして、ワザと黙っていたのですか?」
「本当にうっかりしてたんですよ。だからそんな怖い顔をしないで下さい」
「べ、別に怖い顔などしていません!」
ユリアナは悪戯っ子の様な、 何とも意地悪い笑みを浮かべている。
俺には強気に接するラミラは、飄々とした態度のユリアナの振る舞いに押され、受け身に回っている。
「あ、あの...... 団長。魔法玉の警備、お疲れ様でした」
「っと、あぁ。ニクルもユリアナ様の護衛ご苦労だった。問題は無かったか?」
「は、はい。特に...... 」
「そうか。良かった。そうだニクル、そこのミカドとか言う黒髪男がユリアナ様に無礼を働いたら切り捨てていいぞ。私が許可する」
「え、えぇ!?そんな事出来ませんよ!?」
「こら、ラミラ。冗談のつもりでもそんな事を言ってはいけませんよ?」
「別に冗談なんかじゃ...... 」
「何か言いましたか?」
「いぇ...... 何も...... 」
「団長...... 」
俺ラミラは、同僚のニクルとも仲睦まじげに言葉を交わしている。
とりあえず、ラミラとニクルの会話を聞いて、ニクルの性格は大体把握出来た。
ニクル...... 苦労してるんだろうな......
楽しそうに会話するユリアナ達の間には、固い信頼関係がある事が垣間見えた。
そうだ、魔法玉とかの撤去作業が終わるまでまだ暫く掛かりそうだから、今のうちにほぼ初対面のニクルに挨拶しておこう。
「あ〜...... ごほん。
ニクル、こうして会うのは論功行賞式以来だな。改めて初めまして。
凄い今更だけど、俺はギルド部隊ヴィルヘルムの隊長、西園寺 帝だ」
「あ、ご丁寧にどうも......戦乙女騎士団副団長のニクル・ダーナリーです。
あの時はバタバタしていて、ろくに挨拶も出来ず申し訳ありませんでした...... 」
「いや、気にしないでくれ。改めてよろしく頼む」
「はい、ミカド様の武勇は私も聞き及んでおります。私もミカド様に負けない様に精進しなければ」
ニクルはそう言って知的な笑みを浮かべ、俺の差し出した手を握り返してくれた。
「ん。その武勇ってのは、そこに居る皆のお陰さ。この子達は...... 」
「ヴィルヘルムの副隊長セシル・イェーガーです!」
「ドラル・グリュックと申します。よろしくお願い致します」
「僕はレーヴェ・グリュックだ!よろしくな!」
「マリア・グリュック...... 」
『ヴァイスヴォルフのロルフと申す。以後お見知り置きを』
「皆様、ご丁寧にありがとうございます。
今後ともギルド、ラルキア王国の発展にご尽力下さい」
「あぁ!」
「「「「はい!」」」」
『うむ!』
「自己紹介は終わったかしら?」
「あ、すまんティナ待っててくれたのか?」
改めて戦乙女騎士団、副団長ニクルへ自己紹介を終えると、側に撤去作業を完了したティナ達が立っていた。
どうやら、俺達の自己紹介が終わるのを待っていてくれたみたいだ。
「大丈夫よ。気にしないで。それじゃ、そっちの自己紹介も終わったみたいだし、魔法玉を見て感じた事が有れば教えてくれる?」
「あぁ。俺達が感じたのはこんな感じだな...... 」
俺は先程マリア達の言った感想を噛み砕いて説明した。
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「なるほどね...... 通話の時に魔力が......
多分それは、言葉を魔力の波に乗せて離れた場所の魔法玉に運ぶ時に出たモノだと思うけど、むぅ...... この魔力の漏れを抑えられれば、もっと小型化しても通話可能範囲が伸びるかも...... 」
「俺達が感じたのはこんな所だな。
ちなみに、この問題を解決出来そうな方法も思い付いたぞ」
「本当!聞かせてくれるかしら!?」
「あぁ。まず、魔法玉を使って通話する際に混線するかも知れないって問題だけど、これは送信側の魔法玉に通話先を指定出来る機能を付けられれば解決出来ると思う。
通話先を指定出来るって事は、逆に通話先に指定しなければ混線の可能性は消えるって訳さ。
同時に、魔法玉は使用者の魔力を注入して、魔力の波を介して通話をするだろ?
この時、この魔力の波を決められた方角のみに流れる様に改造する。
そうすれば、魔力の消費を抑えられるし、一定方向に魔力を集中出来るから通話可能範囲も伸びるかも知れない」
「なるほど...... 続けて」
「おう。まぁ簡潔にまとめれば、まず魔法玉を使って通話する時の魔力の流れを任意で指定、変更出来る様にする。
これで魔力を一定方向に向けられるから、余分な魔力の消費を抑えられるし、その魔力を通話に充てれるから通話可能範囲も伸びると思う。
これで混線を避けられる様になるし、同時に指定した複数の魔法玉へ通話も出来る様になるかも知れない。
後、マリアが言った魔力が溢れるってヤツだけど、コレはどう言った理由で魔力が溢れてるのか分からないから、何とも言えない。
でも、コレがもし通話する時に出る余分な魔力だとすれば、この漏れを極力抑える改良をすれば、今より小型化しても通話可能範囲は変わらないか、逆に伸びると思うぞ」
俺は、魔法玉の改善点を元居た世界にあったある物......【無線機】からヒントを取り、ティナに説明する。
基本的に無線機は、任意で決めた通信先に電波を介して通話出来る道具だ。
俺は魔法玉でも同じ事が出来ないかな?と思った。
無線機本体は魔法玉、電波は魔力の波って事だ。
そしてまず、マリアが言った通話の際に魔法玉から溢れる魔力......
これは、通話に必要無い...... 言うなれば余分な魔力が漏れた物じゃないか?と俺は睨んだ。
この感が正解だとして、この魔力の漏れを抑える事が出来れば、この漏れた魔力を通話に充てる事が出来、通話可能範囲は伸びる筈だ。
逆に、この漏れる魔力が声を離れた魔法玉に送る波の役割を果たしていると仮定した場合、魔力の流れを一定方向に向ける事が出来れば、これも結果として余分な魔力の消費を抑える事に繋がり、通話可能範囲が伸びる事に繋がる。
加えて無線機には、あらかじめ決められた周波数を指定すれば、その周波数を介して其々の無線機に通信出来る機能がある。
なのでこれと同じ事が魔法玉でも出来るなら、通話先を任意で指定し、その方向に魔力を集中する事が出来る。
これも結果として余分な魔力の消費を抑える事に繋がる......
と、まぁ、こんな感じだ。
正直、言葉では説明し辛いから後々改善点をレポートを書いてティナに渡す事にしよう。
「流石ミカド達ね!!ありがとうヴィルヘルム!お陰で改善点が見つかったわ!」
「えへへ...... 力になれたかどうか微妙だけどね」
「何言ってんの。この魔法玉は軍は元より、後々ギルド組員達や市民にも使って貰おうと思ってる魔法具よ?
セシル達、ギルド組員のアドバイスは貴重だわ」
「そう言って貰えると助かるよ」
「ふふ、それにドラルやマリア達の意見も魔法玉の改善に繋がるヒントになったわ。
ミカド達を呼んで正解だったわね」
「力になれたなら幸いです」
「まぁ、僕等にかかればコレくらい楽勝だけどな!」
「うん...... この依頼は私向きだった」
「ティナさんは随分とミカドさん達を買っているのですね」
「ミカド達は、この前のあの事件...... ベルガス反乱の際に使われた魔力式爆弾の仕組みに気付きましたからね。
私や魔術研究機関のダルタス局長も、ミカド達の科学的素質を評価してるんです」
「ちっ、悔しいがミカド達の活躍は納得だ。
認めるしかないな」
「だ、団長...... そんな言い方は...... 」
「まぁ、それはひとまず置いといて...... 実地試験も終わった事だし、今日は帰るとしましょう。
色々と改善点も見つかったから、早い内に改良に取り掛かりたいからね」
「そうですね。ティナさん、本日はお疲れ様でした。
この結果は父上もお喜びになるでしょう!」
「はい!ユリアナ様。それと本日はご足労頂きありがとうございました。
魔術研究機関職員一同、程よい緊張感の中で仕事が出来ました」
「ふふ、魔法玉の実用化楽しみに待っていますよ?頑張ってくださいねティナさん!」
「ご期待に応えられる様、尽力致します。
ヴィルヘルム、貴方達もありがとう。
貴方達を呼んで良かったわ。
もしかしたら、今後も魔法玉のアドバイザーとして依頼を頼んでも良いかしら?」
「勿論!いつでも依頼してくれ」
「ありがとう。今回の報酬はギルド支部経由で渡す様になるから、その点はよろしくね?」
「うん、わかったよ!ティナちゃんお疲れ様!」
「セシル達もお疲れ様。それじゃ、帰りましょうか!」
「「「「「おぉ〜!」」」」」
『っ...... 主人殿!!』
魔法玉の改善点等をティナに伝え、帰ろうと言う流れになったその時、殺気の籠ったロルフの声が頭に響いた。
それと同時に、俺達から数キロ先に黒い何かが大量に現れた。
一方その頃......
今は平和条約と言う名の元に平和を謳歌している人間大陸......
だが、幾ら人間大陸に有る全ての国が条約の決まりにより戦争を起こしにくい時代となっても、人間は武器を捨てられない。
ましてや、100年程前に戦った国が今も変わらず自分達の直ぐ隣に有り、強大な軍事力を持ったままとなれば、無用心に武器を手放す事など出来るはずがなかった。
この基地に駐屯する兵達に課せられた使命は、潜在的敵国の隣国、エルド帝国の動向に目を光らせ、いざと言う時は我が身を盾とし、民を守れと言う過酷かつ冷酷で、生半可な心構えでは到底成し得ない厳しい使命.....
このいざと言う時とは、言うまでもなくエルド帝国がラルキア王国に侵略して来た時だ。
そんな緊張感と常に隣り合わせのこの基地は、エルド帝国とラルキア王国の国境近くにあり、その名前は【ラルキア王国軍 第1龍団所属第1連隊駐屯地】と言った。
そして総人数1000名を超えるこの基地に、顔面を真っ青にしたラルキア王国軍の若い軍人が大慌てで駆け込んでいた.....
「で、伝令!伝令!連隊長は!連隊長は何処に居られるか!?」
「どうした、そんなに慌てて」
「一大事だ!エルド帝国の軍勢を国境付近で確認したんだ!!」
「な、何!?本当か!?質の悪い冗談だろ!?」
「こんな冗談言う訳ないだろ!?
俺だけじゃ無い!一緒に周辺を警邏してた奴らも見てる!まるで黒い川みたいな大軍勢だ!」
「え、エルド帝国は平和条約が有るのを忘れたのか!?」
「知るか!そんなのエルド帝国に聞け!
少なくとも、6万近くの大軍が此処を目指して進行中だ!
急いでこの事を連隊長に伝えないと!」
「わ、分かった!連隊長は今、執務室にいらっしゃる!
俺はこの事を直ぐにゼルベル陛下に伝えに行ける様に準備しておく!」
「あぁ、頼む!連隊長!連隊長!!」
「クソ!まさかこんな事になるなんて!」
この若い軍人が齎した情報から数分もせずに、この駐屯地は蜂の巣を突いた様な騒ぎになった。
我がラルキア王国の国境近くにエルド帝国の大軍勢見ゆ。
この報告が王都ペンドラゴに居るゼルベル陛下らに伝わったのは、エルド帝国軍が国境の3km前まで迫った頃だった。
ここまでご覧頂きありがとうございます。
誤字脱字、ご意見ご感想なんでも大歓迎です。
次回投稿は、1/8日 21時頃を予定してます。